ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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怪物祭り

 今日も早朝から激しい朝練をこなし、さらにダンジョンに行こうとするベルと、あちこちで情報をあさったり換金したりしている瓜生が歩いていた。

 大きな祭りらしく、オラリオ中心部ではものすごい人が集まり、屋台の準備も始まっている。

 主神ヘスティアは今日も帰ってこない。

「ヘスティアさま、どうしたんでしょうね……」

「大切な用事、ってことだな。行方不明ならどこに連絡すればいいのやら」

 その時、猫人とエルフがベルに声をかけた。

『豊穣の女主人』の同僚であるシル・フローヴァが祭りに出かけたが、財布を忘れた、知り合いであるベルが届けろ、と。

 

「そういえば、ウリュウさんとリューさんって、まぎらわしいですね」

 ベルの言葉に、リューは表情を変えなかった。

「まぎらわしいのニャ!ウーウとやら、変えるのニャ」

 猫人の声に瓜生は肩をすくめた。

「好きに呼んでくれ」

「無茶を言ってはだめですよ。失礼しました。その……」

「瓜生、ウリュウです。紛らわしい名前ですまない」

 エルフは、あまり関心がないようにベルの方を向いた。

「今日はそちらの用事をするんだな。シルさんとの縁は大切にするんだろう?」

「縁、そうですね。いってきます!」

 刀やシールド、重い緊急用ポウチを瓜生に渡し、嬉しそうにベルは走り出した。

 大都市自体が初めて、そこでこれほど大きな祭りと言われれば、若いベルは引き寄せられてしまう。

 

 ベルにとって、それは圧倒的だった。

 多数の人間。それだけでも衝撃的だ。農村の収穫祭りとは、まったくの別物。

 膨大な欲望とエネルギーが渦を巻いている。

 そこでやっと会えた主神ヘスティアが、かわいい女の子として甘えまくる。

 戸惑いながら、とにかく楽しかった。

 

 瓜生にとって、群衆は脅威でしかない。何かあればパニックになる危険物だ。

 また、まずトイレの心配をする。

(臨時トイレは完備しているようだ。【ガネーシャ・ファミリア】とギルドは有能だな)

 と見る。

 また、

(モンスターを調教する……動物程度の知性はあるのか?どれだけの知性がある場合、どう世論を動かすか……動物の権利の歴史を読んでみるか)

 とも考える。

 祭りで人々がかわす会話を聞く楽しみはある。情報収集だが、楽しみでもある。

 酒場の知り合いもいる。いくつかの酒場や食堂には、期間限定かもしれないと断りを入れて酒、チーズ、ソーセージなどを売っている。金より情報収集のためだ。

 特にほしいのは、信用できる情報屋だ。ギルドはある程度新聞のような面を持っているが、それだけでは足りない。

 

 そんなとき、モンスターを管理している【ガネーシャ・ファミリア】の人が、とある美の女神に魅了され……檻から数匹の怪物が放たれた。

 それはひたすら、小さな女神を追って人的被害は出ないが……

 

 

 祭りが危険な雰囲気になった……そう感じた瓜生は屋根に上った。敏捷は最底辺だが、一応レベル2の身体能力はある。

(群衆に流されるよりは安全だし、いざとなれば高所から狙撃する)

 と、考えて。

 屋根を移動している先客がいた。アマゾネス姉妹とエルフ。

『豊穣の女主人』でも見た顔だ。

「何か用?」

 ティオネ・ヒュルテの、圧倒的な実力と大手ファミリアの誇りがある眼に、瓜生は気圧されながら答えた。

「群衆といるより安全かと思って。それに武器がない?と耳にしたんですが。おれも不安なので。……ここの基準では、いいものじゃないと思いますけど」

 瓜生はそういって、別の階のベランダで手を隠し、出した。何本も長大な武器を強引に持っている。1800ミリ=1.8メートルあり、全体が木刀以上に太く中まで詰まった鋼棒、断面が八角形の鉄道用バール。市販最大級の斧。どちらも重い。

