二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
ようやく異世界の人間で名前つき二人目の、宰相さんのご登場です。
それでは、第十話、どうぞ!
(まずい、まずいぞこれは!)
シルファイド王国宰相ゼルビアス・ゴルトニアは焦っていた。
王を焚き付け、魔王をでっち上げて、王女に召喚魔法を行使させ、多くの勇者を手駒に加えることに成功した。そこまではよかった。召喚の間に、巨大な魔力反応が多数ある、と聞いたときは小躍りしそうになった。
これで、成長すればこの世界の人間では勝つことができない戦力を手に入れた。王国の勢力拡大を図れる。そう思った。他国の占領合併吸収、かの中央大山脈を越え、魔族領も支配できるのではないかとさえ思えた。
だからその<勇者>達の中に、良く分からない、<勇者>ではないステータスの低い人間が二人いても大して気にも留めなかった。使えないならそのうち排除すればいい。うち一人の扱いが他の<勇者>とは違うと聞いても、「そんなものだろう」と思っていた。所詮こちらについては無知の異世界人。手玉にとることなど難しくない。
しかし、そこへやってきた竜が余計な事を言った。
「くそっ!“勇者は必要ない”などと余計な……しかし、<勇者>には通じなかったか」
<魔王>がいない、と直接言わなかったのは、恐らくそれで通じると思っていたからだろう。この世界において<勇者>は<魔王>に対する応急措置以外の何物でもないという認識がある。つまり、<勇者>が必要=<魔王>の存在。この世界の国家上層部の人間や上位竜の共通認識だ。
が、どうも異世界人の認識では異なるようだ。まあ、それはそれで都合がいい。問題は<勇者>ではない。ステータスが低い二人──<防衛者>と<支援者>だ。ステータスが低いから怖気づいたのか、竜の提案を支持し、これは別にどうでもいいが手を出さないとまで言ったのだ。
「元から戦力として計上しているわけではないから手を出そうが出さまいがどうでもいい……が、<勇者>共に心変わりされると全てが無駄になってしまう……上手く最強の兵士となりうる手駒を手に入れたんだ……早めに手を打たねば……」
男の方──ケイト・カンザキの方は既に<勇者>とは待遇も異なり、面会することも練習場以外ではほとんどないので、秘密裡に排除しても問題はなさそうだ。問題なのは女──サクラ・ウチヤマの方だ。
(女の方は、<勇者>共と行動を共にしている……うかつには消せない上に、接触している時間が長いから、<勇者>共の説得も可能……やはり召喚直後に消しておくべきだったか?)
そんなことを考えながら、二人を消す方法を考え始めた。
<勇者>達もいるところで、“依頼”を提示する。<勇者>だけでは捌ききれないからと<勇者>でない二人にも振る。人々を悩ます魔物がいると称して森の奥に行かせて、あらかじめ兵を伏せておき、不意打ちで殺す。魔法はどうかわからないが、本人のレベルは上がっていないからHPは最初に見た値。ならば一撃で殺せるはずだ。<支援者>から殺せば万一の回復もできまい。死体はその場に埋める。<勇者>共は、「彼らが率先して殿を務めた」とか「奇襲に対応できず」とか言いくるめてしまえばいい。いや、彼らが先走ったとかでもいいかもしれない。どうせ死体は森の中。<勇者>共にはわからない。
「よし、これならおそらく<勇者>にも怪しまれず消せるな。魔物を統率しているのは魔族と教えれば、逆に魔族を憎ませることも可能だな」
兵は巧遅より拙速を貴ぶ。<勇者>共が説得される前に二人を消さなくては。そう思い、部下を呼び出すと、二人を消す算段を始めた。
しかし彼は知らない。<防衛者>と<支援者>の正体と、彼らのステータスは本来の値ではないことを。
その算段を聞くものがいることを。
