二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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前回に引き続き閑話の更新となります。現在書きかけの閑話(完全シリアス)がもう1つありまして、次回更新までは閑話の予定です。



今回の閑話は一度あった質問への回答のような物になっております。


それでは、どうぞ!


閑話  先代<勇者>パーティー

 

 

人族領東大陸。その赤道以南を領土とする、超巨大連合国家、セラシル帝国。その北部から中央部にかけて、巨大な森林が広がる。かつて、大陸ほぼ全体がヴァルキリア皇国として統一されていた頃は、その丁度中央のラインからやや西にずれた所を縦断する大きな街道が整備されていた。

 

 

 

しかしそれは昔の話。約八百年前のヴァルキリア分裂、及び百年ほど前の人族・亜人族間の戦争などにより、徐々に使われなくなった街道は、今や荒れ果て、空からもそこにある事が辛うじてわかる程度でしかなかった。

 

 

 

その旧街道を驀進する一つの影がある。日本国陸上自衛隊八九式装甲戦闘車。機関砲及び対舟艇ミサイルを搭載、戦車に追随して歩兵戦力の移動・火力支援を担う装軌車両である。

 

 

そんな物騒な車両は現在、女子三人を乗せ、時々機関砲を撃ちまくりながら全速力で街道を南下していた。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば理沙、ずっと気になっていた、というか気にしていたのだけど」

 

「何が?」

 

「ケイとか私に恨みとか不満とか無いの?」

 

「恨み?何で?助けてもらったのに?」

 

「アイツが本気出せばというかもっと早く動けば、貴女のご両親も助けられたはずだったのだけれど」

 

 

 

理沙の両親が処刑される時、既に啓斗とさくら、セレスは到着していた。そして処刑されるところを見ていた。

 

ならば啓斗が全力を出せば三人全員助けられたはずである。ついでに言うならば死体を回収すればさくらの蘇生魔法で蘇生させることも可能ではあった。

 

でも啓斗はそれをしようとはしなかったし、さくらもそれを言おうとはしなかった。当時<特務管理者>として動いていた彼等にとって、重要だったのは<管理者>として指定された理沙ことレイシア・ウィルティ・リズヴァニアだけであり、彼女の両親はどうでもいい存在だったためだ。

 

 

レイシアの魂の中にあったと思われる雷帝竜の残滓からの要請は、彼から権限を譲渡されたレイシアの救出だけ。ゆえに彼女の両親は見捨てた。

 

 

 

<管理者>達は、<システム>の目や耳、あるいは手足となって世間で動くがその正体を知られてはならない。そのためにその行動は全て最小限にとどめられ、命令・要請以上の事を行う事は無い。それがのちにどのような影響を及ぼすか不明なためだ。

 

 

 

この制約を考えれば、彼等二人の行動は正しいものになる。しかしそれはあくまで<システム>その他世界の裏側を知っている場合にのみ通用する正しさであり、一般的には恨まれてもしょうがないとさくらは思っていた。

 

 

 

「ううん、あの状況で助けてくれただけでも十分だよ。確かにできれば助けてほしくはあったけど……色々事情とか聞いたから、贅沢は言えないかなって」

 

「……そう」

 

「それに、私あまり現世の両親に親の感覚が無いの。話したっけ、日本人だった時の事」

 

「最初の頃に聞いたわ」

 

「現世だとやっぱり貴族だからなのか、お父様ともお母様とも中々こう……腹を割って話すっていうんだっけ?そう言う事が無かったから。前世の両親の記憶が強いの」

 

 

 

貴族と言うのは基本的に家族間ですら本音を言い合い、腹を割って話す機会が少ない。そうでないと貴族社会を生き抜いていけないからなのだが、前世日本人で、入院を繰り返し、両親の看護を受けていた理沙にとって、それは親子のコミュニケーションが少ないように感じられたのだろう。

 

 

 

「それに……」

 

「それに?」

 

「私ループしてたって、言ったじゃない?そのループの時は、あまり……その、良い親じゃ無かったから」

 

「……ああ、そうか、記憶残ってるんだったわ」

 

 

 

原理は未だ不明であるが恐らくは<システム>が行ったと思われるシミュレーション。その目的は人族の死者の増加。すなわち、雷帝竜の血を引く一族が全滅するのと、娘だけでも生き残るのと、どちらが対魔族戦で死者が増えるか。あるいは魔族の攻勢の前に反乱がおきて内戦状態に陥る事で死者が増えるかもしれない。

 

 

生まれる前の魂を使った超大掛かりな実験。それは一人一人の性格などの細かな条件すら少しずつ変えて行われた。当然ながら重要人物たる雷帝竜の末裔は特に。

 

 

その中でもあまりよろしくない性格だった事が多かったというのはつまりその方が死者は増えると<システム>が判断したのだろう。

 

 

本来ならば、それらのシミュレーションの記憶は魂への直接干渉を伴う記憶操作により削除されるのだろうが、レイシアは転生者であったため行われなかった。

 

 

日本人だった前世とシミュレーションの記憶。本来消滅しているはずのそれらは今世の彼女に多大なる影響をもたらした。親への複雑な感情もまたその一つだろう。

 

 

 

「だから、今世のお父様とお母様がどれだけ優しかったとしても、完全にその死を悲しんでいたわけじゃなかったし……」

 

 

 

シミュレーション云々の話は既に移動中に聞いた。だから今ではそれらが全て裏表のない、間違いなく子を想った優しさであったと分かっている。

 