「ありがとう、借りとく」

 姉妹はこだわりなく、かるがるとバールと斧を手にし、道の真ん中に着地する。

「知らないなんてモグリですか?怒蛇(ヨルムンガンド)ティオネ・ヒリュテさんはククリ使いですよ。というより私たちに声をかけるなんて誰ですか!」

 レフィーヤがケンカ腰で叫んだ。

 瓜生は相手にせず降りる。

 そのとき。地面が激しく揺れた。地面を食い破り、身長より太い鞭が、地面から伸びる。

 群衆の悲鳴。三人の、一級冒険者がすさまじい力で跳び、巨大な何かを迎撃した。

 瓜生は脇からFN-P90を抜き、発砲した。

「全然効かない」

 手を地面に近づけ、左手を腰に回す。

「きゃあっ!」

 レフィーヤが悲鳴を上げた。

「爆発!」

 瓜生が叫び、手榴弾を投げる。

 とっさに飛び離れるアマゾネス姉妹、爆風手榴弾の爆発が、硬い皮を破る。加害半径が小さく、爆風が主な打撃となる手榴弾で、攻撃手榴弾とも呼ばれる。高性能爆薬の爆風は、至近距離と閉所ではすさまじい威力になる。

 ひるんだ敵を見たアイズの、正確な追撃。

「ヘルメスのところの噂、爆発する油?」

「硬い!これじゃ、拳じゃ痛いだけ」

「ないよりまし程度だけど、あってよかった!」

 アマゾネス姉妹の、細腕からは信じられない力。斧が鞭のようにしなって叩きこまれ、厚い刃がなまりつつ傷をつける。そこにバールの、鉛筆のように削られた先端が刺さる。強靭に徹した鋼棒が弓のように曲がる。

「あれ、あの二人のところに向かってる!」

 レフィーヤと瓜生のところに激しく向かおうとする、巨大で皮が硬い蛇。

「炎!」

 瓜生が叫んでサーメイト手榴弾を投げる、激しい炎が昇るが、速い巨体はそれもかわし……斧が側面に叩きこまれる。

 

「あ、ああ……」

 動けないレフィーヤをかばうように、瓜生が腰を落とした。その足元に、巨大な、複雑な飾りがついた棒などが出現した。

 最新のボルトアクション対物ライフル……威力もサイズも重量も破格の、20ミリ機関砲弾。単発の、ピストルモードの40ミリグレネードランチャー。

 装填済みの弾倉を出せない彼が動きつつ戦い続けるには、単発でこめてすぐ発砲できる超大口径ボルトアクションやポンプアクション、単発グレネードランチャー、中折れ二連がよい。

 機関銃は、発射開始までわずかだが手間がかかる。

 無反動砲や対戦車ロケットランチャーは、残念ながら人がたくさんいるし壁がある。後方炎で群衆・建物・自分が傷ついてしまう。移動を考えなければ旧式の対戦車砲もあるが……

 巨大な対物ライフルを伏せたまま二脚で支え、弾倉に弾を詰める暇がないので直接装填、即座にボルトを閉鎖し発砲する。

 すさまじい音……大気そのものの揺れ、砲口炎。マズルブレーキに吹き分けられた爆風が塵埃を吹き飛ばす。目がない巨大な蛇が、巨大な斧で切ったように切断される。

 瓜生とレフィーヤに突撃してくる一体がどうと倒れ……二体出現し、風をまとったアイズを狙った。

 アイズが危ない、と見たレフィーヤが慌てて呪文を唱え始めた、そこに突然地面を割った触手。

 立ち上がり、彼女を突き飛ばした瓜生の胴体にめりこんだ。かばいきれず、レフィーヤも殴り倒された。

「う」

 瓜生がうめいた。

 常時発動の魔法、純粋な力でできた不可視の鎧が威力の七割以上を殺す。【ヘファイストス・ファミリア】の高価なコートが衝撃を吸う。セラミックプレートが砕けエネルギーを食い分散させる。

 それでも、強烈な打撃。

「ぐううっ」

 異様に高い『耐久』ゆえに、死ななかった。これまでの冒険で経験があるから、冷静でいられた。

「あ、ああ……」

 殴り倒されたエルフ少女は、ダメージもあり呆然と尻もちをついている。ここはダンジョンではない、防具も何もつけていないのだ。

「レフィーヤ!」

 ティオナが叫ぶ。

「きみと、おれを、狙っているな」

 瓜生はレフィーヤに声をかける。腰を落とし、左手で抜いたグロック20を右手に持ち替え、触手を撃ち続ける。

 ほとんど当たらない。たまに当たっても止まらない……ひるませる程度。自動拳銃弾としては過剰威力、故郷では大型獣に使われる10ミリオートでさえ。

 右腕を殴られ、グロックが飛ぶ。内臓を底からこね回す、激しい痛みもまだ残る。

 とどめとばかりに、多数出現する触手……を、とんでもなく巨大な鉄が押しつぶした。道路工事用の特大鉄板。厚く重く広いものが10枚以上、重なって落ちる。その隣に、大きな庭石がいくつも出現する。即席の土手だ。

 だが、まだ多くの触手が残り襲う……瓜生は強引に左手で右腰のリボルバーを抜いて撃つ。

(くそ、やはりリボルバーじゃ弾数が足りない……焦るな!)

