※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。
※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。
※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』
※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。
※原作開始時にして最新話時年齢。ジルクニフが23歳ちょい手前。スメイロトが20歳位。カルカ様が24歳前後。ケラルトが25歳。レメディオスは27歳。
※待機中の漆黒聖典席次達は、超越者同士の戦いにかなりブルっている。人間最強も自分と同格がLv50台のウォー・デビル相手に包囲攻撃仕掛けてるのを見て「逸脱者が大安売りであるな」と呻いてる。
※彼らとしても戦いに参加すべきだと思ってはいるが、番外席次の許しが無い限りは無理である。
※ジュンノは席次を返上する覚悟でスメイロトの妻として参戦すると啖呵をきって番外席次も認めた。フィオナとフォーレも同じく立場を捨てる覚悟で参戦を宣言した。
※ラクレマさんは戦闘スキルが自衛で学んだLv3しかない事をこの時ほど嘆いた事が無い。自分がスメイロトの為に何もできない事を凄く凹んでいます。
※ホバンスの方では、僅かな地鳴りを感じて不可解に思う人が小数出てきてる。まだ音も光も遮断し振動も可能な限り消しているが長くはもたない……!!
※カイレの苛立ちは頂点に近づいている……あの決戦個体があればエイヴァーシャー大森林攻略に投入して貰えたかもしれないのに、何をのんびり静観しておるのかこの娘はぁ!? あれ?
※聖王国の人物からの評価で、レメディオスは意外過ぎる程スメイロトへの評価は高い。敬愛する主君は幸せそうだし、妹も何だかんだ言って善き妻として過ごしている。何より可愛い姪が(以下略)
※「へぇ、これがピロ〇ースですか」「そうそう、マロいだろアイダホさん。ディード〇ットもいいとは思うんだが、この褐色肌と色気が堪らんでしょ」「そうですねぇ。でも、それだけじゃないんでしょ?」
「ああ、そうなんだ。この種族故の高慢ちきっぽさがいいっていうか……踏み付けて見下して欲しくてね!」「お、おう………(エルフ種か、実際に出会ったらどんな感じなんだろうなぁ)」
※なお、バハルス帝国でのエルフの大半は法国から出荷された目が虚ろで耳を半分切り取られた奴隷エルフなので、スメイロトの幻想は早々に爆散。彼の法国に対しての苦手意識の根幹ともなった。
※某黒妖精の情婦を採算度外視で自分の下に招き入れたのは、砕け散った幻想のリベンジの為もある。
※「え、何アイツ?
魔将バレンタスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の人間を除かなければならぬと決意した。
『貴様だけはァ、許さんっ!!!!』
本来なら、悪魔らしく狡猾に撤退する段階だった。
何よりも卑劣で執念深く生き延びて、残虐に最後は勝ちを拾うのが悪魔の流儀だ。
だが、今のバレンタスは己の怒りのままに行動している。
人間、劣等種族の下等生物。
自分達悪魔に翻弄され、絶望し、無様に堕落し破滅していくのがお似合いの玩具ども。
悪魔に足蹴にされるべき存在が、自分をこうして瀕死に追い込んでいる。
しかも、二度までも。
半身を殺し全てを奪ったあの忌まわしい悪魔使い。
奴もとるに足らない人間の筈、筈だった。
なのに、自分よりも更に格上の魔将を当然の様に使役し差し向けて来た。
『あら、あなた達私の照準から逃げ切る気? バレンタス如きが出世したものねぇ?』
