二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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一日遅れですが更新です。

毎度ながら読んでいただき誠にありがとうございます。

今話においては視点変更があります。

第八十一話、どうぞ。



第八十一話  作戦会議

「――つまり、今回の遠征で北方への侵略は無くなったと考えていいと?」

 

「確信は無い。ただ、南方の報せを受けて派遣した王都への部隊を潰走させ、ほとんど時期を置かずに北方への侵略部隊の先鋒を叩き潰した。つまり、こちら側がそれなりの機動力と戦力を併せ持った存在であると誇示できた。対応するにはどうする?」

 

「二か所への同時攻撃か、一か所に大戦力を集中して叩くか、の二択ですね?」

 

「そうだ。それをもう一度行うのに一番手っ取り早いのは南方だ。スルヴェニアのさらに南、亜人族の勢力圏には既に侵略を開始したまとまった戦力が存在するはずだから再編と応援を送り込むだけで良い。

 

 連中が欲しいのは、速さだ。時間を置けば置くほど<勇者>は強くなる。だから強くなる前に叩いて勝利を確実なものにしたい。王都への先遣隊がそれだったが、まあ俺の介入もあって殲滅に成功した。

 次いで北方への先遣隊を叩いた。つまり、既に<勇者>がその程度の戦力では抑えきれない事を意味している。であれば、次はそれに加えて<勇者>の成長度合いを見積もった大戦力を送り込む必要があるが、それには時間がかかる」

 

「時間をかけるのはこちらに利があるだけですね」

 

「なら選択肢は一つだ。南方へ増援を送り込み、陣地を整えて、過大なほどの戦力を以て<勇者>を討つ。これが最良だろう。どういう状況になっても<勇者>が健在であれば連中は警戒し続けなければならないからな」

 

 

 

かつて、たった一つの小さな国以外が占領された状況において、道を切り拓いた<勇者>が居た。

 

かつて、人族に残されたのは二つの国のみ、健在な都市は六つという絶望的状況を、ひっくり返した<勇者>が居た。

 

前者の記録は恐らくないが、後者の記録は残っている可能性が高い。彼らに相対した魔族の敗因は、時間をかけてしまった事と、<勇者>を侮り、各個撃破を招いた事だ。どんな状況であっても、<勇者>が居る限り、必ず逆転される。

 

 

 

「逆に言えば、それは我々にとって最悪だ。だが俺が今思いつく手段は限られる上にどれもかなりの危険を伴う。何か案は無いか?」

 

「……今から南下すれば間に合いますか?」

 

「微妙なところだ。北方先遣隊が壊滅した事、加えて我々が今もう既に王都にいるという事が相手の本丸に伝わるのにどれくらい時間がかかるか分からないからな。

冒険者組合には物質転送装置があると聞くがおそらく今回潰走した部隊は持ってなかった可能性が高い。一種の偵察部隊に近いからな。となると新しく偵察任務専門の部隊を送り込みそれが目的地に着くまでと、目的地での偵察が終わって戻るか報告を届けるかするのに時間が要る。

 

 南下が間に合えば相手の先遣を潰し経験を積んだ上で本隊を迎え撃つ各個撃破が可能だ。間に合わなければあまり強くない状態で敵に立ち向かう必要がある。一戦程度であれば俺が守り切れるがその後は……いや、そうか、分からないなら聞けばいい」

 

「誰にです?」

 

「石縄、だったか。彼女が確か、<巫女>だっただろう。彼女の力を借りて、女神様に聞けばいい。<勇者>の一人にして<巫女>である彼女なら女神様に直接尋ねる事が可能だ」

 

 

 

女神に直接能動的にコンタクトを取れる稀有な存在。それが召喚者である<巫女>。

 

女神の視界は人族のある世界全て。時間も空間も関係なく、この世界の人族領の事であれば大抵の事はつかめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神様に、ですか?」

 

「ええ、そうです」

 

「内容は?」

 

「私達がこれから南下した時の魔族軍の動きについて、です」

 

 

 

間に合うかどうか、ではなく、魔族軍の動きについて。

 

 

 

「……わかりました。では」

 

「ああ、よろしく――よし出るぞ<賢者>殿」

 

「え?」

 

「<巫女>が神託を求めるには儀式が伴うんだ、<巫女>一人だけのな。基本的にはどこでもできるが『部屋の中に一人でいる』事が絶対的な条件の一つだ。扉の外で結果を待とう」

 

「わ、わかりました」

 

 

 

 

 

「……詳しいですね。確か貴方がかつて<勇者>として召喚されたときは<巫女>は」

 

「ああ、いなかった。代わりに、と言っていいか知らないが、俺が<巫>という称号を持っていた。何度かその力も使った事があるんでね、本職ではないが一応何をするかはわかる」

 

