二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
ちょっと構成に悩んだので時間がかかってしまいました、深くお詫び申し上げます。
第八十四話です、どうぞ!
『それで、ケイ、お前はどうする』
『賛同します』
『それは良かった。一応聞いておこうか、理由は?』
『俺は死の商人にはなりたくないので』
『何だ、最初から分かってたのか』
『全部じゃないですが、それでもわかります。ただでさえ魔法があるというのに、科学を置いたら確実に悲惨な事になります』
『断言とは珍しい』
『逆ですよ。そうならないという事に確信がないだけです。確率論みたいなものですよ。1から1未満の数を引けば0よりは大きくなる。起こらない確率が1だと断定するには人が不確定要素過ぎます。
良くも悪くもこの世界でも人は変わらない。生存さえ確立されてしまえば、後は利権争いになる。それはもう十分見てきたので』
『現実見てくれるのはありがたいけどその年でそこまで考えてるの俺はどうかと思う』
『小説やマンガじゃないんですから。今時そこまで純粋じゃないですし、俺にそこまで期待するのは無理がありませんかね』
朝、起床してすぐに<周辺警戒>を確認。赤印は無し、黄色が複数、緑と青が多数。
<巫女>の部屋は知っているが日中部屋にいるかは確定じゃないし、俺が単独で前置き無しに女子の部屋に行くのはどうかと思う。ので朝食の時に声をかけ、会う約束を取り付けたいところである。
今日の任務は以上。
続いて継続中の任務を確認する。<防衛者>としての<勇者>の防衛、必要であれば現地人の防衛も含まれる。ステータスは<防衛者>固定、<神剣>は戦闘への使用は原則不可。身体能力が一部封印されていないので<勇者>と試合形式の模擬戦も避ける事。
ОK、今日も絶好調。国崎啓、本日の業務を開始します。こういうの時々やると気合を補填できる。
「おはよう、朝からすまないが、隣の席、良いだろうか?」
<巫女>石縄を見つけ、そう声をかけた瞬間に一瞬肩が跳ねた。食事中に後ろから声かけられるとか驚くよねわかる。
「……ええ、はい」
「では失礼する」
席に着き、食事を始める。さてどこで切り出そうか。半分ほど食べたところで、小さな声で問いかけがあった。
「……それで、何の用なの?」
「ああ、実は以前付与した防衛魔法について相談があってね、日中どこか時間は空いていないか?」
「城にいる間は日中ほとんど暇になってる」
「そうか。なら適当な時間に部屋に行くから……」
「それなら私がそっちに」
「いいのか? それなら助かるが」
「ええ。お昼ごろで良い?」
「構わない。ではそれで」
食べ終わると同時に席を立つ、さてお昼までどうしようかな……なんかデジャヴ。
「どうしよう」
興味本位の問いかけから、思いも寄らぬ事を知ってしまった翌日。誰かに相談するかどうかを考えようとした矢先、災厄は向こうからやってきた。
声をかけてきて普通に隣に座り、用を問いかければ以前の付与魔法で相談があるという。
咄嗟に自分が彼の部屋に行くと言えたのは良案だったと思う。攻め込まれたときの事を考えてか、女子の部屋は男子の部屋より奥にある。何かあって逃げなければならない事を考えると、少しでも早く外に出れる男子の部屋の方が良いと思った。お昼であれば外に出なくても食堂に行けば誰かしら助けを求める相手もいる。
そして最初に戻る。自分はどうすればいいのか。
バレてはいないはずだ。できるだけ平常心でいるようにふるまえていたはず。ただなぜこのタイミングで付与魔法について相談があるのかが分からない。
バレていたとして、何をされるのだろう。口封じ? いや、自分が彼の部屋に行く事は近くの机にいる女子にも聞こえていたはず、自分が消えれば真っ先に疑いがかかるだろうからそれは無い。
では何を?
