ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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小遠征

 時間より15分早く、瓜生はダンジョンの入り口にいた。

 ベッドの下には地下室でなければ床が抜けるほど金とプラチナの地金、薄型ノートパソコン・太陽電池・大英百科事典全部を含む多くの電子本を隠し、使い方のメモをつけた。

 先にダンジョンに出かけるベルに、

「もしおれが帰ってこなかったらベッドの下を見ろ」

 と言っておいた。

 

 目立たないようにフードをし、目出し帽をかぶって人相を隠している。

 脇のカバンに、ガリルACE53……7.62ミリNATO、100発入りC-MAG。銃床を縮めて持ちやすくしている。

 右脇にはM870ショットガンの折り畳みストック。

 背の袋に、50口径対物ライフル。軽量、セミオート、ブルパップ式で全長が短い。大型マズルブレーキで反動も軽減されたもので、弁当箱のような箱型弾倉にソーセージのように10発詰めてある。

 五階ではミノタウロス。祭りでは食人花。

(この世界では、並大抵の火力じゃやっていけない……)

(小口径高速弾には、今度こそ愛想が尽きた……)

(リボルバーも、弾数が少なすぎる。グロックも当たらないし、10ミリオートでもまだ弱い……)

 最初から大口径の火力で圧倒する、重さは『恩恵』のパワーで押し切る。そう決めた。

(50AEのブルパップサブマシンガンがあれば最良なんだが……)

 市販されていないものは、出せない。

(この世界を去って、力を失ったらどうするか……それは今考えることじゃない)

 とも思っている。

 上着の下は、【ヘファイストス・ファミリア】の店で170万した薄い鎖帷子。さらに胴体はがっちりセラミックプレートを入れている。

 

「来たわね」

 人相は隠しているのに、ティオネは即座に見破った。

「彼は来なかったか」

 フィンが、ベルがいないことに気づく。

「もっと自信がついてから、と」

 長槍を持った小人は静かにうなずく。

「今日の目標は18階層、安全地帯の街だ」

「わかった。おれは……」

「皆にも、ある程度力を見せてほしい」

 微笑しうなずきかける。

「わかった。9時から0時を含め1時まではおれが守る」地面に杖で、時計と範囲を描く。「この範囲には入らないでくれ。また、おれが叫んで何かを投げたら、爆発から身と耳と目を守ってほしい」

 そう言って、耳栓と安全ゴーグルを配る。

「狭い範囲だったけど、結構強烈な爆発だったわ。しかも詠唱もなく」

 ティオネが思い出す。

「どの道を通るか、指示してくれ」

 瓜生はもう歩きはじめる。

「わかった。念のために聞くが、サラマンダー・ウールは持っているね?」

「はい、ある」

 上着をまくって見せる。フィンがうなずき、一行はダンジョンに踏み入った。

 

 凄腕の冒険者たちは、ただ茫然とした。

 その範囲内に人間型モンスターが出現したら。瓜生が銃を構え、狙って、細めの光……目がくらむ、目玉焼きが焼けるほど強力なフラッシュライトが短く顔を照らし、同時に口を狙って一発、後頭部が吹っ飛ぶ。すぐに少し下、胴体の中央に一発。

 それだけで、キラーアントすら確実に死ぬ。

 多数のモンスターが突進したら、爆風手榴弾とフルオート。

 早足に歩き続けながら、ひたすらそれが続く。

 ヘルハウンドも、破片手榴弾の遠投、フルオートで先制し炎を吐かせない。パープル・モスは散弾銃にその場で細かい散弾をこめて一掃する。ポンプアクションやボルトアクションには、直接薬室に手を入れることができ、次に発射する弾を選択できるという長所がある。

 深くなってから、初弾は50口径の大型ライフルを使うようになった。オークやミノタウロスも一発。

 インファント・ドラゴンも、三つまとめて放った手榴弾の一つが、腹の真下で爆発したら即死した。

 

「とんでもないな」

「あれ、まだ本気じゃなかったの?」

 リヴェリアとティオナの会話にフィンが答える。

「条件が悪かっただけだろうね。弾を箱に入れておかなければ、連打できないようだ」

「それ、まるで魔剣みたいじゃないですか」

 レフィーヤがケンカ腰で言う。エルフは魔剣を憎んでいる。

「魔法は使ってない、火が燃えるのと同じだ」

「すまない、あとは説明する」

 リヴェリアが引き受けた。

 瓜生は戦闘中は会話をせず、ひたすら警戒し、歩き、撃ち続けた。たまに予備弾倉が少なくなれば休憩を申し出て、菓子とスポーツドリンクを配り弾倉に弾をこめる。

 虚空から出現するさまざまなものに、皆比較的すぐに慣れた。

 

