二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
異世界に召喚される人物の中でそれが可能な人間はどれ程いるのか?
特に主人公はどう考えてもそんな事出来る人じゃないわけですが。
そんなわけで第四十八話です。どうぞ
躊躇なく身を投じるのは無理だった。
とはいえ、俺がこうやって初代<勇者>を名乗る事が出来ているという事は、当然最終的に俺も身を投じたわけである。それに至るまでの話を聞きたいというのが篠原の要求。
「<召喚>された時、その場には俺の他に、三人、日本人が居た。その時は知らなかったが、まあ彼等が<聖女><防衛者><支援者>だった。そして俺が<勇者>だ。<召喚>された直後、当時の第一皇女殿下から、<魔王>を倒し、人族を救ってほしいとお願いをされた」
「その直後、質問があると言って、<防衛者>がこう聞いた。『戦いたくないのだが帰れないのか』と」
「……お願いの直後にか?」
「ああ」
篠原が絶句した。だろうな、場の雰囲気も凍ってたし、俺も耳疑ったもんな。しかもなんかこう、取り乱した感じで、
「ふざけるな!俺達を今すぐ元の世界に戻せ!」
じゃなくて
「それパスして帰れないですか?」
とか冷静に言ったんだよな。
後で聞いたら、
「え、だって、テンプレじゃないの?」
って返ってきてそれもそうかって思いはしたんだが、タイミングとテンション考えてください。
そう言えば今回の時は誰も聞かなかったな。俺とさくらは無理だよね知ってるよで終わりだけど。
「それに対して、皇女殿下の答えは、まあ端的に言うと、不可能、だった。すると<防衛者>は、『じゃあ仕方ないですね、何が出来るか分かりませんが、出来ることはやってみましょう』と言った。俺も、他の2人もそれに引き摺られた形だな」
「……すごい人だな」
うん、いやマジで春馬さんは凄かった。多分、あの人無しでは<魔王>の無力化なんて無理だっただろうし、それ以前にそもそも生きていけたかどうか。
「と、まあ、これが、俺が戦うと決めたきっかけだ」
決めた、というよりは、流されたとかそれ以外の選択肢を封じられた感じが強いが。
「……本当に戦いたくなかったのなら、その時々で言えば良かったんだ。場の雰囲気に流される程度なら、そこまで忌避感は無いか甘く見過ぎだ。その死んだ二人も同様だ。まあ、ちらっと聞いただけだが、<防衛者>と<支援者>のどう見ても直接戦闘に向かない人間を人族騎士団だけ付けて放り出したのは明らかな采配ミスだな」
「……近衛騎士も付いていたし、魔族が出るとは思わなかったんだ。それに<防衛者>は他の<勇者>と仲が良くは無かったから」
「……命を懸ける戦いで、仮にも味方なら、仲が良い悪いなんてことを気にする余裕があるとは思えない。<勇者>の<召喚>は、人族にとって<魔王>に対抗する最終手段。それを行使しているのなら、人族領への襲来も当然予期すべき事」
「……それもそうだな、何も言えない」
「<勇者>だって人間だ。時にはミスもする。今回はその代償が<防衛者>と<支援者>だったってだけだ。だが覚えておけ、この世界のミスは時として命取りになる。ましてやお前達が背負っているのは世界の命運だ」
「わかっている、今度の事で身に染みた。もう、間違えない。俺が、世界を救う」
「なら良い。俺もいつまで<防衛者>としていられるか分からないからな」
「……そう、だったな」
「ああ、そう言えば唐突だが」
「ん?」
「お前等今代って何歳くらいだ?年齢が分からんと話がし辛い」
「本当に唐突だな……高校二年生だ」
苦笑しながら答えてくれた。知ってる。というかだいぶタイミング不自然だったな。今くらいしかないと思ったんだが……まあ良いや。
「そうか、同級か……先に上がらせてもらうぞ」
言って立ち上がる。さて、じゃあ頑張ってもらうだけだな。スタートラインから間違ってるけどまあそれは本人のせいじゃないので。
脱衣所で服を着る。ここに来た時は、庶民の一般的な衣服だったが、一応王国が<勇者>同様そこそこ上等な服を用意してくれたのでありがたく利用する。
「さて、どうしたものか」
