ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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怪力乱

 火鳥(ファイアーバード)の大発生で走り回っていたベルはふと仲間や、同行していた冒険者とはぐれ、一人になり、一体の竜女(ヴィーヴル)に遭遇した。

 人間のように話し、助けを求めてくる、常識外のモンスター。

 竜族ゆえに強いが、貴重なドロップアイテムのため多くの冒険者が血眼になって求めるレアモンスター。

 一糸まとわぬ少女のような姿。

(どうしていいかわからず助けを求める……)

 言葉と態度。

 ベルはつい、助けてしまった。モンスターからも、別の冒険者からも。サラマンダー・ウールで包み、18層まで連れ帰ってしまった。

 

 ビーツはほんの一瞬警戒し、すぐに警戒を解いた。

 春姫はおびえてビーツの背後に逃げた。

 ヴェルフはあきれかえって頭をかいていた。

 レフィーヤは半泣きでへたりこんでいた。

 

 春姫は箱入りで常識自体よく知らない。ビーツは、強敵と戦って強くなることと、腹いっぱい食べること以外どうでもいい。

 ヴェルフとレフィーヤは、常識が崩壊することに慣れすぎていた。

「リリルカさんがどんな反応をするか、目に見えますね……」

「ああ」

 なんとなく、ヴェルフもレフィーヤも、

(主神以外に報告するのはよしておこう……)

 と、目で合意した。

 

 

 

 ナメル戦車改造装甲車をひとり一両ずつ操るダフネとカサンドラが向かったのは、26階層の、広大なほぼ未開拓の領域。

 そこは、膨大な薬材料が眠っているらしい。

 だが、だれもいかない。

(割に合わない……)

 からだ。

 そこへの細い道は『ジャングル』と呼ばれ、常に膨大な植物系モンスターが守っている。

 その性質は、

(武器殺し……)

 と言われる。

 レベル4でもきつい、第二級以上の武器を必要とする頑丈な皮。そしてどんな武器も急速に錆びさせる、べったりとへばりつく樹液。厄介なことに魔法にも耐性がある。

 また、そこにしかない素材はない。もっと下の階層に行けば、一度に得られる量は少ないが、手に入る素材ばかりなのだ。

 高額な武器を大量にダメにするほどのメリットは、ない。

 そこは、RWS(遠隔操作砲塔)と焼夷弾の短距離迫撃砲にとっては、まさにおあつらえ向きだった。

 タングステン弾芯の徹甲焼夷炸裂弾は、皮を貫通し内部から焼き爆破する。植物なので火には弱い。

 しかも、弾頭は完全使い捨て。修理できないと泣く必要はない。

 弾は山のように積みあがっている。

 元【アポロン・ファミリア】の女冒険者は、想像を絶する薬素材を稼ぎまくって引き返した。その時にはもう、ベルたちは先に帰っていた。いぶかしい伝言を残して。

 大量に捨てた空薬莢や、残った弾頭を拾った者がいることを、ふたりは知らない。

 

 

 瓜生の装甲車と、ランニングのように装甲車と平気で並走する武威が、あっというまに46階層に至った。

 出てきたモンスターたちが次々と灰と化す。

 恩恵を受けたトグも、冒険者らしく魔石やドロップアイテムを拾っている。またサーフボードのような形で身長の倍近くある、楯と大剣を兼ねる厚い武器で身を守り時には全身で打ち切る。その重量はティオナ・ヒリュテのウルガにも劣らぬ。

 ソロも、以前とは打って変わって積極的に戦っている。詠唱のない、呪文名だけの魔法と、凄腕の剣。

 瓜生もナメルで身を守りつつ、30ミリ機関砲の圧倒的な火力を発揮する。

 そして3人にも、火器の使い方を教えている。14.5ミリセミオート対物ライフルとZU-23-2対空機関砲。

 武威とトグは、裏で妖怪が存在する以外は瓜生の故郷によく似た世界の出身……もしかしたら、瓜生が妖怪や霊界について知らないだけで同じかもしれない……で、火器の概念はある。ソロもまもなく覚えた。

