魔法少女リリカルなのは~ブレイジング・ルミナス~   作:火神はやて

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オリジナルキャラ回です、なのは成分ちょっと少なめです、すいません。
また、オリジナルの魔法も登場しますので、苦手な方はご注意ください。

ではでは、ほんの少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。


第4話 酒と女と石の狂犬

 さざ波が近くにある町、海鳴市。

 兼ねてより漁業を中心に栄えたこの町は、潮の香りが広がる静かな田舎町である。

 

 海に程近い山の頂には小さな社が置かれており、そこには海神が祀られている。

 海と生活が密接に関わる故に祀られたこの神は、古来よりこの町を見守っていた。

 

 そんな「藤見神社」と名を冠するその場所に、隔絶された不可思議な空間が展開していた。

 

 ーー結界魔法だ。

 

 小山の全てを覆う規模で広がるソレの真下、二人の男が狛犬を背にぼやきあっていた。

 

「なぁ、ここって神社って言うらしいぜ」

「ジンジャ? なんだそれ」

「よくわからんが神サマの住み家らしい、んで何でも願いをかなえてくれるって話だ」

「マジかよ、この前振られた彼女と寄り戻せねぇかなぁ……」

 

 小声で会話を交わす30代半ばと思しき二人の男性は、どちらもバリアジャケットに身を包んでいる。

 オールバックに髪を固める男の胸元には「ハロルド」とネームプレートがあり、もう片方の男性は「エリアス」と名が刻まれていた。

 どちらとも、ネームプレートには「次元航空艦アースラ」と文字が躍っており、アースラの捜査官である事が窺えた。

 

 オールバックの方、ハロルドは大きなため息を吐きながら横のエリアスに言葉を漏らす。

「いやでもエリアスさんよ、その子、別れ際お前に呪詛魔法たらふくかけていったろ? なぜか横にいた俺もまとめて。勘弁してくれ」

「な? 呪われるって意外に癖になるだろ? 身体ビンビンして」

「お前は良い相棒だと思っているが、性癖が捻じれてるのは本当に気持ち悪いよなぁ……」

「すまんな頑張って耐えてくれ」

 

 ハロルドとエリアスがいる藤見神社の境内は、朱の鳥居に二匹の狛犬という、正に日本の原風景が広がっていた。

 

 

 ーーだが、そこに明らかな異質な物があった。

 

 

 それは、境内の中央にいる、五メートルはあろうかという巨大な石像だ。

 

 狗の外見をしたソレは何かを探すように鼻をひくつかせており、グルルと低く喉を鳴らした。

 

 しかもその身体は明らかに生物のそれではなく、硬質の岩石で創り上げられているのだ。

 

 石像が一歩を踏み出す度にギギギ、と身体は軋み、その質量を物語る大きな足音と共に石畳に亀裂が走った。

 

「しかしおっかねぇよなぁあの狗……あの巨体で俊敏過ぎだろ、攻撃が当たりゃしねぇ。なぁハロルド」

「全くだ、ちきしょう酒が呑みてぇ気分だぜ」

 

 二人はクロノからとある指示を受け藤見町を哨戒していたが、その折に境内に佇む巨体と遭遇したのである。

 

 遭遇後、マニュアルに則り結界魔法をエリアスが張ったはいいが、当然岩石の狗の注意を生む事となり、戦闘と相成った。

 果敢に攻撃を繰り出す二人であったが、その殆どを巨体に似つかわしくないスピードで捌かれ、いつしか防戦一方となっていったのだ。

 

 現在は辛くも狛犬の陰に身を潜める事で石像の追撃から逃れた形だ。

 

「ーーさて、そろそろ行くか」

「あぁ、エイミィ通信主任にも報告し終えたし、後は野となれ山となれ、だ」

 

 逃げ回っていても、この境内の広さではいずれ見つかる。

 また、結界魔法を破り町に踊り出る危険性も低くは無く、それだけは阻止する必要があった。

 故に、狗の石像がハロルド達を見失っている今こそが、強襲をかけうる最善のタイミングなのであった。

 

「こっちだワンコロ! ハロルド様の肉は美味いぞぉ!! 何たって最近腹が出てきたからな! ビール腹を喰らえ!!」

 中指を立て転がり出たハロルドが、挑発を繰り返す。

 

