二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
それではどうぞ!
今代<勇者>パーティーは王国最南の街・ディセルドに戻った。<勇者>達は既に王国北部における問題のほとんどを解決し、現在はここを拠点として、王国南部の問題の解決に当たっている。今回のエメラニア公国との交渉もその一環であった。
「先代、<勇者>様が、ですか?あの伝説の……」
「あくまで自称、ではありますが」
「しかし我々<賢者>として、肯定も否定も出来ぬ仮説は、あの不審者が先代<勇者>であるという仮説のみでした」
公務などで王都を離れる事が出来ない国王の名代として<勇者>パーティーに同行する形となっているシルフィアーナ・シルファイド第一王女。
「しかし、そうであるとすれば、先代<勇者>様は一体なぜあのような凶行を……」
彼女にとって、先代<勇者>は、おとぎ話に出てくる勧善懲悪のヒーローのような存在であった。それは何も彼女に限ったことではなく、この世界の人族全てにとって、千年前の戦争を人族の勝利に導いたとされる<勇者>はまさしく英雄であった。
それが人族の再びの危機に現れたかと思えば、志を同じくするはずの今代<勇者>を殺害、<勇者>パーティーの面々にも戦闘不能に陥る程の傷を負わせたという。
伝説を信じるこの世界の人族としては信じられない、信じたくない事であった。しかしそれを証言するのは同じく<勇者>。彼らが嘘をつくとは思えない。
となるとその凶行にもなにかしらやむをえない理由があったのでは、と考えざるを得ない。それゆえの前述の台詞。
「……<聖剣>は、人族に向けられるものではない」
「え?」
「<勇者>の力は人族同士の戦いには手を出してはならない、そう先代<勇者>を名乗る者が言っていました。<勇者>は人族における<魔王>に対する楯であり剣である、とも」
「でも父上と宰相が言うには公国は魔族と協力関係に」
「……それを否定するため、だったのかもしれません。先代<勇者>が出てきた理由は。<勇者>自身が公国側に付くことで<魔王>つまり魔族との繋がりを否定できます」
「ではなぜそれを直接言いに来てくれないのでしょうか?」
シルフィアーナの次の問いに高山も前原も即答することが出来なかった。彼等もそれがわからなかったからである。
なぜ初代<勇者>は、直接シルファイド王国に来なかったのか。
シルファイド王国において<勇者召喚>が行われたという話は既に人族領全てにいきわたっている。
飛行機や自動車が無くとも、物質転送系統の魔道具は数種類存在する。そのほとんどは新聞社や冒険者
それらを通じ、<召喚>実行当日には人族領全体に報せはいきわたっている。
伝説によれば<勇者>は<
そうすれば、今回のように衝突することはなかっただろう。それになにより、
「……もしもっと早く、そして直接私達のところに来ていただけたのなら、きっと<防衛者>様と<支援者>様と組んでいただけたでしょうし、それなら<防衛者>様も<支援者>様も魔族に殺されることは無かったはずです……」
伝説に残る<勇者>は、魔族との戦闘の際は鬼神のような戦いぶりを見せたという。一方で病人のいるところや孤児院などに出かけては、無料で治癒・回復魔法を施し、孤児のために働く先を作ってやるなど、優しさも持ち合わせていた。
そんな彼ならば<防衛者>と<支援者>という攻撃が出来ない職業の同胞が二人だけで組まされる状況を良しとせずに彼等と組んでくれただろう。そして魔族に襲われたとしても全員を守りながら撃退できたはずだ。そうすれば<勇者>達も仲間を喪うことは無かった。
そこで高山は思い出した。勇人が先代<勇者>と対面し、<防衛者>と<支援者>の死を告げた時に、先代<勇者>が下した評価を。
「くそっ、あのときそこまでわかっていたら、あんなことを言われるままにはしておかなかったのに……」
「あんなこと?」
「ええ、勇人が先代<勇者>に<防衛者>と<支援者>の死を知らせた時、何て言ったと思います?『使えない奴だ』って言ったんですよ!」