 何度目かの休憩で。

「それ、ウリ以外も使えるの?」

 ティオナの言葉に、瓜生はうなずいた。

「誰でも使える。弾があれば」

「ちょっと貸してもらえるか?」

 フィンの言葉に瓜生は、

「三つ注意してほしい。刃物の先端を人に向けない、と同じ事だが……

 絶対に銃口を、自分を含め人に向けるな。撃つ時以外は引き金に触れるな。常に、何もしていなくても突然弾が出るとみなし銃口を安全方向に」

 そう言って、44マグナムリボルバーいくつかと弾を〈出し〉た。

 アイズとレフィーヤは断った。

 瓜生が見本を見せる。

「ふむ、これはわかりやすい」

「リボルバーは、スイングアウトされていれば絶対に発砲されない、安全だと周囲に示せる」

 ちなみに中折れなら折っていれば、ボルトアクションなら遊底を外していれば絶対安全を示せる。

「なるほどね。刃物と同じく、敵意がないと礼で示す必要がある。そうだね?」

「試射は壁を撃てばいいが、跳ね返った弾が危険だ。角度をつけて」

「復唱する。絶対に銃口を、自分を含め人に向けない。撃つ時以外引き金に触れない。常に、突然弾が出るとみなして銃口を安全方向に向ける。跳ねる弾にも注意する。これでいいか?」

 フィンはそう言って瓜生のうなずきを確認し、数発ずつ撃った。あっというまに扱いを覚え、反動もやすやすと受け止めて見せる。

「もっと強力でもいいよ」

 と言われ、S&W-M460に交換する。M500を選ばないのは、少し口径が小さく初速が高いので反動が少なく、貫通力が高いからだ。

 

 そのまま、散歩のように中層を抜け、18階層を目指す。

 瓜生も、自分が担当していない方向からのモンスターを瞬時に倒す大手ファミリア幹部、第一級冒険者の強さに驚いていた。リボルバーにもすぐ順応したことにも驚かされる。

(おれより腕はいいじゃないか……超人だな)

 と思うほど。

 といっても、アマゾネス姉妹はあまり銃は好みではないようで、フィンとリヴェリアが二挺ずつ持った。ティオナはおもちゃ、ティオネはフィンが学んだからつきあっただけだ。

 

 

 想定していたよりずっと早く、安全地帯である18階層、冒険者の街リヴィラに着く。

 初めての瓜生は、珍しすぎる光景に夢中になるのを抑え、武器を隠して警戒していた。

 そこでは、殺人事件が起きていた。レベル4、しかも最大派閥【ガネーシャ・ファミリア】の冒険者だ。

 

 光を放つ水晶に彩られた、森や湖がある巨大な安全階層。いくつものバラックが並ぶ。

「仲介してくれれば、小屋を出すこともできるが?」

「それはありがたいな」

(それだけで、今回稼ぎたかった金額どころか、遠征二回分の費用が賄えるな……)

 とフィンは内心頭を抱える。外には何も出さない。

「え、もしかして、テントじゃなく暮らせるの?」

 ティオナが大喜びしている。

 この街はすべてがぼったくりで、宿に泊まろうとしたら信じられない金額になる。

「街の顔役と話をつける必要はあるな」

 逆に、瓜生の存在は街の権力者の利権を切り崩す。彼もそれはわかっている。

「親指がうずいている。最大限の防衛準備をたのむ。ティオネ、リヴェリア、彼を護衛してくれ」

 フィンの言葉に、

「わかった。あちらの物陰に、斧と盾を50ずつ置いておく」

 それだけ言って、瓜生はすっと引っこむ。ただでさえ、有名な冒険者たちに混じる、目出し帽で顔を隠し、奇妙な大荷物を持った男は目立つ。

 リヴェリアが持ってきたマジックアイテムで印象をごまかしていたが、一人余計にいること自体は目立つし、

(何か、うまい汁を吸える……)

 きっかけにならないか、飢えた虫より熱心な冒険者たちが百人近くいるのだ。

 

 瓜生が隅に引っこんでしばらくして、街の封鎖と集合が呼びかけられた。

 フィンたちからやや遠くにいる瓜生は、布袋に入れたかなり大きな筒を二つ背負っていた。




全体をやると長くなるので分割します。
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