ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
ついに【ヘスティア・ファミリア】の団員募集に応じ、ミアハ・タケミカヅチの学校で一月学んだ志願者たちで、ヘスティアの面接で合格した者が入団を許された。
入団の時ベルは、
「このファミリアの、最大の掟を言います。絶対に虐殺・拷問・強姦をするな。これだけは何があっても守ってください。誰に命令されても、どんなことがあっても」
と明言した。
ソロが軽く口角を曲げた。
入団式の後、たっぷりのごちそうも用意された。瓜生が、新築の集合住宅の大規模なキッチンのテストとして、多数の魔石調理器・プロパンガスコンロ両方を使って大量の鶏牛豚羊4肉たっぷりのカレーライス、焼いたソーセージとベーコン、業務用冷凍スープ利用のラーメンを作った。トマトとモッツァレラチーズを切った。食後はショートケーキとパウンドケーキ、リンゴ・オレンジ・パイナップルを大量に出してむいて切った。
集合住宅は大きい浴場と食堂があり、4畳半ほどの個室が多数。個室にはトイレと小さい洗面所があり、瓜生がサービスした折り畳みベッドとかなり高級なふとんセット、机といすが用意されている。
それまでは、以前にできていた3階建てのひとつにヘスティア・ベル・リリが暮らし、その上の階に【タケミカヅチ・ファミリア】が集まっていた。武威たちは宿から『学校』に通っていた。
新入生が入ったことで、3階建ての上は【タケミカヅチ・ファミリア】にこれまで通り貸し……その女のほうの部屋には命と春姫……1階はヘスティア・リリ・ビーツ、事務所も兼ねる。ベル・瓜生・武威・トグ・ソロは近くにコンテナハウスを重ね並べて住むことにした。一つ別にホームシアターも用意している。
あくまでヘスティアは、
「ベルくんと同室がいい!」
とわがままを言ったが、さすがに無理があった。
彼女はベルとほぼふたりきりでの地下室暮らしを、むしろ懐かしんでいるかのようだ。
【タケミカヅチ・ファミリア】は、屋台を手放して教育と探索に仕事を絞ることにした。
故郷の孤児で、何人かがオラリオに来た。危険な冒険者をさせるより、極東料理・土産物の小さい店を作ることにした。
屋台のための、味噌・醤油・麦芽飴・ようかん・焼き鳥用の肉・野菜・出汁・おでん種など、なんとか仕入れ路を作った。
『豊穣の女主人』にも近いところに、小さい店を作って極東出身者の一般人も何人か雇った。
そして『学校』の講師として武術を教え、また大恩ある【ヘスティア・ファミリア】の新入生が死なないように監督して、ダンジョンにもいく。
12人のさまざまな種族。武威・トグ・ソロも正式に『恩恵』を受けた。ソロが来たのは遅いが、武威たちは何度も学校を休みその分余計に出席しているので、ほぼ同時となった。
学校での生活自体がある意味入団試験だった。学校には、志望者全員を入れる。だが4人に1人ぐらいは逃げている。指示される生活に適応できない、ならず者精神を矯正できない者だ。
志望者は入れると言っても、瓜生の故郷では障碍者手帳が出るような人もいる。栄養失調などで入院が必要な人もいる。そういう人たちは入院させ診断し、普通の生活すら無理だとはっきりしたら『ギルド』の福祉側に回した。瓜生も資金を援助した。
「『学校』の門をたたいた者は、ひとりも路頭に迷わせない……」
それは、実際にオラリオで多くのファミリアに門前払いされ、路頭に迷いかけたベルの苦しみを反映した、『学校』最大の理念だった。
どうしても探索系には向いていないことがわかる志望者も多く、それはあちこちの学問・産業系【ファミリア】に紹介したり、『学区』で学んで別の道を歩ませたりする。特に研究や『学校』運営で忙しい【ミアハ・ファミリア】、熱心に勧誘に来る【ヘファイストス・ファミリア】に行く者が多い。
最後にヘスティアの面談で弾かれた者もいるが、その人たちもあちこちの善神のファミリアに紹介される。学校で学んだ実戦武術と読み書きは、探索でもそうでなくても役に立つのは明白だった。