ワインレッドの外套をはためかせた女の魔将が艶笑を浮かべ、手にした長大なバレルの魔導銃をかざす。
『な、がぁっ!?』
数撃だった。
彼女は必死に逃げる片割れを、数発の銃弾で全て急所を撃ちぬき瞬く間に片付けた。
バレンタスの残された片割れが生き延びたのは、直後に戦場へと乱入した真なる竜王が悪魔使いに敵意を向けたからに他ならない。
『こんな、こんな屈辱を二度も受けて……』
圧倒的強者たる自分、その筈の自分が幾度も恥辱を味合わされて。
『耐えられるかぁ!!!』
魔将は人間を憎んでいた。
人間によって電子データ上で設計され。
考案されデザインされ悪魔っぽい作り上げられ。
あの仮想の世界で殺したり殺されたり使役されたりした無数の魔将の一体は。
二度目の恥辱を味合わせて来た、眼前の人間を殺すこと以外考えられなかった。
渾身の羽ばたきの中で、後ろから何かが飛んできて衝撃が走る。
『ガ』
『アルジサマノモトヘハ』
背中に深々と、魔力の付与された剣が突き刺さる。
スメイロトの眷属の中で最強の剣技を誇る、外付けの飛翔膜を背に付けた親衛隊長が魔将に追いついた。
彼女のLvでLv70台の攻撃をまともに受ければ、下手しなくても一撃で重傷に追いやられかねない。
だが、親衛隊長は構わなかった。創造主の命を自らの身を代えてでも守るのが彼女の存在意義だから。
『イカセヌッ!!』
渾身の力で彼女は剣を捻った。
全身が魔将の血で塗れ、毒性があるのか煙で覆われた。
『邪魔だぁっ』
『ガッ』
尾の一撃で親衛隊長を吹き飛ばそうとする。
親衛隊長は離れない、吐血しながら、全身を毒性の血で蝕まれながらも主を守る為更に剣を捻る。
『じゃ、まを、する、なぁぁぁぁぁ!!!』
二回、三回、四回目の尾の打ち払いで親衛隊長が吹き飛ぶ。
背中に突き刺さっていた彼女の主君より賜れた愛剣が、緑色の血しぶきと共に宙を舞った。
「行かせないよ!!」
前から飛翔して来た影が立ち塞がる。
踊り子の様な服装にケープと各種アクセサリーを追加したフィアナだ。
両手には巨大な鏡面の様な盾が握られている。
魔将は声も発さず、大きく剣を横なぎに振るった。
相手はLv30手前程度の惰弱な人間。
まるで地面に落ちてた邪魔な石を蹴り飛ばすかのような一撃。
「ぐっ」
鏡面が木っ端みじんに砕け散り、フィアナの体はまるで後ろに引っ張られる様に吹っ飛んだ。
吹き飛んだ先にジュンノが居て、空中制御が崩れたフィアナを受け止めていたが魔将にとってはどうでもいい。
わき目も振らずそのまま突進しようとした魔将の胸を、まるで己が放った一撃の様に斬撃が刻まれる。
『ガフッ』
吐血と胸から噴き出す血。
物理反射攻撃によるダメージを受けても、それでも魔将は止まらない。
レッサー・ラスト・オブ・カース。
瀕死級のダメージを負った魔将が発動するパッシブスキル。
一時的にステータスの上昇と、疑似HPを付与。
更にノックバック等の不利な挙動を全て無視できる様になる。
この効果を持って、魔将は妨害を全て乗り越えスメイロトに迫る。
カンスト勢には『デスナイトのスキル上位程度』と言われたが、彼にとっては十分過ぎる脅威だった。
『死ぬがいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!』
「ああ……やっぱ」
異世界に渡り自我を持ち。
この上なく悪魔らしく人間に殺意を抱き叫ぶバレンタス。
「近接は俺にゃ向いてないな」
スメイロトは、どこか諦めたように呟く。
魔将は剣を振り上げ、スメイロトはそのまま指の端を少しずつ動かした。
服の袖から滑り落ちて来た、何処か禍々しい緑色の出刃包丁を右手で握りしめた。
術者の体から臨界に達した魔力が弾ける瞬間。
「そこまでぇ」