「グルルルルル……」

 

 岩石の狗はハロルドへと向き直り、グッと前傾姿勢となる。

 

 突撃の構えだ。

 

 一歩、石像が肢を踏み出すその瞬間だった。

 

「ーーいまだ! くらえクロノ執務官直伝のバインド!!」

 

 ハロルドが囮となった事で生まれた死角から、エリアスが深緑色の紐状バインドを放った。

 石床に縛り止める動きではなく、石像の前足を束ねる狙いだ。

 

「グルゥ……?!」

 

 数瞬遅れて石像もバインドに反応を示すが、その遅れは決定的であった。

 

「そぉら!! 地面とはお友だちみたいなモンだろぉ?!」

 

 エリアスの叫びと共に前足を束ねられた石像は大きくバランスを崩し、派手に倒れ伏した。

 

「ーーーー!!」

 

 すかさず、ハロルドは極限まで溜めた魔力をデバイスから解放するべく素早く式を形成する。

 

「ーー信じてたぜ! 触手にしか見えないその卑猥なバインドは伊達じゃねぇって!!」

「ーー色合いと形状は確かに触手だけどその呼び方やめい!」

 

 地団太を踏みながら叫ぶ相方を無視し、ハロルドは懇親の魔力弾を放つ。

 

「……当たると痛いから避けるなよ!」

 

 ハロルドがニカッ、と口を弓にし笑った瞬間、魔弾が石像の顔面を粉々に打ち抜いた。 

 エリアスがバインドを成功させる事を前提としていたからこそ出来た、神速怒涛の二連撃だ。

 

「ーーよし! みたか大吟醸パワー!」

 

 勝利を確信した二人はハイタッチを交わし、高らかに笑声を上げる。

 

「……え、ちょ、まじかよ」

 

 だが、その笑みは一瞬にして氷付いた。

 

「うっそだろおい……」

 

 境内の中央、粉々に砕けた岩石がガタガタと震え宙に浮きあがっていく。

 

 狗の顔があったと思しき場所にそれらはみるみる集まり、僅か二秒と経たないうちに、完全な修復が成された。

 

「ル……ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーー!!」

 

 

 バカリ、と開け放たれた口より響く石像の咆哮に、エアリスとハロルドはやれやれと肩を竦めた。

 

 

「塵も残さず完全に消し去るしかダメかね、これは。どこぞの嬢ちゃんみたいにド派手な収束砲でも撃てたらいいんだけどなぁ」

 

「ーーん、あぁ。そういえば、ここってあの嬢ちゃんたちの故郷なんだよな」

 

「って事は、このまま俺らが倒れたら結界が切れて、嬢ちゃんたちは大迷惑ってわけだ」

 

「あー……、じゃあちょっと、気張らないといけねぇなぁ」

 

「それにこの世界は酒がとにかく美味い。日本酒なんてもうホント最高だね」

 

「おまけに美人も多いときた。ならーー」

 

「「ちょっと、大人の意地を見せますか」」

 

 ハハ、と小さく笑みを浮かべ、お互いの肩を叩く二人。

 

「とりあえず、時機にクロノ執務官が来てくださる。それまで何とか持ちこたえようぜ」

 

 二人は一歩を踏み出し、巨大な石像へと攻撃魔法を繰り出そうとデバイスを掲げる。

 

 

 ーーが、その時だった。

 

 

「ーー……ぁ。すまん、一抜け、だ」

「ーーは?」

 

 エリアスは相棒のらしくない台詞に、間の抜けた声を上げる。

 ふっとエリアスは横を見ると、ハロルドは頭を抱え、力なく座り込んでいた。

 

 ハロルドの身体には黒い靄の様なものが纏わりついており、明らかな異常事態を表している。

 

「ぐ、ぁあ……!」

 

 ハロルドは苦しそうに呻き声をあげた。

 

 突如沸き起こった強烈な吐き気と眩暈に意識は刈り取られそうになり、しかしハロルドは何とか堪える。

 

 これはあれだ、初ボーナスに浮かれて繁華街でたらふく呑んだ翌朝の感覚によく似ているな、と朦朧とした意識でハロルドは考える。

 

