魔法少女リリカルなのは~ブレイジング・ルミナス~   作:火神はやて

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シュテルのパンツってどんなだ、って1時間くらい討議し合いました。何をしているんだろうなと思いつつ、シュテル可愛いしもうそれだけでいいやって結論に。世界は平和。

ではでは、ほんの少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。



第1話 星空と模擬戦とパンツ男

 ーー光弾が空を穿った。

 数は4つ。

 どれもが炎熱を纏い、夜空を焦がし突き進む。

 

 放つは深紫のバリアジャケットに身を包む少女。

 無に近い表情で、しかしその瞳には確かな闘志が燃えている。

 

 相対すは、白のバリアジャケットを纏う少女。

 桜色の魔力光を散らしながら滑空し、追いすがる火球をひらりと難なくかわす。

 

 目測を外れた火球はガラス張りのビルへと着弾し、爆炎と土煙を巻き上げ沈黙した。

 

 やがてガラスを焦がす炎も小さく夜空に溶け、そこには静かに見つめあう二人の少女だけが残る。

 

「ナノハ、避けないでください」

「にゃはは、当たると痛そうだし、それはちょっといやかなー」

 

 なのはと呼ばれた白い装飾の少女は、苦笑を湛えながら頬を掻いた。

 

「それに、シュテルとの模擬戦はすっごく楽しいもん。すぐに終わっちゃったら、もったいないなーって」

 

 市街地戦を想定した演習空間をゆっくり見渡し、のんびりとした口調で話すなのは。

 小さな深呼吸の後、桜色の光球を6つ生成していく。一転し、攻勢の形をみせた。

 

「さ! シュテル、今度はこっちの番だよ! アクセルーー……シューター!!」

 

 可愛らしい掛け声とは裏腹に、抉るような光の破壊が迸る。

 深紫の少女ーーシュテルは、ふ、と小さく息を吐き、迫る6つの光を鋭く見据える。

 

「ーーーー」

 2人の距離は約40メートル、数秒後には着弾だ。

 と、ここで2つの光球だけがスピードを上げ直進。残りの4発を置き去りにした。けん制と足止め狙いだ。

 

「ッ!」

 

 シュテルは防御魔法「プロテクション」を掌にだけ展開。

 2発が着弾するその瞬間、踊る様に体を振るい、魔力壁で弾丸をスルリと滑らせ、はじき飛ばした。

 

 弾着時に通常であれば発生する煙さえ上げさせる事なく、まさに一切の無駄のない動作で、いなしきってみせる。

 

「ーーーー!」

 

 だがそこに間髪入れず、上下左右から4つの光球が湾曲しながら迫る。

 妙技によってもたらされた、良好な視界。それ故に、残る弾丸全ての挙動を看破した上で、

 

「――行きます」

 

 錐もみさせながら一気に前へと翔んだ。

 

 シュテルを中心に収束しつつあった4つの魔弾のド真ん中を見事ぶち抜き一気に距離を詰める。

 攻撃も防御も捨て、加速のみを追求した疾走の姿勢。だが、その先には、

 

「ディバインーー……」

 

 集束砲撃の姿勢を取る、なのはの姿があった。

 

(シュテル、前に出た。ちょっと予想外だったけど、大丈夫)

 

 もしシュテルが足を止めて光弾を防いだなら、なのははそのシールドごと叩き潰す算段だった。

 仮に飛翔し避けようものなら、シュテルはアクセルシューターに追われる形となり、なのはは優位に立ち回れる。

 

 故になのははアクセルシューターを放つや否や、ディバインバスターを撃つべく行動していたのだ。

 

 

 2人の距離は25メートル。シュテルが詰めきる前に、砲撃がくる。

 

(く……!?)

 

 内心低く呻くシュテルであったが、ただ前へ出る。否、出るしかない。

 

 後方からは先ほど置き去りにした4つの魔弾が方向を変え、迫って来ていたからだ。

 

 逃げ場はない。

 前後から挟まれる、最悪の状況。

 

(どういう育ち方をすればこのような悪魔的な……!)

