ご注文は魔法少女ですか?~彩の魔法使いと色なき怪物~   作:ユキチ

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現時点でのもう一つのサイドです。相変わらず文章がひどい………………。
なお次投稿文からは両方がごっちゃになります。(警告)


小さな街の、話をしよう Part2/4

「モカちゃん、おはよう♪」

「あ、山崎(ヤマザキ)さん! おはようございます! 今日はずいぶん早いですね」

「休みなのに珍しく揃って早起き出来ちゃってね、だから散歩ついでにちょっと……て思ったんだけどまだ店開いてなかったわね、ごめんごめん」

「いいんですよ。あ、良かったら私と一緒にキュアラープリティ見ませんか?」

「え、いいんですか? 家で録画とってきましたし、いくら私がここの顔馴染みとはいっても……」

「いいんですよ、おたくのシオリちゃんも楽しみにしてるんでしょ?」

「たい!きゃ~ら~うりち~!」

 

少し時間を遡り、街からは離れたところにある緑に囲まれたパン屋 "ベーカリー保登(ほと)"。

今朝 ”巧” と口論を交わした女性"モカ"が店先で常連客のおばさんと会話を繰り広げていた。

 

チン!

「…………」ジャーゴシュゴシュ

 

一方奥のキッチンでは、その巧が凄く嫌そうな顔をして鉄板掃除をしていた。隣の窯ではこれから店先に出す或いは配達用のパンがちょうど焼きあがったところであるが、冷めるのを遅くするためまだ蓋は空けない。

因みに彼は掃除を嫌がっているわけではない。そういう仕事は乗り気にはならないが余計なちょっかいを出されなければ何だかんだでちゃんとやるタイプである。では何を嫌がっているのか?

 

「あ、ところでおたくのタクちゃん、今日はいるの?」

「いますよ! 今ちょうどキッチンの掃除をしてくれているんです」

「あら~、じゃあ今日はタクちゃんにも遊んでもらおうかしら?」

「たい! たうちゃんと、あそう~!」

「ふふっ、元気でよろしい。お~い、たっく~ん!洗い物終わった~?」

 

<終わってねぇよ!

 

ギィッ……バタン!

 

「…………あ、すみません、今忙しいみたいで、もう少し経ったら出てきてくれると思います」

「あらそう、あの子も変わらないわねぇ。ぱっと見無愛想な感じだけど、ああいう男の子私は好きよ」

 

悪いが俺はアンタのことが好きじゃないけどな。

 

巧がここで助っ人を始めてから少し経つが、彼は表にいる山崎親子のことを本気で嫌がっていた。

親の方は初対面の時から25を過ぎた自分のことを "男の子"とか"かわいい" と言ってきやがったので気分が非常に悪かった。

そして子供の方は言葉もろくに喋れない1歳児であり、同じく初対面時にいきなり顔を引っ掻いて来たのだ。

元々人付き合いの苦手な巧だが、それでも自分なりに真摯に人に接する努力はしていた。それでも自分は赤ん坊にうまく接することが出来ないという自覚、及びお母さんの絶妙な気味悪さから、山崎親子だけは接触を拒絶することにしたのである。

ちなみにベーカリー保登の場所が場所だけに、現在赤ん坊を連れてくる常連は山崎さんしかいない。

 

「…………」カラン

 

パン焼き用の鉄板2枚を洗い終えた巧は水を拭き取り元の場所に板を戻すと、料理台の上にメモが置いてあるのを見つけた。

 

(……今日の配達先か?)

 

本日午前のお届けを予定している3件の住所と電話番号、パンの内訳が書かれていたメモを片手に、キッチンを出て売り場に入る。そこにも1人の女性がいた。

 

「あら、たっくん、掃除は終わった?」

「ああ、んでコイツが本日午前の配達先のメモか」

「え? 今日はモカが配達をやってくれる日のはずよ?」

「常連トコの赤ん坊とキュアラープリティ見るから代わってほしいって言われたんだよ、たった今な。だから今日も俺が行ってくる」

「そう、ありがとね。本当に助かるわぁ、最近ちょっと忙しくなりだしていたから助っ人が欲しいって思ってた時にあなたが来てくれたんだもの。」

 

アイツが無理やり連れてきたようなもんだけどな。内心巧はそう呟いた。

 

(回想)

 

(……何とかコイツは守れたが、これじゃ多分街まで持たねぇな)

 

木組みの家と石畳の街に出没する灰色の怪物の噂を聞いた巧は、その街へ向かう道中、とある都市へ入る直前にホームレスの一団に金を殆ど取られてしまった。バイクの後ろに載せたアタッシュケースが札束入りに見えたようで、それを奪われかけた結果として手元のお金は500円ちょいしか残らなかった。それなりの金を手に入れるためにやむを得ず大学の警備員で暫く働くことにしたが、

「君のように無愛想な部下は大嫌いなのよ」

自分のところの上司との相性が非常に悪かったことにうんざりしたため、彼女の挑発に乗る形で9日で退職してしまった。給料だけは全て手に入れたが。

 

「ああ、俺もアンタみたいな威張り屋上司は嫌いだ」

 

そう吐けば自分が昔とあまり変わっていないことを感じる巧であった。

 

(思えばアレもかなり前の話か……思えば何故俺はここまで生きて来れているんだ?)