 目標は、46階層の奥。オラリオではタブーとされ、ロキ・フレイヤどちらも手を出さない。

「あそこは、強化種をつくる装置だ……」

 と、フィン・ディムナはいったものだ。

「悪夢じゃな」

 ガレス・ランドロックも思い出したくないようだ。

 

 45階層の、食糧庫(パントリー)に通じるいくつかの道が交わる広場がある。そこに、固定された縦穴がある。その下、46階層の一部は、狭く閉鎖的な構造になっている。

 広い45階層全体の多数のモンスターが、食事のために通る道だ。その半分以上が落ちる。

 それだけではない。あの44階層のめちゃくちゃな数のタイゴンファングが、罠にかかった獲物がなくても時々大発生し、獲物がいなければ落盤が起きてまとめて落ちる。落ちたところにちょうど、固定縦穴がある。

 その『壺』の壁も、誰も入らなくても多数のモンスターがコンスタントに出る。

 飢えたモンスターたちが、狭い範囲に落ちて閉じこめられ、食い合う。その『壺』と呼ばれる領域は、簡単には破れないキノコのような組織が蓋をしている。

 多様なモンスターの蠱毒から強化種が生じ、普通の怪物には壊せぬキノコを壊して外に出る……出たところには、膨大なエサがあるのだ。

 キラーアントの上位種、ストーンアントの巣がある。

 それ自体が強い。キラーアントの『初心者殺し』と言われる硬殻と攻撃力が、深層にふさわしく強化されている。まさに石のような固さ、攻撃力もバーバリアン以上。

 それが、よくて百。下手をすれば万単位。キラーアントの瀕死になるとフェロモンを出して仲間を引きつける性質も、めいっぱい強化されている。というか即死させても仲間がぞろぞろ集まる。

 だからその地域は、普通の冒険者にとっても鬼門だ。大きく避けてさっさと47階層に行くのが普通だ。

 誕生した強化種はそこにとどまる。弱ければ逆に食われるが、それでとんでもなく強いアリが出現することもある。

 さらに、それで強くなってから44階層の、あの多数のタイゴンファングの『掌』に行って死ぬか、生き延びれば莫大なエサを食うこともある。

 他にも、37階層の『闘技場(コロシアム)』のように多数のモンスターをコンスタントに出す地域もあり、そこでエサにありつくこともある。

 そんな強化種が上に行けば、多数の冒険者が死ぬ。多くはより深層に向かい、戻ってこないとされる。それ以上のことは知られておらず、多くのばかばかしい伝説に彩られている。

 正規のルートを行っていれば、それら強化種に会うことはめったにない。だが余計な道に入れば、高レベル派閥でもあっさりと全滅することになる。

(50階層以降にもつながっている、正規の階層貫通路とは別の階層間通路があるのか……)

 伝説にすぎない。

 少なくとも、46~48階層で正規ルートを外れて変なところに入って帰ってくるパーティがないことは確かだ。その探索は、【フレイヤ・ファミリア】にすら不可能だ。伝説だらけの、未知なのだ。

 

 しかも、誰も知らぬことだが……【ロキ・ファミリア】の大遠征のスピードがとある理由で速かったことで、ここしばらく多数の強化種が出ている。ましてもともと、強化種を作るためのような地形では……

 大量の魔石も得られるため、溶解液のイモムシと食人花、傷ついた怪人もたびたび訪れ、死にかけることもある。

 

 

 幅も高さも巨大な通路にいたのは、4本角で首もとても長い、全長12メートルに及ぶ4つ足トカゲだった。普通とはまったく違う、漆黒の姿。チーター、いや銃弾のような速さで武威に襲いかかった。衝撃波が周囲にぶちまけられる。

 桁外れの迫力と殺気が、まだ未熟なトグを打ちのめす。

 そこはあちこちから通路でつながっている。別の方向から、溶岩でできた巨体の怪物が10体以上襲ってきた。さらに別方向から、高さだけで2メートル、長さがどれだけかわからないムカデが、とっさに数えられない数。

「ギガデイン!」

 躊躇なしにソロの大呪文が叩きつけられる。壁から猛烈な勢いで湧き出した、巨大なアリの群れも稲妻の嵐が打ちひしぐ。

 鎧を捨てた武威を、すさまじい武装闘気が包んでいる。それに食らいついた黒い閃光、桁外れの力で鋭利な角をつかんで押し返しつつ、広いルームの壁に絡み合った巨体がめりこむ。