背後から聞こえた女の声。
同時に、魔将の両腕の感覚がブツリと途絶える。
「よっ!!」
『があっ!?』
一瞬後に太い両腕、その腕が握っていた巨剣が同時に宙を舞い。
「あっぶね!!」
剣だけがスメイロトの直上に飛来し。
緑色の魔力膜が魔剣を真上に弾き返して高々と吹き飛ばした。
「全く、それには」
彼女はくるりと獲物を回転させた後。
攻撃手段を失い、漸く振り返った魔将に高々と振り上げた戦鎌の柄を叩きつける。
「同意するわっ!!」
『ギャッ!!』
悲鳴が遠ざかり、地上へと叩きつけられ轟音と同時に途絶えた。
高々とまき上がった粉塵を眼下で確認した後、スメイロトは顔を上げた。
呪詛が可視化されそうな出刃包丁を見つめ、これを使う事が無くて良かったと思いながら。
「番外席次殿、何故に?」
怪訝そうな表情と声だった。
スメイロトの想定では、どちらが勝つにせよ決着が付くまでは手を出すとは思っていなかった。
漆黒聖典との対話や、ジュンノの寝物語では番外席次の存在は理不尽な畏怖そのものである。
気紛れで苛烈、何を考えてるのかは分からないが基本的に甘い人物ではない。
少なくとも自分の誘いを突っ撥ねた相手を、率先して助ける様な相手ではないと考えていた。
「何故にって……それは」
対する番外席次は艶笑を浮かべた後。
戦鎌を真上に掲げ、降って来た大剣をもう一度弾く。
クルクルと舞い上がり、重力に従って落下して来た大剣の柄を容易く掴む。
「
「………はい?」
苛立ちの混じった、疑問符が盛大に語尾へと付いた言葉を発した直後。
「な?!」
魔将が打ち落とされた場所の近くから金色の龍が舞い上がり。
そして魔将の落ちた場所そのものに舞い降りるのが確認された。
こうして、魔将バレンタスとの戦いは。
当該国の聖王国には全くその真相を漏らさず幕を閉じた。
その後の話であるが。
翌日ホバンスの郊外の丘がえぐれているのを、巡視隊が発見し騒ぎになった。
前日の同じ場所を通った時には出来ていなかったので、違和感により発覚したのだ。
複数の平たいクレーターが点々と出来ていて、その上に草原が覆っているという不可思議な有様だったが。
もし、夜のうちに破壊行為が行われてたとして、この様に状態が変わるものかという疑念が残った。
祭典中のホバンスにこの報告が届けられたが、イサンドロ・サンチェス副団長と一個小隊が短時間調査した結果。
副団長が「王城へ報告する」と宣言してその日は終わった。
国を挙げた祭典の時に、要らぬ騒ぎを起こして民心を乱したくないという判断だった。
地形に異常が起きているだけであり、アンデッドやモンスターが発生してる訳でもなく。
アンデッドや被害が出ている訳でもない事が、捜査を後日に遅らせた理由だった。
2日後の祭典終了後、神官戦士団と騎士団、更に複数の技術者や専門家による合同調査が行われた。
確かに破壊の痕跡と思われるが、有毒な存在や瘴気が溜まっている事はなく。
更に外周部の探索でも何かの重大な痕跡や脅威を発見する事が出来ず、調査は翌日の再調査の後打ち切られた。
王城に対するグスターボ・モンタニェスの報告書では
『敵対的な亜人による活動の痕跡である懸念はあるものの、重大事とは思われず。今後とも定期的な観察と巡視を要とする』
と結ばれて終わり。
その後数年ほど形ばかりの観察と巡視が行われた後で、事件としては迷宮入りとなった。
イサンドロ・サンチェス副団長と彼直属の騎士達が、クレーター状の凹みが複数広がる丘を駆けまわってるそのはるか上空。
(………これは実に不自然だな)
銀色の鎧が高空に浮かんでいた。
兜の面頬の隙間から青白い光が浮かび、遥か下で調査をしている人間達を見下ろしていた。
鎧は別に彼ら人間に用がある訳ではない。