時間は<管理者>メニューを開くわけにもいかないので大体で察するしかないが、多分午後八時頃だろう。寝るにはまだ早い時間帯だ。
取り敢えず中庭に出る。ちょっと寒いが、まあ頭を動かすにはちょうど良いんじゃなかろうか。考える事はいくらでもある。
「まず直接攻撃手段を封じられてるのがそこそこ痛いな」
<
称号は<防衛者>に固定するので<聖剣>はもう呼び出せない。神剣は使えるが、レベルが高くなっても相変わらずの低物攻値でどれ程のダメージが入るか。まあ大して期待は出来まい。
「こう考えると<防衛装備召喚>って本当にチート……」
使用者のステータスに縛られる事無く、安定した高火力。魔力さえあれば弾薬も燃料も無制限。しかも元々が魔力なお陰で、薬莢だとか排気だとか気にする必要もない。それを使えないのはもったいない、が。
「まあ自分で決めたんだし、仕方ないか」
ここにいる一番の目的は<勇者>の守護。それを行うのに<防衛装備召喚>が不可欠というわけではない。実際、春馬さんは俺の目の前で使ったことはほぼ無いのだから。
「──誰?」
不意にそんな声が後ろで上がる。
それはこちらの台詞だ。
そう思いながら振り返る。まあ今代<勇者>の誰かだって事は分かってるけど。
「あ……えっと、国崎、啓、さん……」
「今代か?俺の事は呼び捨てで構わない。敬語も使う必要は無い。こんな時間に何をしている?」
敬語は戦闘で連携するとき、時間の無駄になる、とは春馬さん。今回は基本的には俺が合わせに行くだけなので、気にする必要は無いと思うが、まあ念のためだ。
ところで本題。いくら王城内とは言え、守護結界が昼間にあっさりと破られているのだ。少なくとも一人で行動すべきではない。特に女子の職業は後衛が多いからなおさら……ごめんこれブーメランだった。
あーやっぱさくらも連れてくるべきだったかなあ……いやまさか王都の守りがあそこまで雑魚だとは思わなかったし。前回は耐えてたんだけどな、皇都守護大結界。<結界術>の技術が衰退したのだろうか?
「ちょっと外の空気を吸いたくなって」
「そうか。だがあまり一人で外に出るのはお勧めしない。例え王城であってもな。魔族の襲撃が昼だけとは限らない。お前の職業は知らないが、単独行動は避けろ」
「……は、はい。あ、えっと、話がしたいんだけど……」
「俺にか?何の用だ」
何、告白でもさr……無いな。突然現れ手足の腱をぶった切ってクラスメイト首チョンパして消えたかと思えば突然味方として現れた謎のイケメン男子!
うん無いな。
「その、ありがとうございました」
「……うん?」
「それと、ごめんなさい」
「……んん?」
状況を整理してみよう。
夜、外で考え事をしていたら突然見知らぬ女子が近づいて来て、話がしたいと言ったので何の用だと問いかけたらお礼を言われ、謝られた。
整理しても意味が分からん。
「何が言いたいんだ?今代……」
「今代<巫女>、
「石縄さん、で良いか。何が言いたいのかがよく分からない。突然礼を言われ、謝罪されてもな」
職業<巫女>。男性であれば<
能力としては、神の声を聴くことが出来る、と言う物。ただし、能動的に聴くことが出来る者はほとんどおらず、大抵は、大災害や人魔大戦の予兆などを伝えるのが役割だ。
稀にその身に神を降ろす事が出来る者が居るという。その場合、短時間ではあるが、神の力を発揮でき、魔物の大軍を消滅させたりできるらしい。
ただし、これが召喚者である場合は異なる。
大抵の事を、能動的に、任意に神に問いかける事が出来る。ただし<システム>関連の質問、及びそのつながりで<管理者>関連もアウト。それ以外なら大抵のことがわかる。
ふむ。俺の事は調べても国崎啓で、初代<勇者>くらいしか出てこないと思うから、身バレとかではないはずだ。身バレだとしても謝られるのはともかく感謝は意味が分からんし。全部バレたのなら分からんでもないが、それはありえない。
なら何故。
「お礼は昼間助けてもらったので。謝罪は、貴方に迷惑をかけた事についてです」
ほう?てことはあれか、俺の話をちゃんと聞いて、理解が出来た、という事だろうか。
以上です。
先代<防衛者>は唯の変人である説。
クラス名簿とか挙げとくべきですかね。一応データありますし。
感想批評質問等お待ちしております。