ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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幽白の、戸愚呂チームの生活について、独自設定と言っていい推測が混じっています


過去/決意

 瓜生・ソロ・武威・トグの4人が地上に戻ったのは、ベルたちが戻った2日後だった。

 ベルとヘスティアは、覚悟しつつ恐怖して、出迎えた。

(ウリューさんは、きっと受け入れてくれる……)

(武威さんやソロさんはどうなんだろう……)

(もし、3人ともダメだと言ったら?でも、それでもウィーネを守りたい……)

(勝てるわけないなんてもんじゃないけど……)

 

「お帰り!ぶ、ぶじで」

「何があった?」

 ソロが自然に聞いた。

 瓜生にもわかった。それぐらい、ベルとヘスティアの挙動不審はひどいものがあった。

 そしてリリの表情も、実に雄弁だった。

(この世の終わり……)

 と顔に書いてあるようなものだ。

「先にごはん」

 ビーツが言ったのに、瓜生も苦笑気味にうなずいた。

「豚の生姜焼きと、豚汁」

 サイヤ人の少女は、つい今までよほどの無理な鍛錬をしていたな、と全身に書いてある状態で、食事のことだけ言った。

 命と春姫が食事当番、たくさんの腹ペコ+ビーツの腹を満たせるよう大量に作って待っていた。

 瓜生たちが帰ってくる前の生活だが、まだ新入生には知らせていない。ウィーネとビーツ以外は少なめに食事をしてから、また新入生たちも呼んでウィーネを隠して食べるのだ。

 ビーツは当然、二度食事をする。

 ウィーネと食べるときには

「ちゃんとみんなでいただきます、ですよ」

 と、何も知らない竜女の少女をしつけることもする。

 

 ウィーネはいない状態の、たっぷりの温かい食事を終え、新入生以外が集まる。

 新入生は冒険談を聞きたくてうずうずしているが、我慢しなければならないと命やヘスティアから伝わっている。それどころではないのだと。

 モンスターの少女が隠れ場所から出た。

 瓜生の周囲の、空気がきしむ……そんな感じがするほどの、すさまじい感情と抑制。

 ソロはもっと、強者の激烈な殺気を噴き上げた。ベルが感じたリュー・リオンの激しい感情の、何倍も強い殺気の奔流。

 武威は平然としていた。

 トグは、ほんの少し呆然として、考えて、凍りついた。

 

