ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
アイズ・ヴァレンシュタインは、ベルが落とした手甲を拾った。
少し前、リリを襲うと聞いたエイナ・チュールに頼まれた。そして瓜生と合流し、気配を消して見守っており、それで落とした防具を拾ったのだ。
ベルと瓜生の一行に合流はしなかった。
エイナが頼むまでもなかった。先に、【ロキ・ファミリア】の冒険者は何人もベルを影から護衛していた。フィンが情報網で、リリやベルを襲撃する話を聞いたためだ。
護衛計画は瓜生も加わっていた。誰にも姿を見られていないが、アナキティ・オータムもいる。
レフィーヤがベルのパーティに加わったのは、確かにレフィーヤの成長のためもあったが、ベルの近くに目を届かせ、
(【ヘスティア・ファミリア】のうしろだてに【ロキ・ファミリア】がある……)
と、噂をひろめるためでもあった。
無論、人に聞かれれば、
(そんなことはない、同じ【ファミリア】でちょうどいい者がおらず、都合がよかったから……)
と、ごまかすことにしている。それでも、人は勝手に解釈する。
護衛が目的なら、よりバランスのいい者をつけたろう。だが、レフィーヤはレベル4の準幹部以上に顔と名を知られており、宣伝効果が高い。
にもかかわらず襲撃があった……ならば一罰百戒、みせしめ。
(『妙な音』に手を出すファミリアには、消えてもらう……)
それが事実上決まった。
ついでに、ロキの酒欲を満たすためでもある。また、ベルがリリを救いたいといったので、それも満たすことにする。
ややまどろっこしい方法だが、確実に……
別の影響もある……アイズは気配を気取られることなくベルたちの戦いを見た。ベルの、魔法を使ったときや使っていないときの、まだ一月も経っていない前とは別人のような強さを。
強くなることに飢えている彼女が、関心を持つのは必然だった。
ダンジョンを出た一行を、【ヘファイストス・ファミリア】のバイトを早上がりしたヘスティアが待っていた。驚いたことに、ヘファイストスまでやってきた。
そして、巨大な塔の、【ヘファイストス・ファミリア】の防音区画に。部屋の一つでヘスティアはリリと二人きりになり……神の力、嘘を見抜く力を用いて詰問した。
リリは、ひたすらベルへの忠誠を誓い、それは神の目にも嘘ではないとわかった。
防音室内でヴェルフは、主神と瓜生をにらんでいた。
「どういうことなんだ」
「あなたにはいやな思いをさせてしまったわね」
ヘファイストスがため息をつく。
「ヴェルフ・クロッゾ、頼む。きみの名を謀略に使わせてくれ」
瓜生がかなり真剣に頼んだ。
「……どういうことだ?」
「リリルカ・アーデに報告させる。おれが魔剣鍛冶だ、それも簡単に量産する方法を見つけた、と」
「……」
1ヘファイストス・ファミリアに、クロッゾの末裔が入った。
2『妙な音』は魔剣鍛冶らしい。
3『妙な音』は、クロッゾの末裔だ。
どの噂も、実際に流れている。
1は事実だ。事実だからこそ強い、それを利用して2と3を強める。
さらにその噂を流す相手を限定することで、まるで地下水に放射能マーカーをつけて地下水脈を知るように、噂の流れを知る。
ほかにも複数のうわさを流している。
「汚いことをする。おれとベル、ビーツと神ヘスティアの安全のためだ。このままでは、みんな外にも出られないし、ダンジョンにも行けない」
「……ちょっとの情報のために、子供を拷問するような奴らがいる、か」
瓜生は黙った。そのような人間を、殺した。
ヴェルフ・クロッゾにもわかる。たとえば『クロッゾの魔剣』を簡単に作る方法を聞き出せるなら、子供を拷問する人間はいやというほどいる。
「おまえの名前と、何をやったのか教えろ。魔剣じゃないぞあれは」
「ウリュウ・セージ。大きい音を出して大丈夫な訓練室はあるか?」
と、瓜生は右脇のカバンからガリルACE53を取り出し、射場に木の板と土嚢を用意させて撃ち抜いて見せた。
