誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。
※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。
※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。
※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』
※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。
※原作開始時にして最新話時年齢。ジルクニフが23歳ちょい手前。スメイロトが20歳位。カルカ様が24歳前後。ケラルトが25歳。レメディオスは27歳。
※レメディオスはアンドレアに対して滅茶苦茶甘い。抱っこしてる間は表情筋が融解している。その所為か多少は人格が柔らかくなり副団長達の苦労も幾らかは減っている。
※ラムロッド君は下位変換のジル君ポジ。為政者の器は覚悟をキメたザナックと同じ位かちょい上。原作王様ランキングでは3~4位確実。ちなみに覚醒カルカ様はリユロと互角。
基本として人格者だし政治の才能もあり十分過ぎる程優秀で兄弟内では総合的な為政者として最適なのだが、剣を超越者レベルで振れて母親レベルで政治も出来るラ・ピュセルな妹が居る。
自分が殆ど与えられなかった父親からの愛情をたっぷり受けて育ち、長じれば建国以来最大の英雄と称えられる妹に聖王回帰派からすら鞍替えしようとする奴らが出る。
自分は勝手な期待を押し付けてくる不愉快な奴らに囲まれてて、出来過ぎる妹はろくに話せない父親と気軽にお喋りして笑っているのだ。「お労しや兄上……」
アンドレアはスペックは凄いけど気質的にレメディオスな要素があるので、両親としてはラムロッド君にこそ王位を任せたいとの事。
※作者のラムロッド君に対する愛は富士鷹ジュビロセンセに近いと思います。最終的にはハッピーエンドにする筈なので大丈夫です多分。そして過程は存分に楽しむ。
※ホバンスのスメイロトの私邸はほぼリフォームが終了し本来であれば先月には入居可能な状態になっている。
が、内部でのコーディネートやカルカの居住エリアやケラルトの居住エリアの割り当てでまだ揉めていた。
スメイロトが間に割って入って調停し、一部内部をそれぞれの部屋に改装してそれで手打ちとなった。
本来の家主よりも妻達の生活空間の方が広めであるのは気のせいではなく、妻達曰く「夫婦の共有スペースでスメイロトは出入り自由だから何ら問題ない」との事。
愛人達はこのエピソードを聞いて「絶対に自分達の存在が二人にばれてはならない」と危機感を抱いている。
※かといって法国の愛人達が身の程を弁えるわけもなく。情と執着を強くした彼女らは隙あらば容赦なく本妻達を出し抜こうとするだろう。
スメイロトの人生が長くなれば成る程女絡みのトラブルは増大していくのだ。
※「お、蘇生出来た(うっかり殺しちゃったけどこれでノーカンだな)」「こ、ここは?某は一体何をしていたでござるかぁ!?」「レイズ・デッドを使えるアイテムとは!(サトル殿は一体何者?)」
ガゼフの援護の為に牽制として『心臓掌握』使ったらユニットRがあっさり即死してしまい、焦って手持ちの蘇生アイテムの一番安いのを使用してこうなった。
※「やっと撒いたか……クソトカゲ野郎が随分と追いかけてくれやがって……ここどこだ? つか、なんだこの超巨大タコ野郎?」「☆□●×!!(墨を吐く)」「なんだァ?てめェ……」絶対悪、キレた!!
