そんなある日の2人の駆逐艦の話をちょろっと。
Hillne様の涼風のイラストを拝見しまして、
感激して勢い余って書いてしまった話です。
戦闘もなく、ただただのんびりやってます。
イラストのurlはこちらです。
素敵なイラストなので、どうぞご覧くださいまし。
https://twitter.com/conetgo/status/840565420310462464
涼風と五月雨がお好きな方、どうかお手柔らかにお願い致します。
公開を快諾いただいたHillne様に、
厚く御礼申し上げます。
2017/03/25追記
pixivにも投稿してみました。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7976368
そんなある日の2人の駆逐艦の話をちょろっと。
Hillne様の涼風のイラストを拝見しまして、
感激して勢い余って書いてしまった話です。
戦闘もなく、ただただのんびりやってます。
涼風と五月雨がお好きな方、どうかお手柔らかにお願い致します……
……今、執務室の俺の目の前には、二人の対照的な艦娘がいる。
「うう……」
一人は綺麗な水色の長髪の女の子。ややうつむき加減で冷や汗をダラダラと垂らしていて、これから自分がどんなめに合うのか想像がついている感じだ。俺の様子を時々おっかなびっくり伺っては……
「……」
「?」
「……うう」
俺と目があった途端に身体をビクッと萎縮させ、またうつむいて冷や汗をかきはじめる。事情を知らない者がこの光景を見たら、きっと『気の毒だ』と思うほど、体全体が萎縮しきっている。
一方……
「にっしっし……」
もう一人の紺色の長髪の女の子は、思いっきり口角を持ち上げて、真っ白い歯を俺に向けて思いっきりニカッと見せつけていた。腰に手を当て誇らしげに胸を張り、俺に対して堂々と正対していた。
今朝の話だ。今俺の目の前にいる二人……駆逐艦の五月雨と涼風の二人は、建造されて初めての任務に従事した。
任務といっても、今回の任務は近海の哨戒任務。3重に張り巡らされた防衛網の、その内側の近海をパトロールする、極めて危険の少ない任務のはずだった。
「……五月雨」
「は、はいっ」
「説明してくれるか?」
「はい……」
ところが、二人が出撃して1時間が経過した頃……二人の消息が突如として途絶えた。二人の新入りの駆逐艦が音信不通になったことで、鎮守府内はパニックに陥った。捜索隊が出動するわ司令部からの状況確認の通信が鬼のように届くわで、そらぁもう鎮守府はてんやわんやの大騒ぎだった。防衛網を抜けた深海棲艦に沈められたか……それとも、敵に攫われたか……はたまた新手の敵性勢力か……二人の状況が確認できない中、鎮守府内は混乱し、主力連合艦隊の出撃が現実味を帯びてきた頃、となり町にある別の鎮守府から、極秘回線で緊急の通信が入った。
――五月雨と涼風、第一防衛網の近辺で発見。
当方の第三艦隊が保護した。
双方とも無事のため、安心されたし。
海面にプカプカと浮かび、のどかに昼寝中だった模様。
ウラヤマシス。
極秘回線で通信をよこしてきたということは、『司令部をうまくごまかせ!!』ということだろう。司令部の耳に入ったら、二人は処分を免れないし。その点は感謝している。今度となり町に行って、あいつに酒でもおごってやろうか。
その後、となり町鎮守府の第三艦隊に保護された二人は、そのまま艦隊に連れられ、この鎮守府に帰ってきた。
「……あの……ごめんなさい……」
「提督!! ただいま!!!」
帰ってきたその時から、二人の様子は今も変わらない。五月雨はガタガタと震えながら萎縮しきっているし、涼風は右手の人差し指で鼻の下をこすりながら、得意げに胸を張ってニシシと笑っている。お前のその後ろ盾ゼロの絶対的な自信は、一体どこから湧き出ているんだと、逆に気になってしまう。
「……で、まずは第一防衛網付近まで遠出した理由を聞こうか」
「はい……えーと……」
「遠かったぜ!!!」
「お前は黙れ」
「えっと……今日は天気もよくって……」
「お天道様がめちゃくちゃ気持よくてさー!!」
「潮風もとっても気持ちよくて、波もとってもおだやかで……」
「ッかぁあ〜!! 今日は絶好のピクニック日和だったって話さ!!」
「うるさいだまれ」
「近海って言っても演習場から出たことなんてなかったから……」
「提督もあたいたちといっしょに来られればよかったのになー!!!」
「だからお前はだまれ」
「きんっもちよかったぜぇえ~!」
「人の話は聞こうな?」
ところどころ、涼風の意味不明な横槍が入って混乱したが……ビクビクしっぱなしの五月雨いわく……どうやらこういうことらしい……。
「もうちょっと遠くまで行ってみっか五月雨!!!」
