ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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終戦

 ラキア軍はそろそろ戦争継続能力がなくなろうとしている。軍資金の底が見えてきているのだ。

 近隣での略奪はできない。フィンの脅しがある。

 というわけで、オラリオは平和だった。

 

 

 サポーターの合宿は盛況だった。

 形の上では大きいファミリアの副団長級が頭だが、実はリリルカ・アーデが主導しており、

(大仕事をやる……)

 訓練でもある。

 蔑み叩く対象を求める悪質な冒険者の妨害を叩き潰す、そのために裏の人間を雇うのにむしろ力を入れている。

 まず、一定時間座り、立ち、歩く……という近代規律の訓練。

「みなさんは今生きてここにいる、それがどれほど大変なことだったか、よく知っています。

 その体験は、必ず活かせます。

 オラリオには新しい時代が来つつあるのです」

 と、リリはコンテナでできた大規模な住宅を見せつける。

「サポーターは、上層の地理は誰よりも知っています。今こうして生きているのですから、知っているはずです。それはいろいろな仕事になります。

 ある程度戦闘力がある冒険者さまを連れれば、金持ちの一般人の『ダンジョン』観光の案内ができます。

 初心の冒険者さまたちをだます、あらゆるえげつないやり口を知っています。武器をはじめあらゆる商品の適正な価格が頭に入っています。若い冒険者さまがどんな風に死んでいくか、何度となく見ています。なりたての冒険者さまを指導するのに、これ以上適した存在はいるでしょうか。

 ですが、それらのことをするのに、最大の敵があります。まずサポーターを搾取している吸血鬼のような冒険者さまたち。覚えがありますね?それはこちらで取り払います。

 借金。貧乏な習慣。といっても、激しいアルコールやギャンブルの依存症で自分を制御できない人は、ここにはいないでしょう……死んでいるからです。合宿にきちんと参加されれば、借金を返し、商売の元手になるだけのお金は得られると約束します。

 一番の敵は、『誰も信じない』という染みついた不信感。自分も他人も、この合宿そのものも信じてはいないでしょう。その戦いが一番厳しいと思ってください」

 サポーターとして誰よりもさげすまれ、誰よりも踏みにじられてきたリリは、サポーターたちの気持ちをよく理解していた。何が欲しいか、何を使えば動かせるかよく知っていた。

 

 

 何階層か聞くのが怖いところから帰ってきた武威とソロ。なぜか、帰ってからのソロは、それまで無関心だった運動に熱心に取り組むようになった。

 恩恵はないけれど、明らかに高レベルな武威・トグ・ソロは、運動時間には別室で別の運動をしている。

 そちら側の部屋では、その運動の時間には常に不気味な物音がしており、一般生徒や講師の桜花などはおびえてしまうことが多い。

 

 武威は24式太極拳に似た動きを通じ武装闘気(バトルオーラ)を制御し、

(腕相撲で勝てない相手に勝つ……)

 べく、柔の技を極めんとしている。数十分で倒れ、武装闘気を暴発させつつ激しく息をつき水分を補給して、また始めるのを繰り返す。

 

 トグは36%程度を出し続け、それで冒険者用のボート漕ぎ運動をもっぱらやっている。限界にかなり近い力の水準を長時間出せるように、と。35%で、弱いほうのレベル4ぐらいの力が出る。

 また、筋肉操作を使わず、素の体力でウェイトトレーニングや、腕立て・腹筋・スクワットなどもやる。盾と斧の基礎練習も、常人に混じってやることがある。

 筋肉操作を使わなければ、トグは体格のわりに常人の大人並みの力がある程度だ。

 

 無関心に本を読んでこの世界の常識を学ぼうとしていたソロだったが、急に厳しく剣の練習を始めた。無駄のない基礎だけを、何千、何万と。半分はゆっくり、もう半分はレベル2でも見えないほど恐ろしい速さで。

 それを聞いた瓜生は、彼に簡単な『体力測定』をさせた。要するに、

(どれだけの重量を背負って長時間歩ける?)

