ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
リヴェリアとガレスを中心にした班が、いきなり落ちた。床そのものが巨大な扉だった。
予言はされていたが、さすがに、それを前提にして準備することまではできなかった。
遊撃担当だったアイズたちは一歩遅れ、分断された。
また、レフィーヤとフィルヴィスは、別の横穴をのぞいていたので落ちなかったが、やはり分断された。
「扉が」
落下は免れたアイズたちだが、すぐに落ちてきた扉に閉ざされた。
これまでは地上まで往復して資材を調達、扉が閉まらないようにしていた。だが見えないように作られ、空いたままになっていた扉はどうしようもなかった。
「動けねえな……おい」
ベートがオリハルコン製のドアを蹴飛ばしてから、ベルを見る。
「……やれる?」
アイズの言葉にベルはうなずき、背の刀を抜く。
「いきます」
「でも、あれは蓄力型。使った後は反動があると思う」
「……はい、あります」
ベルはそれでも、
(アイズさんを守れるなら……)
と覚悟を決めた。
「だいじょうぶ、守るから」
アイズの言葉に、ベルはうれしいのと屈辱の両方を感じた。
「ざけんな」
ベートがベルを怒鳴りつけた。
「甘えてんじゃねえ、ぶっぱしてすぐ、おめえだけが生き残るかもしれねえんだ。それでも一人で地上までたどり着くぐらいの根性がなきゃ、トマト野郎の時と同じ雑魚だ」
「これが『ツンデレ』ってものね」
ヴィーゼルの砲手席のナルヴィがあきれ、運転席のリーネが苦笑する。
「……いえ、死なせません。絶対に、絶対に地上まで、ベートさんもアイズさんも、ナルヴィさんもリーネさんも守ります!」
ベルの言葉に、アイズもナルヴィも目を見開いた。
ベートはけっ、と吐きながら……しっぽは正直だ。
それを見もせず椿・コルブランド作の刀を手にしたベルは、振りかぶったままチャージを始めた。リン、リンと音が響く。
20秒。
「おれにもよこせ」
ベートがメタルブーツに包まれた足を出してくる。
「……ヴァジュラ】」短文詠唱だが、すさまじい雷が刀と、ベートのメタルブーツに落ちる。
「このブーツでもぎりぎりだな」
ベートはにやりと笑った。
ベルはそのまま自然に歩き、刀を扉に振りおろす。
期間こそ短いが、膨大な回数のとおりに。祖父が鍬や斧をふるっていた姿の面影に自らを重ねて。武神タケミカヅチに磨き上げられて。
すさまじい閃光と轟音。
蓄積された能動的力、巨大な複合魔力、すべてが切れ味の増強に注がれた。
それでも、オリハルコンの扉はすさまじい硬さで切れ味に抗する。
椿が折れないことと切れ味に力を注いだ刀と、腰で切るフォーム……きれいに通る刃筋が、その硬さを切り裂いていく。
ごとり。
扉に、斜めの切れ目が入っている。
「どけ」
ベートがベルを押しのける。ベルは意地で倒れないようこらえた。
斬られた扉の向こうから、多数の食人花が切れた扉を押し倒して飛び出してきた。
「死ねええっ!」
同じく椿が作ったメタルブーツが一閃。巨大な魔力をためこみ、ベートの蹴りの威力との相乗効果がはじける。
閃光と爆発、斜めに切られた扉の向こう、通路を埋め尽くす新種モンスターが瞬時に灰になる。
「行くよ」
「あ、さすがに通れないですね。人は通れますが」
扉が斜めに切れて、何とか通れるが、さすがに小さいヴィーゼルでも通れない。
ヴィーゼルから、リーネとナルヴィが降り、機関砲を外す。
ラインメタル Mk.20 Rh 202、20ミリ機関砲。
