ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
ベル・クラネルが初めて格上殺しをした『ダイダロス通り』。オラリオの貧民街。極端に密集した中層住宅が迷宮を構成している。
そこに、主神ロキを含めた【ロキ・ファミリア】と、【ヘスティア・ファミリア】、さらに武威とトグも訪れていた。
全員が防具に身を固め、異様に大きなバッグを背負っている。
闇派閥など、妙な連中が地上に巨大な食人花を迷宮から運び出す、出口があるはず。
強者は少ないが人数と、商売上情報網があるヘルメスとディオニュソスが、オラリオじゅうを調べ、『ダイダロス通り』以外には、
(ありえぬ……)
と、結論を出していた。
探索の末、信じられないものが見つかった。オリハルコンでできた扉……
呆然とする上級冒険者たち。
その扉が、ひらく。獲物を迎えるように。
「あからさまに罠だな」
リヴェリアの言葉に、
「その罠を蹴り破るしかない」
そう、皆が叫ぶ。
最強ファミリアの誇り、勇気。
「よし。サポーターは準備ができたか?」
「いらねえよ。雑魚は来るんじゃねえ」
ベートの言葉に、不快感が漂う。
瓜生も発言した。
「おれも、少数精鋭がいいと思う。最悪を想定すべきだ。おれが教えた、苦楽を共にした人が死んだら寝覚めが悪い」
「ベートとウリュー、言い方違うけどおんなじだよね」
ティオナの言葉に、皆が少し驚いた。
「え?」
瓜生は首を傾げた。
「誰がだこのバカゾネス!」
「弱い人に死んでほしくない、ってことじゃない」
「それって……ツンデレやな」
ロキの言葉に、全員が激しく反応した。
「おれは、強くても死ぬときは死ぬと思ってるがね。原爆の爆心地、第一次大戦の鉄条網と機関銃、伝染病と銃と馬で滅んだ中南米先住民……個人の強さなど無意味だ」
瓜生の言葉はスルーされた。何人かの幹部は聞いていて衝撃を受けたようだが。
騒ぎの中、瓜生は少し声を強めた。
「おれがかかわった予言者の言葉だ。巨大な扉が閉まる。穴に落ちる。最初に、小人が赤い髪の女に斬られる。少人数ずつに分断される。傷が治らない呪詛の剣……短文詠唱で混乱させる呪詛……何人も死ぬ」
瓜生が核兵器を使おうとしたことを予言した、【アポロン・ファミリア】のカサンドラ。彼女は脱退を認められ、【ミアハ・ファミリア】に行った。優秀なヒーラーでもあり、医学研究ファミリアとなったミアハたちとはうまくやっている。
彼女の予言は信用してもらえない呪いがついているが、『幸運』発展アビリティを持つベルはその呪いを克服できる。だからベルを窓口に、瓜生は彼女を情報源として使っている。
【ロキ・ファミリア】の面々が衝撃を受ける。
「……それは当然ありうるな。あの女調教師が、低く見てレベル7だとは『小巨人』に聞いた」
そういったフィンは、瓜生を盗み聞きされないところに連れて行った。
「だが、時間がない。奴らはオラリオを滅ぼす、と言った。桁外れの、神に近いモンスターを地上に」
「そうか……無謀な攻撃以外に方法はないか?
オラリオの人を全員避難させることもできる。
地上にとんでもないモンスターが出るのなら……大きいのか?」
親指をなめたフィンがうなずく。
「なら、オラリオを見下ろせる高台に戦車。近くの湖に一隻で五千人暮らせる客船と、46(大和級)……いやFCSが最新のアイオワ級、40C砲を9門の戦艦。それで倒せないか?