「ぇえ!? ダメだよ涼風ちゃん!!」
はじめての任務ということで、わくわく半分恐怖半分で哨戒を続ける旗艦の五月雨に対し、涼風が百万ドルの笑顔でそう告げたそうだ。らんらんと目を輝かせる涼風は、右手でひさしを作り、水平線の遥か遠くを眺めながら、体中をうずうずさせていた。
「だって見てみなよあの水平線!! ずーっと遠くまで続いてるぜ?」
「そらそうだよ。だって今日は外海に出てるんだから」
「お天道様も上機嫌でぽかぽかあったかいし! 潮風もすんげー気持ちいいぜ?」
「確かにいいお天気でとっても気持いいけれど……」
「絶好のピクニック日和じゃねーかっ!」
「だからって任務ほっぽり出して、勝手に遠出しちゃダメだよっ!」
二人の言い合いが目に浮かぶ……きっと涼風は今みたいに、両目をキラキラと輝かせた満面の笑顔で五月雨にそう言い寄り、五月雨はあわあわしながら涼風を必死に説得したんだろうなぁ……。
そうやってしばらくの間、『行こうぜ』『ダメだよ』の押し問答が続いたらしいのだが……
「な? ちょっとだけ! ちょっとだけ遠くに行ってみようぜ? な?」
「うう……」
「いいだろ? あともうちょっとだけだから! な?」
今日はあまりに天気が良すぎた。お日様は上機嫌で海をキラキラと輝かせているし、ぽかぽかと二人を暖めていた。潮風はひんやりと冷たい風で、二人を優しく包み込んでいた。散歩するにはいい天気。絶好のピクニック日和。そんな日に、好奇心旺盛な二人を一体誰が制止することができようか。……誰も止められないだろうねきっと。
「う……」
「う?」
「ちょ……ちょっとだけなら……」
きっと五月雨も、いい天気と、初めての任務ってので、ちょっと浮かれてたんだろう。
「やったぜ! んじゃ行こうぜさみだれー!!」
そしてそんな五月雨の返事を受けて有頂天になった涼風は、五月雨いわく『ばひゅーん』という音を立てて、次の瞬間にはもう、その場から姿を消していたそうな。
「ぅぁあ! 待ってよ涼風ちゃん!!」
「てやんでぃ! あたいと同じ白露型なら、あたいに追いついて捕まえてみろってんだ!!」
「ぇぇえええええ!?」
「へへへ〜! おーにさーんこーちらー!!」
満面の笑顔で五月雨の先を気持ちよさそうに走る涼風と、その五月雨を必死に追いかける五月雨。そのまま二人は、任務の海域を外れ……
「やった!! 涼風ちゃん追いついたよ!!」
「やりやがったな五月雨〜! あたいも負けてらんねえ!!」
3つある防衛網の一番内側……第三防衛網を抜けて……
「見て見て涼風ちゃん!」
「お? どしたー?」
「鎮守府があんなにちっちゃい!」
「ッカァア〜! あたいたちも遠くまで来たなぁ〜!」
「ホントだね〜。もうちょっと行ってみる?」
「あたぼうよぉ! こんなに気持いい日にピクニックしないで、他に何をするってんだ!」
「よし行こう!!」
「よっしゃあ!」
第二防衛網を余裕で通り過ぎ……
「見ろ五月雨! 他の鎮守府の艦隊だ!!」
「本当だ! 空母の人がいる! ……あ! あれ、金剛さんと比叡さんだ!!」
「おーい!! おーい!!!」
「みなさんこんにちはー!! こーんにーちわー!!!」
「あたいたちが見えてっかー!?」
「五月雨と涼風でーす!!」
「あたいたちはここにいるぞー!!!」
気がついたら、第一防衛網の目の前まで来ていたということだった。
「いやー……ゼハー……ゼハー……遠くまで……来たなー……」
「ホントだねー……ハァー……もう鎮守府見えない……」
「いやしかし……疲れたなー……」
「私も……ちょっと疲れちゃった……」
「しっかし暑いな〜……全力で走ったから汗だくだぁ……ゼハー……」
「潮風は冷たくて気持ちいいんだけどね……私も暑い……ハァー……」
そらぁ第一防衛網まで全速力で駆けたら疲れるだろうよ……しかも今日は天気がいいし、そんなに走ってたら、第一防衛網に着いた頃には二人とも汗だくだろうさ……。
そうして疲れきった涼風は、海面に寝っ転がることを五月雨に提案したらしい。まぁ水の中に漂ってれば、そらぁ涼しくて気持いいだろうしなぁ。汗だくで運動後で身体がほてってれば、そらぁ水の中は気持ちいいだろうよ。
「てなわけで、あたいは寝転ぶぜーどっこいしょー!!」
「ぇえ!? 流石にダメだよ涼風ちゃん!!」
「ぉぉぉおおお!?」
「ど、どうしたの涼風ちゃん!!」
「五月雨やべーぞこれ! すんごい気持いい!!」
「そ、そうなの?」
「水の中はひんやりしてて気持ちいいし、海から出りゃお天道様がぽかぽかあったかい……すんげー気持ちいいぞー」
「え……ほ、ホント?」
「あたぼうよ! だから五月雨もちょっと寝転んでみろって!!」
「じゃ……じゃあ、ちょっとだけ……」