 か、わかっておきたい。

(第一級冒険者に、重火器を運搬させる……)

 戦術は、前から【ロキ・ファミリア】が研究しており、瓜生もそのノウハウがある。

 そしてソロは、むしろ性急に、王族に会わせてくれと言ったり、情報をくれと言ったりし始めた。以前の無関心とは打って変わって。彼は故郷では、むしろ情報収集や高貴な人との面会予約などを仲間に任せていたようで、戦闘専門のようなところがある。

 だが、とにかく何かやることができたようだ。それが何なのかは、言おうとしないが。

 

 武威もソロも、深い階層で出会った牛人のことは、誰にも言っていない。

 

 

 ベルはある日、『豊穣の女主人』店員たちに頼まれ、店を休んで街を歩くシル・フローヴァを追ってダイダロス通りに迷い込んだ。ベルは、そこには人工迷宮への出入り口があり危険なことを知っている。

 だから、子供たちに何を言われても、怪しい穴に入るのは厳しく禁じ、絶対に一般人には動かせない瓦礫でふさいだ……モンスターと戦うことはなかった。

 

 孤児院をシルとともに訪れた時、彼女はため息をついて語り始めた。

「ウリュウさんにはとても感謝しているんです」

「え」

「でも、ちょっとやりすぎですよ」

「何を……」

 ベルは聞くのが怖かった。

「大金を寄付してくれました。しかも、いくつかの事業に投資して、その配当がずっとこちらに入るようにも。何人も就職先を紹介してくれました。

 でも、その前に……オラリオ中の孤児院を、徹底的に調べたんですよあの人は。ここも。子供にひどいことをしているところは全部潰す。ちゃんとおいしい食事を出しているか、しっかりと見る……少し前から、それはリリさんが引き継いでいるようですね」

 ベルは衝撃に声も出なかった。

「で、私たちも料理を習え、まずいものを子に食わせるところは潰す、ですよ?店で見放されていると聞いて、わざわざ料理教室を作ってまで……何か縁があったらしい、花屋の老夫婦に習えと、そちらの給料も出して」

 シルは困ったように、そして心底楽しそうに笑いかける。

 それで納得できる。最近、急速にシルにもらう弁当の味がよくなっている理由が……ただし、メニューはとても単純になっているのだが。

 その老夫婦は昔、逃げたリリを受け入れて暴行された一般人だ。彼らも苦しんできた……リリも。

 孤児院の調査と援助、ついでにシルやリューの料理を何とかする、それもリリが瓜生から引き継いだ仕事だ。それで、直接は老夫婦には会っていないが、副業を斡旋し、投資収益から給料が入るようにしたのだ。

 むしろ、自分までたどられないようにリリは気を遣っている。今の彼女は、

(人質として価値があると知れただけでも、重大な危険がある……)

 ぐらいの金を動かす立場になってしまっている。自覚している。

「とにかく簡単で基礎的な料理から、少しずつ、ひとつひとつ。厳しいですが……リューも、すごく喜んでいます。苦労もしていますけど」

 シルは本当に楽しそうだ。意外な人との縁も楽しんでいるようだ。

 ベルは連想した。瓜生は家事が好きで、教えるのも好む。

 命と和食を教え合い、多様な味噌や醤油を出している。また、

(極東ふうの……)

 トンカツやラーメンなども教えている。

 春姫に家事を教えるのも楽しんでいる。

 ビーツの膨大な食事を作るのも、いつも楽しそうだ。

 

 魔女にひどいめにあわされながら、ベルは久々の休日を楽しんだ。といっても、帰ってから寝るまでに、とんでもない数の素振りと、これまでの強敵との戦いを思い出しつつ最高速度でのトレーニングをしたのだが。

 ちなみに夕食は、ベルが買ってきたおみやげのクレープと、命が瓜生に習って作った各種のフライとカレーだった。カレーはちゃんと玉ねぎを炒めたもの。

 相変わらずビーツはとんでもない量を食べ、さらに食後寝る前まで第一級冒険者用の階段運動器具をやって、さらにチーズをのせ、カレーの残りを塗って焼いたパンをしこたま食べてやっと寝たものだ。

 ビーツが揚げ残りの油まで飲んでしまったことがあるので、食事が終わったら近所の貧困層向けの店に極安で渡す……少し煩わしいが、近所つきあいにはなる。

 