メルカバは、高速で荒れ地を走りながら同じく高速で走る敵戦車を狙撃できる。まして敵の近くから正確な位置を送信してもらえれば、より確実だ。地上なら電波障害もない。アイオワ級も通信された位置に砲撃できる」
フィンは数度呼吸する間考え、ため息をついた。
「それに、このオリハルコンの扉……オリハルコンは高価なんだろう?」
フィンがうなずく。
「これを都市じゅうの冒険者に言えばいい。欲に目がくらんで押し寄せる……人の欲は止めようがない。第二迷宮の奥まで、あっという間に調べてくれるさ。多数の死者は出るだろうが、【ロキ・ファミリア】じゃない」
美少年にしか見えない団長は笑い出した。
「頭に血が昇っていたね。目的を見失っていた……僕の目的は一族の興隆。死んだら元も子もない。冒険者らしくあることも、すべて命があってのこと……わかった、慎重に動く。そちらのベル・クラネルたちも預かっているんだ」
「ありがとう」
そんな議論も知らぬげに、ビーツはひたすらコンビニ売りのハンバーガーを食べ続けている。
まず現状の【ロキ・ファミリア】は、瓜生のおかげでランクアップが多い。
フィンとリヴェリアがレベル7。
ガレス・アイズ・ベート・ティオネ・ティオナの5人がレベル6。
ラウルとアナキティがレベル5。
レベル4も何人かいる。レフィーヤも急遽レベル4に上げた。
そして【ヘスティア・ファミリア】の側は、まずベルがレベル3。ただし準備された一発は推定7以上。
ビーツはレベル2だが、実力は3から4と推定されている。
【ディオニュソス・ファミリア】のフィルヴィスも、レフィーヤの護衛に徹すると参加している。
神であるロキはラクタら数名で守り、リリや瓜生も後方に控える。
といってもこちらを攻められても守れるよう、すぐに周辺を多数の鋼レールと矢板、庭石で囲い、重機関銃を並べてちょっとした要塞を作る。
攻略メンバーは、レベル7を中核にふたつに分かれた。狭い人工迷宮内では、大人数ではむしろ動きがとれない。
まず前方は、フィンとティオネ・ティオナを核に。ラウルとレフィーヤを含む。ビーツもこちらだ。
リヴェリアはガレス・アイズ・ベートを護衛とする。アキ、ベルもこちらに入る。
どちらのグループも、ヴィーゼル空挺戦車を中心にしている。ヴィーゼルは荷物を積んだ台車を牽引している。それでサポーターの必要をなくした。
個人携行用に改造したGSh-23機関砲を持つ者もいる。
12.7ミリセミオートライフルも多く支給し、訓練した。仮想敵である食人花にも通用し、弾薬が小さく軽い。弾薬を多数持つことで戦闘継続能力を高める。
開いた扉にはすべて、巨大な鉄骨でつっかえ棒をし、レールなどを対戦車手榴弾の成形炸薬で焼いておく。ティオナに護衛されたトラックが出入口まで往復し、瓜生が出す鉄骨を取ってくる。
出入口近くに瓜生やロキが作った拠点まで、ケーブルを引っ張って連絡している。
そして探索隊が行動する前に、前方には小型のキャタピラ付きロボット車を出している。多数のカメラとマイクで周囲の様子を探っている。クレイモア地雷もついており、必要があれば自爆させて敵を掃討できる。
ベルはベート、アイズのふたりと組んでいる。リーネとナルヴィのヴィーゼルが同行している。
機動力……かけっこだけなら、今のベルはレベル4級。それに重装備で少し下がったとはいえアイズ、そして最速のベート。
ベートの装備に、ベルの強力な付与魔法。敵がとことん強ければ、ベートの魔法にベルの追加詠唱、という試してはいないが圧倒的であろう切り札も切れる。
「あ、あの……」
「ああん?」
「ご、ごめんなさいっ」
「だいじょうぶ。ベートさんは『つんでれ』だそうだから」
「つんでれ……って?」
「さあ?」
