二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
後期になって楽になると思ったのは間違いだったよちくせう。
それでは第三十話、どうぞ!
『──だから私がこれに入れば万事解決じゃない?』
「でもそれじゃあ先輩が!」
『良いの良いの。私はどのみちあっちに未練なんて無いんだから』
『でも!』
『貴方達は、まだあっちでも生きられるでしょう?こんなことで人生を無駄にしちゃだめだよ?こんな事は、私みたいなのに任せなさいよ』
「だけど、先輩は……」
『ほらほら、<
『こいつに使えるわけないでしょ!は、春馬さんもなんか言ってよ!』
『……俺からは、何も言えないよ』
「どうして?陽菜乃さんは?」
『私からも何も言えないわ……良い?啓斗君、こういう時は、先輩に任せなきゃ駄目』
「でも先輩がそこまでする必要は!」
『……そうよ、コレは私の自己満足、言ってみれば我が儘。ねえ、啓斗君、後輩は先輩の言う事には絶対に従わなきゃいけないって言ったの、君だよ?』
「それは……」
『『はい』以外の返事は無いからね』
そう言って彼女が微笑むのが見えた。
ああ、なるほど。やはり先輩は────だ。俺なんかじゃまだまだ追いつけないや。俺なんかじゃ多分引き留めるには足りないんだ。
「……はい、わかり、ました……」
ようようして絞り出すように吐いた返答に、彼女は満足げに頷いた。
『じゃあ、
でも、先輩。それでも俺達は、先輩に────────
目が覚めた。そして穴が有ったら入りたくなった。
あの時の俺の言動が恥ずかしすぎるわ!
俗に言う黒歴史の一つ。多分世の中の人は大抵持っていると思う。昔──と言っても大抵小中学生のとき──の自分の幼稚な、あるいは考え足らずな、KYな言動や思考。
何だろう、昨日移動中にひたすら<勇者>と<システム>について大抵の事をクラウと理沙に話していたからだろうか?
それが原因であんな夢を見たとでも言うのか。
そんなことを考えながら、テントの外に出る。野宿一日目。未だシルド王国領である。天気は、まあ晴れ。素晴らしい朝である、あの夢を見ていなければ。
…………うん、忘れよう。とりあえずテントの片づけを。
体を動かして雑念を排除。
そう思い振り返ったところで、女子に割り振った大型テントから、誰か出てきたのが見えた。
「おう、おはよ……う……?」
出てきていたのはさくらだった。だが、何か様子がおかしい、と言うか、顔色が悪い?いや。
「泣いてたのか……?」
テントの外、木の根元に蹲る直前の一瞬しか顔が見えなかったが、泣き腫らしているように見えた。三年前も、今も、常に冷静で取り乱すことのない彼女にしては珍しい。
「何かあったのか?」
取り敢えず隣に腰かけ、空を見上げながら話しかけてみる。<聖女>の慰めは<勇者>の仕事の一つだと思うんだがどうだろうか?
「……いの夢を見たのよ」
「なんて?」
「
「!……そう、か……」
その一言から察知する。つまりこいつも。しかも泣いていたという事は恐らく夢に見た場面は同じ場面だ。
「……あの時の夢よ、わかるでしょ……」
うんうん、あの時のこいつはマジでやばかった。こいつが大号泣したのを見たのは、それが最初で最後だ。それを知っているがゆえに、どう慰めれば良いのかわからなくなった。
「……あの時の事を気に留めるなと言ったのはお前だろ。今からでも遅くはないって言ってたじゃんか。先輩を助けることくらいは可能なはずだ」
あの時問題だったことの大半は、俺達が二度目の召喚をされたことで、解決策が用意できる。
「……でも無理だったら」
「それは考えるな。良いか、悪いことを考えようとするな、希望を持て。先輩には何が何でも帰ってきてもらわなくてはならん」
<孤独>預けたままだし。
「無理という事はないさ、俺がどうにかする」
「……先輩と入れ替わりとかは止めてよね、後味が悪すぎるわ」
「俺がそんなことすると思うか?恰好だよ恰好。<勇者>なんだからたまにはカッコつけさせろ」
「似合わない」
「真顔で言うな。いろいろと突き刺さるから」
「──おはよう、二人ともそんなところで何してんの?」
「お、理沙か、おはよう。セレスはどうした?」
「中の片づけしてるよ。もうすぐ出てくるんじゃない?」
「そうか、なら良い。じゃあ朝飯の準備でもするか」
今日はだいぶつらい道程になる。一日中車両の中で座りっぱなしなのだから。未舗装を装輪で走るよりはましだと信じたい。
今日からは丸一日ひたすら街を避けて荒野を南下していく。今日の目標は砂漠の手前。そして明日で砂漠を抜ける。さらにそこから聖リシュテリス神国、あと国名覚えていない二、三ヵ国を抜けて、人族大陸の南端へ。そこからは船か。最悪海自のゴムボートだが正直それは避けたいので、道中は積極的に魔物を狩っていこう。レベル上げれば色々出せそうだし。
そんな事を考えながら朝食を食べる。メニュー?普通の洋食です。サンドイッチとヨーグルト。野宿であることを考慮すればそこそこ良い食事ではなかろうか?<空間収納>素晴らしい。
「ねえ」
「ん?」
「昨日言ってたことでいくつか気になることが出来たんだけど聞いてもいい?」
「良いぞ、昨日はこちらが一方的にしゃべるだけだったからな」
何せ伝えるべきことが多すぎるのだ。それに加え、理沙には<管理者>に関しての詳しい説明も挟んだので尚更である。
「<システム>ってのはさ、実際のところ誰が創ったの?」
「<システム>を構想したのが誰かの詳細は今でもわかっていない。ただ、構想して作ったのはかなり昔──まだ<勇者召喚>が確立されて無かった頃に、この世界に誤って転移した、恐らく俺達と同じような世界の人間だ。そうでもなければ
そうでなければとんだ異常者である。あんなもの、俺達の世界を知っていなければどれだけ先読み出来てるんだという話である。
「えっと……始祖竜、だっけ、覚えてないの?」
「名前は憶えていないとさ。ただ日本語しゃべってたらしいし、日誌と説明書の走り書き、それに墓碑銘の文字は日本語だったから日本人だろうと」
「……その人はじゃあこっちの世界で?」
「多分な、墓もあるから」
「お墓に名前は?」
「書いてない。ただ『願わくば<勇者>が我が遺志を継ぐことを』って彫ってあっただけだ」
「それなんて聖人……」
「創った物は人によっては大分悪趣味と言うか正気じゃないと言われるだろうがな」
「ううん、私達の世界を見たらもしかしたらそっちの方が良いかもしれない」
いや、それでもかなり変だと思うが。
「……他に質問はあるか?」
「ううん、気になったことはこれだけ。そっか、私達と同じような世界の同じような時代の人か……」
「恐らく、という但し書きが付く。もしかしたらもっと未来かもしれん」
俺達と同じもしくはもっと未来から、科学技術が未発達で、魔法があるところに訳も分からぬまま転移。最終的にその世界の為に自分の持てる能力と技術を捧げる。
……無理無理無理無理。そんな真似俺にはできません。
とはいえこの年齢の少女に、一生……どころか永遠か?<システム>のお守りさせるのはなあ……何か考えてみるか。
以上です。
それでは感想批評質問等お待ちしております!