 ソロが強く食いしばった口を開いた。

「前にダンジョンに入ったとき、明らかに人間と同様の心を持つモンスターに会った。あんたたちを信用してなかっただけだ」

 ソロの言葉。ベルやヘスティア、リリは驚く。

 武威が加える。

「オレと何時間も稽古した。ただ強くなりたいだけの、修行者だった」

 ソロもうなずいた。

「そうか、君たちからみれば、この世界の常識を教えたボクたちが嘘つきに思える。……ボクにとっても、とことんはじめてだ」

「この世界の人間で、理知を持つモンスターがあり得るなんて考える人もいません。聞いたことはありません」

 ベルが深く頭を下げた。

「……こういう存在……ということは……」

 じっと考えており、伏せた顔を上げた瓜生の表情は、鬼のようだった。

「う、ウリューさん、どうしたんですか」

 ベルがおびえる。

「ヘスティアさま、紹介状の準備をお願いします」

 瓜生の口調のすさまじさ。歯をギリギリと噛み鳴らす音。

「……わかっているんだね」

 ソロが言う。その身体から闘気が立ち昇る。

「そっちもか。協力してもらえるか?」

「信用していいのか?」

 無気力だったソロが、完全に燃え盛っている。とんでもない冒険者……いや、英雄。ベルにはそれが実感された。

「オレはむしろ、加害者の側だが?そしてこの子は加害者の……」

 武威がトグの肩に触れつつ、静かに言う。

「これからもやる気があるか?やるなら殺す」

 瓜生の言葉に、

「ない」

 とそれだけ言った。

「子には罪はない」

 瓜生の言葉に武威とソロがうなずく。

「ど、どういうことなんですか!なんの話をしてるんですか?」

 自分には意味が分からない、3人だけに通じるような会話。まどい叫ぶベルに、瓜生は静かに言った。

「ベル。この子が世界最初とは思えない。以前からいたんだろうし、噂もあった。ということは、人間というクソといったら排泄物に失礼なド外道がやらかすことは……」

 すさまじい怒りを込めた、下品な言葉。

「人間を滅ぼすのか?なら、気持ちはわかるが止める」

 ソロの思いつめた言葉に、

「虐殺はしないよ、人間という最低最悪種族であっても。虐殺をして人間と同類になりたくはない、とても残念ながら人間だけどな、おれも」

 瓜生がすさまじい笑みを浮かべる。

「なにが、なにが……」

 ベルが怒鳴る。ヘスティアと、小さなモンスターはただ震えていた。

「ここは安全とは限らない。場所を移そう……ランダムに」

 と、瓜生は繁華街の地図をヘスティアの執務机から取り、20面ダイスをふたつ振った。

 結果を見て、定規を縦横に使う。オラリオの繁華街を縦横20分割し、ダイスの数字を座標としたのだ。

「この店なら話せる個室があるか」

「そこまで盗聴を警戒するのですか」

 リリがため息をついた。

「これからは、全員尾行と盗聴を前提にしろ。実力がどれほど高くても、尾行だけに特化した信じられない能力の持ち主がいるかもしれない。この世界には見えなくなる魔道具もある、虫に化けてさらに透明、すら想定しろ」

 瓜生の言葉に、武威とソロもうなずく。

 

 ヘスティア、リリ、ベル、瓜生、ソロ、武威は繁華街に出かけた。着ていく服は全部瓜生が出したもの、持って行くものも徹底的に点検してから。

 ビーツ・トグ・命・春姫には、同じようにランダムに選んだ宿にウィーネを連れて泊まり、交代で眠り徹夜で警戒するよう、何重にも逃げ道を作るよう言った。億に達する資金と、大量の戦闘用装備を与えて。特にリリとトグは銃器の扱いを知っている。

 新入生たちは、ほぼ同居に近い【タケミカヅチ・ファミリア】と夜稽古ということにし、共同で警戒させた。

 

 武威は力を押さえるための分厚い鎧の上に、さらに分厚い皮コートを着ている。

 個室がある、高級な居酒屋に向かう途中で、屋根がある大きい店に入って別の出口から抜ける、気まぐれに辻馬車で少し関係のない方向に走るなどした。

 途中で、リュー・リオンとすれ違った。瓜生たちの顔を見た彼女ははっとした。

 ソロと武威が、瞬時に彼女をはさむ。武威は拳を握って腰を落とし、ソロは短剣の柄に手をかけた。

 リューは両手を挙げる。武威とソロとは初対面だが、抵抗が無意味なほど差があることは即座に分かった。

「重大なことのようですね。口を封じられますか?」

 殺されることを、喜んで受け入れるような態度。

「……それは後でもできる。来てくれ」

 瓜生の言葉に、リューはうなずいた。

「未熟ですまない」

 瓜生はソロや武威に言う。ただ、ただならぬ雰囲気はベルやヘスティアも出していたので、リューにはお見通しだっただろうが。

 

 目的の店に着いた瓜生は多額のチップをはずみ、大きめの個室を借り切って店員には来ないように言った。

 直後、武威とソロが、その部屋のすべての空間をくまなく切り突く。透明な小人が天井に張りついていても、天井を傷つけずに確実に倒せる密度、それがほんの数呼吸。無論誰も傷つけずに。

 それが終わってすぐ、瓜生が部屋のサイズを測っていすや机を片付け、段ボールと発泡スチロールを出して床・壁・天井を覆い厚手のガムテープで封じた。防音のためだ。

 リューには、瓜生の虚空から物を出す能力は初めて見られている。だが騒いでいない。いろいろと納得したように、ひとつも感情を出していない。武威とソロが静かに暴れたのも、平静に動かずにいる。