とまあチームワークと言えるものはない。が、少なくとも戦場ではアイズとベートは数えきれないほどともに死線をくぐっており、息は合う。
レフィーヤはベルから手に入れた魔法を運用するため、急遽ランクアップしている。低すぎた『力』なども、激しい近代的トレーニングでそれなりに向上した。
フィルヴィスは厳重な緘口令のうえで同行を認められ、大きな荷車を曳いている。さまざまな兵器に、驚嘆を通りこしている。
『戦争遊戯』から、この冒険までにもいろいろあった。
リュー・リオンは一人の少女を探索して巨大カジノに行き、モルドらに誘われたベルと、情報収集のためにいた瓜生の支援も得た。
「カジノの唯一の必勝法は、敵以上のバンクロールを持つことだ」
と、瓜生はリューとシルの背後に立っていた……事実上無限の資金力、『ギルド』やあちこちの大ファミリアからの、十億単位の信用証書を見せつけて。
そしてすべてが終わってから、瓜生は『ギルド』や【ガネーシャ・ファミリア】、神ミアハも巻きこんで動き始めた。
【ソーマ・ファミリア】の事件からすでに始めていた、アルコール依存症治療プログラムの研究と、治療院の開設……それにギャンブル依存症も含める、と。
すでにのべた、【ロキ・ファミリア】と共同でベルの新呪文を確認する作業もあった。
【タケミカヅチ・ファミリア】の命や千草が、歓楽街で知り合いを探っているのを聞き、ベルが協力すると決めたので瓜生も資金と盗聴技術を提供した。
神々も動いていた。
「で、この集まりは一体……」
ヘスティアとヘファイストスが呼び出された、機密保持が厳重なリヴェリア行きつけの名店の個室には、ロキ・ディオニュソス・ヘルメスの三人が集まっていた。
「うちも、もんのすごく不本意やけどな」
ロキは相変わらずだ。
「戦力としてとても大きくなってしまっているからね」
ヘルメスのうさん臭さも。
「ヘスティア、ヘファイストス、君たちの眷属は、我々が追っていることの多くに関わってしまっている。君たちを蚊帳の外に置くのは危険すぎるし……」
ディオニュソスはいつも通りの笑みを浮かべて言った。
「待って。私が、敵でないことは証明されているの?」
ヘファイストスがさえぎった。
「それは考えるつもりだ。情報の全部を渡さなければいい」
「私の分の情報が洩れれば、裏切ったとわかる、ね。わかったわ」
失礼極まる話だが、ヘファイストスは納得した。
「このまえの、うちの大遠征で椿たんは、新種のモンスターを使う、人の姿をし人の言葉を話すバケモノを見とる。大遠征の帰りに18階層で、ベルたんらも戦ってる」
ロキが身を乗り出す。
「共通するのは、食人花」
ヘルメスが絵や説明が書かれた紙を配る。
「知られている迷宮のモンスターとは異質だ。そして、闇派閥の生き残り、『27階層の惨劇』で死んだと思われている幹部もかかわっている」
「で、ボクたちになにができるっていうんだい?」
「ヘファたんは、この腹黒二人と組んで情報面を頼みたい。椿たんぐらいなら戦力にもなるけど、むしろ鍛冶師としての方がありがたいわ」
「それに、そちらの眷属が新しい」
そう言おうとしたヘルメスの表情が苦痛にゆがむ。ロキとヘファイストス両方がスネを蹴り飛ばしたのだ。『銃』や大量生産技術のことなど話されたら、
(たまったものではない……)
このことだ。
「イシュタルも絡んでる、って情報があんねん」
「イシュタル?といえば、こちらも厄介なことがありそうなんだよ」
ヘスティアが身を乗り出す。
「え?」
「タケ……タケミカヅチの眷属が、知り合いをあっちで見かけた、って」
「ああ」
ヘルメスが首をすくめた。
「ごめん、仕事だから言えない……でも『例のあの人』には全部伝えてる」
ヘルメスがへこみきっている。
(ウリューたんのことは出さない約束やろ!)