「──へえ、やっぱ消す気か。ならちょうどいい。これに紛れて消えるか」
宰相執務室に撒いた<
が、その対象がいただけない。
「無理矢理呼び出しといて邪魔だから消すか、はねえよなあ……」
まあこれでこの国を捨てる大義名分はできた。命を狙われる以上の危険がどこにあるというのか、いや、無い。……何か最近反語よく使うようになったな。
それはさておき。
「これ内山にも言うべきだな」
『それで、どうするの?』
『どうするったって、何もできないだろ?まだここにいる以外にないだろ』
『ここにいる間に消される可能性は?』
『ないな、俺は小さいがあるかもしれない。だがお前はない』
『てことはどっかに誘い込まれるのは確実なのね』
『多分な。俺も行くときは<勇者>に変えとくから、お前も<
『あれそこそこMP持ってかれるんだけど』
『完全に死ぬよりゃマシだろ。そこそこって言ったってお前のMPからすれば微々たるもんだ』
『それもそうね』
『じゃあそういうことで。ところで篠崎はどうだ?』
『相変わらず、アンタの選択に不満らしいわ』
『だろうな』
アイツはそういう奴だ。正義感が人一倍強く、この世には善か悪かしかいないと考えている。そして何より、自分が正しいという考えがすごく強く、実際大抵の場合奴の考えることは正しい。だが、今回については大外れだな。
『お前は何か言われてないか?』
『私?私は何も言われてないわ。どちらかというと被害者のように扱われてるわよ。職業が<防衛者>の部下だから逆らえないんだろうって』
『そうか、なら良いや、そのまま情報収集お願い……って言っても特にやることないけどさ』
『わかったわ、じゃあまた明日』
『ああ、また明日』
内山との念話を切る。さて、
問題なのは宰相とか国王とかのこの国の中枢だな。大方今回の魔王騒動の原因。というか元凶。どっちが発想したか知らんが、まあ目的は把握できた。手駒づくり、か。<防衛者>の記述が紛失してる伝承とやらがどこまで正確か知らんが、<勇者>が規格外なことくらいは知ってたか。
とはいえ今の<勇者>じゃあ魔物を倒せるかどうかはっきり言って微妙なんだよな。というか、そもそも
つまり、
俺は殺せる。一度乗り越えているから。でもあいつらはどうだろうな?
俺が前回召喚された時、初めて人を斬ったのは召喚されて三か月目、森の奥で盗賊とやりあったとき。殺したのはそれから二か月後、やはり盗賊とやりあったとき。
どちらも、三日間ぐらい食事が口を通らなかったな。確か春馬さんも同じ事を言ってたような……うん?まて、<防衛者>なのにか?
何かを忘れている気がする。まあ良いか。<防衛者>関係ならいずれわかる。
さて、あいつら……<勇者>達に人を殺せるか否か。答えは分かり切ってるな、否だ。まだ、という但し書きが付くけど。
一方で殺したら殺したでまた別の問題が起こる。特に初回。
魔法とか遠距離系なら多分そこまでひどくは無かろうが……問題は<勇者>本人とか、近距離系なんだよな……なぜかというと、これは死霊系以外の魔物にも言えるが、手ごたえがダイレクトに伝わるからだ。
肉を、骨を断つ感触…………やばい、思い出しただけで気持ち悪くなった。
それにあいつらが耐えきれるかどうかだな。下手すると初回のがトラウマになる可能性がある。特に剣使ったりすると返り血が酷いからなあ……
まあ良いか。それがあいつらの選択だもんな。というか普通に魔族とかと戦うとかだったとしても、これは免れえない事実なんだけどなあ……理解してるんだろうか?<魔王>を倒す事=<魔王>を
つまりあいつらが信じている事がたとえ真実だったとしても、元の世界に帰るには人型の生命体を1体、殺さなければならないことを。
以上です!
はい、帰る暇すら無さそうですね。
というわけで第十話でした!
次の更新は……いつになるんでしょうね()
可能な限り早めに上げます!