 狭い防音室に武威の巨体も詰める。瓜生が話し始める。

「リュー・リオンさん。聞いたら引き返せない」

「はい」

「ベルたちが中層で、言葉を話し人を襲わない、人間の子供のような態度の竜女(ヴィーヴル)を拾ってきた。こちらのふたりも、人を襲わず話すモンスターに会ったという」

「はい」

 リューはまったく騒がない。まるで知っていたかのように受け入れている。

 だがソロは、彼女は知っていたのではなく、自制力が高いだけだとわかった。

 瓜生が深く息を吸い、言う。

「世界最初ではないだろう。そんなモンスターを売買する市場が、あるに決まってる。何を賭けてもいい。拷問・強姦・虐殺を楽しむ金持ちども」

 武威とソロがうなずき、ヘスティアとベルが倒れそうになった。リューとリリはうなずく。

「闇派閥(イヴィルス)の資金源の一つにモンスターの密輸がある、と聞いたことがあります」

 言ったリューの周囲の空気が、すさまじく張り詰める。

「それは考えていなかったな。となると……」

 瓜生の口が『ロキ』と言いそうになって止める。

「ロキたち」

 と、ヘスティアは言ってしまった。

「【ロキ・ファミリア】は昔から闇派閥と戦っていました。この間も、18階層で闇派閥の痕跡を見ていますし、ウィリディスさんも……そういうことですか」

 リューが納得した。

 ソロが拳を握り、言う。

「ピサロに誓って、心を持つものをいじめる奴らは、絶対に許さない。……そういうことか、入団の時、絶対に虐殺・拷問・強姦を禁じると言ったのは。人間でなくても、と」

「……後悔したか?おれを入れたことを」

 瓜生がベルとヘスティアに言う。

「するもんか」

 ヘスティアが大きな胸を張る。

「英雄どころか、全種のすべての『ヒューマン』に石を投げられる覚悟はあるか?世界最悪の悪人と唾を吐かれる覚悟はあるか?お金を持っていても売ってもらえない覚悟はあるか?」

 瓜生がベルに言う。ベルは震え上がって、うつむいた。

「冗談抜きに、そういうことですよ。……いえ。最悪、アイズ・ヴァレンシュタイン様を殺し、殺される覚悟は、おありですか?」

 リリがベルの手を握る。ベルの歯が鳴る。

「おまえは?」

「ベルさまに従います。万々一ヘスティア様もウリュー様もベル様を見捨てても」

「見捨てるもんか!」

 ヘスティアが絶叫を小さい声に押しこめる。

 リリは歯を食いしばって、震えている。すさまじい覚悟だ。

「ウリュー君。ソロ君。武威君……教えてくれないか?」

 過去を。

「私も言います。……私は」

 リューが、下を向いて一瞬瞑目し、顔を上げた。

「オラリオの治安を維持してきた、【アストレア・ファミリア】。闇派閥がダンジョンで仕掛けた攻撃で、私一人が生き残り全滅。私は主神を遠くに落ちのびさせ、敵を皆殺しに。のみならず『ギルド』職員や商人も何人も殺しました。無実の人もいたでしょう。

 ブラックリストに入っており、賞金もかけられました。賞金は解除されているようですが……」

 途中で、明らかに知っている瓜生の態度に驚く。

「オラリオに長い住人なら常識です。ウリュー様は、実に情報収集に熱心です」

 リリがため息をつく。

「私も、復讐をやりとげてしまったんだ」

 ソロがリューの手を握っていった。彼女は、エルフなのにその手を拒まない。

「私は勇者になると予言され、山奥の村で育てられていた……ピサロという、人間と争う魔族の王子に村を滅ぼされ、ひとり生き残って旅に出た。仲間と出会ってピサロを追い……ピサロの恋人、エルフのロザリーに会った。その護衛を殺して。

 それから、ロザリーが……涙が宝石になる。人間に殺された。ピサロはそいつらを殺し、そして禁断の方法で自分を強めて人間を滅ぼす、と。心さえ捨て怪物になった。

 私はピサロを殺し、……それから、気がついたら、あの中庭にいた」

「ほ、本当に、世界を、人類を救った勇者……英雄……」

 ベルが驚く。

「ただの復讐者だ。復讐者と復讐者が殺し合っただけだ。……ピサロに復讐されるなら、正しい……」

 ソロが激しい感情を抑えて下を向いた。リューがソロの手を強く握り返す。

「「復讐しても、なにも残らない」」

 ふたりが歯の間から絞り出すような小声をそろえる。

 武威が静かに天を仰ぎ、言った。

「オレは加害者側だ。オレ自身はひたすら最強になりたかった。強い敵に負けて、修行してもう一度、と願ってその仲間になった。オレの仕事は定期的な武術大会で雑魚を殺すだけだったが……

 その主は、人間の金持ちのため、妖怪を売買し、金持ちを守っていた。主は昔は正義の側で、自分を責め死にたがっていたんだが……

 主の被害者に、宝石の涙を流す少女もいたと聞いている。その事件で人間や天の側に立った正義の味方が、主を武術大会で倒した。

 殺すか?」

 武威は瓜生とソロを見た。

「これからやらないならいい」

 瓜生が言い、ソロもうなずく。

 武威が続けた。

「ついでに……風の噂だが、その正義の味方の先代は、人間の金持ちが多数の妖怪を拷問虐殺するのを楽しんでいるのを見て、人間すべてを滅ぼそうとして……倒された、と」

「わかる」

 瓜生はそれだけ言った。ソロもうなずく。武威は少し続けた。

「オレは主が死にその組織が崩れてから、主の息子……おまえたちがトグと呼んでいる子を預かった。あの子こそ、その父親のような業者が商品にして大金を得るような希少品だった。ある意味因果応報だが、子に何の罪がある……

