二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
旧版から追加した設定の中で一番大きな改変です。
それではどうぞ!
「ここは、どこだ?」
何があった、なぜ自分はここに居る。いや、ただの夢か。分からない。
「俺は、中学二年生。名前は
取り敢えず、自分の名前と年齢、住所は言えるようだ。それについてまず安堵する。となるとこれは恐らく夢か?
取り敢えず手の甲を思いきりつねる。
そして後悔した。
痛い。めっちゃ痛い。
夢ではない。となるとこれは現実。つまりこれは。
「これはネット小説によくある転生のお告げか!」
と言う事は。
「俺死んだの?」
再度自分の記憶をさかのぼる。この部屋で目覚める前、意識を失う前、自分はこの服装で、どこで何をしていたか、何をしようとしていたのか。
制服を着ている、つまり死んだと思われるのは学校の行き帰りもしくは学校行事中。
そこまで考えたところで思い出した。
「ああそっか、俺車に轢かれたんだっけ」
小説なんかにありがちな死因だ。青信号の歩行者信号、赤信号の車用信号、突っ込んでくる自動車、その目の前で立ちすくむ少女。制服から見て同じ学校の女子だ。そう思ったときには荷物を放り出し走り出していた。
引き戻すにはギリギリ時間がないと踏んで、走る勢いそのままに彼女を突き飛ばす。自分もやや落ちた勢いのまま走り抜けようとしたところで、真横から襲い掛かる衝撃。直後に視界が回転し、一時的な浮遊感。直後に全身に走った衝撃と共に意識は暗転していった。
「おお、俺中々な事してるね」
死んでしまったが。
救い、と言えるかどうかだが、回転する視界の中で、突き飛ばした少女が、倒れこんだ後にすぐ起き上がろうとしていたのが見えた。つまり突き飛ばしたときに失敗した可能性は無いという事だ。
「まあ助けられたから良いか」
何はともかく、自分の命を費やした甲斐はあったのだろう。
さて、過去は思い出した。次は、現在と、今後の話だ。
ネット小説通りなら、ここで神が出てくる。それでなんか不憫に思われるかなんかして転生するか、ごめんちょっとミスった特典あげるから許してって言われて転生するかのどっちか。俺はそのパターンしか知らない。探せばあるかもしれないけれど。
「さあ、とっととこい神様!特典とか無くても……いやごめんなさいやっぱりそこそこの特典は欲しいです」
「……正直な少年ですね」
「何か出たあああああああ?!」
出てこいと言った直後に、真横から声がした。そちらを向くと、1人の女性、というか美少女、が立ってこちらを見ていた。
「何かとは失礼な。呼ばれたから出てきましたのに」
「……呼ばれた?」
「ええ、とっとと来いと呼ばれたので」
思考が停止する。つまりこの女性は神様……女性なので女神様という事だ。
【速報】神様転生は存在した
などという文言が頭に浮かぶ。
「え、と、それで、女神様が俺に何の御用ですか?」
「貴方が呼んだから出てきたのですが」
「嘘やろ」
「冗談です」
つい反射で否定してしまったのを女神(仮)が返す。
「見知らぬ人の命を助けるために、迷いなく自分の命を危険にさらした、勇気ある貴方にお願いがあります。頼みたいことがあるのです」
どっちでもなかった。
「頼みたいこと、ですか?」
「ええ、ある世界を救っていただきたいのです」
それは勇者的な存在となって魔王を倒せみたいな?
「いいえ、倒してほしいのは神です」
コイツ、まさか心を……じゃなくて。え?
