二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
それでは第二十六話、どうぞ!
突然だが、竜種についての話をしよう。
現在世界で、人種により“竜種”だと認定されているのは6体。全ての竜種の親たる始祖竜と、魔法の基本属性である火、水、風、地、雷をつかさどる属性竜5体。
が、この認識には
まず一つ目。
現存する属性竜は、
人族に認識されていないのは2体。魔族領に住むことから人族の目に触れない、闇の属性竜。
そして<システム>本拠地近郊に存在するが、それを認識できるのは、竜種と<魔王>、<勇者>、<防衛者>のみの、空間属性竜。
そして二つ目。
雷の属性竜はこの世には
では普段人族が雷の属性竜と認識しているのは、誰なのか。
簡単な話だ。
属性竜達は、人族の前で、自身が司る属性の魔法を使うことがなく、人族はその体色で見分けているのだ。
では雷の属性竜はどこへ消えたのか。
彼は詳しく言えば、消えたのではなく、その力のほとんどを失ったということになる。スキルや魔力さえ。ただ一つ彼が手元に残したスキルは<人化>。自らの外見、体力、寿命などを全て人族にする<変化魔法>の一つ。彼はそれを発動したまま、元の住処から人里に下り、やがて人族と結婚し、子孫を残し、人族として死んだ。
彼の人族としての名は、ラビラス・フォン・リズヴァニア。彼の子孫は後に、ヴァルキリア皇国の時代、リズヴァニア伯爵家となり、リズヴァニア伯爵領を治めていた。
そしてヴァルキリア崩壊後の今日でも、その名を取ったリゼヴァルト皇国において、伯爵家として存続していた。
存続
なぜ過去形なのかと言うと、俺の目の前で、彼らの処刑が執行されつつあるからである。
ここは皇都リゼヴァルト、王宮前広場。
本来、
《<システム>
上位管理者権限所有者とはつまり、竜種と同等の権限を持つ者。しかし、なぜそれほどの者が、救助を求めるのか。
とはいえ、上位管理者からの要請ならば、下位の特務管理者たる俺達は動かざるを得ない。
という事で、車両を
「……なあ、つまりリズヴァニア伯爵家って、雷帝の子孫なんだろ?」
「……そうね、魔力に竜種の反応が出ているわ」
魔力封じの枷がはめてあるため、感じ取れる魔力は微弱でしかないが、それでも<魔力感知>を持つ俺とさくらには十分だった。
「……てことはつまりあの娘って」
「竜の加護を受けし竜巫女。多分要請してきた上位管理者もあの娘よ」
「あそこの……親っぽい奴らじゃなくてか?」
「あの2人は魔力反応が薄いし、そもそも女の方は竜の魔力は感じ取れない。はめてあるのは恐らく同等の魔力封じ、なら魔力が大きいあの娘が管理者、ね。自覚はないと思うけれど」
丁度その時、ギロチンが落ち、1人の男の首が刎ねられた。
「……あの娘の血族もあの男が最後ね。それ以外に竜種の魔力は感じ取れないわ」
男に続き、断頭台に連行される女。
「ふむ、じゃああの娘は俺が助けに行こう。さくらとセレスは待機しといてくれ」
「お姫様のピンチに颯爽と現れる勇者サマか」
「絵面的には間違ってはいないが、実態が悲しすぎるな」
絵面的にはそうなのだが、内面は上位者の要請に逆らえなかった下位者である。何それ社畜?
とか悠長な事をしゃべっていたら女の処刑が終了した。次はいよいよ少女の番。
「じゃ、行ってきます」
「行ってら」
「<空歩>」
空中に魔力で足場を作って飛び出す。途中で<聖鎧>を身にまとい、<
パキッ
そんな軽い音と同時に、ギロチンの刃が砕け散った。相変わらず頑丈な<犠牲>には傷一つない。いつも思うんだがこれ何製?