「……火か。硝石が燃える匂い」
「狭い場所での火は、力に変わる。炎が風を産むように。それでこの、鉄と鉛の塊を銅で覆った弾を押し出す。強いクロスボウの威力を持つ、吹矢だと思えばいい」
「わかった……名前だけだ。俺は魔剣は打たねえ」
「それは別に構わない。それほど必要としてはいない」
「……気をつけろ。魔剣鍛冶と見れば、何をしてでも欲しがる奴らはたくさんいる」
自分の故郷、ラキア王国とか。
「そのためにも、【ソーマ・ファミリア】は消す」
そういった瓜生は、弾薬を一つ取り出し、渡した。
「研究してみろ。危険だから注意して」
また床に転がった空薬莢にも目を向け、うなずく。
それから瓜生は、リリとヘスティアのところに戻った。
「【ソーマ・ファミリア】のメンバーの情報を教えてくれ。首脳部、そしてバカでうぬぼれが強い者、割とまともで信用していい人間、それぞれの名前、強さ、性格などを」
「わかりました」
瓜生の手には、『ギルド』で公開されている【ソーマ・ファミリア】メンバーのリストもある。名前、レベル、似顔絵だけだ。
「団長は……」
一人ずつの能力や性格を語るリリ。ヘスティアがいるから嘘はつけない、それでも瓜生は雇った情報屋を利用して裏を取るつもりだ。
最後にリリの、スキルと魔法……重い荷物を持てる、変身できる……を聞いた瓜生は深く嘆息した。
「つくづく、生まれたところが悪かったな。大手探索系だったら、大量の重量荷物を運べるきみはこの上なく重宝されたはずだ。情報収集に徹しても莫大な価値がある。ヒューマンの子供に化ければ警戒されないし、犬人の鼻と耳も得られるだと……」
(おれの故郷だったら最大のチートだ。最強の兵士は拳で戦車を砕けることではなく、百キロ背負って百キロ歩けること、しかも最高のスパイにもなるし指揮官適性もあるなんて)
そう言われたリリは、悲しみと怒りの方が激しく怒鳴り散らした……が、なにかがわかった。理解の芽が出た程度だったが。
自分の境遇、これまでの生活……絶対だと思っていたが、単にいくつもの不運の積み重ねだったのだと。
ちなみにベルは、エイナの説教の続き+講義である。
その夜。
ベルはガタガタと震えていた。普通とは違う、すさまじい震え方と汗だった。
ミノタウロスに殺されかけたときとも、質が違う恐怖。
同じ人間による暴力。激しい苦痛。悪意。
そしてモンスターに食われるより、単に死ぬより恐ろしいこと……
『拷問』
を、知ってしまった。
それに、迷わず人を殺した瓜生。
普段の親切で落ち着いた雰囲気と、平静に人を殺す人間の落差……
(一人殺せば殺人者で、百万人殺せば英雄……)
瓜生が時々、ベルの英雄願望を皮肉るように言う言葉。それに実感が、血が通った。
彼は、異界の冒険で当たり前のように人殺しをしている……
自分も、英雄への道の途中、いつ人殺しをしなければならなくなるかわからない……
全身が震え続け、夜の運動で全身泥のように疲れているのに眠れず、地下室から出た。
(あ……)
瓜生が、エアロバイクで激しく運動している。
その表情はすさまじかった。泣いていた。
(平気じゃ、なかったんだ。平気で人殺しをする人じゃなかったんだ)
なぜか、ベルの目から涙があふれる。
後ろから抱きしめられた。
ヘスティアのぬくもりと、柔らかすぎる感触……涙がパジャマにしみこむ。
「ああ。ウリューくんも、すごく傷ついてる。普通の人だったんだよ。それが、こんな……」
翌日、巨大なリュックと長い袋を背負った小人の少女が、いつもの場所で待っていた。
白い髪の少年と、黒髪の少女は嬉しそうに駆け寄った。赤毛の青年も、山吹色の髪の少女もほぼ同時に駆け寄った。
上層のルームでリリは、背負っていた長い袋の中身を取り出した。投げ手斧(フランキスカ)と両手剣。どちらも安物。
「ベル様の魔法について、検証すべきことがあります。ベル様、魔法をかけた刀で壁を傷つけてください」