 急激な体調の変質は魔力の大きな乱れを生み、遂にはバリアジャケットすら維持できなくなっていた。

 

(ぐ、くっそ、これ、は……マジでやっ……べぇ……)

 

 ハロルドは「まだ呑んでもいないのにこれはないぜ」と悪態を吐き、次の瞬間には完全に倒れ込んでしまう。

 

「おい、くっそ、何がどうなってる! 大丈夫か?! さっき格好つけたばっかでこれはかなり恥ずかしいやつだぞ!?」

 

「う、っるせぇ馬鹿が。これ、は、あれだ。呪い、だ。前に、お前の元彼女にかけられたやつに似てる……あれの100倍くらいヤバイやつだ……」

 

「呪い……呪詛魔法か! くっそ! ちょっと羨ましい!」

 

「…………」

 

 自分の軽口に対し突っ込みがこないという事は、それほど切迫した状況という事か、とエリアスは思考を回転させる。

 

 

 ーー考えろ、トリガーは何だ。

 

 

 呪詛魔法は、その多くが特定の条件下で発動する遅行性の魔法だ。

 呪詛がかかった食べ物を食べた、呪詛がかけられた床を指定秒数以上踏んだ、等々、主に罠として運用する物が多い。

 逆を言えばトリガーさえ踏まなければ一切その影響を受けないという事でもあり、実戦投入はかなりの技量を求められる。

 

 更には、呪詛の効果を持続させるために使用者は常に魔力を供給し続ける必要があり、基礎魔力量の多い者しかまともに扱えないのである。

 

 発動に至るまでの高度な術式の理解、発動条件からして受け身になるしかない特性。さらには持続するための膨大な魔力と、越えるべきハードルは多く、そして高い。

 つまり、暗殺等にはうってつけだが、事直接的な戦闘においては、とても使える代物ではないのである。

 

 多くの場合が普通に攻撃を仕掛けた方がよほど効果的であることも相成り、その使い手は少なく、また、使用者のほとんどは魔女の系譜を継ぐ者である。

 そのため、ミッドチルダ出身である人間には特に馴染みの薄い魔法であった。

 

 

(……だが、俺の場合は何たって彼女が魔女だったからな、多少は知識もある方だ。おまけに呪詛の実験台として毎日こき使われていた玩具のプライドがある!)

 

 エリアスは注意深く過去の状況を整理する。

 

 

 この場所にいる事自体がトリガー? いや違う、同じ環境下で自分の体は健康そのものだ、とエリアスはこの考えを否定する。

 

 

 魔法の使用? 否、確かに攻撃魔法は使用していないが、この結界を張ったのは自分だ。魔力の行使がトリガーになっているなら、とうの昔に自分も地面とキスをしているはずだ。

 

 なら、残る可能性は1つだ。

 

「ーーあの野郎そのものがトリガーか」

 

 エリアスはハロルドを抱えつつ、石像へと鋭く視線を飛ばした。

 

(おそらくあいつを魔力で攻撃し一定数のダメージを与える事が呪いのトリガーである可能性が高い)

 

 

 ーー先ほどのバインドを警戒してか、石像はジリジリと迫り距離を詰めてくる。

 

 

(バインドによる間接的な攻撃では呪いがかからなかった、とすれば魔力による直接的な攻撃に限定されているはずだ)

 

 

 ーーエリアスはぐったりするハロルドを抱きかかえ、少しずつ下がる。

 

 

(術者が人間であるならよくて相討ち、いや、そもそも致命傷を喰らって呪詛をかけ続けられるはずが無い……)

 

 

 ーーだが、エリアスのすぐ後ろには社があり、下がれるスペースはもう、無い。

 

 

(それを可能にしているのが、あのクソったれた再生能力、か。人間じゃあ頭を吹き飛ばされちまったら呪いをかけるどころじゃあないわな)

 

 攻撃は出来ない。理不尽な再生能力を越えうる攻撃力を、エリアスは持ち合わせていない。

 かといって、相対する獣がこのまま見逃す事などあり得るはずもない。

 

 ならば、今起こすべきアクションは。

 

「ーー耐える。クロノ執務官が到着するまで、ヤツの攻撃に耐え続ける」

 