 庭石の影に隠れ、手榴弾を放る。そして深呼吸し、左手で取り出したハイポーションを半分右腕にかけて残り半分を飲み、レフィーヤに手をさしのべる。

「なにするんですか!」

 レフィーヤが瓜生を殴りつけ、それが不可視の鎧に受け止められる。その感触に彼女はいぶかしんだ。

「鉄板の上ならある程度安全だ。君は魔法使いだろう?なら要塞内からぶっぱなせ」

「そんなことじゃないです!エルフに触るなんて!守られるのはイヤ!」

「く、非戦闘員として扱うべきだな。誰か!この子を助けて」

 瓜生がレフィーヤにポーションを一つ押しつけて、ギルド職員に彼女を託そうとした。彼は街中でも装備をしており、ポーションもいくつも持っている。

 常時発動の魔法、そしてレフィーヤの魔力を狙う触手が攻撃を続ける。

 瓜生はポーションを飲み、土手ごしに手榴弾を放った。水平二連の、標準より強力な10ゲージ散弾を二発こめ、中折れを伸ばして二連射する。

 下の地面から強烈な力で殴られる鉄板が、あちこち逆に盛り上がり、そのまま形が残る。

 爆風手榴弾が、触手を粉砕する。近すぎるが、土手で無事だ。

 レフィーヤを狙う触手に抵抗し続ける。そして離れた、とてつもない蛇に、一発ずつ20ミリ砲弾をこめては射撃を続ける。すさまじい音。

(守られる、守られる……この知らない人と、それにアイズさん……)

 アイズが狙われている。

「魔力を追っている?」

 と、ティオネが気づく。アイズのレイピアが折れた。

「ここだ!剣!」

 瓜生が叫び、風をまとう『剣姫』が、男が何本もさしあげる分厚い剣を二刀につかんで、鞘を捨てながらまた飛び上がる。

(……100万、ぐらい)

 整備中の愛剣とも、【ゴブニュ・ファミリア】の代剣とも比較にならない鋼製だが、まさに、

(ないよりも、まし……)

 である。

 

 レフィーヤは、打ちのめされていた。巨大すぎる怒りに炙られていた。

(非戦闘員として扱う)

 屈辱きわまる一言が、何度も心に響く。猛烈な炎となっておのれを焼く。

 この乱暴な、わけのわからない戦い方をする戦士の正しさが、いやというほどわかった。

(戦いを最優先しなかった。勝つことよりも、追いつきたいとか、馬鹿にされたくないとか、足手まといがいやだとか……感情ばかり)

 雑魚と言われ、それに納得して、強くなりたいとダンジョンに向かったベル・クラネル……同じだった。そのことは知る由もないが。

「もうすぐ、【ガネーシャ・ファミリア】の人が助けにきます」

 ギルド職員の言葉が、もっと深く打ちのめす。

「戦い、戦い……」

 立ち上がる。

 無数の触手が、別の子供を襲おうとしている。ただの人間の力しかない、主神ロキも。

 アイズも。ティオナも。ティオネも。戦い続けているが、本来の武器ではない……『恩恵』のない鋼の弱さ、決定打を与えられない。瓜生の同胞用に設計されたバールは、明らかにひん曲がっている。彼の故郷には、世界記録の十倍のウェイトを余裕で持ち上げる少女が、皮がヤスリより硬い猛獣をぶった切るための刀剣など、売っていないのだ。

 瓜生も戦い続けるが、マガジンに装填する暇もなく、連射できない。機関銃を初期状態から射撃開始まで整備する時間が惜しい。後方炎のあるロケットランチャー類は使えない。

 40ミリグレネードの多目的榴弾……主力戦車には通用しないが、それなりの成形炸薬弾頭が硬皮を貫く。サーメイト焼夷手榴弾の数千度が灼熱の光を放ち、硬皮も焼き破る。

 それでも、巨大な怪物は次々に出てくる。頻繁に地面を破り、魔力源を襲う触手から自分とレフィーヤ、エイナや自分より後ろの子供たちを守ることに、時間を取られている。本体を攻撃する時間がとれない。

 牙だらけの花の奥に見える魔石にP90が乱射されるが、花弁すら貫けない。触手も止められない。

「ああああっ!」

 レフィーヤは叫んだ。

(弱い、弱い弱い弱い、弱いっ!あたしは、弱い!)