相変わらずのすさまじい光と音、威力。人が入れる大きさの傷が壁に刻まれ、周囲が焼かれ吹き飛んでいる。修復の間はモンスターは出ない。
リリはその傷跡をしっかり目に焼きつけた。
「ああ、なるほど。ベルの付与魔法の確認ですね」
レフィーヤはすぐに気がついた。いつのまにか、呼び捨てになっている。
「はい。ベル様の付与魔法が何に使えるか試します。
まず、ベル様が別の飛び道具を使うとき。
ヴェルフ様には、両手剣を。
そして『リトル・バリスタ』の矢。
まず、投げ斧を何もなしで軽く壁に投げてみてください」
ベルはそれをやってみる。うまくはないが、投げ斧は農業・林業の村では日常の遊びだ。
「はい、次は魔法をかけて」
拾ってきて魔法をかけると、斧が雷光に輝く。そのまま切れば稲妻の威力になるのはわかっているが……
同じように軽く、壁に投げてみる。
閃光と轟音、壁に破壊跡ができた。
「おー、こりゃ便利だな」
「これでも、威力は半減しています」
レフィーヤが丁寧に壁の傷を見る。
「次は……ヴェルフ様、かなりのリスクはありますが」
「かまわねえよ。ポーションぐらいは用意してくれよな」
と、ヴェルフは両手剣を構えた。
魔法とともに光が走り、ヴェルフの剣が輝く。
「う……」
ヴェルフは剣を壁に突き刺し、そして反動で吹き飛んだ。
「大丈夫、ごめんね」
ベルが悲鳴を上げるが、ヴェルフは首を振った。
「いや、おもいっきり金床をぶん殴っちまったみてえなもんだ、我慢できる。すぐまたやれって言われたら勘弁してほしいな」
と言って、使った両手剣を耳に当てて、小さな金槌でたたいて音を聞く。刀身の芯が痛んでいないか確認している。
「七割ぐらいになるようですね」
「それに、使用回数が少ないという問題もあります。ベル様自身に戦闘能力がなければ魔法専門にもできますが、もったいないです。強敵相手の時だけですね」
「なら、マジックポーションを使えばいいじゃない」
「パンがなければお菓子を食べればいいのに、というようなものです。金満ファ……こほん、最後は、これに」
と、リリは『リトル・バリスタ』の連射できる弾倉を取り出した。
「わかった」
また詠唱、十本の矢それぞれが薄く輝く。
受け取ったリリが連射、それもそれぞれ光と衝撃を発し、壁にめりこんでいる。
「刀で斬る時に比べ三割以下ですが、それでも一発一発は十倍以上、『豚弩(ピッド)』ぐらいの威力はあります。オークでも急所に当たれば倒せる、ということです。ベル様がランクアップすれば、それ以上」
『豚弩』は、ヴェルフが作ったリリ用の、鐙とレバーで引く強力な小型クロスボウ。オークの骨を使ったので『豚』がついている。
「ひょっとして、ウリュウさんが見せた、あの妙な武器と組み合わせたら……」
「借りられるとしても、『妙な音』の武器は大っぴらに使わない方がいいでしょう」
レフィーヤが止めた。
「これでリリスケも十分戦力になるな」
ヴェルフの言葉が、リリは心底嬉しかった。彼らのことも裏切っていたのに、信じてくれている……それは、どれほどベルが信頼されているかでもある。
ベルは魔法を使いすぎているので、今日は8階層でキラーアントを血肉(トラップアイテム)で集め、ひたすら数をこなした。
そうなるとすぐにレフィーヤも魔法の限界になる。それからは回避と、苦手な白兵戦も訓練した。この階層の敵なら彼女でも相手になる。
少し早くダンジョンから出て、いつも通りベルはエイナのところに向かった。
エイナのカウンターには、後ろ姿だけでも美しいとわかる金髪の女冒険者がいた。
振りむく。目の前にアイズ・ヴァレンシュタイン。
数秒見つめあう。真っ赤になり赤目がイトミミズになる。逃げる……三連コンボをかまそうとした瞬間、足に衝撃が走ってもんどりうった。
とっさにビーツがトンファーを抜き、構える。
「敵ではない。いい気迫だ」
とてつもない美女が微笑している。
