二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
……まずはお詫びを。
投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
引き続き廃神殿になります。
後書きにちょっとした小話を載せております。ちなみに読まなくても物語の内容理解には差し障りありません。
それでは第六十一話、どうぞ!
「昔は多分それっぽかったんだろうな」
今となってはボロボロになった、彫刻の施された壁の一部。仕掛けがあったのはそこだった。と言っても仕掛け自体は既に死んでいた。珍しく魔法によるものではなく、物理的な仕掛けだったのだ。
年数経過により仕掛けそのものが崩壊、白井はその痕跡を見つけ、力づくで扉をこじ開けた。まあこのタイプは仕掛けが生きているとなると、仕掛けを使わないと開かないから、死んでいて助かった。
「魔法によるものではないのは、探知されるのを恐れたからか。人間が居ればメンテナンスは出来るから合理的ではある」
仕掛けもそれなりの耐久を持った素材で作られている。まあそれじゃないと使用に耐えないからだろうが、それのお陰でしばらく人間が整備しなくても施錠の役目は果たせるようになっていた。
まあ、でも流石に数百年は耐え切れなかったらしい。まあ耐え切れるとしたら、金銀以上の金属とかだもんな……
人が作ったものだ。いずれは壊れる。
「じゃあ、気を取り直して探索といこう。頼むぞ英吾、国崎」
「ああ、任せとけ」
「守りと後ろの見張りはな。戦闘は頼むぞ篠原」
いざ地下探索へ。
「<光刃>!……はぁ、これで何体目だ?」
予想通り遭遇した魔物は全てアンデッド。
「
「多すぎやしないか?」
「地下に踏み込んで十分。確かに多い。それに魔物自体の質も高い。下手をするとボスクラスはギガントポイズンスパイダーより強い可能性がある」
ギガントポイズンスパイダーは人族領で見られる蜘蛛系魔物では最強クラス。とはいえ、まんま見た目蟲系の魔物がそこまで強くないのはどこの世界でも共通らしく、アンデッドならそれを越える強さのモノも多い。
とはいえそれらのアンデッドも当然上位種なのだが。
「近衛騎士団と<防衛者><支援者>のスキルを動員して漸く勝てたって奴か?あれ以上……俺達三人だけで勝てるか?」
どうやら戦闘報告書を見たらしい。<
「勝てない事は無い。相手が
本来ならば上位種の魔物が単独で現れる事はほとんどない。ダンジョンでない限り。かつて蜘蛛を討伐した時は、<絶対障壁>で全ての攻撃を無効化することで、同時に眷属の存在を無視していた。
<絶対障壁>は維持するのに魔力は要らず、追加魔力を流す事で修復や増強が出来る便利な障壁だ。だが、それを張る俺の魔力には限りがある。レベル50無い<防衛者>の魔力量などたかが知れている。青ポも持ってきては居るが、飲み過ぎは前回同様魔力酔いを招く。
相手の上位種が単独であれば、蜘蛛同様の手法で相手が可能だ。ただ、この地下空間の広さ(推定)と、さっきまでの会敵数と合わせて考えると、奥に行けば上位種が群れを成すレベルで居る可能性がある。
数で押されると流石に勝てない。連戦でも同じこと。魔力回復の時間は取れるが青ポとて無尽蔵ではないのだ。
<勇者>ステータスの魔力なら勝てるけれども、それだと前回の魔力酔いとか、俺の発言とかと全力で矛盾してるので没。
「国崎、まだ魔力に余裕はある?」
「ああ」
一応微量ずつ常に回復するスキルあるからな。焼け石に水程度だけれども。
「……その上位種って奴とはまともに戦わない方が良いかもしれない」
ほほう?