 穴からの怪しい声は、鍵をイシュタルから奪った【フレイヤ・ファミリア】が処理していたのだが、ベルはそのことを知らない。

 

 

 

 そんなある日。タケミカヅチともどもバイトしていたジャガ丸くんの屋台で、物資関係のトラブルがあり、ヘスティアが都市の外に出た。

 そのヘスティアが、いきなり襲われた。ヴェルフ・クロッゾの主神であるヘファイストスをさらおうとオラリオに潜入しようとしたアレスに。

 どうやって潜入するのか、そしてどうやって大手ファミリアの主神をさらうのか……いくらマリウスが言ってもまったく聞かなかった。

「な、なんでボクを!」

「おまえはヘファイストスと仲がいい、ならおまえを人質にすれば」

「相変わらず脳筋にもほどがあるうううう、それに……まあいいや。すぐ思い知るだろ。うん、罪もない将兵を皆殺しになんて、しないよ……たぶん」

 と、ヘスティアはあきらめたようになった。

 

 女神ヘスティアの拉致を知った司令部は、あまりのバカさ加減に呆然としたものだ。

 そして騒ぎを聞いたアイズとベルが、とるものもとりあえず走りだす。アイズも久しぶりに軽装で。

 ベルは、レベル1のころはルームランナーでフルマラソンを走ってきた。レベル2の後半からは瓜生の出せる人間用機材ではきついので、重いバーベルをかついでの縄跳び同様の連続ジャンプ、鍛冶ファミリアが作った瓜生の世界では考えられない機材などで足腰を鍛え続けてきた。

 だが、これはまったく違う。本気のレベル6、激しい風雨と困難な地形。

 すぐに必死になり、限界を超える苦しさになった。死力を尽くした。

 アイズは、

(こういう運動も、いいかもしれない……)

 と、最近やっている、安全な場所で時間も決まっている近代トレーニングと比べていた。

 

 悪天候は、無人機による戦場監視にも大きい不利だった。高空の大型無人機からも可視光線をはじめ多くの波長が遮断され、小型のドローンは強い風雨に耐えられない。

 だが、あちこちに隠された監視カメラの映像がある。天候を問わない波長のレーダーもある。

 アレスが走っている場所はすぐにつかめた。

「『例のあの人』が怒らないうちに、この戦争を終わらせる!」

 フィンたち精鋭も急行し、気絶していたアレスや、近くですぐに降伏したマリウスは捕縛したのだが……問題は、ヘスティア、ベル、アイズが索敵範囲外に、増水した川に流されてしまったことだ。

 そのことを聞いた瓜生が、

「いや、おれは血には飢えてない。アイズ・ヴァレンシュタインを向かわせてくれて感謝している。

 報復は、罪のない将兵とは別の形でするよ」

 そう言ったのを見て、

(あ、ラキア王国は終わったな……)

 何人かはそう思った。

「少しばかりあちらの将兵の、戦闘意欲を折っておきたい。無論殺す気はない」

 と言ったフィンにも、

「それはもちろん任せる。必要なものがあれば言ってくれ」

 と、協力を申し出た。

 

 以前から【ロキ・ファミリア】で、特にアリシアたちエルフが申し出て、ダンジョンでも訓練している部隊のテストも兼ねた。

 タイヤ8輪で走るチェンタウロ・シリーズの部隊。

 チェンタウロ2(120ミリ低圧砲)とチェンタウロ・ドラコ(76ミリ艦載級速射砲)。本来はフレッチャ歩兵戦闘車(25ミリ機関砲)。

 悪路走破性は装軌式に比べて劣るが、溶解液イモムシによる足潰しに強い。ひとつやふたつやられても走り続けられるし、タイヤ交換も楽だ。

 圧倒的な火力もある。戦車に近い120ミリ、艦砲級の76ミリ。ダンジョンでは使う予定の25ミリも十分な威力で、人員運搬能力も高くなる。

 さらにすべて、【ヘファイストス・ファミリア】の協力で強引にGAU-19、.50BMGガトリングを搭載しており、濃密な弾幕を張れる。

 もちろん従来から訓練しているメルカバも6両ずつ市壁下の遮蔽をわずかに破り、前から計算し入力してある標的座標に、砲弾を濃密に連射し始めた。今回は歩兵戦闘車は、準備はできているが動かさない。