すぐにビーツはトンファーを戻した。敵意ではないことにすぐ気がついたのだ。
ベルの脳裏にはなぜか、
(知らなかったのか?大魔王からは逃げられない)
という言葉がこだましていた。
(こんな目をした美女には絶対に逆らうな)
という、たまに疲れ切った状態になった祖父の表情と、すべてをあきらめたような声も。
「さて、ベル・クラネル……まず、【ロキ・ファミリア】として詫びておこう。以前、ミノタウロスを逃がして君が、不相応な階層で殺されかけたこと。そしてあの夜、うちのベート・ローガが君を侮辱したことだ」
頭を下げるリヴェリアにベルは慌てた。
「い、いえ、ダンジョンでは何に襲われても自己責任ですし、それにアイズさんに助けてもらいましたし、それに……僕が弱いのは事実ですから。悔しければ強くなるしかないんです」
「ほう」
リヴェリアが軽く微笑む。
「では、アイズを恨み嫌っているわけではないと?」
「とんでもないです、命を助けてもらってすごく感謝してるんです」
「……ほんとう?」
そう、アイズが消え入るような声で言った。
彼女がいることに気づいたベルは逃げようとしたが、
「待ちなさい、逃げちゃだめよ」
とエイナが止めた。
「エイナさーん……」
「男の子でしょ?しっかり話しなさい」
と、エイナはあきれたため息をつき、リヴェリアに一礼して戻ってしまう。
ベルは必死で震える足を押しとどめる。
「……あ、これ……落としたよ」
アイズが、エイナが買ってくれた手甲を差し出す。
ベルはぱっと笑って受け取った。
「あ、ありがとうございます」
「その、なにかおわびができたら……そ、それに……」
アイズはなぜか、あっさり別れるのが嫌なようだ。
「どうして、そんなに、早く強くなれるの?」
「あーっ!」
そのとき、レフィーヤが悲鳴を上げて飛んできた。
「ベル、アイズさんになれなれしいですよ!いいですか、アイズさんに話しかける権利は、うち(ロキ・ファミリア)では、ランクアップ以上の偉業を……」
「今は黙っていてくれるか?それに昨日も簡単に報告を聞いたが、少し詳しく聞いておきたい。ベルとビーツは、それほど強いのか?」
「り、リヴェリア様……はい、ものすごく。二人とも、レベル2の後半と思われます」
「だが、ウリュウによるとベルはまったくの素人から一月少しだそうだ」
「ありえませんよ。本当はレベル3でも驚きません!それにあの付与魔法つきの剣が直撃したら、レベル4でも危ないですよ!」
「強い、ぐらいでいい。別ファミリアのパーティメイトのステイタスは自分のファミリアの者にも明かすな。【ロキ・ファミリア】の名誉にもかかわるのだぞ」
「あ……すみません」
レフィーヤもリヴェリアには素直だ……というより恐ろしさを嫌というほど知っている。
「まあ、この件も含めて、少し話しておきたい」
(おそらく、ベル・クラネルに成長促進系のスキルがあるのだろうな)
とはリヴェリアは思ったが、それは言うべきことではない。
それだけでなく瓜生の、
(ともに冒険した仲間は経験値が倍……)
スキルも半ば予想している。前の小遠征で、参加メンバーの伸びが異常だった。
レフィーヤはあちこちに走り回って伝言するはめになった。
リリから分け前を受け取って、バイトが終わったヘスティアとともに帰るようビーツに伝言。
それから瓜生に、向かう店の場所を伝える。
ベル・レフィーヤ・リヴェリアの三人は、高級店街にある飲食店に向かう。
「ああ、こちらの店員についていくように。ファミリアも違うし、噂になってはまずいからな」
と、ベルは無口な店員に、秘密の話ができる個室に案内された。美しい庭の小道を通って。
エルフの店員が、しゃっちょこばって王族であるリヴェリアに給仕する。だが店の格がいいだけに、騒ぎを起こすようなことはしない。うわさを流すことも断じてない、どれほど苦しくとも。逆に騒いだり噂や会話情報を流したりする店には、リヴェリアは最初から入らない。