薬莢が長く初速が早く、また比較的小口径で弾薬が軽め。発射速度も速く、チェーンガンやガトリング砲と違って外部電源が不要。
75キロと、人間には重いが上級冒険者なら携行できる。牽引対空砲になると1.6トン必要だが、それほどの反動もレベル4ふたりなら人力で吸収できる。
膨大な弾薬と多数のパンツァーファウスト3、毛布や薬、予備武器などをリーネ、ナルヴィ、ベルが扉の切れ目から押し出し、担ぐ。
アイズは何かに呼ばれたように歩き始めた。いつもと違い、頑丈な大盾を前に、重厚な鎧に身を固めて。
「おいアイズ、そっちでいいのか?」
「こっち」
それからも横道から出てくる食人花を、アイズは大型の片手半剣で切り伏せ、楯でパーティを守りながら前進する。
ベルも、反動を押し殺して突進する。レベル2の時にはこの水準で『英雄願望』を使ったら行動がきつかったが、今は大丈夫。
刀は今の一撃でかなり刃がなまっている。折れはしなかったが。だからヴェルフが打った片手脇差『フミフミ』と、ヘファイストスの脇差『ベスタ』の二刀で切りこんでいく。
ランクアップした今なら、チャージも付与魔法もなしで戦える。
その横をベートがすさまじい威力で蹂躙する。
敵が圧倒的に多いときには、後方から強力な機関砲弾と手榴弾が飛ぶ。アイズも12.7ミリ軽量ライフルで射撃に加わる。
アイズの機動力と動きの正確さが、ブルパップ式のセミオートライフルとうまくかみ合う。高速で正確に食人花の、頭部に見えるつぼみ部分のすぐそばに出現し、至近距離から正確に射撃。タングステン弾芯の徹甲弾で内部の魔石を破壊し、すぐ次に向かう。
【ヘファイストス・ファミリア】製の25発弾倉がうまく活きている。
ガレスとリヴェリアは、必死でヴィーゼル空挺戦車を落下の衝撃から守った。
そして下に待っていた膨大な食人花、それにリヴェリアが手をさしのべ、ごく短い詠唱。まったく意味をなさぬ奇妙な声。
瞬時に、すさまじい冷気が食人花を凍りつかせた。ランクアップで得た新スキル『圧縮妖精語』。威力が半減し、範囲が狭くなるかわりに、超短文詠唱の時間で発動可能。
それで道を切り開き、守り切ったヴィーゼルで突撃する。
大量の弾薬と銃がある。予備の武器もある。
特に有用だったのが、強力なフラッシュライト。
次々と自爆覚悟の暗殺者が襲ってきたが、いち早く発見し、目をくらませて12.7ミリや20ミリの強力なライフル弾で先制し、寄せつけず戦い続けることができている。
最前線で巨大な盾を構え、斧を振り回すガレスの力も絶大だ。
迷うガレスたちを、奇妙な槍を持つ男が襲う。その短文詠唱での『呪詛』は全員を混乱させ、大きな被害を出した。
混乱状態で銃器が使えなかったことは、まだましだった。
レフィーヤとフィルヴィスのふたりは、大量の荷物を持ったまま取り残された。
12.7ミリ弾、ライフル、重機関銃、ポーション、予備の剣や盾、パンツァーファウスト3。
最低限の訓練は受けているレフィーヤが重機関銃で次々に出現する食人花を掃討する。
フィルヴィスは驚きながら、いくらでも予備がある剣で支援を続けた。
そしてさまようなか、死の神の語る虚無に呆然とすることもあった。
フィンの負傷で一度戻ったフィン班は、十分な補給の上で行動を再開した。
「隠れた扉でケーブルを断ち切る、か……」
瓜生が情報を集めながら考える。
ロキたちが整理した情報を見たフィンも考えに加わる。
「この人工迷宮全体を、管理している人間がいる。あちこちに隠された魔法の目で監視し、扉を開け閉めする。つっかえ棒には、隠された扉で対応してきた」
