二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
ついに人族領から脱出、目的地までおおよそ三分の一の行程を踏破した啓斗一行。人族にとって潜在的な敵地となる亜人族領に足を踏み入れた彼等はどうなるのか。
とか書いてみたりしてますが、大した事はなかったりします。
それでは第四十話、どうぞ!
こんにちは亜人領。
さて、今日の亜人領は、全体がセラシル帝国と言う巨大な国家だ。名前は帝国だが、その実態は連合王国のようなもの。とはいえ形だけでも全体が一つの国としてまとまっている辺り、人族にも見習ってほしい。
それはともかく、だ。
亜人、と一口に言ってもその種類は様々。まあ、ネット小説なんかにあるように、エルフやドワーフ、獣人などが大半だが。なお珍しい種族としては、かなり数が限られるが人族・亜人族に友好的で、独自に社会を持つゴブリンやオーク、オーガやグールなどの魔物に分類される種族も存在……って。
「マジで?!」
「ええ。まあ厳密にいえばその上位種族もしくは特殊個体だし、数は本当に限られるらしいけどね」
「独自の社会制度や文化を作り上げていて、人族や他の亜人族と交渉を持つ事は稀だけど戸籍も存在するし、グールなんかは冒険者になってる人もいるって」
魔物としてグールを見た場合、かなり厄介な相手である。
通常のグールは、人族の死体が魔力に染まり魔物化したもの。その際に死体が変質するのか、皮膚が固い。そして元が人族であるためか、光属性魔法が効かなくなる。無論聖属性魔法ならば効くのだが。
それがそっくりそのまま、というかむしろ強化されたのが冒険者のグールさんである。当然ながら人族より強い。
「なるほど、そりゃおあつらえ向きの職業だな」
「と言うかまあ、亜人族は全般的に冒険者に向いてるのよね。人族よりステータス高いし、寿命も長い」
「こうして見ると、亜人族に欠点が無いように思えるんだけど……」
「そうだな」
「でも完璧な種族は存在しない。そうなるように調整されてるから」
「例えば亜人族で一番多い獣人族。彼等は亜人族の中でもひときわ体格に優れ、基本的なステータス値は軒並み高い。だけど実は魔力がほとんどないから魔法が使えない」
「次にエルフ。彼等は魔力が多く魔法に優れ、基本ステータスも平均的な人族兵士より優れる。しかし絶対数が少ない上に、妊娠しにくい。まあ元々がかなり長寿の種族だから、そっち方面に目を向けていないのもあるだろうけどな」
「魔物から発達した亜人族もよ。数が少ない上に、元が魔物だから光・聖属性の回復・治癒・再生魔法が効かないの。まあ元々種族単位で暮らせているから、無縁なのかもしれないけれど」
一般に、回復・治癒・再生魔法は、光・聖属性のスキルが一番効果が高く、燃費もよい。ついで風、火、土、雷と続く。なお火以降の三属性については回復スキルのみ、それも低階位、つまり回復量が少ないスキルしか存在しない。闇に至っては存在しない。
「ただ、まあ、個体単位で基本的な性質として人族より遥かに優れている種族は多い。……あまり大きな声じゃ言える事じゃないがそのために
「創られた……?」
「そうだ。あんな種族が通常進化で生まれる可能性は低いだろ」
無いと言い切れないのが生命体の進化の恐ろしさであるのだが。
「獣人族とかが特にそうだけど。どういった進化をしたら耳が四つに増えるんだよ」
獣人族は、基本的外見は人族と変わらないが、種族名の元となった動物の特徴を各所に残している。顕著なのが、イヌ科やネコ科動物の獣人の頭の上に生えている獣耳である。
現存している動物の耳は二つだけなのだから、増やす必要性は無いはずであるし、また耳ではないのなら、耳の形を保つ必要性が無い。
一番あり得るのが
「一番可能性が高いのは、人為的な物であるという事。そして耳が多いのは多分創造者の趣味かなんかだろ」