※「大変です、至急回復魔法の使い手を集めてください、第一次席次が!!」「ああっ、どうして? 体の関節が全てひっくり返っていて!?」
王配スメイロト・ベサーレス私邸。
ホバンスの上流階級が住む住宅地の中に存在するこの邸宅は、王族の私邸と並ぶ規模を有していた。
取り潰しを受けた南部の伯爵家と子爵家の私邸の堀を撤去し堀を埋め立て相互の敷地を接続。
中間地点に庭園を建設した訳だが……妻達が生活空間の割り当てでかなり揉めた。
勿論、彼女らの生活空間に対して旦那は出入り自由であるが、それでも自分の空間は欲しいものである。
「7割が嫁達の居住空間とか。やだ、俺個人の空間狭すぎ?」
これが入り婿の肩身の狭さ、物理バージョンかとスメイロトは天を仰ぐ。
屋敷全体の管理についてはベサーレス家付の使用人達が伯爵家側、カストディオ家付けの使用人達が子爵家を管理した。
残りは漸く妥協してカスポンドの斡旋で選出した使用人たちが離宮での少数派である古参組に追加され管理する事となる。
スメイロトの私室部分でも、カルカとケラルトの激戦は続く。
家具や室内のインテリアや間取り、コーディネートについて。
旦那のプライベート空間にも自分の要素を溶かし込みたい女心がぶつかり合う事となる。
暇さえあれば双方の応酬が繰り返され、他ならぬ共通の旦那が必死の仲介を行い。
大祭を前にして、漸く大まかな引っ越しが完了した次第である。
そんな邸宅の、スメイロトの私邸の寝室にて。
「………」
「………」
「お二方、まずは落ち着いて頂きたい。そも、今宵は休養日では? 流石にいきなり押しかけるのはどうかと?」
特注サイズの天蓋付きベッドの上。
全裸のスメイロトは必死に二人を宥めていた。
普段、夜伽の相手をする時は決められたスケジュールに従って行うのが常なのだが。
大祭が近づいた今夜は、双方とも心身を休める為にも「自重」する事になっていた。
聖職も兼ねている二人は、祭事の前は禊の為か身を慎む事が多いのだ。
なっていたし、多いのだが。
予定のない夜伽が重なってやってきてしまった。
おかげで今日の予定にはフィアナを入れて居たのだが、直前に監視網と盗聴網による警告が入りキャンセルとなってしまった。
フィアナは不満そうだったので後でフォローを入れねばならないだろう。
「し、仕方がありません。だって、どうにも落ち着かないのですから!」
一糸纏わぬ白い裸体のカルカが「私、悪くないもん」な態度と姿勢で強調する。
ちょっとだけ可愛いと思ってしまったが、それはそれ、これはこれである。
(素直にムラムラしてるだけだって言えばいいのに?)
かつての色も男も知らぬ頃の彼女なら我慢できた範疇かもしれないが、今はそうでもない様だ。
事実、大規模な祭儀などがある前週は、二人とも取り合う様に夜伽の頻度が高まる傾向がある。
「取り合えず、落ち着いてくださいカルカさん……うっ?」
「えっ……なっ!?」
腰に来た快感に言葉が詰まる。
視線を落としたカルカが顔を真っ赤にして憤った。
「ケラルト、私を差し置いて何をしてるんですかっ」
「
眼下で上下に揺れている長く艶やかなブルネットの髪の毛。
物凄いくぐもってるけど明らかに開き直ってるケラルトの声。
(うおっ、舌の動きすごっ!!)
彼女が勤勉で学習能力も非常に高いのは知ってる。
知っているが、こっちの方面も本人の乗り気もあって凄かった。
テクニシャンだった。
「あの、ケラルトさん。含んだまま喋るのはご遠慮願います。偶に歯が掠って小生怖くあります」
「……おかのした」
ちょっと痛気持ちよかったのは内緒だ。
そこからは、自分を挟んでの口論開始である。
ここは正室に譲るべきだの、先週はカルカ様が多めだったではありませんか。
普段は茶会の席で、迂遠にネチネチと言い合いお互いに譲歩を迫るのが常であった。
しかし今回は夜伽の間で、お互いに裸での言い合いと来ている。
普段より露出が高すぎる所為か、普段抑えてる感情まで口に出ているようだ。
(いや、なんだよ私の方が気持ちがいいですだの、締まりがいいですだの)
後者に関しては聞かれてものらりくらりと回避しているし、その手の話題はすべきではないとも告げている。
口にした瞬間から修羅場が始まるのは確定しているので、言わぬが花だ。
そうこうしている内に、ケラルトが叫んだ。
「私の方がスメイロト様を満足させれます!」
「どうやってですか!?」
問い詰めるカルカに対して、ケラルトはくるりと姿勢を変えた。
「わ、私の……っ……その、こ、ここで」
寝室が一瞬静まり返った。
「ケラルト……あなた」
若干引いた表情のカルカ。
「ケt……げふん! ケラルトさんの、おしr……そっちで?」
「き、教義には反していませんからねっ別にいいではないですかっ!」
顔を真っ赤にしながら反論するケラルト。
実際、神職者で所謂『純潔』を尊ぶ傾向はある。
その抜け穴的な定義で、『膜』が無事なら純潔である。
つまり、後ろの方が未使用であるかどうかは問題にならない、という訳であり。
「マジか……」
「も、もちろん、その、魔法で綺麗にしてありますからっ」
「………えと、そこを神聖魔法で? 綺麗に?」
「そうと言っているではないですかっ、何度も、言わせないでくださいっ」
わざわざオリジナルで魔法でも作ったのか?