 自分の弱さを直視した。

(弱い……でも!できることをする、してみせる!)

 憧れの人、大切な主神、見知らぬ子を、守るために。

 詠唱を始める。

 20ミリ機関砲弾の轟音と爆風にもひるまず。

 瓜生は、5.5メートル、50キログラム以上の鉄道用レール数本を〈出し〉てアマゾネス姉妹に声をかけた。二人は、常人は一人では持ち上げることもきついそれを、身長より伸び枯れたセイタカアワダチソウを子供が振り回すように、かるがると振るう。高品質鋼の太いレールはしなって疾り、その重量は威力となる。

(前衛を信じ、役割を果たす。仲間の期待に応える)

【ロキ・ファミリア】の遠征で、何度も見ていた。大盾を構える壁役たち。敵の攻撃を受け止めるガレス・ランドロック。その背後で弓を引き、呪文を唱える仲間。

 レベル2のサポーターは、重い荷物を担ぎ危険な道を歩き、魔物の血を浴び内臓にまみれて魔石をえぐり出す。サポーターをさげすむファミリアも多いが、【ロキ・ファミリア】は専業のサポーターを作らず、あくまで若いうちの下積みとし、必要な仕事だから敬意を持って扱うようしつける。

 殴りこみ華やかに戦う、アイズやベート、アマゾネス姉妹……巨大呪文を堂々と唱えるリヴェリアばかりを見ていて、今までは目に映っていたのに見ていなかった。

 パーティで戦う。自分の役割を、忠実に果たす。

 今ここには、ファミリア仲間ではない人がいるけれど……ともに戦っている。

(みんなみたいに、ちゃんと、仕事をしたい。仕事をしなかったら、本当にお荷物になっちゃう。いやだ。非戦闘員扱いされて、それが正しい。いやだ。アイズさんが傷つく。いやだああああっ!)

 誇り高く立ち上がり、名乗る。

 二重の呪文。二つ名の由来、把握したエルフの呪文なら使える……詠唱時間は長くなるが。尊敬する王族(ハイエルフ)、リヴェリア・リヨス・アールヴの大呪文。

 三人の尊敬する美女が、彼女たちから見ればプラスチック定規のように弱い炭素鋼の武器で、魔力にひかれて全力で襲う怪物を、どうにか食い止めている。

 10ゲージ散弾が、触手を殴りつける。土手を越えて転がされる手榴弾が、爆風の壁を作る。

 ついに詠唱が完成し……すさまじい冷気が食人花を凍らせた。機関砲弾が、剣が、バールが、レールが氷の彫像を砕く。

 レフィーヤは力尽きて崩れ……アイズが抱き留めた。

 瓜生はもう一本ポーションを飲み、四人の高レベル冒険者に配った。

「あー痛かった……うあう」

 と、声を上げ、深呼吸して、痛みの記憶を処理する。巨大な対物ライフルで、警戒は続けている。

「ありがと!」

 ティオナの明るい声。

「いや、おれこそおかげで助かった」

 瓜生一人だったら、P90・グロック・リボルバー、少ない手榴弾では押し切られていた。それははっきりわかる。

(先に大鉄板を出して対戦車砲か、後方炎による付随被害を無視して無反動砲……いや、後知恵だ。やはり、今の装備じゃダメなんだ)

「やったじゃない!」

 と、ティオナはレフィーヤを抱きしめる。

「服……」

 買ってもらった服が汚れた、好意を無にしたことを、アイズが嘆く。

「あれは、魔力を求めて動いたようね。レフィーヤ、アイズ、……」

 ティオネが瓜生の、名も知らないことに気づく。

「常時発動の魔法、不可視の鎧、ですね?」

 レフィーヤの言葉にうなずく。

「隠せないな、そういうことだ」

 その手に、箱入りのククリナイフと斧、ベルト二本が出現する。箱を開け、さしだす。

「今更だし、大した品じゃないが」

「ありがとう。とても助かった」

 ティオネが鋼のククリとベルトを受け取り、腰につける。

「一点集中の、すごい威力!詠唱も何もなしであんな炎や爆発!」

 新しい斧を渡されたティオナが、はしゃいでいる。

「……というより、なに?なんなの、あなた……」

 今更のように、ティオネとレフィーヤが瓜生を見た。

「すまない、仲間の安否を確認したいので」

 と、瓜生が早足に歩き出す。その歩く道で、膨大な鋼や石がふっと消えていく。

 後処理にかなりの時間を取られた。【ロキ・ファミリア】の四人は瓜生のことを、なんとなくごまかした。エイナにはしっかり見られていた……彼女は上司にありのまま口頭で言い、あまりのことに容量オーバーした上司がごまかした。

