二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
タイトル通りです。それでは第三十九話、どうぞ!
さて、聖都を横目にさらに南下し続けた俺達は、漸く赤道……と思しきエリアに居た。
召喚されて既に二か月以上が経過した現在。俺達はとうとう聖リシュテリス神国を抜けようとしていた。今までの国は、一週間とかからず突破できていたのに、ここだけなんと二十二日も費やしてしまった。詳しく言うと聖都より南側。
なぜかというと、この国、通称女神教の、聖地あるいは総本山と言える国なのだ。
よって、本来の人口に加え、多くの信者が巡礼に来る。おまけにこの国のすぐ南は亜人族領なので、そこを通って人族領西大陸まで行く商人なども居るため、人が多い、交通量が多い。
流石総本山と言うべきか、この国は極端に魔物が少ない。光・聖属性魔法の使い手が多いからだろう。
従って外も非常に安全であるためか、城門などは存在するものの、城壁の外にも普通に集落がある。国内における集落の分布が密なのだ。また同様に聖都を中心とした交通網も発達している。
つまるところ。
八九式装甲戦闘車だったり一六式機動戦闘車だったりでの移動ができない、畜生。
結果として徒歩もしくは馬車での移動が主となった。直線で一気に南下できなくなった。
おまけに、交通網が発達しているのは聖都方面だけである。
他国からの訪問者の事を考慮してか、聖都は実は神国の北部に存在する。俺達が引っかかったのは、聖都から神国東部に向かう街道。この直後から街道が増加し、<
結果として聖都の南東に位置する小さな村(名前は知らない)から馬車に乗ることになったのだが、南方に行けるルートが無かった。やむを得ずまさかの聖都へレッツゴー。フラグを回避したと思ったら実は既に回避できないところまで進入していたらしい。
というかこのフラグを回避する方法は多分<召喚>されない事だよなあ……無理じゃん。
斯くして、聖女様からのお誘いをお断りした翌日には聖都へ。聖都発はさらにその翌日。そこから南西方面の馬車に揺られ、途中の街で宿泊すること実に十日。神国南部最大の都市、セイリティアに到着。
そこから南東へ三日、中継都市で乗り換えて南へ三日。聖都から南南西くらいにある交易都市スロスフィルに辿り着いた。
ここは人族領と亜人族領の交易の人族側中継地点……らしい。余談だが丁度ここを赤道が通っているそうだ。
そして俺達はここで待ちぼうけを喰らい始めて今日で六日目in宿屋である。ちなみに俺とさくら、セレスと理沙、という部屋割りです。
おい、もう一週間経つじゃねえか。なんでだよ、千年前はこんな検問とか出国調査的なのなかっただろうが……当たり前か。ヴァルキリア一国しかないのに出国も何も無いよって。
セレス、さくらの説明によれば、百年ほど前、人族と亜人族の間が険悪になり戦争が起きたらしい。まあ引き分けに終わったらしいのだが。
その時の結果として、東大陸(人族・亜人族領)を、人族と亜人族でそれぞれ北と南に分割したらしい。
交易は必要ではあるが、無制限に開放するのは双方の防衛面についてどうかという事になったために、城壁と無人地帯が国境に築かれた。その中央付近に城塞都市が設けられた。その都市で申請し、受理されなければ通り抜けることはできない、そういう制度が出来た。なお戦争参加者やその家族は不可である。
んでもってその制度が今も続いている、と。ふむ、まあ確かに人族はともかく亜人の中には最大で500年生きるのも居るからな。用心しておくに越したことはない。
ではなぜ六日も待たされるのか。
それは、人族領西大陸の存在がある。何者かによって、山脈が大規模に改変され、西大陸の南端が人族・亜人族領となった。
そこへ行くには当然、東大陸の南半分を占める亜人族領を通らなくてはならない。というわけでこんなに混雑しているのは、そこに行く集団が多いから、らしい。
そんなわけで書類審査にも時間がかかり、結果待ち時間が長引く、と。
うん、まあ、仕方ないよね。書類仕事が面倒なのはどの世界でも変わらない。速読系の魔法も無いことは無いが、一方でこの世界、コンピューター的な何かとか無いから多分時間は変わらないのだろう。
後、野宿せずに済んだことは、良かったと思っている。だってさ、今の編成が俺、さくら、セレス、理沙だぞ。俺とさくらはともかく、騎士団とはいえ、貴族出身のセレス、前世日本人今世貴族の理沙には数日間風呂に入れず着の身着のままはきつかったみたいだしな。いや一応体を清める魔法もあるけど、やっぱ熱いお湯とかで体を洗いたくなるだろ。
それにこの六日間で情報収集も出来たので、まあ良いかという感じである。