益体もない事を考えながらスメイロトは下を見る。
どうやらケラルトの『鞘』を見て興奮しているようだ。
もっとも、そっちは出す方専門であって入れる方は人体構造的に想定してないので鞘は適切な表現ではないのだが。
「……」
聞いた瞬間は少し動揺したが、これはこれで悪くない。
そう判断したスメイロトは二人に向き直り……。
「うおっ、すごっ」
「す、凄いのですかっ!?」
「うん、凄いよカルカさん、人差し指と中指同時に入ったし、中が凄くうねうねしてる」
「ふ、ふた、ふたり、ともいい加減に、いいぃぃぃ!?」
「ケラルトさん、いい仕事してますねー」
「ケラルト、やっぱりあなた、とても淫乱だわ」
「わ、私の事をとやかく言えるのですかカルカ様ぁ!?」
「でも、流石にまだ解しが足りないな。無理はケガの元だ」
「なので、こんな事もあろうかと用意しておきました♪ ちゃんと潤滑剤も塗ってあるよ~」
「スメイロト様、そ、それって……」
「こ、この変態ぃぃぃぃ」
「いや、酷いなその言い方。こいつで結構楽しんでるじゃない? そーれずぶずぶ~」
「お゛っ? ……お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!!」
「凄い顔……ぴくぴくしてますね……スメイロト様。この玩具ですが」
「はい、カルカ……さん?」
「………私の時は、使ってませんでしたよね。ケラルトとする時だけ使ってたのですか?」
「え、興味があるので?」
「………」
「あ、あの、カルカさん?」
翌朝、失神した二人を苦労して身繕いさせてから送り出した。
二人の侍女達からケダモノを見る目で見られた。
何故に? 自分は王配として、夫としての責務を果たしただけなのに。
スメイロトは天を仰いだ。
超越者の体力と精神力は万全だったが、何故か太陽が黄色く見えた。
迎撃予定日の前日。
ホバンスの法国が設置したカヴァー拠点で、スメイロトはフィアナと一緒に就寝していた。
以前のスケジュールで彼女との逢瀬が潰れてしまったので、今回はフォローの日程ともいえる
今、王城に詰めている王配はハイネだが、カルカとケラルトは大神殿に籠りレメディオスも大神殿の警備に就いている。
周りの節穴共ではもはや熟達の域に達した彼女の模倣を見抜ける道理はないだろう。
……遠目に見ていたひとりのメイドが、微かであるが怪訝そうな顔で
愛人との同衾とはいえ、今日に限って言えば添い寝だけだ。
戦いの前日にこそゲン担ぎで励む者もいるが、スメイロトは集中を求める前に発散を好まない傾向にある。
世俗も肉欲も乗り越えるつもりはなく、寧ろ楽しむ方であるが勝負の前位はストイックになってもいいだろう。
「どうした、フィアナ。寝付けないのか?」
夜半過ぎ。
浅い眠りから目が覚めると、眠たそうな顔をしながらもフィアナの碧眼が自分の顔をじっと見ていた。
スメイロトと目が合い、フィアナは目を泳がせてから誤魔化すように笑った。
「ごめんね、起こしちゃった?」
「いや、俺も少し寝つきが悪くなってる様だ。やはり緊張しているのかもな」
「え、緊張してるんだ……大丈夫?」
心配げな言葉と共に、フィアナが体をぴったりと寄せて来た。
薄い寝巻の下から感じる彼女の体温は高い。
「どう、落ち着くかな」
「ああ、ありがと。フィアナの体は温かいな」
抱き寄せると、確かに少し気持ちが落ち着いたような感じがする。
出産後もストレッチとトレーニングを欠かしてないフィオナの体は、直ぐにでも現役の聖戦士として活動できるだろう。
だが、それでもかつての人類守護に全てを捧げていた無垢な少女の、戦う事を第一に鍛え上げていた体ではない。
戦う事しか知らなかった存在が、ソレ以外を知って完全に沼る。よくある事だろう。
「不安なら、もっと温めあって……みる?」
たった二年前の彼女であれば、こんな色目を使わないだろう。