「……分からない」
最善は尽くした。自分はあの事実をどう扱うべきか。
彼がついている嘘は、決して私達に敵対するような類のものじゃない。確かに彼女は既に<聖女>じゃないから、力を喪失している。気になる事があるとすれば一つ。
不意を突かれて殺されたはずの彼女がどうして生きているのか。逆にどうして彼は死んだのか。
私達は確かに彼女が不意を突かれて殺され、それによって彼が追い込まれ、最後は自爆に巻き込まれ死んだ、と聞いた。遺体は見つからなかったと……
「――おーい、聞こえてる?」
「……へ? うわっ」
「おぉ、良かった。大丈夫? さっきからスプーン持ったまま動いてなかったからさ」
「あ、うん、大丈夫、ちょっと考え事してただけだから、ありがと」
ドアをノックする音。来たか。
「入って良いよ」
「失礼します……」
「そこに座ってくれ。飲み物は要るか?」
「あ、大丈夫」
「そうか」
? なんか、警戒されてる? いや女子が一人で男子の部屋来るんだから当然と言えば当然だが。
「じゃあさっそく用件に入ろう。俺を含めて、二十人ほどで北に行った時、石縄に全部で……四つか。<絶対障壁><周辺警戒><警戒地点設置><神楯>の付与をした。そしてそれは今でも解かれてないな?」
「うん」
「よし。で、相談があると言ったのは、このうち<警戒地点設置>についてだ。俺の予想が正しければこのスキル、最初の一回以外で使った事は無いな?」
「うん」
「というわけでそれだけ外そうかというのが相談というか用件だ。このスキルはこういうのに慣れてる人じゃないと使いにくい、と気付いたのが昨日でね。俺は<防衛者>として完全に適応してしまっているから気が付かなかったんだが、改めて冷静になって考えてみるとこれは恐らくほとんどの人間が運用に向いていないと思えてな。
外すのは解除の文言を唱えるだけで、顔を合わせる必要すらないんだが、付与されていた側には抜かれた感覚が残る。一応味方だから連絡はしておくべきだろうと思ってね」
「理由を、聞いても?」
「ああ、大きな理由としては、『選択肢を減らす』というのが挙げられる。このスキルは本来、各都市の指揮官のような人に渡して、<防衛者>がいない間の街の防衛を担ってもらう、という用途が本命だ。
これは、本来『練習に時間を割いても問題ないような人間』に軽く練習してもらって、防衛を果たしてもらおう、というスキルだ。でも<勇者>はそれに当てはまらない。俺自身が召喚されて未だ三か月、君達もそれは変わらないはずだ。当然、未熟でもある。本来ならこのスキルに時間を充てるんじゃなくてそれぞれの本来の職業に重点を置いて励んでほしいところだ。
まあ、俺の時とは違って、人族がそこまで追い詰められているわけじゃないから、ある程度の余裕はある。といっても<警戒地点設置>は本来二つある目を増やすようなスキルで、慣れている人間じゃないと使えない。それに慣れるための時間を割くのは流石に勿体なさすぎる。抜いておけば練習もできないからな。その分他のスキルや自分自身の職業に時間を充ててほしい」
<巫女>の場合はどうなのか正直分からない。俺の<巫>はあくまで所持しているだけでほぼオマケに近いものだった。現地の<巫女><巫>は、毎日祈りを捧げる事を修練と呼ぶが、<召喚者>の<巫女>にそれは違うだろう。だって彼女にこの世界の女神への信仰心なんて無いのだから。少なくとも彼女にとってこの世界における創世の女神リシュテリアは、信仰対象ではない。
<召喚者>における<巫女>は、案内役のようなモノである。俺がやったのは次の三つ。<降神の儀>によって女神の声を聞き、時に<予知夢>によって危機を察知し、<天啓>によってあやふやな情報を確定まで持ち込む。他にもおそらく細々したスキルはあるのだろうが、俺が使っていたのはその三つだけだった。
称号職業はレベルが上がらない。スキルや魔法は使えばレベルが上がるが、<巫>のスキルはあまり使っていないからレベルは低いままだった。それで問題も無かった。でも当然ながら普通の職業はレベルが上がる。レベルの上昇によって使えるスキルも増えるしスキルのレベルが上がる事もある。
レベル上げに最適なのは職業系スキルをひたすら行使する事だが、<予知夢>は発生を予期できないランダムパッシヴ、<天啓>は基となる何かが無いと動かない特殊系、<降神の儀>? 毎日ポンポン女神呼ぶとか正直頭がおかしいので却下。
「自分の、職業?」
「そうだ。職業というのは女神様によって、当人にとって一番適正の高い職業を割り当てられる。それはこの世界の人間も召喚されてきた人間も変わらない。つまり例えば石縄は<巫女>が最良の結果を出せるのだろう。己に適した分野で仲間に貢献する、至極まっとうな事だと思う」
「でも一体何をすれば?」
「<巫女>として使えるスキルをひたすら回数を重ねるのが一番良いんだが、俺はなんちゃって<巫>でな、<予知夢><降神の儀><天啓>以外のスキルを使った事が無い。できれば連続で発動しても無理のないようなスキルが望ましいが、あるか?」
「……ある!」
「ならそれを使い続けると良い。話が若干ずれたが、<警戒地点設置>は外して構わないか?」
「ええ」
「<
この魔法なんでこんなビジネス感漂う言葉選びなの?
「<契約解除>」
詠唱と共に何か、力が失われたような感覚。<警戒地点設置>が使えなくなった、直感的に感じる。
「これで完了、俺の用事は消化した。石縄に何か他の用事が無いならここで解散って事で」
……どうしよう。なぜ嘘をついたのか聞くべきだろうか。彼女を知らないかのように振舞った事、彼女が生きているとは告げなかった事、聞きたい事はたくさんある。それを聞いて……
聞いて、
彼がついた嘘は、決して私達に敵対するものじゃない。皆が築いた関係をもとはと言えば私の好奇心で崩してしまっていいの?
「……どうかしたか、何か用事が? さっきも言ったが俺は本職の<巫>じゃないからそこら辺相談されてもあまり詳しい答えは返せないがそれ以外なら……」
「あっ、いや、うん、大丈夫。ありがとう。それじゃあ!」
「お、おう」
主人公「おや? <巫女>の様子が……?」
<勇者>ステータスを封じたので<直感>が働いてくれなくなった結果。
神はそう気軽に呼び出しちゃいけない(戒め)。
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本年もどうか本作品をよろしくお願いします。