他にも『学校』には、恩恵を受けない一般人やすでに別のファミリアにいる新人が武術を習ったり、武威やソロがこのオラリオの常識を学んだりする機能もある。
規則正しい生活。朝起きて、体を軽く洗って水を飲み、各人の体力に応じストレッチング・腹筋・背筋・ランニング。
読み書き・計算・人体や栄養、応急処置の勉強。
『学区』とも協力し、日本で言うなら「ひらがな・カタカナの読み書きができる」「数字・カレンダー・時計が読み書きできる」「教科書(九九表含む)をカンニングし、紙に書きながら、0以上の整数の四則演算はできる」「清潔を保てる=トイレを正しく使い、手を洗い、体を洗い、洗濯ができる」小学校3年生、また金があれば一人暮らしができる……値札を読み、最低限の交通ルールや社会常識を守って暮らせるのが目標。
地方の貧困な村からくる子には、想像を絶する人がいる。祖父に育てられたベルは、オラリオから見ても教育、生活、栄養の水準は高い方だった。
その教育は、別世界から来てまったく常識を知らない瓜生・武威・トグ・ソロにとってもありがたいものだった。
硬木の棒で立木を打ち、素手の簡単な型を何百、慣れれば何千も稽古し、ランニング。各人の体力に応じるので、弱い者も強い者も限界まで頑張ることになる。
数日に一日、都市外を日が暮れるまで歩き続けることもあった。
後半になると、むしろ二対一・三対一、三人を五人で包囲など、冒険者が現実にやる集団戦の練習をすることも多くなった。包囲されて殺されるのがどういうことか、何度も思い知った。
食事や衣類も、オラリオの平均程度の質は支給された。特に貧しい子には、それもむしろ贅沢と言えた。必要栄養は十分満たされていた。
『学校』ができるのは伝統が作られることでもある。それで特に大きかったのが、武威やソロがいたことだ。
ほとんど一般生徒とは関わらなかった。一番後ろで授業を聞くだけだった。
だが、たとえば瓜生の故郷の中学校で、一番後ろにNBAのレギュラー……身長215センチ以上、100メートル走11秒以下の筋肉ダルマ……がいて、不良行為やいじめ、授業妨害ができる男子などいるだろうか。
どれほど馬鹿であらくれ、チンピラ同然の育ちでも、桁外れの強者ににらまれていては何もできない。
だから、生徒の間で、暴力で地位階級を作り、自治することは驚くほどなかった。武威やソロが卒業しても、それは伝統になった。
卒業が近づくと、二人一組で上層のゴブリンを倒すこともあった。中学生が素手の運動部大学生を二人がかり、長柄武器で殺すようなもの。それができたら、次は10階層で到底かなわぬモンスターを見せ、うぬぼれを叩き出し冒険者の厳しさを骨身に叩きこんだ。
それで産業系ファミリアを選ぶ子もいた。
最後に、【ヘスティア・ファミリア】を強く志願した者全員、ベル・クラネルと戦った。桁外れの敏捷、触らせもしなかった……優しいベルは大怪我はさせなかったが。
ヘスティアの面接では、
「根が善良で誠実、向上心があり、うぬぼれと軽蔑が少なく、工夫でき生きのびたいと思う者……」
を選んだ。
「ベルくんの成長は、実はかなり異常だ。自分も同じ事ができるとは思わないで、死なないようにじっくり頑張ることができるかい?」
とも聞いている。
この最初のメンバーが何よりも大切なのだから。
絞られた新入生。ベル、リリ。命。瓜生、ビーツ、武威、トグ、ソロ。そして12人の新入生。合計20人。今の『学校』を見れば、年に10人は増えそうだ。
12人の普通の新入生は、ダンジョン、『ギルド』での講座と運動、『学校』で後輩たちを指導する、休み、と日を割り当てる。新入生担当になった命は、かなり大変な思いをしている。
家事の分担なども工夫する。
ダンジョンでの新入生は、最初の数回は命、ベル、ビーツ、ソロの誰かが順番にマンツーマンで引率。2時間ほどで引き上げて新入生は交代する。無論2階層まで。
まもなく、新入生8人と、上級生2人になる。【タケミカヅチ・ファミリア】や、【ミアハ・ファミリア】のダフネとカサンドラも協力してくれる。元【アポロン・ファミリア】でランクアップしたダフネたちは新人教育も、人数が増えたファミリアの運営もよく知っていたし、ナァーザも中堅派閥だったころを覚えている。