この異様な痕跡を起こした、起こす時に感じた魔力の波動を感じたから直接調べに来たのだ。
(感じた波動も規模の割には妙に抑え込まれている様に思えた。痕跡についても後から隠蔽した様にも見える)
例えばの話、意識的に魔力を抑制、あるいは何らかの結界で戦いの余波を遮蔽していたり。
鎧の持ち主は幾つかの可能性を検討するが、そのどれもが彼にとって極めて懸念に満ちたものだ。
(全く、最近は忙しいな。この場所の異常も、あの街の件が無ければ早く調べに来れたのに)
リ・エスティーゼ王国で活動しているイビルアイからの連絡で、エ・ランテルという街に強大なアンデッドが現れたと聞いた。
その時はそんな事もあるか程度で済ませていたが、エ・ランテルで巨大なアンデッドの群れが発生したのを感じ様子を見てみる事にした。
現地に飛んでいけば確かに街の半分近くを呑み込んでいる死霊の群れは居たが、精々デスナイトが複数程度で大した事が無く拍子抜けしたのを覚えてる。
この程度なら何れ人間が何とかするだろうと背を向けかけた時、それは姿を現した。
「これは……!?」
それは青白い肌の馬に跨る、白いローブ姿の何かだった。
巨大な槍を持ち、それを振り回しながら上空を駆け巡るだけで、街を覆っていた死霊達がたちまちの内に消失していく。
「まさか、死が死に死を与えてるとでも?」
その存在の強大さは過去に遭遇した忌まわしき者達を想起させる。
神々の如き力を振るった八人の王達と、彼らに従う創造された配下達を。
「ならば、あれは、ぷれいやーか、えぬぴーしーか!?」
どちらにしろ、見逃す訳にはいかない。
呼び止めようと声をかけるも、相手には話すつもりはなかったようだ。
青白い馬が悍ましい嘶を挙げ、槍を掲げた
(結局、この体では勝ち切れても損害を受けそうで、他のぷれいやーなどの伏兵を警戒して撤退したが)
交戦しながら撤退を行っている途中で、
あれは召喚されたものだったのかと得心し、エ・ランテル付近に戻ったが召喚者らしき存在は見当たらなかった。
(途中でこの国での異変を感知したが、エ・ランテルの方を優先した所為で結局どちらも元凶は見つからず、か)
結果として双方の情報を得られず、鎧の中身は嘆息した。
(しかし、どちらにしても100年の揺り返しと重なり、あの脅威度の存在を召喚できる相手がこの世界に居る……)
これから自分は世界の守り手としての、選定を行わなければならない。
今回来たプレイヤーが何者であるかを見定めねばならないのだ。
世界を乱す汚染者か。
世界を乱さぬ来訪者か。
前者であれば、自分はまた業を重ねる事になるだろう。
(だが、やらなければならない。そうでなければ、今までの犠牲が報われなくなる)
彼は為さねばならない。
あらゆる犠牲を許容し、己の手を血で汚して来たのだから。
今回も同じように、世界の守護者としての務めを果たさなければならない。
「そうだろう………リク」
漸く祭典が終わり、ホバンスに日常が戻って来た。
「ふむ……」
自分の私邸の応接間で、スメイロトは数種類の肴をアテにしてワイングラスを傾けていた。
一種類ずつ口にしてはゆっくり咀嚼し、その都度ワインで口内をリセットしていく。
「腕を上げたなツアレニーニャ・ベイロン。どれも悪くないぞ。ワインの御供としていい塩梅だ」
「お褒めのお言葉、ありがたく存じます」
深々と頭を下げたメイド……ツアレに対し、スメイロトは満足げに頷き最後の一口を入れた。
素材の扱い、味付け、見た目、どれもが丁寧に仕事が為されている。
本来この手の仕事はコックなどの仕事であるが、深夜のキッチンで勝手に自炊していた時に勉強に励んでいたツアレと遭遇して以来。
厨房には内密にであるが、こうして彼女の腕を見てあげている。
