二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
召喚されてから既に一週間。今日も今日とて俺は<防衛魔法>の自己鍛錬に励んでいる。ステータスを調べた後、俺たちは一人一部屋ずつ、王宮の部屋を割り当てられていた。
翌日から<勇者>に対する、この世界の地理と歴史についての学習が始まったらしい。らしい、というのも俺は、呼ばれなかったのだ。では今日まで何をしていたか。ダイジェストでお送りします。
初日、こちらの世界での身体の特殊性の復活と、<勇者>のころの魔法やスキルが残っていること、以上の二点の確認。内山も同様。
二日目、<防衛魔法>でできることを確認。まだ<
なおこの日から内山が情報収集すると言って、授業に出るようになった。なんでも<勇者>様方(笑)からお誘いを受けたんだとか。
三日目以降は特にやることもなかったから、たまたま遭遇した騎士団長に話をして、訓練場の一角を貸してもらった。そこでひたすら<周辺警戒>を作動させ続けた。その甲斐あってか、四日目にはレベル2になった。探知範囲と、敵味方識別が可能になった。流石異世界召喚、かなりのチートだ。
斯くして一週間、俺は鍛錬、というか練習に、内山は情報収集に精を出してきた。なお、連絡はすべて<勇者>時代の通信石で行っている。魔道具マジ便利。
話によると、俺たちが、魔王を倒した後、送還されて二百年後にヴァルキリア皇国は解体し、いくつかの王国に分かれたらしい。その一つがここ、シルファイド王国なのだとか。
まあ、滅んだわけではなく、皇国が州制に移行して、そのまま各州が国として独立したという自然な形での解体だったらしいので良しとしよう。
そして、問題なのは、今回俺たちが召喚された全体的な経緯だ。
その前に、その前段階から洗い直してみる。
その前提知識となるのが地理である。
どうも人族・亜人族と魔族の居住範囲は、俺達が召喚された時と大して変わっていないようだ。基本的にこの世界は、二つの大陸から成り立っており、東にある方が人族・亜人族領、西にある方が魔族領となっている。この二つの大陸は、間に海峡を挟むものの、繋がっているところが複数ある。ただし、その海峡側には両大陸共に巨大な山脈があるため、行き来するなら、南端もしくは北端のぎりぎりを、陸に沿って海路をいくのが安全かつ最速なんだとか。ちなみに<勇者>の時は、北から行った記憶がある。
変更点としては、その繋がっている部分のうち、最南端の接続を抑えていた山脈が消滅して、道ができている。ちなみにほかの接続点へはやはり山脈が邪魔して行けないらしい。結果として、魔族領の南端部が人族領となったようだ。
山脈が消えたのは自然現象か?しかし出来た通り道からほかの場所を遮るように新たな山脈が形成されている……まさか大規模土魔法か?だとすれば誰が?いや、そもそもなぜだ?
………わからないことが多すぎるな、詳しい奴に聞く必要がある。一番手っ取り早いのは…アイツか。今は…魔族領の南端の山の中にいるか、また面倒な…いや、合理的ではあるか、流石、伊達に魔族の頭を張ってきたわけではない。
まあそれは置いておく。内山の話ではその西大陸南端部が侵攻されつつある、らしい。今はまだ確かめようがないな。
こうして、<周辺警戒>を発動しつつ、王都からどこへ向かうかの算段を立てていると、視界の端に青い点と黄色い点が写った。青は味方、つまり内山。ならば黄色は恐らくクラスの連中。どうやら今日から戦闘訓練を始めるらしい。ご苦労なことだ。だからこっちに来るな。
「やあ神崎君、何をしているんだい?」
「ん?おお、篠原かどうしたこんなところで?授業中じゃないのか?」
「ああ、今日から戦闘訓練をするらしくてな、戦えるか魔法使える人はここで訓練らしい」
「おうそりゃあご苦労なこった。んで…ああ、俺が何してるかって?お前らと同じこと。訓練だよ。騎士団長から、『魔法とスキルは使えば使うほどレベルが上がる』と聞いてな。部屋で何もしないよりはましだろう?<勇者>じゃないとはいえ、一応戦えるようになっておくのにこしたことはないだろ?」
「確かにな、自主練か。すごいな…でも、何かしてるようには見えないんだけど」
「<防衛魔法>っていうのはどうも特殊な魔法らしくてな、使えるスキルが今のところ人に見える物じゃないんだよ、自分の脳内に周辺のデータをインプットする的な」
「ああ、確かに守るなら周辺情報は必須だな。ああ、すまない、邪魔してしまった」
「いや、気にするな、逆に良い訓練になったよ。お前も頑張ってくれ」
人としゃべりながら<周辺警戒>使うって中々難しいな。使えるようになっておかないと。斯くして邪魔者は去った。訓練続行だ。サクサク上げていこうぜ、楽しい異世界ライフのために!
……とか思ってた頃が俺にもあったんだがな、何でこうなった?
現在俺は、模擬剣構えて男子と向かい合っています。相手は<剣聖>水山孝弘。常識的に考えて敵うわけがない。さて、ここでとっとと負けるか勝つか、どうしようかね。
ちらっと内山を見た。『勝て』と言ってる。目がヤバイ。
しょうがないね。ステータスを呼び出し、職業を<勇者>に変える。
「来ないのか?」
「お先にどうぞ?」
そういいながら人差し指をクイックイッとしてみる。わかりやすい挑発だ。
「ケガしても文句言うなよ!」
ほいほいっと。突っ込んできた水山が振り下ろしてきた模擬剣の横腹を叩いて軌道をずらし、その隙間に入り込んで横に薙ぎ、よけたところで剣を叩き落とし、そのまま喉元に剣を突きつける。
楽な仕事だな。え、大人げないって?戦闘前衛職じゃない人間に<剣聖>と戦えって言う方が酷いだろ?<勇者>?いえ、<防衛者>ですが何か?
と、いうわけで、勝負は数秒でついた。なぜか満足そうに微笑む内山と、沈黙するクラスメイト。
「「「「「「「「「「…はああああああ?!」」」」」」」」」」
ん?
ちょっとだけ、暴れてもらいました。
ご安心を。そろそろ出ていきます。