 

 

ん? そうか、前説明したのは<巫女>にか。

 

 

 

「本職の神託の儀式を間近にするのは俺も初めてだ。俺の時以上なら、腰を抜かさないように身構えておいた方が良いぞ」

 

 

 

少し笑いながら冗談半分に告げておく。

 

儀式はそこまで長くない。祈りの言葉は二文だし、時間のかかる魔法を使うわけでもない。『女神』の応答に若干の誤差が生じるが、全体として短時間で終わる、だから。

 

 

 

「身構える、とは一体……っ! これは……」

 

「女神様直々の降臨だな」

 

「この巨大な気配が……?」

 

 

 

風が吹いたわけでもなく、拳が飛んできたわけでもない。しかし反射的に腕を顔の前に構えてしまうほどの圧力。扉を一枚隔てているというのにこの存在感。まさしく人ではありえない。

 

『女神』――正しくはその分体の化身――がその圧倒的な力と共に顕現したのだろう。この周囲全てにふりまかれる威圧感は、儀式実行者以外の全てに降り注ぐ。神託を受ける間は基本的に実行者が無防備になる。その時に危害を加えられるのを防ぐためだ。

 

 

 

「……これは女神様のその巨大な力の一端に過ぎない。言っただろう、神と呼ぶにふさわしい力の持ち主が居るのだと」

 

 

 

聞いた話ではこんな感じで呼ばれたときに派遣される分体は、大体レベル200を超えた<勇者>でどうにか戦いと呼べる外見に持ち込める程の力を持つ。つまるところ全力の俺が十秒打ち合えるかといったところ。今の段階の<勇者>達からすれば圧倒的な存在だろう。

 

 

 

「これだけの力が一端……」

 

 

 

まあ基本伝令以外の能力は無いらしいが。ただ存在そのもので威嚇するためだけにこれだけの力が付属している。

 

 

 

「さて、吉が出るか凶が出るか、賭けの結果はどっちだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

威圧感が去った後、扉をノックし許可を得たのちに入室した。若干気分が悪そうだったが、まあ無理もあるまい、レベルが低いのに女神の分体を呼んだのだから、多分魔力はかなり持っていかれただろう。

 

 

 

「結果はどうでした?」

 

「一週間以内に出発すれば、ある程度余裕を持った日程でも、私達が南方の亜人族領域に到着して一週間は大きな動きは見られないそうです。それ以降の保証は出来ないと」

 

 

 

まあそんなものか。逆にいえば最短で動ければ数日の余裕が上乗せできることになる。その一週間プラスアルファで南方の魔族軍を可能な限り叩き潰せばいい。

 

 

 

「ただ……」

 

 

 

ん?

 

 

 

「南に行くとき、<勇者>と<防衛者>指名で、厳重な警戒を怠るなと。命の危険がある、とおっしゃってました」

 

「命の危険……勇人と国崎君限定で、ですか」

 

「はい。他の人にも警戒は怠るなとは出ていましたが、二人だけは特別に何かあるようで」

 

「分かりました、勇人には後で伝えておきます。国崎君は……」

 

「肝に銘じておこう、しかし命の危険、か……」

 

 

 

分体呼んでそこから俺の話が出てきたって事はやはり<システム>は現状を黙認して、<管理者>連中にも軒並み伝わってるな。その上で何も突っ込みはお咎め無し。

良くないんだろうけどわくわくするんだよな。さて、その危険とやらをどう捌こうかね。

 

 

 

「では今日はこれで。もし他に何かあったらまた来ますね」

 

「はい」

 

「では」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

扉が閉まり、二人の姿が見えなくなる。さらに展開した<周辺警戒>で二人が間違いなく遠ざかっていったことを確認。

 

 

 

「……っはぁ、はぁ」

 

 

 

詰まっていた息を吐きだすと同時に全身から緊張と力が抜け、思わずその場に座り込んでしまった。隠し通せただろうか。

 

 

 

『いいえ、それは存在しません』

 

 

 

それは興味本位の問いだった。

 

 

 

『なぜなら彼女は()()()()()()()()()です』

 

 

 

彼に悪意があるとは信じがたい。

 

 

 

『……先代の<勇者>達の名前は――』

 

 

 

勘違いだと信じたい。同姓同名の別人で、あの二人には何の関係も無いのだと。

 

 

 

だって彼はその名前に聞き覚えがなさそうだった。

 

そんな偶然が存在するはずがない。

 

 

 

必死に積み上げた根拠は、しかし頭の中に居座る考えに否定された。

 

それが真実であると、『天啓』が無慈悲に主張し続けていた。

 

 

 

 




以上です。

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評価していただけると泣いて喜びます。
(露骨なクレクレ)



今後とも本作をよろしくお願いいたします。
11/12 加筆
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