 守って逃げていて、たまたまとんでもないアイテムを使ったら……あの中庭だった」

「しゃべるモンスターを売買してるような連中から見れば、トグも、あんたも」

「ビーツ様も、商品ですね」

 ソロが言ったのに、リリがつけ加えた。

 それから、ヘスティアに目を向けられた瓜生は深いため息をつく。歯を食いしばる。

「おれは……魔法も魔物もない平和な国、平和な時代に生まれ、物語しか知らないバカだった。たまたま妖精を助けて、変な能力をもらって、ここみたいな世界に行って冒険するようになった。

 最初はひどいもんだった。物語しか知らなかった。

 助けた騎士に、姫君を助けたいと言われて……傭兵を集めて旅をした。

 海賊の隠れ港を襲った……その姫は、単に駆け落ちをしてその相手に売られ、海賊に買われて……おなかも膨らんでいた。それなりに幸せだったのか、海賊をかばっておれに撃たれた」

 瓜生が何かを揉むような手つきをする。その意味はソロやリューにはわかった。胸を、腹を切り開き、心臓を直接握って動かそうとしたのだ。胎児を助けようとしたのだ。

「気がついたら、おれが連れた傭兵たちは……」

 瓜生はしばらく歯を食いしばり、激しく呼吸する。

「海賊の、集落を襲っていた。殺していた。犯していた。拷問していた。皆殺しにしたよ、苦楽を共にしてきた仲間を」

 ベルはつばを呑む。

「ああ、海賊の集落を皆殺しにするのは、当たり前の、正しいことだったんだ。どこの王様もそうしろって命じるさ。おれが知らなかっただけで。当たり前だった。

 知らなかったんだ。当たり前だった。現実ではなく、物語を見て、それに合わないことは見ないようにしてた」

 ベルにとってはその言葉が衝撃的だった。腹を強者に殴られ、心と体が深く沈んでいくような。英雄物語ばかり読み、純粋に英雄にあこがれた自分。

(紙一枚違えば、ウリューさんと同じになっていたかもしれない……)

 純粋。それは悪い面もある。

 ヘスティアが立ち、瓜生の頭を豊かな胸に抱きしめる。

 瓜生は静かに泣き出し、激しい慟哭になっていた。

 ベルは、ただただ呆然としていた。

 ヘスティアの胸から身を起こした瓜生が、ベルを目から熱線を放つ勢いで見る。

「こちらに武器を、牙を向けていない者を殺したり、犯したり……仲間でも殺す。きみでも殺す。初めてじゃない」

 数呼吸の沈黙。

「……僕は、ウィーネを守る」

 ベルの言葉に、全員がうなずいた。

 リューは、腰から小太刀を抜いて刃を返し、自分の白い喉に切っ先を当て、ベルを見た。

「信じられなければ今殺していい。クラネルさん、人を襲わぬ心あるものを守るため、すべてを」

「……嘘は言っていない。ここでは誰も、一言も嘘は言わなかった」

 ヘスティアがため息をつき、

「そろそろ帰ろう」

 と言った。

「情報を集めます。ご心配なく、慎重の上にも慎重に」

 リリが立つ。

「最悪のその上を想定しろ。資金がもっと必要なら、遠慮なく言ってくれ」

「はい」

 瓜生の言葉に、リリがうなずいた。

 ベルがうなずき、リューが小太刀を納めた。

「店を辞めてきます」

「辞めても無駄だろう。人質として価値があることには変わらない。敵の邪悪さは、想像を超えると思ったほうがいい」

 瓜生はそう言って、金袋を渡した。高額金貨と500グラム金地金が何個も、何人も一生贅沢に暮らせる額だ。

 エルフは一瞬強い目で瓜生を見、理解した。

(侮辱ではない。使命のため、人を買収したり情報を集めたり、シルなどを護衛する者を雇ったりするのに使え、ということ)

 袋を受け取る。

「シル・フローヴァが世話している孤児院も危険だ」

「はい」

 ベルが息をのむ。

(そんなばかな……)

 とリューを見たら、彼女はうなずいていた。

「人質として……いや、私に嫌な思いをさせるためだけに拷問虐殺死体を……十分あり得ることです」

 ベルは聞いて震えた。

(そういう戦いなんだ。ウリューさんやリューさんは、そこまでやる汚い相手と戦ってきたんだ。リリを助けたのも、そんな汚い戦いだったんだ)