今夜は添い寝が趣旨だが、スメイロトが少しでも望めば彼女は求めてくる。
下着を着用してないのは、張り詰めた胸の先端が寝巻の生地を押し上げているのが感触でわかる。
「いや、今夜は控えておくよ。ここ一番の重要な案件だから俺が前に出なきゃならんし」
「……そうだね。でも、スメイロト様がそんなに前に出る必要はないんじゃないかな」
「その辺は信じて欲しいね。俺と決戦個体で戦えば、相性が悪くても何とかなる。神人との共闘があれば猶更だ」
そう呟いてから、反応が無かったのでフィアナの顔を覗き込む。
彼女の顔には、どうしようもない不安が滲んでいた。
「あなたを信じたいけど、相手が相手だから」
「………そりゃ、まぁ、ね」
フィアナの懸念はもっともだ。
この世界の基準で難度210以上は「真なる竜王の次に恐ろしい絶対的破壊者」だ。
英雄級手前のガゼフが周辺国最強、フールーダが帝国全軍に匹敵する逸脱者である事を比較すれば理解できる。
あの魔将は英雄級をゴブリンの様に蹴散らし、逸脱者を他愛もなく討ち取れるだけの力があるのだ。
フィアナは装備と服装次第ではガゼフと互角になれるが、そんな彼女でも魔将相手では一撃で造作もなく倒される程度の存在でしかない。
「だから、危ないのは第一席次様にお願いすればいいんだよ」
祖国の希望の存在に対して随分と雑な扱いである。
しかしフォオナにとっては、今やスメイロトを優先するのは当然だった。
「私は貴方が無事に帰ってきてくれることがなにより大事だから」
打算のない、夫に対する純粋な妻の慈愛。
本来であれば望んでるソレに、スメイロトは言葉を返せない。
「だから、帰ってきたらフィオリアを見せたいの」
「………」
スメイロトの女性に対するスタンスの本質は臆病である。
政略結婚を表向きぼやいて見せても、内心では歓迎しているのはそういう事である。
義務を果たして外面を取り繕えば、大まか問題なく生きていけれる。
深い愛情を感じる事が無くても、大きな衝突や亀裂が出ないならそれでいいじゃないかと。
何より、自分という男が誰かに愛されるに値しないのではという不安と劣等感を感じずに済む。
二つの人生によって、■■とスメイロトという人格の内面を歪に形成した。
前世の家族は腐り澱み狂っていた。
今世の家族は権勢者としての業に焼かれていた。
二つの彼は強靭な人格者ではなく、家族の干渉を打ち払って己だけで生きていけるような存在でもなかった。
だからこそ、フィアナの純粋な情愛に対して正面から向き合えない。
正室のカルカの、依存は含まれていても自分を見てくれる愛についても向き合えない。
寧ろ、愛欲に塗れたジュンノやケラルトの方が安心できてしまう体たらくだ。
最近、何かと面倒を見てやっているメイドに対しても、どちらかと言えば現実逃避の意味合いがあるのかもしれない。
ある程度トラウマが緩和したとは言え、男性恐怖症を克服しきれてない筈のメイドがなぜ『権力者の男』である自分へ健気な態度を取るのかも理解せずに。
「ああ。せっかくゲートを利用出来る様になったんだ。フィオリアの顔もまだ見ていないしね」
「うん、あの子もお父さんの顔を見たいと思うよ。それとねスメイロト様……その」
ゲートを利用した法国の訪問計画も立ち上がっている。
正直、あまり行きたくはないが、我が子達の顔を見たいという感情はスメイロトにも存在するのだ。
「この件が落ち着いたらフィオリアに妹か弟を作ってあげたいな……ね?」
濡れたように光る碧眼と、紅を塗ってないのに艶めかしく見える唇。
初対面の時の毅然とした聖戦士は、すっかり母親に、何より女になっていた。
スメイロトはその事実から目を逸らすように、彼女を抱き寄せてから瞼を閉じた。
その日、起動した決戦個体の移動が完了し。
いよいよ法国の援軍を迎えれば迎撃の準備は盤石の状態になった。
その筈だった。
「合図が出たわ。フォーレ、鏡を開いて」
「わ、わかりましたわ」