 こちらからは攻撃が出来ず、相手は容易くバインドと防御壁を突破するだけの膂力を持つ化け物だ。

 おまけに、呪詛魔法にかかり手負いとなった仲間が一人。

 ケガ人を抱える故に機動力は無いに等しい。

 選択肢は、1つしか残されていない。

 

「ッチ、滅茶苦茶しんどいじゃねーか。後でいい女の一人でも紹介しやがれってんだ」

腕のなかでぐったりするハロルドを「見捨てる」という考えを一切抱かず、エリアスはギュッと唇を噛む。

 

「……すま、んが、母親しか知り合いにいない、な」

「マジかよじゃあ明日から俺がお前の父ちゃんな」

「ガッデムそれは地獄だ……」

 

 ーーと、石像は弾け飛ぶ様に突進した。

 

 突撃する石像に、エリアスは今使える最大限の魔力障壁で迎え撃つ。

 

「ぐぅ……ぉおおおおおぉおおぉおお!!」

 

 ガリガリと、石像が硬い牙を突き立て、障壁を強引にこじ開けていく。

 

「負けるかバカ野郎ぉーーーー!」

 裂ぱくの叫びをあげ、エリアスは尚も魔力を注ぐ。

 

「もう、いい、俺を置い、て、……行け」

 ハロルドは力なく、エリアスのジャケットを掴み、言う。

「お前じゃ、一分も持たない、だろ……いいか、ら。行け、よ……!」

 

 だが、エリアスは弱々しいハロルドの手を、尚一層強く掴む。

「ッハ、上等! ようは一分もお前を護れるってんだろう?」

 

 一層、魔力を込めて。

 

「ーーやる気出てきたじゃねぇかチクショウ!!」

 

 石像はその巨体をぶつけ執拗にエリアスたちを狙い続ける。

 重く鋭い爪牙は、容赦なくエリアスの魔力を削り取っていく。

 

(クソ、クソ、クソ……!!)

 

 何故俺はこうも弱い、とエリアスは毒を吐く。

 

(クソ!!)

 

 力み過ぎ、鼻から一筋血が流れ落ちた。

 

(ーーーーッ)

 

 完全に意識を失ったハロルドを見て、エリアスは尚叫ぶ。

 

(……--ッ!)

 

 

 バキン、とガラスが割れる様な音がした。

 魔力障壁が、完全に砕け散る音だ。

 

(ーーくそ)

 

 次の障壁を展開しようと試みるエリアスだったが、上手くいかない。

 

(あぁ、もう欠片も残ってねぇ、か……)

 

 悪いな、と意識を失っている相棒に薄く笑みを向け、エリアスは眼前に迫る石像を睨んだ。

 その目を決して閉じる事なく、ただ、強く見据える。

 

 故に。

 エリアスは、それを見た。

 

 青色の魔力光からなる、プロテクションの輝きを。

 

 そしてーー。

 

「すいません、遅くなりました。あとは、僕が請け負います」

 

 幼く、しかしどこまでも落ち着いた少年の声を、聞いた。

 

 真黒のバリアジャケットに身を包むそれは、クロノ・ハラオウン。

 

 その小さな背中が、そこにあった。

 

 突撃する石像を涼しい顔で受け止めるその背中は、ただ、ただ頼もしい。

 

「ーークロノ、執務官」

 

 自分よりずっと年下で、けれど自分より遥かな高みに至る少年。

 

 初めは自分の子供くらいの餓鬼が上官などあり得ない、と負の感情もあったが、今あるのは尊敬と信頼の念だ。

 

 

 ーー守り通したのだと、エリアスは崩れ落ちる様に座り込んだ。

 魔力はとうに底をつき、今すぐにでも意識を失いたいくらいだ。

 だが、まだ仕事が残っていると自分に言い聞かせ、エリアスはクロノへと言葉をかける。

 

「クロノ執務官」

「ーーはい」

 

 クロノもそれを理解し、短い返答を行った。

 

「気を付けてください、アイツを魔力で攻撃すると呪詛魔法が発動します。けれど、防御、そしてバインドには感知しません。万が一……」

グラリ、と意識が揺れるのを感じ、頭を振るう。

「……万が一、あの石像に傷をつけたら」

 ぐったりと腕の中で気絶する相棒を指さしながら。

「こいつみたいになっちまいます」

 