 そしてリューは、少し考えて覚悟を決めた。

「もっとお役に立つため、ステイタス更新をすれば多分ランクアップ……いや、【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)を……ですが、かなりの時間戦線から離れることになる……

 あなたがたにはさまざまな噂があります。もし、高速で移動できる手段があるのなら」

 アストレアに会う。改宗する。どちらも、どんな拷問より辛い。

 それでも、

(これほどの正義のためであれば……)

 なんでもする。

「ありがとうございます!……ただ、【ヘスティア・ファミリア】に入るなら、『絶対に虐殺・拷問・強姦はするな』という掟があるんですが」

 リューがびくっとした。

「……これからやらない、でいいらしい」

 ソロの言葉に、リューがほっとしたようにうなずく。

「はい、アストレア様に誓って」

「ついでに、ベルくんには手を出すな!」

「そ、それはもちろん、彼はシルの」

 ヘスティアが釘を刺すのにリューが慌てた。

 瓜生がリューに聞く。

「リューさんは主神のところまでいかなければ改宗待ちにできないな……どのあたりだ?」

 答えを聞いた瓜生はしばらく考えた。

「わかった。しばらく同行してくれるか?」

「店に戻って、断ってきます。深夜」

「リリ。あとは頼む。情報を集めろ……万一の際には、頼む。ソロ、ついてきてくれ、おれは個人の接近戦が弱い、暗殺者に弱い」

「リューさんは信頼できます!」

 ベルが言ったが、

「実力が足りない可能性もある。そちらは武威がいれば問題ない」

 リューは一瞬色をなし、抑えた。

 瓜生の油断なさと、他者の感情を考慮しない危うさを理解した。

 

 リューは一度『豊穣の女主人』に寄り、シルとミアに話した。ある程度のことにとどめようとしたが、結局すべて話した。ふたりとも、すべてを受け入れた。リューの頭にこぶ、頬に紅葉がついた。

 瓜生が渡した金で、情報収集やシルの護衛などを依頼した。それから3人は市外に出る。

 瓜生は、主にラキアを抑えるため都市外の国々とも交渉がある。また都市外の鉱山資源の開発もしている。何より『ギルド』とのかかわりが深い。事実上出入り自由だ。

 人目を避け、目的地とは違う街道に出た。地図で細かく検討し、少し遠回りになっても行き先を見通す。

 会話はなかった。気まずいなどというものではない。

 街道の少し広くなったところで瓜生は、ポルシェ・カイエンを出した。超高速と高い悪路走破性を兼ね備える過剰性能のSUV。サーキットなら300キロ余裕のスピード。

 リューもソロも、当然驚嘆していた。

(全力で走ると同等の速度を、この急な上り坂でずっと出し続けられるとは……)

(パトリシアの馬車の何倍の速さだ?いや、馬車ではとうてい登れぬ道を、かるがると)

 馬車や徒歩なら何日もかかる道でも、一日かからない。

「きみたちにも覚えてもらうかもしれない。おれがどんな動きをしているか、見てくれ」

 瓜生がそう言って、リューも運転を観察しはじめた。

 一度本当にどうしようもない崖崩れもあったが、3人で車を軽く担いで抜けた。それができるから、スピードを優先してカイエンにしたのだ。悪路走破性だけを考えるなら、キャタピラを選んでいただろう。

 途中から何度か、リューやソロにも運転を交代させた。リューはすぐに、瓜生以上に運転はうまくなった。

 

 

 帰り道は、車を消してソロのルーラで瞬時だった。

 リューはレベル5にランクアップし、そのまま改宗待ち状態でヘスティアのところに来て、改宗した。

 またソロもレベル7にランクアップした。

 

 

 瓜生はひたすら情報を集め続けた。膨大なゴミの中にある、小さな宝石を。その多くには毒や罠が仕掛けてあるが……




 今回が本作のクライマックス。
 盗聴防止はもう少し凝っていましたが、武威の重い鎧の事を忘れていました。鎧なしで街を歩けるには期間が短すぎ。

 あまり考えずに別作品からのクロスオーバーを集めたんですが、幽白は雪菜、DQ4はロザリーと、「宝石の涙」がウィーネとおもいきり共通するんですよね。
 ソロを長いこと思いつかず、いいクロスはないかなと考えていた自分がかなりバカに思えます。
 そうそうヘルメスのやらかしも、FCのエビプリを思い出したら思いっきりトラウマぐりぐりですね。
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