二度目の召喚はクラスごと~初代勇者の防衛戦~   作:クラリオン

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今回を持ちましてクリスマス短編前後回終わりとなります。

次から動くはずです、頑張れ主人公。



それでは第七十五話です、どうぞ!


第七十五話  王都へ

 

 

 

 

 

動き始めた装甲戦闘車の中で試作を開始する。運転は理沙だ。

 

とりあえず対魔法無効化体質者として使いやすいよう<加速><貫通>の刻印を組み込む。<誘導>も付与したいところだが使い手を制限しないようにするのが難しいので放置。先端は手持ちの合金、本体は鉄が主成分の金属杭。ミスリルとも称される魔銀は魔力あってこそのあの硬さなので対魔法無効化体質者兵装には使えないのが痛い。

 

 

 

こういうのを考えてる時は楽しい。まるで……ああそうか……まるで、ゲームみたい、で。

 

ふぁっきゅー。人の事言えねえじゃんか。

 

やっぱ痛覚封印に死なないってのはだめだな。いや自分勝手も良いところだけど。

 

 

 

「……何、それ」

 

 

 

そういえば理沙とセレスには見せた事が無かったか。

 

 

 

「魔法刻印。あれだ、鍛冶とか錬金系統の付与」

 

「あぁ、魔剣の基本技術……え?」

 

 

 

正直に答えたら何か驚かれた。理由はさくらからもたらされた。

 

 

 

「今では廃れているという」

 

「マジで?」

 

「魔法職に仕事取られたみたいで」

 

「あー付与魔法が発達したからか」

 

「そうそう、あと自己強化魔法ね」

 

「……まあ確かに見た目手間も金もかかるからな」

 

「長期的に見れば違うのだけれど、まあ戦争やってない限り分かりにくいから」

 

「……それで錬金術と鍛冶を両方極める人間が減って、現在では技術を身に付けている人どころかその技術の存在自体がほとんど知られていないみたいね。私もラビラスから聞いて調べて初めて知ったわ」

 

 

 

さくらが出した答を理沙が雷帝竜からもたらされた情報で補足した。なるほどね、進化する技術(魔法)もあれば退化する技術(魔法刻印)もある、と。

 

 

 

「……私初耳なんだけど」

 

「魔剣が伝説級の代物扱いされてるのはそれもあるのよね。魔剣が造られたものである事は分かっているのに、造る技術もそれに至る道筋も消えているのだから」

 

 

 

かつては当たり前の技術。魔剣を造れて初めて優秀な鍛冶と認められる。まあ例外もあるが。故に文書には残ってない……いや、多分()()()()()()んだろう。

 

 

 

「なのにギミック自体はほとんど簡単だからな。最初に使用者が魔力を通すことで刻印が起動、<魔力吸収>で周囲の魔力を吸収しながら他の刻印が発動する、それだけだ」

 

「あれ、じゃあ普通に<魔力吸収>付与すればいける?」

 

「いや。それだと最初に吸い取られるの剣の持ち主の魔力だぞ。あれ術者以外の魔力を近い所から吸っていく魔法だから」

 

「あっ」

 

「あれは魔法刻印だからこそ成立する機構。普通の魔法じゃトレース出来ない。剣の持ち主が<魔力吸収>を付与できるなら話は別だが」

 

 

 

魔法陣の術者を示す部位を除いた残りを刻み込むという言ってみればそれだけなのだが、それが出来るようになるのは鍛冶と錬金術を修めてから。いつでも誰でも何度でも使える魔法陣とかいう超絶便利アイテムを作るにはそれなりの努力と年月が必要なのだ。

 

 

 

「私も鍛冶職修めておくべきだったかしら」

 

「……似合わないな。というかあの時は無理だっただろ、お前『完璧な聖女ム―ヴ』してたんだし」

 

 

 

異なる世界から来たにも関わらず、この世界の人族を救うために絶大な力を振るう<勇者>と並びたち、人族に癒しの力を届ける。常に微笑みを絶やさず、身分にかかわらずその力で直接的に人族を救い続けた優しい少女。

 

 

 

それが、当時さくらが作り上げていた<聖女>像。まさしく完璧に<女神の使徒>だった。ただし、汗水垂らして剣を打つ<鍛冶>は絶望的なまでにかみ合わない。

 

 

 

「できた」

 

 

 

そんな事を考えている間にとりあえず完成した。

 

<加速>と<貫通>の魔法刻印を組み込んだ試作金属杭。<雷霆>だけで射出しても最終的に多分<電磁砲>と同クラスの速度は出せる。攻撃力は完全に金属杭そのものの性能に依存。魔法で上げる事も出来るけど対魔法無効体質者には向かない。

 

 

 

「これでどうだ? 重さとか長さとか」

 

「<竜巻>……ええ、大丈夫よ。魔力消費量もそれほど気にならないし……うん、魔力の通りも良い」

 

「よし、じゃあこのタイプを量産すればいいな」

 

「……仮にも魔剣クラスの魔道具を量産って」

 

「使い道が限定的過ぎるから俺でも作れるってだけだ。本物の魔剣だったら専用設備ないと無理だし用意したとしても俺が作れるのは微妙な性能な物だけだからな」

 

「ステータス直接干渉型固定値上昇とかいう原理不明チート支援魔法刻印付与を微妙と言い切るかこの<勇者>は」

 

「性能としては微妙の一言に尽きるだろう。過程は凄いが、結果を見ればそうでもない。それを足掛かりにできれば良かったが俺は専門の研究者じゃないからな」

 