「神を、殺すのですか?」
「正確には、殺す、ではなく、
「機械による統治?」
女神によれば、その世界には<
その世界には人族(亜人族)と魔族という二つの主要種族が存在する。この種族は仲が悪く、大体千年おきくらいに魔族側に<魔王>が現れ大戦争が勃発し、互いに大きな死者を出す。
しかし、最終的には、追い込まれた人族が女神に縋り、古の秘術である<勇者召喚の儀>により、異世界から<勇者>を召喚、魔族側のトップである<魔王>を倒し、世界というか人族は平和を取り戻す。これだけを見ればハッピーエンド……というか、まあ、円く収まったんだなと、物語のように感じるだけだ。
問題は、それら全てが<システム>による茶番である事だ。魔族が信仰する魔神(その世界ではラボルファスと言うらしい)も、人族が信仰する女神(同様にリシュテリアと言うらしい)もどちらも<システム>が創り出した存在しない神。つまり<魔王>を出現させるのも<勇者>を召喚させるのも<システム>の意思。ちなみに<魔王>も<勇者>も<システム>の事を知らない。
理由は分からない、との事だが、俺には趣味の悪い遊戯にしか思えなかった。
おまけに大戦において出る多くの死者の魂は、<システム>のエネルギーとして利用されるという。
つまり、女神によれば本来自由であるべき魂の輪廻さえ、その世界では<システム>の管轄下にあり、閉じられているのだと。
<システム>による、俺基準での悪行は他にもあった。
一つが精神操作系魔法による、発展の停止。現水準からやや発達した程度であればともかく、大幅に発達した発想は、女神教から異端認定されたり、実験が知らず知らずの内に失敗する手法を取ったりする。そりゃないだろう。なんのためかは知らないが、これ以上を望む探求心──それが私利私欲なら分からないでもないが──を、邪魔するのは、やってはいけない事の一つだと思う。人類の発展は常にトライ&エラーから成功を導きだしたがゆえの物で、トライ=エラーなんてハードモードとかいうレベルではない。
そしてもう一つが、管理者制度である。女神曰く、召喚される異世界人は、例外を除き<勇者>の称号を持ち、全員が<勇者>と呼ばれる。その中で真の勇者、つまり職業が<勇者>である者が<魔王>を殺す。まあここまでは良い。だって倒さないと死者が増えるからね。<勇者>であるから<魔王>を倒す。おとぎ話レベルの事だ。
さて、<魔王>を倒した<勇者>、やったね役割終わったよこれで帰れるね!になるかと思いきや、彼ともう一人には続きがあるのだという。前述した大戦は、千年おきに行われる。つまり千年に一度は<勇者>が召喚されるのだが、その次までの千年間、前代<勇者>(ともう一人)は<システム>の補助を行わなくてはならない。彼等はこの時初めて<システム>の存在を知るとの事。
魔法で大抵のことは何とかなるが、やはり住民と同じで、自由に動ける目線が必要だという事だろう。それは分かるが、異世界人を千年も縛り付けるというのは拷問ではないかと思う。千年過ぎたとしても、戻される元の世界の時間経過は、他の普通に戻った召喚者と同じだというのが救いか。
いくつか肯定できることがあるにせよ、それを打ち消して余りある罪業を重ねている(当社比)。それを放置するのはどうだろうか。というか女神様がぶっ壊せば済むんじゃ……
「<システム>による世界の守りが固く、私単独で突入できても、壊す時間が無いのです」
マジか。それで人間に目を付けた、と。
「はい。実は、今代の<勇者>達も、世界の異常性に気づき、<システム>に対し何らかのアクションを起こしたようなのです。残念ながら<システム>を壊すには至りませんでした。元の世界に送り返されたのか殺されてしまったのかはわかりません」
「しかし、そのお陰で、<システム>の防御に僅かですが、穴が出来ました。私が行くには、小さすぎていつも通り破るしかありませんが、もっと小さく、力のない物なら、何もせず、世界に紛れ込めます」
例えば
「察しが良くて助かります。今はともかく、<システム>もいずれ対策を講じてくるでしょう。その前に、その異世界に侵入していただく必要があるのです。私は時間遡行が出来る程高位ではないので、今しか手を打つことが出来ません。その中で、事を必ず成してくれそうな人は、貴方しか居ないのです」
「もちろん、事を終えた後は、貴方を元の輪廻に戻します。低位とは言え神なので、ある程度の特典を協力のお礼として付ける事も出来ます。どうか、手伝ってはいただけませんか?」
「わかりました、良いですよ」
「……本当ですか!ありがとうございます!」
やべえ美少女の笑顔とか最高じゃないですか、これがもう報酬レベル。
「という事は、俺はその異世界に転生するんですね?」
「はい。既に転生先も決定しています。転生先は、次に<勇者>が召喚されると推定される時代に、最も女神教教皇になりやすい家です。つまり、女神と接触し、<勇者召喚の儀>の秘術を受け取り、執り行う役割です。そこで召喚される<勇者>に事情を話し、協力してもらってください」
今回の依頼は秘密ミッション。そのため当然ではあるが魔力量とか素質とかの莫大な特典は付いてこない。バレたら困るからだ。俺に求められるのは、そ知らぬふりで、異世界の魂に紛れ転生する事。あとは地道な努力を重ね、教皇となる。<勇者>を召喚し、事情を話して説得し、協力してもらう。一番破壊を狙えるのは<魔王>を倒した後。
「わかりました」
「申し訳ありません、ですが貴方に頼む以外の方法が無かったのです……幸運を」
こうして俺は、大筋の流れとしてはテンプレを踏みつつ、とある異世界へ転生することになった。
そこは魔物がいて、人族と魔族が存在し、千年に一度<勇者>が召喚される世界。
住民達は自分達の世界をこう呼ぶ。
どっかで聞いたことあるような世界のお話ですね(白目)
以上です。
つまり今回のイレギュラー召喚は、この娘(女神)が元凶。元を辿れば最大の元凶は<システム>自体なんですがね。
まあ書いてある通り、本格的に関わり始めるのは魔王討伐後です。
それでは感想批評質問等お待ちしております。