「戸愚呂なら40%といったところか」

 つぶやいた額に傷がある巨人が、長い巨体を投げ返した。

 ソロも、それを見て安堵したように別の黒い怪物に立ち向かう。5メートルはある巨大な黒いアリが6匹。

 瓜生の装甲車も30ミリ機関砲弾をぶちまけ、特に巨大で頑丈な怪物を粉砕していく。RWSと連動するように改造し頑丈な台車に乗せたファランクスCIWSを牽引し、秒間100発の濃密な20ミリ弾をぶちまけている。

 トグも習ったばかりの機関砲を巨大アリに叩きこむ。

 武威は丁寧に立ち、深呼吸した。体を浮かせるほどの光液が小さくなり、密度を上げて、武威の巨体に収まっていく。

 ふたたび牙をむき出し、時速200キロ以上で襲いかかる黒いトカゲ……それに、武威はすっと手を差し出した。

 戦いよりも姿勢、呼吸、体の中の筋肉の配分に注意を注いでいるように。腰をひねりながらゆっくりと差し出される掌が、巨大トカゲの2メートルはある爪に触れた。

 直後、激しい爆音がする。全身で踏みこみ、強化種の巨体をはるか遠くに吹き飛ばし、ふたつに折っている。

 それでもレベル6を超えるであろう強化種は、奇妙な霧を浮かべて傷を回復させてまた襲いかかる。

 武威は深く深く呼吸し、払いのけて深く腰を落として肘打ち。巨大な、黒鋼の塊のようなトカゲが、奇妙にも動きを止める。そして内部で何かが暴れまわっているように痙攣し跳ねてから、内部から爆発した。

 おそらく重い鎧を着たまま、束ねて溶接した鉄道レールをふるっても倒せただろう。まして鎧を脱ぎ、『武装闘気』を暴走させて戦えば……だが、武威にとっては、新しい戦い方を身体で覚えることが、今は目標だった。

 直後武威の背後から襲いかかった、象より大きな黒豹……だが、ソロの剣がしっかりと食い止め、的確に呪文で弱らせる。仲間と戦うことに慣れきっている。

 すぐに武威は、一瞬暴発しかけた闘気を制御し、丁寧に円に沿って歩きつつ体をねじって手刀を放ち、タイゴンファングの強化種を両断し……まだ不完全だったのか、悔しそうに唇をかんで、素振りを繰り返した。

 

 それから4人は何体も、【ロキ・ファミリア】レベル5以上全員で一体と戦うのもきつい、階層主以上の強敵を倒した。

 武威は圧倒的な力があるが、まだ新しい戦法は未熟。それをフォローするのがソロの、強敵との戦いを何万繰り返したかわからない圧倒的な経験と粘り。そして火力。それが強化種の桁外れの力と、激しくせめぎ合う。

 また瓜生とトグは外れ、44階層の例のタイゴンファング大量出現地帯で、武威とソロだけで戦い抜いた。

 その間、トグは徹底的に火器の使い方を習った。超人が重火器を使うと、その効果は何倍にもなることは【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者たちで経験済みだ。トン単位の対空機関砲を担いで運び、高速で移動し精密に急所を撃ち抜くことができる。

 食事どころか、シャワーとベッドすら不自由しない。大型のコンテナハウスで、十分な生活はできる。

 それから莫大な収穫を『ふくろ』に詰めて、ソロのリレミトで帰還した。

 帰った4人は、ベルのとんでもない話を聞くことになる。

 

 

【ヘスティア・ファミリア】がダンジョンにこもった翌日、地上では大きな騒ぎが起きていた。

『ギルド』には、恩恵を受けた冒険者の名前とレベルは申告しなければならない。そしてその名前・レベル・肖像画は掲示板に公開される。

 ビーツのランクアップ。新たにレベル3と、6がふたり。新入生の人数も加わり、派閥のランクもかなり高くなる。

 エイナ・チュールは激しい問い合わせに、乾いた笑いを浮かべながら応えていた。同僚までそれに巻きこまれ、苦労していた。

 それだけでなく、帰ってきたベルが、何かとんでもない秘密を抱えているのを見抜いてしまい、苦悩することになる……

 