 

 

固定値上昇については、魔族領の森の奥で見つけた魔剣にあった魔法刻印を発動術式のところのみ書き換えて転写しただけなので原理は知らない。発動術式以外の術式が現地語に類似した別の言語体系によるものらしく解読できなかったのだ。わかりやすく言うなら文字化け状態。何がおかしいって現地語は根こそぎ翻訳スキルが働くはずなのにそれを通しても文字化けしていた事。

 

 

 

<鑑定>した結果も文字化けだらけながら、とりあえずミストなる人物の制作で銘は<守護>、付与された魔法も同じ名前で<守護>であると判明。効果はこの剣を所持している時のステータス直接干渉による防御力の上昇と対物理・対魔法障壁の任意展開なので恐らくはオリジナルの複合魔法。<破撃>という魔剣と対になるらしいがそちらは発見できなかった。

 

 

 

使い勝手は中々良かったので別行動をするときにさくらや陽菜乃さんに護身用として貸したりした記憶がある。

 

 

 

後に文字化けの理由は判明した。ほとんどが読めないのは変わらなかったが正直それはどうでもいい。作者は既に死んでいるだろうし、術式の重要な部分さえわかればよかった。

 

 

 

問題はその上昇値。俺が作った魔剣の上昇値は300、おおよそ平均的な騎士の10レベル分、<防衛者>の純粋な1レベル分の上昇だった。いやそれでも十分な性能に見えるが、<守護>の上昇値は固定で1000。あろうことか四桁である。誰が作って誰が使ったんだそんな代物。<勇者>、それもそこそこ防御系に寄る<孤独の勇者>たる俺の純粋な10レベル分、<防衛者>換算でも純粋な3レベル分とかいう壊れた値を誇る。

 

 

 

それを基準に考えるなら俺の作ったものは微妙以外の何物でもない。というか戦場に出ると仮定すれば<支援者>の支援魔法にこちらはパーセンテージだが同程度の効果がある魔法もある。

 

 

 

「とりあえず100、造って渡す。使い捨てにしても問題は無い」

 

「こんな国宝級の代物使い捨てに出来るか」

 

「命には代えられん。言っただろ、それくらいなら量産できるって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで100。ほれ」

 

「ありがと」

 

「<雷霆>で打ち出すだけで良い。最初に少々余計に魔力を流し込めばより速く飛ばせる」

 

「了解」

 

 

 

休憩を挟みながら三日目の昼。200本の金属杭の新規作成・アップグレードを完了。100本はさくらに、残りは自分用の予備、備えあれば憂いなしというヤツだ。

 

ついでに言うととくに何事もなく魔族軍の作戦行動予定範囲から抜ける事が出来たので今日から今代たちのところへ戻る事にしている……のだが。

 

 

 

「言い訳どうしようか」

 

「今更?」

 

「<聖女>助けるっつって出てきたのは良いんだけどさ。それだといくつか不審な点とか出てきそうで」

 

「……今、連中のなかで私達はどういう立ち位置?」

 

「<勇者>だったけど今は別な使命を帯びて活動中」

 

「<管理者>って単語は?」

 

「出してない。<勇者>ではない、としか言ってない」

 

 

 

流した情報について答えるとさくらは暫く考え込んだが、なにか思い付いたように顔を上げた。

 

 

 

 

「……<守護者>でも名乗る?」

 

「<守護者>、<守護者>か……世界の?」

 

「ええ」

 

「間違ってはない、か」

 

 

 

悪くはない。

 

 

 

 

「まあその他の巧い言い訳は自分で考えておいて、そういうのは多分アンタの方が得意でしょ?」

 

「遠回しに妄想野郎って言われた気がした」

 

「いえ純粋に褒めてるわ。こういう時は使える技能だもの。特に私達は話を作る必要が多いから。あ、あともう一つ」

 

「なんだ」

 

「理沙、というかレイシアの事ちゃんと説明してね。できれば<守護者>辺りと絡めて、あまり深入りされないように」

 

「あーそれもあったか。あれは確か<勇者>名乗って全部責任押し付けたんだっけな。面倒だが自分で蒔いた種か」

 

「頑張れ」

 

「あいよ──それじゃあまた。<転移点記録><空間門>」

 

 

 

<空間門>使用履歴を探ることで王都へは直で行ける。

車内に黒い穴が出現する。

 

 

 

「行ってらっしゃい、頑張ってね」

 

「またね」

 

「行ってらっしゃい!」

 

 

 

三人の声に軽く右手を挙げて答え、<空間門>に足を踏み入れた。

 




以上です。



魔法刻印について軽く説明

作中では主人公がさらっと言っちゃってる事について、気になった場合の追加説明をしておきます。

魔法陣は簡単に、「発動魔法」「発動者指定」(場合によっては「主神の名」)を、基本は円状に書き、それを魔力を通す経路で繋ぐ事で描画します。それに魔力を通す事で発動します。
そのうち「発動者指定」の発動者の名前部分を消し、代わりに「発動時流される魔力で発動者を特定できる術式」を組み込んだ状態で武器に転写したのが魔法武器です。この術式を弄ることで使用者を限定したりすることも出来る、という設定です。
物語にはほとんど関係在りませんが一応こういう設定あるよって事で。


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質問だけでなく感想批評などもお待ちしております。

追記:次の更新は遅れるかもしれません。もやもやした前半部分の改稿を思い付いたので加筆改稿しようと思ってます。
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