 その後、アイズはダイダロス通りの英雄となった、白い髪の少年を見つけた……が、声はかけられなかった。

 

 

 わずかに前、別のところで。女神を狙い続けるシルバーバック……彼女を抱え、激しい筋肉痛も無視して、この数日の経験も糧に逃げ続けたベル・クラネル。

(あのポウチがあれば)

 そう思ったが、瓜生に返してしまっていた。

 逃がしたはずなのに、追ってきた女神。家族。彼女はベルの、数日分の【ステイタス】を更新し……『ベスタ』を抜くと、シルバーバックに対峙した。

 レベル1では対抗できない速度。レベル1の腕力に鋼の武器では、斬りつけても傷もつけられない毛皮。

 だが、ベルのステイタスは、二十日かそこらの新人としては信じられない数字だった。特に敏捷は、Bに迫っている。

 緩急のついた足。短い期間だが、多くの戦闘経験。守るべき少女。

 ゆるりからすっと歩む。腰を落とし安定を崩さぬまま、ぬかるみをすべるように鋭い弧を描き、止まらず。無理に急所を狙わず、しかと腰をきめて流れの中で腕に斬りつけ、歩き続ける。

 幼いころから見てきた、祖父の背中。体が模倣し、14年耕し伐った、鍬・斧・鎌の使い方……正しい刃筋。それはベルの意識されない体の記憶として、練習と実戦、武神の指導で熟成し、一滴だけ滴り芳醇な香りを放つ。

 唯一の主とともに成長する、黒く輝く刃は、正しく使われれば無限に切れ味を増す。よく研いだ鎌で草を切るようにベルの胴ほどもある腕を斬り飛ばした。

(すごい)

 一瞬の興奮、だが戦いの経験、耳に残る瓜生の声は、それを封じ込めた。

 オークを切り倒そうとした瞬間、救われた屈辱も瞬間に襲い、胸を焼く。

(まだ戦いは終わってない!よく見ろ)

 シルバーバックを、見る。怒り、戦い続けている。

(殺す……)

 断固とした意志を感じる。受け止める。

 半歩、左に歩く。深く腰を落とし、相手のわずかな腕の動きを見て、閃光のように突進した。

 もう、万で数える回数体に叩きこんだ、全身での突き。実戦、歩き素振り、ルームランナー、バーベルで鍛えた足腰。

 すさまじい熟練度上昇が体に反映され、スピードになる。人体の、鍛えて筋肉が強化され、身体制御が向上するはたらきが、神血のちからで人体生理と限界を超える。

 巨大な片腕の、さらに内側。

(振りかざす太刀の下こそ地獄なれ。ただ踏みこめよ先は極楽……)

 武神の教えが、脳裏によみがえる。

 体ごとぶつけた神刃、貫通に優れた小烏つくりは格上の魔物の毛皮と筋肉をやすやすと貫き、魔石をみごと破壊した。

 守り抜いた少女神の無事な姿と、見事な武器……そして、人々の拍手と称賛。

 ベルは感動に震えていた。憧れのアイズの視線にも気づかなかったほど。

 

 それからしばらく、瓜生は見当違いの方向を探した。ホームに一度帰った。さらにギルドまで行って、やっと二人の無事を確認した。

「何をやっていたんだい、主神のピンチを」

 と言われた。

 もし瓜生がそちらに向かっていたとしたら……




A.オッタルにひねられただけです。接近戦では普通のレベル2ですから。
…目に460SW、当たることがありえません。

……ブラック・エンジェルズの、撃たれて死なず筋肉で弾をはじき出す芸当ができる、あたりが落としどころでしょうか。そうなるとモンスターも……まあそれは、敵が強ければそれだけ口径と炸薬量を上げればいいと。
上級冒険者なら銃弾など余裕でつまめる、としたら、レベル6がパチンコ球を投げればポイズンウェルミスなんて楽勝だったでしょう。

…ということは、ラディッツはレベル6よりはかなり上なんでしょうね。まあ一撃で大陸を吹っ飛ばすピッコロ大魔王より上のピッコロさんより強いですし。

ちょっと機関銃の描写に間違い(弾薬は、箱で供給され基地でベルトリンクすると思っていました。実際にはベルトリンク状態で出荷されるようです)があったので修正。
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