二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~ 作:クラリオン
何かこう、興が乗って書けたので投稿します。
前話の<探索者>白井英吾氏の目線の物語になります。内容は基本変わりません。ただ視点が違うのでそこに差違はあります。
目の前で、六角形の薄青い障壁が次々と張られる。そのいくつかはすぐに壊されてしまうが、直後に魔法弾が放たれ敵アンデッド──<
だが障壁を敵のすぐ近くに張れるという事はある程度敵の動きを見切っているという事でもある。この障壁と魔法弾が囮であり、出来るだけ長く注意を引かなくてはならないという任務を背負っているのだから、障壁が全てすぐに割れては意味が無い。相手の動きを見切る事で、<
術者の頭の中で、一瞬のうちに一体どれだけの計算が行われているのか。
しかも迎撃の魔法弾が放たれるのは相手の二撃目の直前、相手の出端を完全に潰す形で行われている。
そのタイミングに合わせて攻撃を仕掛けた。
「<
流石に有利属性の攻撃はかなり効くらしい。そこそこ削れた。
「<
回避しきれない攻撃。すんでのところで迎撃が入る。再び隠密行動。
「<迎撃>」
「<属性付与・光><
再びタイミングを合わせて攻撃。距離があったので範囲を伸長。
ちらりと見るとサムズアップされたので同じくサムズアップで応答。今のはかなり綺麗に決まったしな。
ここまで考えて、自分が彼を仲間として認定しつつあることに気付いた。少なくとも、最初の頃に抱いていた『勇人を殺した敵』という印象が薄れている。良い事なのか悪い事なのか。
……今は共に肩を並べて戦う『仲間』なのだから、恐らく良い事なのだろう。本人自身の性格はともかく、そのスキルは恐ろしい程有用だ。それをかなりの熟練度で使いこなせる以上は、彼を敵視しない方が良い、か。
ちょっとした作戦会議をした後、再び先程と同じ位置に潜伏する。
「アンデッドの核、か……うわ、あれ対応できるのかよ」
この世界において、千年前、人族がかなり不利な戦況の中、たった四人でそれをひっくり返し<魔王>を倒したとされる先代<勇者>パーティー。そのリーダー、初代<勇者>国崎啓と名乗った者を見遣る。
右目の視界ではそれが本当なのか怪しくなるほど小さな魔法反応しか感じ取れない。女神様によって授けられた腕輪のせいで、力を制限されているという供述と辻褄はあう。
何より、隠密行動系スキルを使う自分の位置を把握しているらしいところを見ると、その地の能力は失われていない事が分かる。先程も障壁を張りながら、
自慢ではないが、<暗殺者>同様<探索者>には隠密行動系スキルにかなりの補正があり、勇人でも看破できない事もある程。それをどうやってか知らないが看破しきっているようだ。
先程<不死身の魔法詠唱者>と呼ばれたアンデッドに止めを刺したときも、最小限の道を開けるかのように障壁に隙間があった。そこから攻撃に入れるように。
……初代<勇者>の名は伊達じゃない、か。
……思考と視界が横道に逸れてしまった。俺の今の役割は核を見つける事。さっきから<迎撃>で削ってはいるが、微々たるもので、核の位置を特定する前に魔力供給と修復が完了してしまう。
だが相変わらず見事に障壁を……?待て、なぜ障壁を解除した。
彼が何か呟いたかと思うと、現在残っている障壁はそのままに、恐らく展開待機中だったと思われる魔力反応だけが消失。その代わりに……地面に突然魔力反応が発生。魔力経路は……無い?!
新スキル、独立した設置型魔法、なのか……?
本当になんでもありだな、<防衛者>って奴は。
基本魔力使った罠なんて何かしら道具が要る。なぜなら罠を作る場合、性質の違う魔力を扱う必要があるからだ。
一番単純な形でも、対象範囲に目標が居る事を探知する索敵系と、発動する罠そのものの魔法の二種類。だが人間の頭と言うのは、普通は当然ながら二つの事を同時に考える事など出来ない。ゆえに道具に付与するか、複数の術者で作るのが基本なのだが。
あの魔法は恐らく一つの魔法でその二つを兼ね備えているようだ。それが複数。
その魔力反応に<死霊馬>が触れた瞬間、魔法が発動した。小さな立体魔法陣が浮かび、直後にその範囲が消し飛ぶ。一度だけ王都の練習場で見せてもらった<
<死霊馬>の、触れた部分がごっそり消し飛びバランスを崩す。しかし次の瞬間には魔力供給と再生が始まる。
……見つけた!
発見と同時、ほぼ反射的に体が動き出した。魔力反応をよけ、空中を進む。国崎の方をちらりと見ると、一瞬だけ大きく目を見開いた。直後、何か唱えたかと思うと、先ほど同様地面に魔力反応が増え、同時に敵の周囲に障壁が展開される。
さらに追加で敵の四肢及び頭部付近に魔力反応。障壁を壊そうと暴れていたためすぐに接触、魔法が発動する。
「<属性付与・光><斬撃伸長>」
すり抜けていくような斬撃の途中で何かを斬った感触を覚えた。
「<
索敵スキルを発動しているが、魔力は拡散を開始している。
「やっt「ちょっと待って」?」
やったか、と言おうとしたのを遮られた。直後、<死霊馬>が動き出す。まだか!
「<
核の近くに罠魔法を発動、接触即起爆。危なかったか。
魔力の拡散を今度こそ確認し、勇人の方を見る。もし負けていたら加勢しなくてはならない。そう思ったが。
アホみたいに呆然とするしかない光景が広がっていた。
<
「……すっげぇ……」
<首無し騎士>の攻撃は全て余裕を持って躱され、逆にカウンターを叩き込まれている。<聖剣>はそれだけでアンデッド特攻になる武器。掠める程度のカウンターですらそれなりのダメージとなる。
やがて<首無し騎士>の剣が跳ね飛ばされ、それでも楯を前に突進しようとしたその懐に、勇人が滑り込む。
「<光刃>!」
ただでさえアンデッド特攻武器に、光属性魔法の重ね合わせ。それは実にあっさりと重厚そうな鎧を突き破り、背中まで刺し貫いた。
『見事、だ』
この世界の人族の標準語で、そう言い残すと首に見えていた青白い炎が消え、鎧が崩れ落ちた。鎧の中から、真っ二つにされた核が転がり出てきた。
たった今激闘を制した勇人は、流石に疲れたのか、膝をついて肩で息をしている。その状態の勇人に国崎が近づき、奥を指さしながら言った。
「篠原、お疲れのとこ悪いが」
「……ああ、分かってる」
指差す先、部屋の奥を見ると、そこに祀られた一体の石像が光を放っていた。あれは神を模しているのだろうか?
そこへ向かう勇人に続いて、俺も石像の下へ向かった。
以上です。
魔法とはイメージですから、全く違う二つの効果を併せ持つ魔法を使うには二種類のイメージを同時に浮かべる必要があるわけです。
<地雷>はダメージは基本固定(魔力量によって調整可)な上に起爆条件も基本は接触だけなのでそれをどうするか、<地雷原>なら敷設密度及び範囲をイメージするだけで済みます。
ちなみに<勇者>状態なら<並列思考>が使えるので、<地雷><地雷原>紛いの事ができる、というわけです。