 

 そのころ、【ロキ・ファミリア】はラキア戦争も終わって、多くが近代トレーニングをしていた。

「重量は調整したね?ストス、肩ひもがずれている。全員深呼吸、スクワット40回から、はじめ」

 フィンの号令のもと、多数のレベル1と2が、20キロから100キロの砂袋を詰めた、瓜生にもらった頑丈なリュックを背負ったまま、いろいろやる。

 スクワット。

 腕立て伏せ。

 懸垂。

 腕立て伏せのようで肘をつく姿勢を維持するプランク。

 しゃがむ・両手を地につく・足を伸ばして腕立て伏せの姿勢・戻る・しゃがんだ姿勢からジャンプ、それを繰り返すバーピー。

 号令に合わせた、縄跳びと同様になる連続ジャンプ。

 それを何セットも。

『恩恵』を受けた冒険者でも、それぞれの力に合わせて重しを増やし、激しい運動を続けていれば当然へばる。

 水と塩は常に配られている。脱水はない。だからこそ倒れられずに動き続けることになる。あっというまに、汗で地面が湿る。

 それから、さらに数人ずつ大重量のバーベルに挑み、数回で限度になる重量でデッドリフト・ハイクリーン・ベンチプレスなどを繰り返す。

 

 何人かの上位冒険者は室内で、違和感のあるエアロバイクに乗っている。

 5人がひとつの大画面を見ている。その画面には、ツール・ド・フランスの選手ヘルメット映像が流されている。

 普通のエアロバイクではない。フレームなどが妙に太く武骨で頑丈、手作りの雰囲気だ。

 ペダルシャフトが異様に太く、明らかに鉄の質感ではない……【ヘファイストス・ファミリア】の、かなり上級の装備と同等の金属製品。さらにシンプルで頑丈な軸受けの中心には、厚さ4センチ・直径60センチものギアが一枚がっちりと据えられている。

 瓜生の世界のギアを研究した、【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師たちが必死で作り出した品だ。その精度、硬度、頑丈さ……すべて驚きの連続であり、主神に挑む以上と思えるほど大変な挑戦だった。

 ちなみに軸受け装置はまだ瓜生が出したものだ。遠く及ばない……悔しくて仕方がなく、今も鍛冶師たちは必死で分析し、学び、研鑽している。

 そのギアは6センチはある太いシャフトのギアとかみ合い、大型の発電機につながれている。発電機の電力の一部は大型バッテリーに貯められて画面の映像を維持する。また大部分は、魔石を用いる特別な蓄電池につながる。小型車ぐらいのサイズがあったためそれまで用途がなかった、雷の魔術を一時的にためる魔石器具があった。それは瓜生の故郷では到底望めないような超大容量の蓄電池だった。

(これを故郷で作れたら、核融合炉より……)

 と瓜生が思ったほど。

 エアロバイクにサドルはない。立ち漕ぎのみ。そして、体格に合わせて調整できる恐ろしく頑丈な金属棒で、肩を上から支える。肩でフレームを押し上げ、その支えでペダルを踏むのだ……体重などではぴくりとも動かないほどの負荷だ。

 アイズ・ヴァレンシュタインは、まさにツール・ド・フランスの選手そのものの激しい日々を過ごしている。一日中走って走って走りまくる……背中から口元近くに伸びるホースでブドウ糖を入れた塩水を飲みながら。

 汗みずくを通り越し、自転車で何トンもの荷車を牽引しているような負荷で12時間以上。ロキの部屋まで歩けずレフィーヤやティオナに運んでもらうことになるが、3日かけてダンジョンの35階層まで往復するより力・敏捷は向上する。

 

『耐久』を向上させるために、アマゾネス姉妹とガレスはとんでもない無茶をしている。

 アイズたちが回しているエアロバイクの電力を一部使い、スプリングハンマーと呼ばれる瓜生の出した近代工業機械が動いている。

 あらゆる安全装置を壊した大きな機械の中に入って、腹を叩かせているのだ。巨大な鉄板を打ち曲げる、大男が全力で振るスレッジハンマーの何百倍もの力を腹で受け止めて。寝転んで腹を踏ませる過激な腹筋運動のようなものだが、桁が違う無茶だ。