 

 なのはの集束砲の前には半端な防御魔法では対処出来ない。

 とはいえ、後方より飛来するアクセルシューターも無視できる代物でもない。

 

 勝利を確信したなのはの笑顔を一瞥しつつ、シュテルはしかし内心ほくそ笑む。

 

(ええ、けれど。その芸当は、貴女の専売特許ではないですよ)

 

 シュテルは左の手で小さく指をを鳴らす。

 と、先ほどシュテルの火球が爆着したビルから、4つの魔力球が矢の如き速さで急浮上した。

 

 それは初動で放った4発の炎弾に他ならない。

 

 燃え尽き霧散したかのように見せ、着弾点に潜ませていたのだ。

 

 シュテルの放つ魔法は大よそが炎属性であり、暗がりの空では文字通りの篝火の様によく目立つ。

 

 だからこそ、炎の鎮火もまた同時に意識に刷り込まれる。あの魔法はもう霧散したのだ、と。

 

 完全に意識の外からの射撃。虚をつく最善のタイミング。

 

 ーーけれど、狙いはナノハではなく。

 

 シュテルは思考する。重戦車の様な装甲を兼ね備えた魔導士相手に、威力の無いこの弾丸では足止めにすらならないだろう。むしろ、強引に砲撃を完遂されこちらが堕とされる。

 

 ならば。

 

「狙いは1つです」

 

 小さくシュテルが呟いたそのタイミングで、

 

「バスターーーー!!!」

 

 ド級の光柱がシュテルめがけて放たれた。ーー否、それは目測を誤り斜め上への砲撃となった。

 

「え!?」

 

 驚きを隠せないなのは。原因を瞬時に理解し、先ほどの勝利の笑みは強張り、焦りと忸怩が混じる表情へと変わる。

 

 砲撃の瞬間。シュテルのパイロシューターはレイジングハートの砲塔を下から上に打ち抜いていたのだ。

 結果、射出口がターゲットから外れ、必殺の砲撃は虚しく空を切るに至った。

 

 しかも、集束砲撃故の硬直時間に加え、崩された体勢はとてつもない隙を曝け出す。

 

 決定的な勝機に、シュテルはただ疾走を持って行動とする。

 前へ、先へ。もっと速く、限界まで加速し、翔ぶ。

 

 ーー残り3メートル。

 なのはが強引な空中制御で体制を立て直す。だが強引故に最良の姿勢は保てない。

 

 ーー残り2メートル。

 砲撃では確実に同士討ちする距離まで到達。必然的になのはは近接戦闘へ切り替える。

 

 ーー残り1メートル。

 互いの視線が交差しーー

 

「捕らえました」

 

 ゼロ距離。

 シュテルの愛機ルシフェリオンから朱色の光がもたげた。

 

(この距離から砲撃?!)

 

 デバイスから洩れる朱の魔力光は集束砲のそれであり、予想を外したなのは驚愕から思わず一瞬の硬直をみせる。

 

 そのほんの僅かな時間を利用し、シュテルは潜り込む様に下に急加速し、すぐさま直上。

 なのはの後ろへと強引に回り込み、そして、

 

「せい!」

 

 ーーなのはをそのままブン投げた。

 

 後方へ、つまり迫る桜色の4つの弾丸へ向けて。

 

「ブラスト……」

 

 

 シュテルが砲撃の構えを持つ。

 先ほどの魔力集束はブラフではなく、この時の正射の為。

 

 完全に構図が逆になった。

 狙いは完璧。双撃の布陣。

 

「ファイア!!」

 

 一閃。

 

 火柱が星を焦がし波濤となり征く。

 

 が、しかしシュテルが描いた勝利のイメージは、そこになかった。

 

(まさか、よもやあの一瞬で)

 

 シュテルはなのはの技量に改めて感嘆する。

 

 なのはは体勢を崩された状況下で、4発の魔力弾を操作し自分めがけて打ち込んだのだ。

 結果、最小のダメージを持って、墜落必須の砲撃からその身を逃したのだ。

 

 シュテルは内心ため息を吐きつつも、頬が少し緩んでいる事を自覚する。

 

「すごいすごい! やっぱりシュテルと模擬戦するのは楽しいなー!」

「ええ、同感です。やはりナノハは好敵手です」

 

 互いに実力を認め、競い合うからこそ生まれる、一種の信頼関係。

 だがそれ故に、絶対に負けたくない相手でもある事も、意味していた。

 