 特にチェンタウロ・ドラコは今後使用頻度が高そうなので、4両用意した。

 全弾、炸薬量全振りの榴弾か、可能な砲なら焼夷弾。

 

 徹底的に位置をつかまれているラキア軍の陣のすぐそば、特に撤退したい道路に、次々と大爆発が起きる。木がなぎ倒され、岩が砕ける。轟音と爆風が、陣を埋め尽くす。山の道路を崩し、橋を粉砕する。

 10キロメートルの範囲、全弾1メートルの誤差もなく、人を外して着弾する。殺さないように、そして十分に心を砕くように。

 砲弾は、シェルショック……屈強な兵士の心を砕き、戦争におけるPTSDを史上初めて重大な問題として浮かばせたほどの力がある。まして爆薬そのものが、初体験なのだ。

 中でも、チェンタウロ・ドラコの76ミリ砲はすさまじかった。艦砲にほかならないオトー・メラーラ砲。毎分120発、毎秒平均2発発射でき、射程も初速も弾頭重量もすさまじい。砲を動かして別の場所に狙いを切り替えるのも速く、狙いもきわめて正確だ。

 

 悪天候も幸いした。強制任務で出撃し、指示を受けて安全地帯に後退していた他の【ファミリア】は、何も知らないままだ。無論、発射地点の恐ろしい炎や煙も見られてはいない。

 それを見る者が、【ヘスティア・ファミリア】と【アポロン・ファミリア】の『戦争遊戯』を連想したら秘密がバレてしまいかねないが……しっかりと事前に人を遠ざけた。

 

 

 それも知らず、数日のあいだベル、ヘスティア、そしてアイズは山奥の村に滞在し、そこで女神と愛し合った男の最期を看取ることになるのだが……

 それは、ベルが神との恋愛を、

(愛し合って自分が先に早死にしたら、祖父を失ったときの自分の辛さを、相手が味わってしまうのではないか……)

(それも何万年も……)

 恐れていたこころをヘスティアが理解するのに必要な時間となった。

 小型発信機を持つアイズは無人機で発見されていたが、

(ちょっとは休息を……)

 というリヴェリアの母心で休んだ。それは彼女の心に、いくつも変化の種を植え、芽を出すに足りた。

 黒竜を信仰する村。ベルとヘスティアの絆。そして、ベルそのひと。普通に暮らす人。

 多くを見てしまった。中には、今の彼女には受け入れられないものもあったが……逆に、自分の心にそんなものがあったことも、改めて直視した。

(あたりまえは、他の誰かにとって当然ではないかもしれない……)

 という、必ずしも多くの人が知るわけではないことを。

 

 

 その旅の間にも、戦後処理はおこなわれていた。

 アレスを天界送還したら、眷属である遠くのラキア民が『恩恵』を失い、悲惨なことになる。

 それを恐れた神々の決定で、アレスの助命は決められた。

「ラキアから賠償や身代金を取ったら、結局はラキアの民が絞られることになる……」

 と、瓜生がみなが納得するだけの金を出すことにした。それこそ黄金で出したらオラリオの経済が歪みかねない額を、コバルトや鋼鉄、高級石材、絹織物などで。

「優しすぎんなあ、そんなオラリオから遠くのパンピーにまで」

 とロキは言ったが、

「ただの偽善だ。それに……ひどいことをするつもりだ。今は産まれていない子にかもしれないが」

 と、瓜生は言った。

 捕虜となった将兵は、全員改宗待ち状態にさせた。アレスは一人で万単位の人間の背に、指を刺しては血を垂らして作業せねばならず、死にかけたものだ。

(『経験値(エクセリア)』を持ち逃げされてたまるかい……)

 と、いうことだ。

 だが、その人数の処分は、瓜生の意見もあり変わった。それだけでなく、アレス自身も『バベル』預かりとなり、主神ウラノスの祈祷を補佐する仕事を押しつけられることになった。

 

 以前から、オラリオは『ダンジョン』にしか関心がなかった。すぐ近くに未開発の山地があるほどに。『ダンジョン』に近いこともあり比較的モンスターが多く、地形が悪かったこともあった。