「……了解しました、エリアスさん達はすぐに撤退を。本当に、ありがとうございます」

 

 クロノは思う、ハロルドとエリアスは決して弱くはない。むしろ戦闘においては優秀な方だ、と。

 

 だというのに、一発で彼をここまで追いやる呪いとなると、それは相当強力なものであると言える。

 

 今現在受け止めている石像の力も相当な物で、かなり苦しい状況だったのだろうと、クロノは苦い顔をする。

 

 だが、彼らはクロノたちに繋げる為、危険を顧みず情報の取得に全力をかけてくれた。

 

 足を引きずり転送ポットに向かう二人を見て、クロノは思う。

 

 自分には勿体のない優秀な部下だ、と。

 

 

「ーーレヴィ、ディアーチェ、聞いての通りだ。あの石像に迂闊な攻撃は逆効果だ」

 

「えー?! じゃあ黙ってみてろってことー?! やだやだ暴れたいー!」

 

「ええい駄々をこねるなレヴィ。--で、クロノ。ただ手を拱いているわけではあるまい?」

 

 ディアーチェは「バインド」の式を構築しながら、そう問うた。

 

「察しがよくてなによりだ。壊せないというのであれば、捕らえてしまえばいい」

 

 クロノは、普段は見せない明確な怒りを瞳に宿し、凛と言葉を放つ。

 

「少し気が立っている、悪いが手加減は出来そうにない」

 

 言うや否や、石像は一瞬にして青のバインドでその身を覆われ、完全に固着される。

 

「出る幕がないではないか」とディアーチェが呟く中、一瞬にして闘いは決着したーーかに見えた。

 

「ーーなに?!」

 

 クロノの驚愕の叫びと同時、石像は幾重のバインドを簡単に引き千切り、その赤い目を怪しく燻らせる。

 

「ーーオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 獣の極大な咆哮が、空を震わせた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 静まり返ったリビングの一室には、三人の人影があった。

 

 手枷に繋がれたルイスとシュテル、そしてユーリだ。

 

「ーーシュテル」

 

 ルイスは声を上げる事で静寂を破った。

 その顔はいつもの様に穏やかな笑顔であるが、声はどこか強張っている。

 

「はい、なんでしょうか」

 

 今までと違う雰囲気に、シュテルは気付かれないように身構え、しかし何事もない様に返答をする。

 

「僕は今から、ディーアチェたちの所に行こうと思う」

 

「……なぜそのような結論に?」

 

 どこか攻撃的な声色を持ち、当然の疑問を口にするシュテル。

 ユーリもこの空気を察してか、二人を交互に見てはおろおろとしている。

 

「ーー今、狗の石像が暴れているんだよね」

 

「えぇ、エイミィの話しではそのようですね」

 

 一拍、間を置き。

 

「だから、僕は行かなくちゃいけないんだ」

 

「……すいません、話が見えないのですが」

 

 怪訝な顔をするシュテル。

 だが、ルイスは構わず続ける。

 

「あぁ。なんたって、その石像を連れてきたのは」

 

 

 ニコリ、とルイスは変わらぬ笑みをその顔に灯した。

 

 

 

「ーー僕だからね」

 

 

 

「ーーーー」

 

 

 その表情から何も読み取る事が出来ず、シュテルは困惑を胸に、ルイスをただ見つめ返す。

 

 

 いつもなら朗らかな空気が流れるこの一室は今、時間が止まったかの様に凍り付いていた。

 シュテルは息をのみ、そして、言葉を絞りだす。

 

「……それは、どういう事でしょうか」

 

 

 

 シュテルの問いかけが、冷たく、静かに響いた。

 

 




見返して思ったのですが、殆どマテ娘たちが喋らず、おっさんたちがキャッキャしていましたね……すいません。

次回以降はシュテルたちの出番をもっと増やせたらいいなー、と。

それでは、読んでいただき本当にありがとうございました。



余談ですが、「先輩ってJCの画像いっぱい持ってそうですよね、ちょっと分けて下さいよ」ってのたまう後輩がいたので、JC(ジャッキー・チェン)の画像を200枚くらい送り付けたのですが、すごいキレられました。世の中理不尽ですね。

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