「国崎に<絶対障壁>を張ってもらって、攻撃を受けないようにただ突破することに重点を置けば、良いんじゃないか?」
中々良い意見出すじゃん。
アンデッドとは死体が魔力で動いている物。つまり早い話が<
<傀儡>の弱点は、術者の思考から動作がワンテンポ遅れる事。こちら側が一気に突破を図れば多分動きに追いつけない。ただ相手が魔法を使えるタイプだったら戦う必要がある。魔法は射程が長いというか射程の概念が無いからなぁ……
「それなら魔力消費は抑えられる。ただ、魔法使い相手には通用しないし、無いとは思うが、もし道を間違った場合が怖いな」
「トレインか」
「そうだ。振り切れる可能性も無いとは言えないが、考え得ることは全て考えておくべきだろう」
「だけどそれじゃあいつまで経っても進めないだろう。それにさっき道を間違える事が無いと思うと言っていたのは?」
「ここは元神殿。この地下空間が隠し部屋か隠し通路かは知らないが、そこまで複雑な構造にはなっていないはずだ。隠し通路なら言わずもがな、隠し部屋だとしてもそこまでの余裕は無いし、そんなことをする必要も無いはずだからな」
神殿など宗教関係の施設における隠し部屋の存在理由はいくつか考えられるが、一番可能性が高いのは、神器や聖遺物など、信仰対象になり得る物の保管および秘密神殿。普段は一般に公開される事の無い物であっても、神官が永遠に封印しているはずがない。普段は神官のみが参拝しているはずで、そのための場所。
ならばそこまで複雑な構造に出来るわけがない。実際ここに踏み込んでから分かれ道を見た記憶が無い。
「ただ、魔物の発生がどのように影響するかが分からないからな。一般に使われている<
アンデッドに、撹乱するために道を作るという戦術的思考は存在しない。彼等は基本的に全ての思考を生者への憎しみで埋めている。上位種や特例を除いて理性が無い。無論最低限戦うだけの思考はあるが。
だから地下空間の構造は変化していないはずだ。確約は出来ないけどな。
「だから最終判断は篠原、お前に任せる。この場でのリーダーはお前だ」
「…………先に進もう。さっき言った通り、国崎には防御、というよりパリィを任せる」
「了解した」
「それと英吾はさっきまでと同じように前進して警戒を。相手によっては戦闘を視野に入れる」
「任せろ」
いやぁ、職業が分かれてるとこんな感じなのかぁ、良いね。こう、チームワーク的なのが感じられて。俺達とは大違いだ。しっかり鍛えたら多分今代の方が強くなるんだろうな、きっと。
……戦いたくないなぁ。
「前方の曲がり角を曲がったところにアンデッドの魔法使いが二体」
「わかった──国崎」
「<絶対障壁>。一撃で頭潰せよ」
対魔法障壁を追加で展開する。ついでにアドバイス。
アンデッドに痛覚は無い。ゆえにアンデッドの魔法使いは、手を斬られようが胴体を分断されようが頭が無事なら怯む事無く魔法を撃ってくる。それを阻止するには一撃で頭を潰すか、光・聖属性付与をした武器か神授武具で核となる霊体を叩くかしなくてはならない。
低級ゾンビ系なら頭を潰すだけで無力化できるが、スケルトンや高位種族は大抵<無言詠唱>できるので、核を潰す必要がある。まあ大抵頭の位置にいるので頭を狙えば潰せるのだが。
「カウント3で行くぞ。3、2、1、今!」
声と同時に敵の面前に出る。相手は魔法使い。ありがたいことに<
「<
「<光刃>!」
壁を蹴った白井が相手の真上から、篠原が前から突進。それを<
眼窩の中に見えていた青い光が消える。同時に骸骨の体が風化し崩れていく。
「これで何体目だ?」
「百を超えたくらいから数えてないよ」
「今倒した二体で123だ」
まだ<不死身の賢者>クラスに遭遇していないのが幸運か。予想していた通り結局遭遇するのはアンデッドばかり。しかも奥に来るにつれて、数か質が上がっている。
最初は<骸骨戦士>一体とか<
この分だといずれ<
いたのだが。
「前方になんかでかい扉あった。そこまでに敵は居ない。一本道だ」
「扉?」
「ああ」
あれ、それボス部屋じゃね?じゃあこれで終わり?