 港町への道はあったが、それ以外には大きい道もなく、農地も比較的狭い範囲だった。

 オラリオから離れるところを耕すより、魔石の富で港町から巨大汽水湖の水運で食物を買うほうが楽だったのだ。

(万を超える人数を、オラリオ周辺の開発に使う……)

 これは、特に農業神デメテルや道の神々などが協力を申し出た。

 農地の開墾。道路の整備。鉱山開発。工場。衛星都市の建設。

 さまざまな用途に、『恩恵』を受けた捕虜の巨大な労働力が使われることになる。

 クロッゾ一族や、のちにリリが主導する合宿を終えた元サポーターたちが、ヴェルフの祖父を中心に率先して、近代的な高炉の建設を学んだものだ。

 近代重工業には、のちにとんでもない競争相手ができるが……その競争相手の存在もまた、発展を早めることになる。

 農地も、【ヘファイストス・ファミリア】を中心にハーバー・ボッシュ法……大気の窒素を窒素肥料・爆薬の材料とする瓜生の故郷の技術……を可能とする高圧缶のオラリオでの生産に成功したこともあり、数年後にはとてつもない生産量になる。

 そして道路建設も進み、もともと優良な穀倉・大人口地域であるラキア地方と、その周辺の国々への通行も楽になった。そのころには捕虜とされた人々も強制労働から解かれ、オラリオの神々に所属しつつ家族を呼び戻して、オラリオ周辺にいくつもできた衛星都市で生活するようになっていく。

 やや離れた、優良な鉱山と優れた工業力を持ち、膨大な数の重砲で出ることも入ることもできないように守られた、恐怖の国に対抗するために工業力と農業力、無煙火薬と小型魔剣両方の原理を用いる火器工業を発達させながら……

 

 そして、瓜生は長期的にはラキアという国は滅ぼすと決めていた。

(確かにオラリオ攻めでは、残虐行為はなかった。だが好戦的な国、周囲の国との戦争では常に……)

 このことである。

 その悲惨は、ラキアに攻められる近隣国からオラリオに流れる難民の話などから、しっかりと確かめた。

 オラリオの冒険者たちは、基本的にはオラリオの外には関心がない。だが瓜生は違う。

 瓜生は商会を通じ、ラキアの周辺の、ラキアに苦しめられる国々に化学肥料などを輸出し、リンやカリウムの鉱山を調べて教え、知識を与えた。また、短期的には道路・港湾・治水にと多額の資金も与えた。

 さらに、ラキアに攻められた国から逃れた人を、近代的な製鉄業に紹介した。

 それらの地域の地理を学んだ。強い風が常に吹き、ボーキサイト鉱床がある国があった。そこからオラリオに逃げてきた人を探し、【ヘファイストス・ファミリア】に頼んで風力発電とホール・エルー法……電気分解を用いるアルミニウム精錬法を学べるよう、手配した。

 それだけ。だが、長期的には。

 ハーバー・ボッシュ法と、近代的な工業がそれらの国に流れる……莫大な食料と金属は、復讐の刃となるだろう。無論、それで今度はラキアが地獄絵図になるかもしれないが……ラキアからオラリオ近くに逃げる道も、今捕虜たちが切り開いているところだ。

(すべてを救うことはできない。おれがしたことは、別の悲惨な戦争を作るかもしれない。しょせん偽善。ただ、衣食足りて礼節を、少しずつでもましに……)

 瓜生はそう祈るように、技術を与えている。

 

 

 ちょうど戦争が終わったころ。

 ダンジョンのあるところでは、一人の少女が壁から生まれ、戸惑う言葉を発した。




世界最大都市が千年栄えている、その周辺が大陸規模で木を切りつくされ、農業の塩害も加わって砂漠になってないことが本来はおかしいんです。燃料・木材もダンジョン由来の方が大きいのか、または大炭田があって完全なコークス製鋼・コークス燃料流通があるのか…

誘拐の目論見を盗聴していたのにヘスティアが拉致された…瓜生は、
(深謀遠慮の人であり、臨機応変の人ではない……)
 というわけです。想像を絶する愚行までは対策しきれない。
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