ロキが厳しくにらむ。その約束は事前に、ヘスティアとヘファイストスにも伝えている。
そしてディオニュソスが、ヘスティアを見た。
「まあ、それで【ロキ・ファミリア】の次の作戦に、ヘスティア、君の眷属を借りたい……ということだ。『リトル・ルーキー』は一発の威力なら第一級冒険者にも匹敵するし……」
ディオニュソスは瓜生についてはそれほど知らない。
(妙に金があるし、酒造の資料と新品種を大量にくれた、変な男……)
そこまでだが、十分すぎる。
「この前の借りもあるからね、協力するよ」
ヘスティアがため息混じりに約束する。ベルたちが18階層まで行ったとき、【ロキ・ファミリア】に助けられた……命の借りは大きい。瓜生の貢献を考えてもだ。
それに、
(【ロキ・ファミリア】に頼られている……)
とベルが聞けば、ヘスティアが止めても行くだろう。
「そのかわり、そのイシュタルに関してはこちらも協力する」
「私も、いろいろと利益はもらってるからね……」
ヘファイストスもため息をついた。
むしろヘスティアは、その共同戦で万一にも、
(ベルくんとヴァレン某が仲良くなってしまうのではないか……)
それが不安だった。
どう見ても罠である大部屋。
そこでフィンに声をかけたのは、『27階層の惨劇』で死んだと思われていた、ヴァレッタという闇派閥の幹部だった。
下品な雑言、フィンは十分な情報を引き出し……ただし、女に関する会話はティオネがいたので皆まで言わせず、背の大荷物を手にした。
槍でもある着剣14.5ミリセミオートライフル。
容赦も躊躇もなくタングステン徹甲弾がヴァレッタの片目に突き刺さる。倒れる間もなく口、鼠径部と連射。すぐに後方のヴィーゼルから20ミリ機関砲弾も届く。
「警戒!」
叫びとともに、冒険者たちは武器や銃器を構える。
ヴァレッタは即死。3センチ厚の鋼板を貫通できる威力が、針の穴を通すように急所に命中している。さらに後方から、20ミリ機関砲が数発とどめに命中、死体もばらばらになる。
その時にはとんでもない数の食人花が出てきており、それに機関砲が咆哮して押し返す。
また、閉所ではレフィーヤの魔法はますます威力を増す。
後方の扉が閉まりそうになったが、鉄骨に阻まれ、レールが焼き切られていて止まる。
転がった、鍵とみられる宝玉を手に入れようとフィンたちが先行した。
そこに別の扉から、突然レヴィスの強襲。想定をさらに超えた速度と、圧倒的な力の圧力。
フィンまで、大きな人の隙間があるように見える。
剣や盾の助けは間に合わない……
だが、徹底的に準備はされていた。
顔が床につくほど体を低くしたフィン。ただでさえ小さい小人族の体が、さらに低くなる。
やや後ろにいるラウルは、完全にフィンの頭の上からレヴィスを見て、狙うことができる。
赤い光点が、赤毛の女の右目、左目と焼く。
中国が開発した重機関銃サイズのレーザー兵器。冒険者の力なら軽々と携行できる。
常人に向ければ即座に失明する……レベル7を超える耐久でも、数秒間は完全に目が見えなくなる。
ラウルのレベル5にランクアップした反応速度と正確さ、そのすべてをレーザーポインターで敵の目を狙うことに叩きつけている。
同時に。
フィンの槍……巨大な着剣小銃が閃光を噴き、レヴィスの踏みこんだ出足を襲う。
「同じ手に!」
レヴィスは目はダメでも肌で攻撃を感じた。地に着こうとした足をたたみ、弾をやりすごして手で地面を叩いた。
その手に、フィンのもう一方の手が投げた柔らかいボールが当たり、破れた。
ぬるり。
瓜生の故郷が開発した非致死性兵器の一つ、極端に滑るぬるぬる液。
それがレヴィスの手を汚した。
「がああっ!」
体が地面に当たる前に、手を地面に叩きつける。アダマンチウムで補強された床が大きくへこみ、高圧で液が叩き出され変質した……それでも、滑って力の方向がずれたため、立てず転がるだけだった。