まあ、俺としては可愛いので賛成であるが。
まあ、大体、俺達の世代で獣人っつったらかなりの人がケモ耳持った女の子を想像するんじゃなかろうか、つまりそういう事だ。
「ではなぜ人為的にでもそんな種族を作ったかって訳なんだが」
さっき言った通り、亜人族のステータスは人族より優れ、
「亜人族って言うのは、<勇者>召喚までの
人族だけでは、やはり数だけで対抗するにはちょっと無理があるから、ステータスに優れた亜人族を投入する。これによってとりあえず守勢ではあれど拮抗できる状態へ。そして<勇者>召喚・実戦投入まで時間を稼ぐ。ただし数が多すぎると人族が主導権を取れなくなるから少数で。何とも良く出来た設定だと思う。流石はコンピューター。
「つ、繋ぎ……」
「<魔王>に対抗するなら本命は<勇者>でしょ、誰が考えたんだか知らんが」
魔の王に対抗するのは勇ある者。誰が最初に考え出したのだろうか。
「さて、この街からはまた戦車で移動かな?」
「そうね、それが速いでしょ」
交通網が発達していないわけではないが、ここは熱帯。森林がある。というか町と道、畑以外はほぼ森林である。
そしてどうもヴァルキリア皇国時代の街道が未だに残っているらしい。だが使われることは無いようだ。当たり前か。町とか村の場所違うし、ぼろぼろだし。むしろ道として残っているのが奇跡である。
俺達が目指すのはこの大陸の南端。そこから西に行って、普通に船に乗るか、南端から<
そしておあつらえ向きにこの街を出てすぐのところに、南へ伸びる旧街道があるらしい。未舗装でも行ける装軌車両なら大丈夫だろ。あとは中部辺りまで行った時に、サバンナ的地域があるっぽいからそれをどうするかである。
まあ後で選択できる事だし着いてから決めよう。とりあえずはとっとと<勇者>達に見つからない場所へ。そういえばあいつら墓参り……じゃなかった俺達の弔いには行ったんだろうか?いや死んでないけども。
「うん?」
「何か見つけた?」
「うん、人攫い、人族の」
「殺っちゃえ」
さて、ここは異世界である。そう。基本的に俺達の世界とは違う場所である。
当然、数多くの異世界系小説にもあるように、この世界にも奴隷は居る。この世界の奴隷は主に二種類に分けられる。一つは、自分から望んで、もしくはどうしようもなくそうなっている者。もう片方は、それを望んでいないのに無理に、という者。
前者は、例えば、貧窮してそれ以外に生きていく道がない、あるいは家族を助けるためにいわば出稼ぎ労働者のような形態の者など。こちらは奴隷と言う名ではあるものの、かなり良い扱いを受けている。どちらかと言うと、召使い、と言った方が正しいかもしれない。ただし、基本的にはお金で買われるので、区分としては奴隷になる。
後者は、例えば俺の後ろにある路地で10歳の狼人族の女の子を袋に詰め込んで逃げようとしている人族の人攫い達のような者の手にかかり、裏市場に出されるような者。こちらは確実に望んでいない。大抵の場合はどっかの貴族の性奴隷になるのがほとんど。たまに物好きなというか正義感にあふれるというかみたいな奴に買ってもらってまともな暮らしを送ったり故郷に戻れたりするのも居るが。そんなケースは稀だ。
「<
無論そんな所業を<勇者>たる俺が見逃すわけもなく、電撃で瞬殺。いや別に<勇者>関係ないけど
「警備隊の詰所どこだっけ?」
袋の口を縛っていたひもを解き、そのひもで人攫いの手足を縛る。その間に理沙が中に放り込まれていた少女を助け出す。気を失っている……というより気絶させられているようだ。大したけがはなさそうだ。無事で何より。
以上です。
主人公がなぜ、魔物由来の亜人族のことを聞いて驚いたか。知らなかったからです。1000年前には存在しませんでした。さくらが知っていたのは、召喚直後の講義を<勇者>と共に受けていたからですね。
それでは感想質問批評など、お待ちしております。