 高さを調整するため、背に敷いた鉄板が歪むほどの、第一級冒険者の身体の頑丈さ。

 

「もっと前に彼がいたらな」

 延々と特殊なエアロバイクを漕ぎ続け、肌の色も変わるほどの疲労でまだ漕いでいるアイズを見たフィンがつぶやいた。発電機につないだ、小人族用特注の【ヘファイストス・ファミリア】作の階段上り運動機で、大型トラックぐらいの仕事(物理学の文脈=力と距離の積分)をしながら。

「ああ。アイズは毎日ダンジョンにもぐるより、ひたすらバイクをこぎ、バーベルを上げていただろう」

 ボート漕ぎ運動をしつつ、リヴェリアがため息をつく。

 その横では、

「このままじゃ、あと半年もせずにベルはレベル5、いや6……」

 とレフィーヤが激しく息をついては、必死でボート漕ぎ運動機のハンドルに挑んでいる。ほとんど動いていない。

「レフィーヤ、強くなりたいなら自分の力に合ったものをやれ」

 とリヴェリアが叱った。

 彼女は、レフィーヤが最近の、ベルたちとの小遠征でとんでもない経験をしたことを察している。なにか隠していることを察してはいるが、

(それだけのことだろう……)

(主神には言っているはず……)

 と心配しながら見守っている。

 フィンの親指も、間違いなくとんでもないことがあると知らせている。

 近代トレーニングにアイズがはまったのを見て、フィンはリヴェリアとガレスに漏らしたことがある。

「あのファミリア、主神のヘスティアも大きな存在かもしれない。確かに特技はないが、優れた特技を持つ善神との神脈があり、信頼されている。そしてあの異様な存在を受け入れている」

「他のファミリアの力を借り、惜しみなく貸すというのも異常じゃな」

 ガレスもうなずく。

「ベル・クラネルと神ヘスティアだけではお人よし過ぎて騙されるかもしれない、だがウリュウとリリルカがうまくバランスを取っているな」

 

「食事はちゃんと、決められた量食べること」

 リヴェリアがアイズに厳しく言った。

 それこそビーツと同じように大量に食べなければ、この運動量で体を維持することはできないと神ミアハも言った。

 厨房はとんでもない量のベーコン・トマト・レンズ豆のミネストローネを用意している。

 もうそろそろ、ボロボロに疲れたゾンビ同様の眷属が多数押し寄せてくる。元気な者は飢えていたように詰めこみ、それを通り越した者は強く言われて無理に腹に詰めこむ。

 

 

 

 戦争がやっと終わったオラリオの、壁の外には次々と工場ができている。聞き慣れぬ騒音が響き、いろいろなものが安くなる。

 その近くにはコンテナの家が並び、貧民たちの生活水準が急速に向上している。

 絶えていたメレンからの輸入も再開され、久々のカレーライスやドドバスに多くの金持ちが舌鼓を打つ。

 これから何が起きるのか、誰も知らない。

 

【ヘルメス・ファミリア】の探索者は、遠い国の貴族のおぞましい行為と非常識すぎる存在を見て、心が壊れそうになっている。

 

 冒険者の間の噂を聞いた男は、その桁外れの邪悪をもたげる。毒に満ちた魂、楽しみを追う主神……地獄の窯が開こうとしていた。

 知っているのだろうか。かれらにとってこの上なく呪わしい敵が、激烈な決意を固めようとしていることを……

 

 鍛冶の女神ヘファイストスは、神友と愛する眷属に秘密を打ち明けられ、頭を抱えつつ未知にときめいていた。そして、

(せめて、装備で【ヘスティア・ファミリア】の新しい子たちも応援しよう……)

 と決意し、新しく手に入れた機械でできることも考える。

 

【ロキ・ファミリア】の『黄昏の館』の奥では、主神だけにすべてを打ち明けた少女を送り出した主神が、いつもとは違う……あらゆる陰謀を操る恐ろしい顔をしていた。

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