ただそれと同時に、世界の裏を知ってしまった。自分が、誰に、何の為に助けられたのか。その状況で、命令で動いていた彼等を恨むわけにもいかなかった。

 

 

 

「だから、ケイとさくらを恨むことは無いよ、安心して」

 

 

 

彼女はそう、笑顔で締めくくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでさくら」

 

「何?」

 

「大抵の物語とかじゃさ、勇者と聖女ってくっつくじゃない?ケイとの間にそれは」

 

「あり得ないわね、少なくとも私とケイの間にそれは無いわ」

 

「えぇ……即答しちゃったよ……」

 

「当然でしょう」

 

 

 

理沙の問いに対し、あっさりと否定の答えを返すさくら。

 

 

 

「今後そういう事が起こる可能性は」

 

「零よ」

 

 

 

それが当然であると言いたげである。

 

 

 

「何かこう、一緒に旅をして深まる絆的なのは……」

 

「あったけどそれと恋愛感情は別よ。私とケイは確かにかなりの信頼を互いにおいてはいるけれど、恋愛感情は一切抱いていないわ。私も、そしてケイもね。感情的な分類をするなら、双子の兄弟に対する親愛、といった感じかしら」

 

 

 

時には手間のかかる弟で、時にはとても頼りになる兄。

 

<聖女>から見た<勇者>はそんな感じだ。

 

 

 

「向こうが、ケイがどう思っているかは知らないけど少なくとも恋愛感情は無いと断言できるわ」

 

「伝説だとなんか<勇者>様と<聖女>様は相思相愛だからこそ互いに背中を預けられるとか、二人の連携が完璧なのは一線を越えた仲だからだとか言ってたけど」

 

「……その理論だと騎士団とかはソッチ系の集まりになってしまうと思うのだけど……」

 

「男女だから特別なの!」

 

「だとしても私とケイはその例外なのよ、多分」

 

「多分?」

 

「ケイがどう考えてるか分からないから。でも向こうも恋愛感情は無いと思うわ」

 

 

 

彼と彼女の間にあるのは、仲間、戦友としての絆。互いに命を預けあうだけの実力があると認めた上での信頼。

 

役割としても、攻撃魔法と剣を扱い、自己回復・支援も可能なために長時間一人で前線を張る事の出来る防衛戦型<勇者>と、後方からの支援と広範囲攻撃魔法を扱う攻撃型<聖女>は綺麗に噛み合っていた。

 

 

 

「仲の良い男女が常に恋人同士とは限らないでしょ?」

 

 

 

五年間も共に戦い続けたのだ。性別など関係なしに、その程度の信頼は築けないと逆におかしい。

 

 

 

「──『世界の危機に恋愛なんかしてる暇あるか』、ケイはそう言ってたしね」

 

 

 

 

『──世界を、人族を救うために召喚されて、恋愛に現を抜かしてどうするんです。ハーレム作る暇があったら世界の為に働く、王女殿下にちょっかい出す暇あったら鍛錬すべきです。<勇者>が遊んでる間に<魔王>も遊んでる確証はないでしょう?あ、でも春馬さん達は例外ですけどね。<防衛者>はレベル1の時点で<魔王>殺れますんで』

 

 

 

 

いつだったか、<防衛者>国崎春馬が、「ハーレムとか目指さないの?」と半分冗談で聞いたときに啓斗が真顔で返した答えである。それが真顔、つまり本気であったためにそのまま春馬と良くわからない論争に突入したのを思い出す。

 

 

 

『世界を救うのは、愛じゃないです。少なくともこの世界では、世界を、人族を救うには力が必要です。魔王を倒す力が』

 

『愛で世界を救えるなら、苦労はないです。というか俺達が召喚されるわけないでしょう』

 

 

 

もっともである。

 

 

 

「そんな状態で信頼関係を完全に構築しきってるから、今後も恋愛関係になる事は多分考えなくて良いわ」

 

「正論だけど凄く夢が無い事言ってるね……」

 

 

 

異世界から<勇者>を召喚する場合、理由として二つの事項が挙げられる。すなわち、便利な手駒が欲しいか、その世界の人族が抗えない力で滅ぼされかけているかのどちらかである。

 

この世界の場合、今代が前者、啓斗達初代が後者の理由でそれぞれ召喚されている。

 

 

 

前者の場合、普通に<勇者>自身の危機である。後者の場合も、世界が滅ぶのならどちらにしろ<勇者>自身の危機と同義。つまりどちらにせよ<勇者>に生命の危機がある。

 

さらに言うならば、<勇者>は元いた世界から、その身一つで召喚される。

 

つまりは平和な世界から戦いが日常的な世界へとほぼ丸腰で放り込まれるのだ。そんなところで悠長にハーレム作ろうとか出来るのは元から天才的な奴だけだろ、とは啓斗と春馬が意見の一致を見た点である。

 

 

 

実際、彼等は本当の人族存亡の危機に召喚されたために、戦いに明け暮れる日々を送っており、正しいと言えるのだが。

 

 

 

「ええ、それは春馬さんもケイも言ってたわ。『こんな夢の無い勇者召喚があってたまるか畜生!』って。でもまあ現実はそんなものだよねって納得もしてはいたようだけど」

 

 

 

現実と物語は違う。

 

 

 

物語のように全てが上手くいく事などほとんど無い。それを体験している彼女はそう締めくくった。

 

 

 

 

 




以上です。

それでは感想質問批評等お待ちしております。
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