呆気ないな。
「そこが終点かもしれない」
「いわゆるボス部屋って奴か?いよいよダンジョンの主とご対面って奴だな」
「ボス、か。気を引き締めていかないと」
このレベルだとさっき言ってた編制がボスになるのかね。
「でかい扉だな」
「だろ?」
おまけに見事な彫刻。どう考えてもボス部屋っすね。<周辺警戒>にも大きな敵性反応が2つ……2つ?!
「相手は2体いるみたいだ」
「……両方魔法戦闘タイプか物理戦闘タイプだったら、片方無視してもう片方を速攻で仕留めよう。分かれていたら魔法戦闘タイプを優先で」
「魔力消費は考えてくれ、もしかすると帰りも戦闘しながらかもしれない」
「良し、じゃあ開けるぞ」
篠原が扉を手で押す。一瞬軋む音が聞こえたかと思うと、ゆっくりと開いていく。
「……げ」
敵が見えた瞬間、自分の迂闊さとフラグ発言を呪った。
「……<不死身の魔法詠唱者>と<死霊馬>騎乗の<首無し騎士>かよ」
最悪の想定よりはマシだが、事前想定の遥か上を行く編制だった。
実際のレーダーでもあまりに至近距離だと点が重なって二つが一つに見えることもあるらしいので、この見間違いは仕方のない事ではあるかと。至近距離どころか重なってますし。
──小話──
「春馬さん」
「なんだ?」
「昨日浄化したアンデッドどうする?」
「あー……名前つけろって話だったか」
「いままで見たことないアンデッドだったんでしょう?」
「見たことないっつーか、確認されてないアンデッド、な」
「戦ってみたら新種でしたは笑えましたね」
「倒せたから良かったがな」
数日前に掃討したアンデッド群。その指揮者クラスと思われる上位アンデッドは当初<
戦闘前に、癖で相手に<鑑定>を掛けたら、ステータスの名称欄に???と表示されていたのだ。<鑑定>でこのように表示された場合、考えられる要因は二つ。
相手が<鑑定>を弾いた、つまり相手のレベルがこちらより高い場合。
<鑑定>の威力あるいは突破力は、魔力量に依存する。<鑑定>を弾くということは相手の魔力がこちらを上回っていることを意味し、それは大抵レベル差の存在をも意味する。況してや相手が<勇者>なら尚更だ。
が、どうも今回はそうではなかった。<鑑定>を弾かれるなら弾かれたとしてそういう感触があるが、それがなかった。
つまり残る一つの理由──相手が未知の存在である場合、と言うことになる。
それが今まで分からなかった理由は、軍勢が強すぎて大本の新種アンデッドに辿り着けなかった、とのこと。まあ、しょうがないわな。
まあそんな新種アンデッドを、軍勢ごと初見で討伐した俺達に命名権が与えられたのだが。
「俺アンデッド系ってゲームに出てくるのでもスケルトン何とかとかエルダーリッチくらいしか知らないんですけど」
「俺もそこまで詳しくは知らないからなあ……」
「スーパーエルダーリッチとか」
「もしまだ見つかってなかったら確認されてなかったりする更なる上位種が居たら?」
「……ウルトラエルダーリッチ」
「おい」
「いやだってそれくらいしか思い付かないですし」
「じゃあ<
「カッコ悪い」
「語呂が悪い」
「センスがない」
「酷い?!」
「……じゃあ、ゾンビ、じゃなくて、アンデッド、とかどう?さっき春馬さんが言ってた命名法流用すれば」
「おお!それ良いな!」
「かっこいい」
「センスある」
「俺と違って語呂も良い……て何言わせるんだ」
「事実だから諦めようね春馬君」
「本題戻すけど何て名付ける?」
「骨に換算したらどれになるの?」
「ステータス的に<
「……<
安直な名前だけど……
「<
「そうだね」
「……じゃあそれで提出するよ」
──END
というわけで千年前のお話。召喚されてしばらくが経ち、ある程度人族領が安定してきた時期に浄化した死の街のお話です。この後出会う、新種のゾンビ系アンデッドは根こそぎこのネーミングにされました。
それでは感想質問批評などお待ちしております!