帰って反省会とトレーニングもやる。
『生命を大事に』、そして普段の運動はきつめに、しっかり休む。
一月、体を鍛え実戦的な剣術を稽古してきた者ばかり。かつてのベルのように体格に劣るものも多いが、並みの新人よりは優れている。
ただし、ベルに憧れ多くの【ファミリア】に拒まれた人が多いので、体格はやや劣る。重鎧に両手剣、というわけにはいかない。
また、ベルをまねさせるわけにもいかない。
(死ねというようなもの……)
だからだ。
目標は【フレイヤ・ファミリア】の『炎金の4戦士』ガリバー兄弟。小人族でありながら、4人のコンビネーションでレベル6相当の力がある。
今は銃器は与えない。ひとりが『学校』でも訓練された両手槍、ひとりが瓜生が出せる大型の対弾シールドで、バディをつくる。それが2組で4人チーム、基本的には挟み撃ち。クロスボウも活用する。見守る高レベルは緊急用に消音銃と軽機関銃、手榴弾も持っている。
『ギルド』が最初に貸与する武器防具も、瓜生が運動して質を上げさせた。それなりの鋼の剣や短槍、鎧、スネ当て……防御を優先させた。頑丈なヘルメットとブーツは瓜生が与えた。
とにかく死なないように、バディと協力し防御して倒すことをまず叩きこむ。それから、3階層あたりで血肉(トラップアイテム)を用い、多くの敵に囲まれた状態から、
(転ばず、孤立せず……)
崩れずに撤退する戦いを何度も何度も練習した。どうしても崩れた時だけ、上のレベルの先輩が介入して助ける。そして、
「助けなければ死んでいた、どうすればいいか反省するように……」
と、しっかり訓練をやり直す。
それをとことん繰り返す。
ほかにも、サポーター合宿の参加者を呼んで、多くの冒険者の死を聞いた。
囲まれる。押し倒される。仲間割れ。落盤による分断。ありとあらゆるイレギュラー、実力お構いなしの理不尽な死を。
そして訓練できることは訓練で再現し、少なくともパニックにならないように……
とにかく死なないように。団長のベルも、家族となった新人たちを死なせたくはない。
びくびくしながら武威とトグに『恩恵』を授けたヘスティアは、案の定頭を抱えることになった。それから間もなく、ソロでも頭を抱えることになる。
武威
戦妖 Lv.b
力: B 772
耐久: A 814
器用: D 556
敏捷: B 741
―
耐異常:C 魔防:E
《魔法》
・魔力はすべて闘気に回している
《スキル》
【武装闘気(バトルオーラ)】
・常時発動。
・強力な『気』を放出する。
・物理・魔法・呪詛を問わぬ絶対的な防御。
・力・耐久・敏捷の超高補正。
絶叫したヘスティアは、『b』は『6』と報告することにした。
『ステイタス』を見せる羽目になったら、
「『b』と『6』を間違えちゃった……」
と苦しすぎるいいわけをする予定だ。
【ロキ・ファミリア】では、
「8の間違いじゃないかな?」
「9でも驚かんわ、ドチビのことや上下間違ったんやな」
という会話……が、さすがに『b』は想像を超えていた。
戸愚呂ジュニア
妖怪に転生した人間と、天人のハーフ Lv.c
力: A 848
耐久: B 711
器用: D 556
敏捷: C 422
魔力: B 756
怪力:F
《魔法》
【解放の風(バーチャー)】
・一名、どんな傷も状態異常も一時的にキャンセル、数分間全力を出せる状態にする
・詠唱式『今のお前に足りないものがある、危機感だ』
【守りの壁(ケルビム)】
・防御壁の展開
・詠唱式『他の誰かのために120%の力が』
【】
《スキル》
【筋肉操作(ボディビル)】
・全身の筋肉を操作し、力・耐久・敏捷を超強化。
・80%以上になると周囲の生命力を吸収する。
・限界を超えると一定時間後に死ぬ。
ヘスティアはもう、適当にレベル3と報告することにした。
『恩恵』を受け、楽に行動できる25%程度で測ったら、ベンチプレス・デッドリフトの数値はだいたいそれぐらいなのだから。
ソロ
人間と天空人のハーフ Lv.6(42)
力: S 975
耐久: S 978
