正月に人間の友人がいない男が妖怪を誘って初詣に行こうとしますが、どいつもこいつも問題があって………
投稿する気はまるでなかったオリジナル落語です。ご指摘やアドバイスが頂けたら嬉しいです。
新しいお年になりましたが、今年を良い年にするためには日本人が何してるか、ご存知ですよね?
そうです、初詣ですね。正月の間に神社まで行って謹賀新年、必勝祈願、安産、平和、そして買った宝くじが当たる様に10円ぽっちお賽銭に入れて、鈴を鳴らして手を叩くんです。
最近は人間だけじゃなくて妖怪もね、初詣をするそうですよ?
妖怪ってのはまあ、イタズラ好きの怪物なんですがね、人間と比べて極端な奴らが多くて、何かあるとすぐ死んじゃうんですよ。
「おおーい、吸血鬼、いるかい?」
「八兵衛さん! 吸血鬼じゃなくてドラキュラって呼んでください!」
「そんなハイカラな名前が落語で使えるかってんだ。それよりお前、もう初詣はしてきたか?」
「はい、私は血がよく流れる心臓も腕も大好きですよ!」
「誰がお前にハツと腕を食べたかなんて聞くか! 違う、初詣だ! 神社まで行って今年がいい年になる様にお祈りするんだ」
「なるほど、ニポンにはそんな文化があったんですね。行ってみたいです」
「おお、そうか。なら行こうか。
……おお、丁度日の出だ」
「わーお……うっ!! ………」
「あ、吸血鬼!? しまったコイツ太陽の光浴びると灰になるんだった!
あー、やっちまった……しょうがねえ、他のやつを誘おう。日本の妖怪ならまあ、大丈夫だろ。
おーい、天井下りいるかい?」
「八兵衛じゃねぇか。どうした?」
「今日も天井にぶら下がってるな……どうだ、初詣に行かねえか?」
「ほぉー、妖怪を初詣に誘おうとは傑作だ」
「妖怪が神に祈っちゃいけないのかい?」
「いいや、面白そうだなオイラも行くよ」
「じゃあ、首が痛くなるからそこから降りてくれ」
「おう……うっ!!」
「って、天井下りぃぃ!? こいつ、天井から降りたら死んじまうのかい!?
あー、あー……どうしよう、今度は誰を誘うか……カッパでも誘うか。カッパ!」
「へへへ、八兵衛よ、なんの用だい?」
「初詣に誘いに来たんだよ」
「なるほど、初詣か。面白そうだな」
「神社は海の近くにあるんだ」
「へへ、川泳ぎのかっぱ様だぜ? 海を通ればすぐ着くさ!
ザバーン! おお、冷てぇな! だけどこれなら…………おい、誰だい俺を引っ張るのは! あ、押すな! あ、引っ張るな! 引っ張るな、引っ張るな、押すな! ……ブクブク………」
「かっぱぁ!! ああ、カッパも死んじまったぁ……今度は誰を誘おうか……」
「どうしたんだい八兵衛」
「お、お前さんは鬼じゃねえか」
「人間からこのおせちってのを奪ってな、機嫌がいいんだ」
「なら一緒に初詣に行かねえか」
「へへ、何かは知らねえがいいぜ。ちょっと待ってろ。このおせちなんざ直ぐに飲み込んでやるよ。
……う!!」
「あ、鬼が死んだ!! あ! このバカ、おせちの中に入ってる黒豆も一緒に食べたんだな! 豆撒かれたら逃げるのに、バカなやつだ……
お、牛鬼! コイツは日本でも恐ろしいし強い妖怪だ! おい牛鬼!」
「うわぁぁぁぁ! 来るな来るな来るな!」
「どうしたんだい牛鬼!?
あ、あっちから雪女さんが……」
「退い下さい!!」
「……風みたいに走っていきやがった……お、あれは塗り壁? 壁のくせに頑張って走ってやがる」
「にーげーなーいーとーぉー」
「塗り壁? お前ら妖怪はどうして逃げてるんだい?」
「あたらしーいー妖怪が、妖怪を殺してー回ってーいるんだー……」
「新しい妖怪? そいつはどんな奴だ?」
「人間はそいつに金を払って見逃してもらってるそうだ」
「ほお?」
「鈴を鳴らすんだって」
「そいつの名前は?」
「手を叩いて命乞いをするそうだ」
「で、そいつはなんて妖怪だ!?」
「よーかい、はぁつぅもうでーだー」
アドバイスやご指摘、お待ちしております。