そんな冷たい誘惑に勝てなかった五月雨も、涼風と一緒に海面に寝転んだそうだ。ぷかぷかと海の上を漂ったまま、途中ですれ違った金剛たち第三艦隊が追いつくまでの小一時間、それはそれは気持ちよく昼寝していたらしい。ちなみに2人は、その時うちの鎮守府に通信しようとしたらしいのだが、寝転んだ拍子に二人の通信機は完全に水没していたようで、2つともうんともすんとも言わなかったそうだ。
そして二人は金剛たち第三艦隊に連れられ、無事に鎮守府に戻ってきた。その後補給と入渠……といっても傷なんて全然なかったから、単に潮風と海水でベタベタになった身体を綺麗にするためだけど……を済ませ、報告をさせるために執務室に出頭させた。
「二人とも……」
「はい……」
「おう!」
「おう! じゃねーよ……自分たちがたくさんの人に、心配と迷惑をかけたことは、理解してるか?」
「うう……」
……そうだ。今回はたまたま笑い話で済んだが、もしこれで深海棲艦や敵性勢力に見つかっていたら……二人が気持ちよく昼寝をしてる最中に、敵に襲われでもしたら……今ココに、二人は戻ることができなかったかもしれない。そのことは、二人にはきっちり教えないと。
「てやんでい! 何もなかったからいいじゃねーかッ! ケツの穴のちいせぇ提督だぜ!」
「俺のケツの穴の大きさは問題じゃない。ともすればお前たちは敵に襲われて、轟沈してたかもしれないんだ」
「……う」
「確かにお前たちはまだ練度が低い。でもな。鎮守府の仲間だ。この鎮守府の貴重な戦力だ」
「で、でもさ提督……!」
「そんな俺達の仲間であるお前たちに轟沈されちゃ困るんだよ。お前たちは艦娘だ。軍人なんだ。その自覚を持ってくれ」
「す、すみません……」
「俺の命令には従ってくれ。任務は忠実に遂行しろ。自分の命を守るためにも」
「うう……わ、わかったよ……」
俺の叱責に対し、五月雨は今まで以上に身体を小さくして消沈し、涼風も表情を曇らせ、元気なく肩を縮こませて小さくなった。
――今日はいい天気ネー。絶好のピクニック日和デス。
ワタシも、あのまま二人とティーパーティーしたかったデース。
だから、テートクもあまり二人を叱らないであげてほしいネー。
笑えるほどにしょんぼりしている二人の白露型を眺めながら、金剛のその言葉を思い出した。うちには金剛はまだ着任しておらず、故にあのとなり町鎮守府の金剛は、うちの五月雨と涼風の二人とは面識がない。にもかかわらず、二人に対してあんなふうに優しさと母性を発揮するのは、きっと金剛型の長女だからなのだろう。
しょんぼりと落ち込む二人を眺める。執務室に来てからずっと萎縮している五月雨はもちろん、涼風も今はがっくりとうなだれ、猫背になってしょんぼりと意気消沈している。その様子は、眺めているだけで笑いがこみ上げてくるほどだ。さっきの威勢と自信はどうしたんだ涼風。
こんなにしょぼくれた二人を眺めてたら、なんだか気の毒になってきた。この様子を見るに、二人はちゃんと反省してるみたいだし。最後にちょっとだけリラックスさせといてやるか。
「最後に、二人に聞きたいことがある」
「うう……はい……」
「な、なんだよぉ……あたいたち、もうちゃんと反省してるぞ?」
――今日はいい天気ネー。絶好のピクニック日和デス
ぁあそうだ。お天道様はぽかぽか陽気でいい天気。潮風はひんやり心地いいし、今日は絶好のピクニック日和だ。そんな日には誰だって、遠出したくなるよな。
「楽しかったか?」
「……へ?」
こんなに天気のいい気持いい日には、誰だって、いつもより、もうちょっと遠くまで行きたくなるよな。弁当でも持って、水筒かついで。
「ピクニックは楽しかったか?」
「提督……」
「どうなんだ? はじめての外海……大冒険は、楽しかったか?」
俺の言葉を受けて、二人が顔を上げる。みるみる輝きだした瞳で、まっすぐにこちらを見つめる二人は、次の瞬間、満面の笑みを浮かべていた。
「はい! 楽しかったです!!」
そう答える五月雨の笑顔は、今日のお天道様のように明るく、ぽかぽかと暖かかった。
「あたぼうよ! 今度は提督も一緒に行こうぜ!!」
そう息巻く涼風からは、冷たくて心地いい、気持ちいい潮風が吹いていた。
「んじゃ次は、ちゃんとこっちに通信を送れ。そしたら……」
「そしたら?」
「鳳翔に弁当作ってもらって、それ持って、みんなで行くから」
「やったぁ!」
「やったぜ五月雨!!」
そして、俺の言葉を受けて嬉しそうにハイタッチする二人の後ろには、どこまでも続く水平線が見えた気がした。
その水平線は、俺の目の前で嬉しそうにキャッキャキャッキャとはしゃいでいる2人の笑顔のように、キラキラと輝いていた。
おわり。
Special Thanks:Hillne様