器用: S 959
敏捷: S 928
魔力: S 976
英雄:F 剣士:F 耐異常:G
《魔法》
速攻魔法
【ニフラム】
【ラリホーマ】
【メラ】
【ギラ】
【イオラ】
【ライデイン ギガデイン ミナデイン】
【トヘロス】
【ルーラ】
【リレミト】
【ベホイミ ベホマ ベホマズン】
【ザオラル】
【ザメハ】
【マホステ】
【アストロン】
【モシャス】
【パルプンテ】
《スキル》
【雷光剣(ギガソード)】
・ギガデインを剣に上乗せする
【天空之勇者(ミチビカレシモノ)】
・『神威』に抵抗できる
・魅了無効
当然7にランクアップ可能だったが、少し保留することにした。騒ぎにならないように。
6でも十分騒ぎになるだろうが。
また、ビーツもやっとランクアップしていた。大猿への変身や椿との修行がきっかけとも思われたが、武神タケミカヅチの意見は違った。
「『気』の制御を身に着けることで、一つの殻を破ったのだ。正しい立ち方、正しい歩き方、正しい拳を体の一部とすることが、どんな怪物との戦いより偉業だったのだ」
と。
彼女が二度と変身しないよう、常に尾を切ることも皆が決めた。何とかごまかせたとは言え、モンスター扱いされたら全世界を敵に回すことに、
(なりかねぬ……)
のだから。
最終ステイタスは、すべて100万前後だった。
ビーツ・ストライ Lv.3
力: I 0
耐久: I 0
器用: I 0
敏捷: I 0
―
耐異常・耐呪詛:H 怪力:I
《魔法》
・魔法を使用できない種族
《スキル》
【戦闘民族(サイヤ)】
・種族として魔力を持たない。
・種族として体力がとても高い。
・成長が早く、限界を超える。
・瀕死から回復したとき、獲得経験値超高補正と自動ステイタス更新。
【月下大猿(ヒュージバーサク)】
・条件(尻尾がある状態で、満月の光または同等の波を直視した)達成時のみ発動。
・獣化、階位昇華。理性を失う。
・尻尾を失うか、周囲を全滅させれば戻る。
【武装闘気(バトルオーラ)】
・常時発動。
・強力な『気』を放出する。
・物理・魔法・呪詛を問わぬ絶対的な防御。
・力・耐久・敏捷の超高補正。
【】
異世界出身の3人が正式加入し、ビーツもランクアップしたのを機に、一度本格的な遠征に行くことにした。
瓜生、ベル、ビーツ、春姫、武威、トグ、ソロ、ヴェルフ。
ついでに、【ミアハ・ファミリア】のカサンドラとダフネも加わる。久々にレフィーヤも加わった。
命とリリも、途中まではついてくる。
16階層までは新人たちも連れて、ある意味遠足。中層の巨大なモンスターをしっかりと目で見せる……傲慢にならないように。
それから、ベル・命・リリ・ソロが護衛して安全ルートから新人たちを地上に戻す。命は【タケミカヅチ・ファミリア】と新人たちの面倒を見る、というか、
「ああいうのにいつか勝てるよう、最悪ベル・クラネルのように5階層でミノタウルスに遭遇しても生きて帰ってこれるように……」
素振りと近代的トレーニングをしっかりさせる。
皆、見ただけで、また『咆哮』の衝撃に呆然としていた。そしてベルたちの桁外れの強さもあらためて痛感していた。
また、集団生活での家事分担など、新生活そのものに慣れてもらう。
リリはサポーターの合宿をはじめ多くの仕事に戻った。
地上まで見届けて、ベルとソロは超速度で18層に急ぎ、合流する。
19階層から、瓜生の能力を知らされているカサンドラとダフネが訓練がてら動かすナメル装甲兵員輸送車の出番。武威は相変わらず鎧が重いので歩きだが。
そう予定されていたが、ベルたちが18階層に戻ったあたりでちょっとしたイレギュラーがあった。
19階層でモンスターが大発生。それで、存在自体半分秘密な異世界組、カサンドラとダフネは先に強行突破し、ベル・ビーツ・春姫・ヴェルフ・レフィーヤが大発生の処理に協力することにした。
ソロの呪文や能力はFC・リメイクちょっとごたまぜ。
クリア後なのにこちらでのレベルがちょっと低い、と思う人もいるかもしれませんが…
人数の多い中堅ファミリアとしての生活は原作との乖離が大きく、楽しいかもしれません。