<防衛者>神崎啓斗はどうだか知らないが、<支援者>内山さくらは、<勇者>持ちではなく、ステータスがクラスメイトより低いにも関わらず、<勇者>達と共に教育を受けていた。訓練だってしていた。この世界に<召喚>された時点で、恵まれていなかった才能を補完しようと必死で努力していたのはクラスの全員が知っている。表面上はいつも通りだったが、心中はそうではなかっただろう。
神崎だって、少なくともこの世界の人間を救うべく文字通り決死の覚悟で戦ったことくらいは高山にも理解できてはいた。当時の<勇者>ですら無傷での勝利は難しいであろう魔族相手に、ステータスもレベルも劣る<防衛者>が、その固有の特殊な魔法を駆使して騎士団を守り、最終的に相討ちという結果にまで持ち込んでいる。
辛うじて訓練場に居る姿を見たことはあった。だが<召喚>されて一か月足らず、先駆者もおらず、1人で調べるしかない<防衛魔法>という特殊な固有魔法を、一体どれ程ものに出来ていたのか。
どう考えても彼等は不完全な状態で戦っていたのだ。それでも最期まで、恐らくはこの世界の人々のために。それを悪く言う資格は他の誰にもないはずだ。先代<勇者>にも。
「そんな事を言う資格は……」
「それは多分、違うぞ、高山」
「っ!勇人!大丈夫なのか!」
「篠原君!」
「心配をかけたようですまないな……王女殿下、心配させて申し訳ありません」
「いいえ、ご無事……ではありませんね、でも生還なさるだけで十分です」
「私皆に知らせてくる!」
「後で行くからここに押しかけないよう言っておいて!」
前原が出ていくのを見送り、傍付きの騎士を手招きした王女に対し、
「あ、騎士団長には先ほどお会いしましたので」
「あ、そうですか、わかりました」
「王女殿下、敬語は止めてくださいとあれ程申し上げましたのに……」
「いいえ、私はお願いする立場なのです、ユウト様こそ、敬語でなくて構いません。それにシルフィとお呼びくださいとあれ程……」
「わかりました、ではシルフィア様と呼ばせていただきます。ですが敬語は自分のけじめというかこだわりというか、そんなものなので気にしないでください」
力無さげに苦笑する勇人だが、一度死んで、また生き返るという過程を経てここにいる。それが彼の体調やステータスに何かしらの影響を与えている可能性は否定できない。
「何か変なところはないか?」
「ああ、今のところ異常は無さそうだ、むしろなんか疲れが取れて快調な気もする」
<勇者>再生プログラムは、例えるならゲームで言う課金アイテムによる復活だ。ゲームでは復活すると、当然のことながら(一回死ぬから)状態異常を含むすべての付帯効果は解除される。当然ながら疲労も解除される。
<勇者>再生プログラムも同じ効果を持つ。体が軽く感じるのはそのためだ。
普通のゲームと違うのは、復活が無限である事と代償がその時の残存魔力全てである事、そして<聖剣>の無事が条件である事。<勇者>が<勇者>である間、つまり<魔王>を倒すまで、<聖剣>が無事であれば<勇者>は蘇り続ける。そして<聖剣>は基本折れない剣。つまりほぼ永遠に続く蘇生。それをかつて少女は救いと称し、少年は永遠の地獄と評した。
「俺は死んでも生き返れるってことも分かったし、こういう言い方は駄目っつーかおかしいと思うけど、なんか良かったよ」
「良かった?」
「ああ、つまり、俺は何度でも生き返れるんだろ?だったらこれからお前達が危なくなったら最悪俺が体を張ればいいんだ」
「お前、それは……」
「ユウト様……」
「これで、また友達を喪う可能性を減らせた」
そう言って、心底安心したように勇人は笑った。
「すいません、シルフィ様、高山借りていきます」
「わかりました、キミヒロ様、ありがとうございました」
「いえ、それでは失礼いたします」
一応、篠原君も<勇者>です。というかむしろ普通のゲームだったり、王道を行く異世界召喚なら、この人は主人公です。
むしろ今作の主人公たる啓斗が<勇者>としては微妙なのではないか、と。作中に出てくる優しい初代、アレ主にさくらさんと春馬さんです()
それでは感想批評質問等お待ちしております。