特に、<勇者>パーティーが、エメラニア公国を抜けて、スルヴァニア皇国に入ったという報せは貴重だった。<
報せによれば、<勇者>に罪人脱走ほう助の疑いを掛けられたらしい。それやったの俺等です。まあすぐに疑いは晴れたらしい。だろうな、容疑の時間帯はずっとエメラニア公国とシルファイド王国に居たんだろうし。
なお同時に俺達の身分がばれていない事も判明した。うんうん良かったよ。あれ何気に本名名乗ってたからバレたら面倒だなとは思っていたんだ。
時期的にはそろそろ魔族側の襲撃があってもおかしくはないし、無くてもシルド王国を抜けたら次は聖リシュテリス神国。ここでそこそこ足止めは出来る。
……とは言ったものの、何をするかなんだよなあ……既に当初の目的、強制送還は、大戦プログラム発動しちゃってる以上、だいぶお勧めできない。<システム>に負荷をかけてしまうし、<魔王>を倒せなくなるからね。
つまり今のところ足止めしたからどう、といった策が無いのである。どうしよう()。ベッドに寝転んで考えていると。
「……どうしようって言ったって、取り敢えず<システム>行って今回の事態の原因でも探りましょう?どうせもうグラディウスかアザトースが調べてるでしょうけど」
隣のベッドに腰かけるさくらから答えが返ってきた。
ますます行く目的がなくなった。一回死んでまで足抜けしたのに……これじゃあ俺達死んだ意味。
「意味ならあるじゃない、あの国に延々と滞在せずに済んだわ」
「あーそれはあるな」
ついでに<勇者>をある程度、本当にほんの少しでも矯正できたのは上出来だったと思う。
「あと、そうね、追いつかれたら色々と面倒だから、足止めも意味がないわけではないわ」
何で生きてるんだ、とかだろ。別にネタばらししても良いんだが、そうなるとアレの事も話さなきゃいけないわけで。セレスいるしね。
俺としては、<勇者>としても<管理者>としても、今はまだ、今代達にはシルファイド王国に所属していてもらいたい。かなり分の悪い、両刃の剣を含む賭けなのだが……
と言うのも、例えばあの
だからあえて<勇者>をシルファイド王国に配置。多分成長したであろうあの頭で以て、宰相が<勇者>を手駒に侵略戦争を吹っ掛けるのを制止してもらう。
もし失敗すれば、<勇者>が一方の側に立ち人族相手に戦いを挑むことになるわけで。そうなれば当然、俺が前言った通り、虐殺ショーの始まりである。多分人族も無抵抗ってわけにはならないだろうから、最悪の場合、<勇者>の戦力も削られてしまうわけだ。
不死身なのは<勇者>だけだ。もし一人でも欠けたら、<魔王>討伐に支障をきたす可能性もある。まあ多分大丈夫だけど。
<蘇生魔法>も存在はするが、恐らく今代<聖女>には習得できない。<死霊魔法>と<精神魔法>の派生、<操魂魔法>と<再生魔法>の複合スキルである<蘇生魔法>。
<死霊術師>が居るなら<聖女>は<死霊魔法>習得の意義が感じられないだろうからな。
……傍から見たら、何か賭けてる物が大きくなりすぎてる気がする。人族の存亡賭けてるようなもんだしな。まあ、でもあいつらが既定路線から外れない限り<魔王>は<勇者>に殺されるの確定だから大丈夫だろ。
「……やたら考えすぎるのも変わらないわね。もう少し単純に考えなさいよ」
「いや、考え得る可能性は全て考慮しておくべきだろ?<思考加速>と<並列思考>せっかく持ってるんだし使わないと」
変に単純に考えて<システム>にエラー引き起こしかけたんだぞ。
その時点で考えられることは出来るだけ考えておかないと。
そんな事を考えていると、扉がノックされた。
「はい」
俺が応対。
「出国管理局からです、申請が許可されたと。これが通行許可証です。門番に見せてください」
「わかりました、ありがとうございます」
扉を閉めて後ろを振り返ると、既に荷造りを始めたさくら。いや大した荷物無いし<空間収納>あるから荷造りって程でもないが。
「隣に伝えてくるよ」
「了解」
部屋を出て隣の部屋へ。扉はノックしましょう。
「はい」
「許可証が出たぞ。荷物を纏めてすぐ出よう」
「わかった──セレス、行くってよ」
「はーい」
「はい次の方──許可証を」
「これです」
「ふむふむ──はい、大丈夫です。行っていいですよ。向こう側の門番さんにも見せてくださいね。あ、あとそこで許可証が回収されますので」
「ありがとうございます」
おおよそ10mほどか。ついに人族領から出ることに成功した。
さよなら人族領。
そしてこんにちは亜人族領。
以上です。
お気づきかもしれませんが、同行している元近衛騎士の少女と、王国第一王女の名前を変更しました。
さて、ようやく人族領を突破しました。時期的には、ちょうどクリスマス短編までの行程のうち半分を踏破した状態です。
それでは感想批評質問等お待ちしております。