メッセージで本国と連絡を取り合っていたジュンノが声を上げる。
緊張した面持ちで、フォーレが特注品サイズの大鏡の縁に手を触れた。
彼女のタレントが発動し、ただの鏡面が見る間に漆黒へと染まる。
そして、十秒後に向こう側から移動して来た者達が聖王国へと姿を見せた。
大きな外套を羽織った小柄な老婆と、周囲を固める漆黒聖典の席次達。
(ん、なんだあの婆さん? 席次達が囲んでるから重要人物なんだろうけど)
ここまでは、少なくとも何故いるのか分からない老婆以外は想定内だった。
「え」
「あ……」
「そ、んな」
「だ、誰? ……ひっ」
最後に長い得物へと布を巻き付け、緑地に白抜きの「唐草模様」のレインコートを羽織った人物が鏡から出て来た。
(え、あれは……ユグドラシルの気配遮断用のアイテムじゃないか)
最後に鏡から姿を見せた少女に、スメイロトの周りに居た愛人達は驚愕かまたは困惑の声を上げる。
スメイロトも困惑していた。何故にあのスカしたロン毛でなく見た事もない少女がやってきたのか。
(う)
少女のオッドアイの瞳と目線が合う。
途端に強烈な威圧感が、スメイロトの全身を襲った。
(あ、これ。ヤバイ相手だ)
明らかな格上の感覚。
「ふぅーん……」
値踏みする様に見つめてくる、少女の姿を見て今すぐ逃げ出したくなる気分。
この感じ、ユグドラシル産のアイテムで色々遮断している筈だ。
筈だけど、本人そのものの威圧感だけは据え置きなのだろうか。
「ス、スメイロト様」
「さ、下がってください」
「………きゅう」
小刻みに震えながらも左腕を掴んでくるジュンノ。
右腕に手をおきながら視線は少女から離さないフィアナの顎から冷や汗が滴り落ちる。
フォーレは鏡に寄り掛かったまま、半ば失神しかけていた。
「ば、番外席次様、何故こちらへ? 来られる筈の第一席次様は如何されたのでしょうか?」
スメイロトの前にラクレマが立ち塞がる。
折衝役だから当然かもしれないが、気丈な態度とは裏腹に体の方は怯え切っていた。
「御身の出撃は、最高執行機関の……承認が必須の筈です。私はその連絡を受けておりませんが何故に?」
「へぇ……あなた程度が私に質問する訳?」
「ひっ……うぅ」
ラクレマの全身がガタガタと震え始める。
番外席次と呼ばれた少女が、ジュンノ、フィアナ、ラクレマを見て面白そうに口を歪めた。
このままだとスメイロトとしては面白くない展開になりそうなので、両腕に添えられた手をそっと離させて前に出る。
正直出たくないが出るしかない。夫は妻達を守るべきなのだ。
「ラクレマ、下がりなさい」
「ス、スメイロト様。で、ですが!」
「いいから。ほら」
硬直しかけていた彼女を庇う様に後ろへと押しやり、ジュンノとフィアナに支えさせる。
「きゅう……」
支えられた瞬間に気絶した辺り、番外席次と呼ばれる少女の威圧感は相当なものだ。
英雄級でも逸脱者を前にすれば、周囲の景色が歪んでいると錯覚する程強烈な威圧を感じるという。
ならばLv20にも満たないラクレマに、神人の威圧感は過剰にも程があるだろう。
寧ろ、よく僅かながらに意識を保てたと称賛してもいい位だ。
(ぐっ)
事実、前に出たスメイロトに彼女は存分に圧をかけてきて正直辛い。
これは拙い。あのロン毛よりも確実に格上で手に負えない存在だ。
どういう事だ、どうにかしろと漆黒聖典側を見ると全員に目を逸らされた。
(どーいう事だよお前ら! お前らが連れて来たんだからお前らがどうにかしろ!!)
「スメイロト・ベサーレス」
思考と思惑を断ち切る様に、少女が不遜に声を発した。
「あなた……聖王国を捨てて、私のものになりなさい」
スキルの好感度補正のおかげで、自分に好意を寄せる女性が「自分に好意を抱いてるのか、スキルでそうなっただけ」なのか。
その判別のつけなさがスメイロトの心を苛んでいる。いっそ、気にせず恩恵だけを受け入れれる人間性ならよかったのにね?