「君は……どうやって、強くなった、の?」
アイズの問いに、ベルはあわあわと答えた。
「そ、その、ウリューさんがやってくれたんです」
「どんなふうに?」
アイズが興味津々で座っている。ベルはまだがちがちに緊張している。
「まあ、ウリュウを待とう。今日、レフィーヤはどんなだったか聞いてもいいかな?」
リヴェリアが巧妙に、レフィーヤを心配する言葉からベルの冒険を聞き出す。
レフィーヤを心配しているのは嘘ではないのだ。
まもなく、瓜生がやってきた。
冷たい飲物を一口すすった瓜生が、話題を聞いて話し始める。
「本来、よそのファミリアにそこまでの詮索をしてはまずいが」
「今更だ、こちらもベルを助けてもらっている。それに、そちらの顔見知りが死ななければおれもうれしい。
まず、ベル・クラネルは……戦闘訓練を受けていない農業従事者で、ファミリアに入ったときはもっと弱々しい体格だった。それで、斧や鍬は扱い慣れているだろう、でも全身板金鎧と両手斧は無理だ、と思った。
長槍、または盾と片手槍も考えたが、突く動きはたぶんこれまでの生活にないと思った。それで刀を教え、神ヘスティアと話して、武神タケミカヅチを師として雇った。
神タケミカヅチは眷属に対人武芸百般を教えていたようだが、おれはその前に単純な袈裟切りだけを叩きこんだ。
故郷の、とても実戦的な剣術の話を聞いていたからだ……抜き打って袈裟だけを、一日何千も、何十年も続ける。地に植えた丸太や、X字ふたつの薪架に横に並べた細長い木多数を、刀と同じ長さの硬木の棒で、ひたすら打ち続ける」
「でも、それでは技に優れた人間には負ける」
アイズの言葉に瓜生は苦笑した。
「技に優れていても、初めての殺し合いじゃパニックになる。パニックになってもできるぐらい、一つの技を叩きこんで生き残る……経験を積んでから優れた技の持ち主と戦う前に、最初の戦いで生き残る方が優先だ、ということだな。
そしてたとえ技で負けても、相打ちで相手に傷を負わせればいい、というぐらいの覚悟があたりまえとされた。それほど武にこだわり人命を軽視する地域の剣術だった」
「最初の実戦では気迫がすべて、技など消し飛ぶ、確かにな」
リヴェリアがうなずく。
「その資料を神タケミカヅチに渡したら、膨大な武の引き出しの中から、歩きながら切る基本をしっかりと作り上げ、ベルに叩きこんでくれた」
「はい」
「私も……習える?」
瓜生は親指と人差し指で丸、金のマークを出した。アイズはうなずく。
「同時に、足腰を徹底的に鍛えた。
『恩恵』がない人間を考えるといい。重いものを運んだり、長い距離走ったりしたら、数日は体が痛くなる。痛みが引いたら、前に大変だった荷物や距離が平気になる。
人間の筋肉は、限界の力を出すと見えない怪我をして、修復されるときにより強くなる。
『経験値(エクセリア)』はそれを特殊な形で活かしている。
だから、安全なホームに帰ってから、4、5回何とか持ち上げられるぐらいに重いものを持ち上げさせ、何千Mも走らせた。何千も一つの技を素振りさせた。
それからステイタスを更新し、しっかり栄養を取って休んだ。
それと実戦による経験値の組み合わせ」
「なるほどね。それはうちのみんなにも……」
「20人ずつ、対照実験をするといいと思う。レベルなどの条件をそろえて」
リヴェリアがうなずく。
アイズは、ベルを見た。
「私も、重いものを、持ち上げるとか、神タケミカヅチのところで、習うとかしたい。お礼に……よければ、戦い方を、教えてあげようか?」
「え、え?いいんですか?」
「ファミリアが違う、といっても今更だな」
リヴェリアがため息をつき、さまざまな注意をした。
「もうすぐ、こちらも大規模な遠征に行く。それまでだな」
その個室の壁土は素晴らしく品がよく、机は極上に美しい一枚板で、焼き菓子と黄茶はすばらしく美味だった。
リヴェリアはダンジョンで疲れたベルを気づかい、彼には重めのフルーツケーキを注文していた。