「相手がいると考えれば、対処できるな。
どんなドアでも、必ず破壊できる。ドア自体が強ければ、ちょうつがいやレールなど、必ず弱い部分がある」
そういった瓜生は、鋼板の巨大なトイレットペーパーを出した。製鉄所が鋼板を出荷するためのロール。それを大馬力のブルドーザーで押し転がしていき、第一級冒険者も加わって、
(加速し、叩きつける……)
と、いうわけだ。
驚いたことに、巨大な塊を叩きつけようとしたら扉が開いた。
実は裏では大騒ぎになっている。
「奴らを通すのか」
と叫ぶ闇派閥と、
「大事な人工迷宮を傷つけられるのが嫌だ」
と叫ぶ瞳に「D」を浮かべた者が争っている。
さらに、
「これを試させろ、【フレイヤ・ファミリア】にぶつける前に」
と女神イシュタルまでやってきて、スポンサー権限を振り回す。
それを知るはずもない……その向こうから押し寄せてきた怪物の群れは、鋼板ロールの圧倒的な重量で押しつぶされた。
そのまま、主に無人での探索が続く。
導かれるように、アイズたちは奇妙な実験室のようなところに入った。
そこにはあのレヴィスが待っていた。だがあちこちに重傷を負っている。
「くたばれ!」
ベートが突撃し、アイズも無言で追随する。
(『アリア』の名を彼には聞かれたくない……)
アイズにはそんな思いがあった。
傷を負っているとはいえ、レヴィスの強さはすさまじい。
アイズの重装甲が役に立った……傷が治らない呪詛の刃を、重厚な鎧は確実に防いでいる。そして長く重い剣は、強烈な攻撃を確実に防ぐ。
「【ヴァジュラ】!」
ベルの呪文、付与魔法がベートのブーツとベルの脇差、ナルヴィとリーネが手にしたブルパップ対物ライフルの弾薬にもかかる。
それを察したアイズは、戦法を変える。自分がレヴィスを斬るのではなく、敵に隙を作ることに。
強力な稲妻を帯びた蹴りを、すさまじい力でレヴィスが防ぎきる。
そこに、限界以上の風を帯びたアイズの一撃。ベートの蹴りで崩れた重心、傷は追わなかったが膝をつくに近い姿勢にまで崩した。
アイズが飛び離れ、雷光を帯びた銃弾が、十字砲火で襲う。
命中したタングステン徹甲弾はすさまじい『耐久』を抜き、肉に達して雷火の魔力を解き放つ。
優先順位の誤りだった。多少傷を負っても、重心を、体の軸を維持することを優先すべきだったのだ。
「ぐうっ」
内部から焼かれる、20ミリ弾直撃以上の威力に、レヴィスも悲鳴を上げる。
「やれっ!」
雷を帯びた神の脇差を手に、5秒チャージを足にそそいだベルが襲う……
そのときだった。
アダマンチウムで補強された壁が破られ、巨大な牛がいた。
「あ……」
アイズたちが59階層で死闘の末倒した、『穢れた精霊(デミ・スピリット)』。
愛の女神イシュタルが、【フレイヤ・ファミリア】を潰すために用意した……闇派閥は今使う気はなかったが、スポンサーが試したいというので断れなかった。
ひたすら、力に特化した超巨大怪物……その脅威ははっきりしている。
アイズが放った強烈な風に導かれたティオナ・ティオネ・ガレスも合流し、完全に混戦となった。
その中レヴィスに、隊列を離れたビーツが襲いかかった。
ビーツがレベル2だと知る者は、明らかに無茶だと叫んだ。彼女の実力を知る者は……
本人は、実力も何もなかった。ただただ、強者との戦いに飢えていた。
嘲笑を浮かべて剣を振るう赤毛の女、だが彼女も傷ついている。それでも圧倒的な力に、ビーツの槍は断ち切られた。直後、トンファーを手に飛びこむ、その腹を呪詛の剣が貫く。
混戦に隔てられたベルは、絶望に崩れそうになった。