 頬の緩みをキュッと押さえ、シュテルは宣言する。

「十勝十敗二引き分け、けれど今宵は勝たせていただきます」

 

「うん! 私も負けないよー! 」

 なのはもレイジングハートを構えなおし、にこやかに、だが静かな闘志を漲らせる。

 

 ーー再び、夜空に朱と桜色の花火があがった。

 

 

 そんな夜空の決闘を見上げる2人の青年がいた。

 市街地戦を想定した仮想空間内。

 その廃ビルの屋上に、彼らはいる。

 

「……ねぇ、クロノ」

 クロノと呼ばれたーー黒いバリアジャケットを纏い、S2Uを杖よろしく地面にたてている少年。

 上空で行われる超ハイレベルな空中戦を感心と研鑽の眼差しで見つめながら、顔の向きを変えず声だけで返事をとる。

 

「どうしたんですか、ルイスさん」

 

 ルイスと呼ばれた黒髪を乱雑に伸ばした青年。

 こちらも真黒のバリアジャケットであるが、そこに防御という思想は感じられず、必要最低限の防具しか備わっていない。

 

 忍者装飾を彷彿とさせるバリアジャケットを着こむ青年は、クロノと同様にとても真剣な表情を張り付けている。

 

「うん、いやね。バリアジャケットっていう割には、この角度からだと2人のパンツ丸見えなわけだけど、どう思う?」

 

 

 ーー直後、朱色と桜色の光柱が二人を直撃した。

 

 

「ーー……ッ」

 シュテルはゴミを見るかの様な目線を投げ、

「にゃ、にゃはは……」

 一方のなのはは朱色に染めた頬を掻きつつ、グッとスカートを押さえていた。

 

「こ、殺す気か?!」

 クロノが怒声と共に瓦礫を押しのけ抗議を示す。

 負けじとルイスもブーブーと文句を言葉にする。

 

「そうだそうだ! ただ、『あ、今日のシュテルとなのはのパンツはどっちもピンク色なんだなー』って思ってただけじゃん! ねぇクロノ?!」

「いやいやいや待ってください!! ぼ、僕は見ていませんよ!?」

「はぁん絶対見てたねー! ていうかこの角度からだと確実に視界に入るじゃないか! だからあんな真剣な眼差しをしていたんだろう……?! このスケベ! むっつり! サイテー!!」

 

「ナノハ、共に奴を爆撃しましょう。あ、それとも焼却処理の方がいいでしょうか」

「う、うーん、どっちもダメ…‥じゃないかなぁ……?」

 

「ーーシュテル!!」

 物騒な提案を行う上空のシュテルへ、ルイスは右手をブンブン子どもの様に振り、叫ぶ。

「……なんでしょうか」

 シュテルは低く言葉を紡ぎ、蔑む視線は忘れずに返答した。

 

「うん! 個人的にはね?! 二日前に履いていた黒色レースのパンツが一番好み」

 

 言い切る前に今日一番の集束砲がビルを直撃し、問答無用で倒壊させていく。

 

 よく考えればクロノは巻き添えな気もしたが、しかし彼もパンツを見たのだ。ならば問題ない。

 シュテルはうむ、と内心頷き、倒壊するビルの瓦礫の上をゴキブリの様にカサカサと飛び移るルイスにありったけのパイロシューターを追加しつつ、ふっと思い返していた。

 

(あぁ、そういえば初めて会った時も、似たような事態になりましたか)

 

 それは、ルイスとシュテルが初めて邂逅を果たした、ほんの幾月か前の出来事。

 夏の足音が聞こえだした、そんな時節の出会い。

 

 微かな笑みと共に、シュテルは思いを馳せた。

 彼と出会った、あの小さな公園に。




ご厚意により規約違反に気付きました、ありがとうございます。
0話は削除いたしました、以後、気を付けたいと思います。

誤字脱字、また、至らぬ点も多いと思います、ご指摘いただければ幸いです。

マテリアルが可愛くて仕方なく、気が付けば人生初の執筆&投稿と相成りました。シュテル、可愛く書けたらいいなー、何て思っていたりしますので、どうかよろしくお願いいたします。
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