そこに、後ろにいた【ロキ・ファミリア】が発砲した。
14.5ミリセミオート対物ライフル。
ヴィーゼルの20ミリ機関砲。
ティオネがぶっぱなす、冒険者が手で持てるよう改造したGSh-23機関砲。ガスト式で高発射速度、わずか50キロ。ZU-23-2の950キロより同じ23ミリでも薬莢が短く威力も弱いが圧倒的に軽く、連射も速い。ちょうど人間に対するイングラムM10短機関銃、大口径低速の45ACPを高連射でぶちまけるようなもの。
一見、フィンに一気に迫れる布陣だった。だが空砲で訓練し、どこから、
「レベル7となったフィンが突撃しても……」
確実に何発か当たるように組まれた陣形。常人なら空砲の詰め物でも死んでいるほどの危険を冒した訓練、まさに『勇者(ブレイバー)』だ。
強烈な弾幕、いや弾の壁に、やっと立ち上がったレヴィスはすさまじい対応を見せた。
かわし、砲弾と言っていい弾を剣の腹で軌道を変え……
それでも何発も命中する。鋼の塊より頑丈な肉体に、高速のタングステン弾芯がぶち当たる。人間の体の厚みがある鋼板を貫通するような弾。
23ミリ弾の圧倒的な弾頭重量が、どれほど強くても体重は常人と変わらないレヴィスの体を吹き飛ばす。
女のうなり声も、閉所で増幅される砲声にかき消される。
猛烈な銃口炎がひらめき続ける。
襲い来る多数の食人花や、奇妙な虫のような怪物も重機関銃が掃討する。特にGSh-23の弾幕は有効だった。
それでも、フィンを黒い剣が襲った。
音速を越える戦闘。大気が硬い、どんな動きも音の壁を破り衝撃波をまき散らす。アダマンチウムの床が、超高圧の踏みこみに液体のような挙動をする。体の一部が音速以下になるときに予測不能な乱流が発して動きを束縛し、それを力で切り破る。
レベル7に至ったフィンは無理なくさばく。勝つことを考えない、もちこたえる戦い方。
レヴィスは考えずにはいられなかった。
(こいつを倒しても、離脱できるか……)
機関砲弾のダメージは、今の彼女の体でも甚大だ。フィンが倒れたその瞬間、容赦も躊躇もなく大量の砲弾が襲うのが、目に見えている。
そしてフィンが手にする槍は、長大な着剣小銃。槍としても恐ろしいのに、その先端からは強力な弾が飛び出す。一歩下がって届かないようにする、という防御は無効だ。
その槍を断ち切ろうとしても、絶妙に力をそらされる。
また、援護になる食人花が、ほとんど瞬時に全滅したのがわかる。12.7ミリ弾でも、頭部の花弁を貫通し魔石を破壊することができる。
ふと、気づいてぞっとした。敵後方の魔法使いが詠唱を始めた呪文……
とてつもない威力を感じたレヴィスは、
(ひと傷いれての離脱……)
それだけに専念した。
あえて傷を負い、相打ちでフィンに傷を負わせる。そしてフィンを盾にするように動き、圧倒的な力を開放して離脱した。ヴァレッタが落とした『鍵』も回収した。
彼女が消えた扉、そのレールに即座に第一級特殊武装級の銃剣がぶちこまれ、対戦車手榴弾。成形炸薬弾頭の金属ジェットが穴を空け、完全には閉まらなくなっている。
「逃げられたか……だが、目的は達した」
フィンは傷を抑え、素早く撤収を始めた。
後ろの扉も、しっかり鉄骨が支えている。さらに多数の小型無人機が動く。
ヴィーゼルに付属しているカメラから、出入り口近くの瓜生のところまでケーブルが伸びている。そのケーブルを通じて、無人機に電波が届く限り連絡する。
軽い傷だが、ポーションでも治らない。
(呪詛か)
あらためて、瓜生が押さえている予言者の脅威にぞっとした。
(闇派閥などより、よほど恐ろしい……)
そう、思わずにはいられなかった。
レフィーヤが唱えはじめた呪文も、誰にもらったのかを考えてしまった。
原作のフィンはあまりにも無謀でした。
あと、【ヘスティア・ファミリア】とリュー・リオンを対闇派閥同盟に入れないのも…十分かかわりはあるのに。