どう見ても致命傷。通信が切れる直前、通信を通じて呪詛の剣の存在は聞いていた。
……だが、それは一瞬だけ。少女の体は爆発的な『気』の光に包まれた。
そして立ち上がる。背のトンファーを抜いた。
「エリクサーをビンごと呑んでいたか」
レヴィスが鉄面皮を崩さず、静かに言った。
腹の中でビンが割れれば、飲むと同じ事。
回復を呪詛が阻害する。残っているエリクサーが癒す。それが一瞬で、何度も繰り返される。
そのたびに、瀕死からの回復によりビーツの『ステイタス』は爆発的に向上する。
『耐異常』発展アビリティが上昇する……前代未聞のレアアビリティ、『耐呪詛』が発現する。
深呼吸したビーツはトンファーを構え、深く腰を落とした。
「呪詛の剣のはずだが」
レヴィスは戸惑い気味に剣を構える。
直後、すさまじい暴風が吹き荒れた。ビーツの体が光を浮かべ、その光が小さい身体に再吸収される。
『武装闘気(バトルオーラ)』。武威と同様の桁外れのエネルギーをまとい、さらに武神タケミカヅチに習った深い身体運用と呼吸法で自分の体に調和させる。
気を弾にして遠距離攻撃、というのも可能だが、
(効率が悪い、自分を強化するほうがよい)
と言われ、その方向に徹している。
ふわり。ゆらり。
柔らかな動きから、瞬間移動と思うほどの速度でレヴィスの足元に至る。身長差があり頭部には届かないが、トンファーを回しながらの強烈なフックが脇腹を狙う。
「なめるな!」
叫びとともに、それ以上の高速でレヴィスは動く。
剛剣の一撃、長くして受けた右のトンファーが断ち切られ、左腕を守るトンファーに深く食い込む。
ビーツは斬られたトンファーを反転させ、短いほうの端を拳の延長として正確なジャブを放った。
レヴィスの腕を打つ。重く、腕の奥の骨が砕ける。無駄がなく、疾くよけにくい。
「調子に……」
完全にレヴィスは本気を出している。機関砲弾の傷も、すさまじい回復力で癒えている。
桁外れに強化されたビーツだが、それでも雲の上の速度と切れ味で、呪詛の剣が少女を襲う。
残った方のトンファーごと左腕が深く切られる。衝撃に肩も砕けている。
それでもためらわず、突進から右のショートアッパー。レヴィスは剣を戻し、肘で防御するがその肘が砕ける。
(戦いながら、どんどん強くなっている。なんだこれは)
レヴィスはかすかな苛立ちを感じる。
わずかな崩れに、ビーツは強烈な前蹴りを放つ。レヴィスの膝を横から蹴り飛ばし、体勢を崩させる。
「くうっ!」
姿勢を崩したレヴィスは、それを利用した。剣を捨てて手で体を支え、回転を込めた蹴りをビーツに放つ。
まともに胸を砕かれ吹き飛んだビーツを、風をまとったアイズが受け止めた。
正面からベルが斬りこみ、それを迎撃しようとした隙をベートが蹴り飛ばす。
リーネはビーツを見てダメージの激しさに息を呑み、断たれた腕を拾い、癒しながら出口に急ぐ。
また瀕死……だからこそリーネの治癒で、またさらに強くなる。
どこまでも、種族が、血が命じるままに……アイズもベートも認める、すさまじい強さへの飢え。
それはベルの戦いとはまた違う、とても新鮮でまぶしいものだった。
ただでさえ巨大な力と耐久を誇る牛魔物が、『穢れた精霊』となって桁外れに強化されている。
その巨体に、弾幕が襲いかかる。膨大な銃口炎と硝煙が広いルームを満たす。
負傷したフィンがサポーターとして持ってきた、多数のパンツァーファウスト3やTOW対戦車ミサイル。
改造GSh-23。ヴィーゼルの20ミリ機関砲。