じゃなくて。
ギロチンに掛けられていた少女の魔力封じの枷を叩き割り、跪く。
未だ静寂に包まれた広場中に響き渡るように、風魔法<拡声>を使って。
「お初にお目にかかります、雷帝竜の巫女殿。私は特務管理者、ケイト・カンザキと申します。職業は<勇者>です。救援要請に基づき参上いたしました!」
「……え……?」
盛大に戸惑っている。それもそうか、さっきまでもう死ぬんだろうと思ったら、甲冑付けた不審人物(俺)に跪かれてるんだから。
「お怪我はございませんか?健康状態は……失礼、<聖光>」
聖属性魔法で使える、1人用の回復・治癒魔法の内、最も効果が高いものを発動。
淡い光に包まれると同時に、腕や足の痣、おそらく折れていたと思われる指の骨などが全快する。あと囚人服がボロボロ過ぎて目のやり場に困るので、さっきまで羽織っていたのと同じローブを渡す。
顔を見れば、金髪に、金色に輝く瞳、そして漏れ出す、通常の人族とは異なる魔力。金色の瞳は、雷属性魔法の先天的高適性の証。
<鑑定>をかけたが、一瞬弾かれた。表示されたステータスも、名前と年齢、職業のみ。間違いなく、俺より高位の管理者。でなければ<鑑定>レベル10を弾いたり、表示項目を減らせるわけがない。
と、そのころになって、漸くこの国の人族が再起動する。
「な、何者だ貴様は!」
なんだかんだと聞かれたら!
……相方いなかったわ。いやまあ冗談はさておき。
「どうも初めまして、<勇者>です。突然ですが、この娘の身柄を引き取らせていただきます」
「ふざけるな!」
「ふざけてはいないな、むしろふざけているのはそちらであろうに」
「なんだと?!」
「……この少女の正体を、出自を知った上でのこの扱いか?だとすれば愚かな」
あるいは<防衛者>同様失伝しているのか?
「ええい!何をしている!近衛、そこの者を捕らえよ!」
逃げるか。面倒だし。
「ちょっと失礼」
「……え?」
予め断りを入れてからお姫様抱っこ。これで俺が素顔さらして素顔がイケメンだったら絵になると思うんだ…………現実は非情だね。
「<空歩>」
空中へ退避、そのまま水平方向へ加速。
「<幻影><陽炎>」
続いて、闇属性魔法と光属性魔法を行使。俺達と同じ姿の影を複数作り、別々の方向へ向かわせ、俺たち自身は光を屈折させて、人の視界から消える。
人気のない路地に入り込んだところで魔法を解いた。ついでに<聖鎧>も消して、もとのローブ姿に。
「さて、流石にアレは追ってこれなかったか」
「遅かったじゃない」
「悪い、ちょっと名乗りをしていてな」
路地の物陰から、さくらが音もなく現れる。
「……馬鹿か」
「ごめん、誰だ貴様はって聞かれたから反射的に」
「……まあ、良いわ。んでその娘は?」
「レイシア・ウィルティ・リズヴァニア。年齢は17、俺達と同級だな」
「そう」
「セレスは?」
「買い物」
「なるほど」
「……あのっ」
レイシアさんは漸く現在の状況を把握できたようだ。
以上です!
親を助けなかった理由は、[管理者ではなかったから]です。<勇者>は人族内部の事に手を出してはならない。その規則を守っているからです。
一方で娘の方は、無意識であるとはいえ、<勇者>より上位権限の管理者だったので、そちらからの要請となれば動かざるを得なくなった、ということです。
ちなみに雷帝竜には、名前はありません。前回召喚時には既にお亡くなりになっていたので。ほかは全て、固有名があります。
……神崎くんがノリノリで付けた、クトゥルフ神話由来の名前が()
また神崎くんの予想通り、祖先の事については当事者たる伯爵家以外では失伝しております。
それでは感想批評質問等お待ちしております!