真冬に書いたこたつのお話。
「やっぱり冬はコタツにミカンかな・・・。」
ホームセンターの家電コーナーで俺がそう呟くと律が
「高野さんはコタツに入ったことあるんですか?」と聞いてきた。
基本的には都会っ子の俺だから経験値は決して高くない。
それでも未経験なわけでもない。
「ああ。香川のばあさんちは掘りごたつでな、なんつーか、和の憩いって感じだった。」
それほど大きな家ではなかったが丁寧に作られた和住宅で、爺さんのたっての願いだったという掘りごたつが部屋の真ん中にあって、大昔は練炭をくべたりしたそうだけどその時にはもう普通の電気のコタツが据えてあるだけだった。
それでも子どものころに遊びに行ってその中にもぐったりして楽しんだ記憶がある。
「へえ・・・。」
「お前は?」
「俺は入ったことないです。」
「東京に住んでるとそこまで寒くないし、洋間だとコタツも置けないよな。実際家にはなかったしな。」
そういいながらちらりと律を見ると何とも真剣なキラキラした目でコタツを見つめている。
「コタツ入りたい?」
「え?」
「スゲー見つめてるし。」
「えっと・・・。」
「なに?」
「高野さんとお正月にコタツミカン出来たらちょっとうれし・・・。」
え!?何それ!?
俺がいきなりな律のドストレートな言葉に硬直していると
「や、ち、違います。つい・・・、あの・・・。」
律が真っ赤になってしどろもどろになる。
これはもう!
「買う!」
俺はその場にあった商品の番号券を握りしめてレジにさっさと向かったのだった。
「どーぞ。」
家でコタツをセットして律の言うミカンも籠イン(オンか?)セット済み。
さて、どう出る?律?
「失礼します・・・。」
頬を染めながらおずおずと俺のめくった布団の中に足を入れる律。
なぜそこで赤くなる?
ここはコタツでベッドじゃないんだけど。
お前かわいすぎるから・・・。
「あ、あったかい。」
語尾にハートマークついてるんじゃねーの?お前それ反則・・・。
いつもはコーヒーなのに、なぜかコタツにはお茶かな?って感じだよな。
ってことで、緑茶を入れて目の前に置くとまたキラキラした顔でニコニコ笑う。
ズズっとお茶を用心してすする唇が何とも言えずいい。
※というか、律なら何でもいいってことか?
「ミカン食べていいですか?」
ミカンは三ケ日だからうまいと思うぞ。
とか本当なら普通に言えばいいのに、いじめたい気質の俺はそうは言わずに「どーぞお姫様。」と籠をほんの少しだけ押してやると
「お姫様って何ですか!」
と案の定律はそっぽを向く。
ただしミカンは一つ掴んでる。
「じゃあ王子様か?」
俺も一個ミカンを取ってそう言うと
「姫とか王子とかなんなんですか。」
とまた抗議の言葉が口からは出てくるけど指はほら、ミカンの頭に爪を立ててもう剥きはじめてる。
そんなにミカン好き?
ちょっと意地悪な気持ちが沸いて、
「コタツだから子猫でもいいな。ゴロゴロ喉鳴らして。」
と、指で顎をなでるとびっくりしたのかミカンを飛ばしてしまいそうになってる(律がまたかわいい)。
口がにやけるのがわかる。
自分のミカンは置いて律の手からミカンを取り上げて、つるりと厚い外の皮を剥き、房を一つ取り分けて白い筋状の維管束をツイっと取っていると、律のじっと見つめる目が少しウルウルして見えるのは妄想か?
「そんなに食べたい?」
綺麗に剥きあがったミカンの房を唇に寄せると、律ははっとしたような顔をして俺の顔を見た。
「?」
「爪に・・・、白いのがついちゃいましたよ?」
「ああ、そうだな。」
「綺麗な爪なのに・・・。」
そう言うと律の指が、そっと俺の指を掴んだと思ったらその指先ごとミカンを口に含んでチュンと音を立てて吸った。
そして唇から離された俺の指先は行き場を失って宙に取り残される・・・・。
「やっぱりおいしい・・・。」
そう言ってはにかむ律の顔に、結局仕掛けたつもりだった俺がドキドキした冬の出来事だった。