700ミリ、70センチの鋼鉄を貫く成形炸薬弾頭のメタルジェットが焼けた針のように硬皮に刺さる。爆圧が巨体を揺るがす。
ティオネの魔法が一時的な強制停止状態をかけ、そこに大量の砲弾が襲う。セオリー通り、足の関節を狙って。
さらに、圧倒的な力をつなぎとめる力があった。
『重傑』ガレス・ランドロック。オラリオ最強の盾と言われるすさまじい力。
『穢れた精霊』の出現を聞いて瓜生がさしむけた武威は重い鎧のまま、明らかにガレス以上の力で鋭い角を押し返している。
トグ……戸愚呂(弟)の遺児は、今の彼には限界以上の38%に達する筋肉で、支えに加わっている。
瓜生が出した、吊り橋用の太さ1メートル、六万トンを支える刃物以上の鋼でできたワイヤー。3人はそれを荒縄のように操り、野牛をとらえるように牛の足や首に絡め、すさまじい力を封じ続ける。
巨牛の背に生じた女の姿が呪文を唱えようとするが、それを正確に砲弾が止める。
武威たちが引きずってきた、57ミリ対戦車砲。
リヴェリアとラウルが的確に操作し、呪文の詠唱を終わらせずに魔力暴発を繰り返させる。
それでも、倒れない。耐久と力はまさしく桁外れだ。
アマゾネス姉妹がベルの付与魔法で強化された武器で、すさまじい攻撃をかける。
リヴェリアの大呪文が炸裂する。
倒れない。圧倒的な耐久、それはこの世のものとは思えない。人間に手が届く存在とは思えない。
だが、それでも冒険者たちは戦う。
「大呪文の準備!それがだめなら、ベル・クラネルの一撃を!」
叫んだのは、癒えぬ傷を押して立つフィンではない。そのうしろだてで全体を指揮するラウル・ノールド。
彼らも、この人工迷宮だけでもいくつもの危機を克服した。戦い抜いた。
成長している。
「ベートさん」
リーネが、ベートに声をかけた。
(いざというときは、魔法を使う覚悟を……)
このことだ。
ベートは無反応だった。
ランクアップしたレフィーヤが、深呼吸する。ランクアップしていても、相当な覚悟がいる大呪文。
「【……どうか、力を貸し与えてほしい】」
エルフ・リング。
激しい攻撃を、ガレスががっちりと受け止める。重い傷を負いながら。
リヴェリアが高速で動きながら、超短文詠唱で放つ強力な呪文と23ミリ機関砲の速射を交互に放つ。間断なく攻め続ける。
ティオネとティオナ姉妹の、レベル6に達し同族との死闘で磨かれぬいたすさまじい攻撃が牛の足を傷つけ続ける。
統制された射撃が、決して休ませない。
「【ジ・エーフ・キース、神霊の血と盟約と祭壇を背に、我精霊に命ず、雷よ降れ】」
「退避!!」
ラウルの絶叫に、ワイヤーを離したトグが、肉に食い込んだククリをあきらめたティオネが高速で飛び離れる。
「【轟雷(テスラ)】!!!」
レフィーヤが召喚した、ハーフエルフの雷撃系最大呪文。
圧倒的な打撃力が、穢れた精霊が超短文詠唱で築いた魔力壁を叩き、叩き、打ちのめし、砕き、押し流す。
「ああああっ!」
レベル4にランクアップされても、明らかに過ぎた呪文。一瞬で魔力のすべてを使い果たし、崩壊しそうになるレフィーヤ……
激しい雷に打たれ、崩れかけながらも襲い続ける牛怪。
「だいじょうぶ」
「護る」
アイズの風が、フィルヴィスの短文詠唱防護呪文が、最後の突撃からエルフの少女を守る。
そのまま安心したようにレフィーヤは崩れ落ち、『穢れた精霊』も消滅していった。
「こちらもほぼ力を出しつくした……ここで一時撤退する」
フィンが命令し、膨大な火力の壁を後ろに置いて撤退戦にかかる。
長く現実的には壁を壊せない人工迷宮、頻繁に横穴から出現する敵襲に苦しみながら。