 

 

 

「おい、コイツをどかしてくれ。俺が出られないじゃねえか」

 

駐車場すみっこのバイクを出そうとすると、左右に大きなトラック、目の前にそこそこの大きさのスクーターが横向きにドンと置かれており出せない。その日は駐輪場が満杯で置き場所が見つからず、空いてる場所があればそこに停めればいいと適当に場所を選んだら、この有様。見たところパン屋のロゴが入っており、後ろのボックスは鍵が掛かっていない以前に空っぽとはいえ中身が見えていた。これを止めた人間は少々面倒な性格だと直感したところへ

「あのー、それ私のスクーターなんですけど」

二十代、自分よりやや年下と思わしき女性が来た。

 

「あっ、ああ~、ごめんなさい! すぐ戻るつもりだったので大丈夫かなと思ったんです」

「すぐっていう割には俺がここに来てから10分経ってんだが」

「ほ、本当にごめんなさい! ここウチの弟が通ってる大学でしたからつい話が長くなっちゃって。化学科の所属なんですけど、ここからだとエリアが遠くて歩きで5分はk「いいから早くどかしてくれ」

「あっ、は、はい!」

 

 

 

「ところで貴方は、どちらから来られたんですか?」

「言わなきゃいけねぇのか」

 

スクーターをどかすと、女の人は尋ねてきた。

 

「遠くから来た。この先の街に用があってな」

「町って、もしかして木組みの? それなら、私が案内しましょうか?」

「アンタの手を借りなくたって一人で行ける」

「やっぱり木組みの! ウチの妹がそちらに今住んでるんですよ! 」

 

ほら来た。完全に自分のペースで話を進めてくる少々面倒なタイプの人間だ。こうも話を進められるとだんだん己のペースも狂っていき、気が付けばスクーターの後をついていき道中のパン屋に到着していた。

 

「ただいま~」

「あらお帰り。その男の人は?」

「たっくんこと巧さんよ~。これから木組みの街に行く予定が、お金がなくて大学の都市で足を止めてたんだって。だから目途がつくまでウチで働いてくれることになったの」

 

何故俺はこの女についてきたんだ。ペースを盛大に狂わされていた故に彼自身にもその理由はわからなかった。

 

「………………どうも。アンタがここの店長か」

「ええ、そしてモカの母です。巧さん、よろしく」

「……ああ、よろしく」

「もう、たっくん! 挨拶っていうのはもっと愛想よく!」

 

悪かったな、俺は元々こういう無愛想(ぶあいそ)な人間だ。

もう色々面倒なので、ある程度は流されることにした。最終的にお手伝い代わりにしばらくの間泊めてもらえることになり、体力がある、無愛想ゆえ接客に向かないという理由で裏方の仕事を担うことになった。それでもパンをショーケースに出す都合上お客とは幾度か顔を合わせることがあり、山崎さんにもそれで顔を知られたのである。

なお上記の経緯もあり、巧の苦手意識はモカにも割と強く向いていた。

 

(回想終了)

 

「パンも一通り揃えた。そんじゃ行ってくる」

「いってらっしゃい」

 

巧のバイクは後ろの泥除け上部に物を置けるスペースがあるが、現在そこには配達パン用の簡易ボックスが、その上部には更に件のアタッシュケースが両者とも泥除けに直接ワイヤーで括り付けられている。ボックスは上ではなく後部を開ける仕組みなのでアタッシュケースに関する問題はないが、スクーターのボックスより容量が小さくあまり多くは積めない。

届け先が3人でパンの量もあまり多くないことに助けられた巧は、パンを積むとモカと山崎さんが店内に入った隙をついてこっそり"ベーカリー保登(ほと)"を出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっく~ん、いる~?」

 

モカはキッチンに向かうが、ピカピカになったそこに巧の姿はなかった。

お母さんに巧がどこにいるのか聞いてみたところ、

 

「え? 貴方たっくんにスクーターの配達替わってって頼んだんでしょ?」

 

よく見たら台の上に置いたはずの配達先のメモの位置が変わってる。開いてみれば中に書いてある文字も変わっていた。

 

"俺はあの親子とは絶対に遊びたくねぇからお前の代わりにパン届けに行ってやる。1時間は空けるから俺にお前が貸してる部屋で一緒にキュアラープリティでも見てりゃいい"

 

「こらー、ちょっとたっくん待ちなさーい!」

と言って店のドアを飛び出したときには、巧のバイクはちょうど緑の丘の頂上を越えたところで、すぐに見えなくなってしまった。




質問コーナー

Q:巧ってパン焼けるの?
A:焼けないね多分。サンドイッチのようにパンをもとにした簡単な調理なら出来るだろうけど。
  なので彼は専らトレーや調理器具洗いをしています。あとたまに品出し。

Q:モカさんはこの後配達があるのにキュアラープリティ見る余裕があるの?
A:そのあたりの話は第2話をお待ちください。

Q:なんでスクーターのボックス蓋(中身空っぽ)が開いてるだけで巧は嫌な予感がしたの?
A:巧が世話になっていた「彼」がちょくちょくやっていた、ということで納得してくれないかなぁ?(無理矢理)

Q:ホームレスの集団は何者?
A:ホームレス、それ以下でも以上でもない、再登場予定も今はないです。

Q:巧はどうやってホームレスを切り抜けたの?
 巧はなぜ大学の警備員に?
 巧はどうしてモカさんについてきちゃったの?

A:それらの過程は全く考えておりません。
  井上敏樹先生の脚本はストーリー本筋に深く関係ないところでは割とそういうのが多いので、ここでも考える必要はないと思ったからです。555本編でもすっ飛び展開はちょくちょくあったでしょ?(特に終盤)

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