これもいずれは自立への道を歩むかもしれない、彼女への支援の一環のつもりである。
もっとも、彼女が頑張って料理の腕を上げているのは、初めに出会った時に激励され、何回か試食して貰った時に褒められた事が凄く嬉しかったから。
5年近くの妾としての、一年間の八本指が経営する違法商館での地獄の生活で彼女の心身に刻み込まれていた男に対する恐怖が嘘のように薄らいだのだ。
(この御方なら……怖くない)
今でも時折夢に見て飛び起きる事があるし、男性の使用人に肩を叩かれたり至近距離で声をかけられると心臓が跳ね一瞬動きが止まる。
ここがあの地獄でない事は分かっている。でも、それでも男が怖いのだ。
ツアレニーニャ・ベイロンの心は、まだ完全に過去から抜け出し切れていなかった。
(そう、スメイロト様だけは怖くないの)
自分を助けてくれた謎の存在が、彼であるかもしれないという確信。
そして彼はこうして会う時はとても親切で紳士的だ。
彼女にとって男とは理不尽な暴力と略奪と嗜虐を当然の様に行う生き物。
スメイロトは彼女にとって、王国での男とは真逆の存在だ。
その所為だろうか、ツアレはスメイロトに対して恐怖心や苦手意識を全く抱かなかった。
それらはスメイロトが、下の存在に対して態度や仕草を取り繕っているのが事実である。
スメイロトも使用人という集団に対し、ツアレと言うメイドには例外的に気を少しだけ許してる部分もある。
使用人が帝国の間者と聖王国の二つの派閥でほぼ構成されている中、何の後ろ盾もなくただの民間人である事もあるかもしれない。
流石に露骨な贔屓は本人の為にも出来ないが、この程度ならしてあげてもいいかな……と思っている。本当は良くないが。
「ああ、もうこんな時間か。そろそろ次の予定になる。君はもう下がって休みなさい」
「……はい、かしこまりました」
皿とフォークとナイフを銀のトレーに載せ、彼女は部屋のドアのところまで移動した。
「……」
ちらりと横目でスメイロトを見る。
彼は新しいワインボトルを魔法仕様のワインセラーから出そうとしている所だった。
もう数年間彼に仕えている彼女だからわかる。
恐らくやって来るのは、奥方であるカルカかケラルトだろう。
これから、夫であるスメイロトとの一夜を過ごすために。
卓上には、既に二つのワイングラスが置かれていた。
(スメイロト様は、これから奥様と……)
チクリと、胸の奥が痛んだような気がした。
ツアレにとって、性交とは男が女からあらゆるものを奪う悍ましい行為だ。
痛くて、辛くて、悲しくて、惨めで、汚らしくて、心と体を壊されるだけの暴力だ。
彼女はそんな性交しか知らない。知りようが無かった。
「……」
扉の前まで来た。
何だか、胸の奥がモヤモヤとする。
(あの御方は)
ツアレはその感情をまだ知らなかった。
あるべき情操を覚える時期を、尊厳も理性も剥ぎ取られた妾の生き方で塗り潰されていた彼女は。
まともな、男と女の関係など知る由も無かった哀れな少女は。
(どの様に、奥方を愛するのだろうか)
(どの様に、奥方はあの方に愛されるのだろうか)
静かに音をたてないように、深々と深呼吸をして。
ノブを捻り、扉を開けて自分の体を部屋の外へと動かす。
「お休みなさいませ。スメイロト様」
深々と頭を下げ、音を立てずに扉を閉める。
彼女は自分の中で澱む知らない感情を振り切るように、厨房へと続く廊下をやや速足で歩いて行った。
ツアレの後ろに、姿が見えないスメイロトの護衛の
彼女が無事に使用人部屋へ戻れるよう見送る様、スメイロトに命令され追尾している事を彼女は知らない。
その晩。
ツアレは数年ぶりに、実家に居た時以来初めてベットの中で密やかに自慰をした。
漸く戦闘が終わった……。
後は色々収束し、物語が終わりに向かいます。