ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
エイナ・チュールは、やっとベルにすべてを打ち明けてもらって、嬉しさに舞い上がりそうになったが……異端児(ゼノス)というとんでもなさすぎることに凍りついた。
「ウリューさんが言っていました。もうエイナさんは安全じゃない、知らなくても拷問されるリスクはある、だからもう影の護衛はつけている、って」
ベルが『ギルド』に来たとき瓜生も伴っており、彼はそのまま上の方に行った。帰ってきてからエイナとベルに瓜生は、
「ちゃんとした拷問を受ければ誰でもなんでも吐く。また、美の女神の魅了など、あの『麗傑』ですら抵抗できなかった力もある。
知らなければ吐きようがない、がおれの故郷では普通だが……知らないまま壊れるまで責められるのと、知っていてリスクを負うのとどちらがいいか」
とエイナに言った。
(そうなんだ。私がそれを知っていることは、どんなに私の決意が固くても……『ギルド』を裏切る覚悟があっても、ベルくんたちにとってリスクになる。
でも、ベルくんは知らせてもいいと言ってくれた……)
「エイナさんにも、家族にも影で護衛がついている」
と言って去った瓜生に、ベルとエイナは見つめ合って、深いため息をついた。
「ごめんなさい」
「謝らないで。君が決めた道なんだから……どんなことになっても、私は味方だから」
「はい、はい……」
味方が増えるたびに、ベルの荷は重くなる。
広場でのミュージカルは、2日間ほど【ヘスティア・ファミリア】が上演してから利権を求めた芸能ファミリアに音楽・台本・上演権・衣装・背景の大きい絵などすべて渡した。
また特にタケミカヅチとも知り合いの極東系が、新しい歌舞伎などを求めたので。多数の脚本・DVD・CDを渡した。もちろん情報とひきかえに。
ただし、今上演されている『大江山花伝』も、
(人気がある限り続ける……)
と、なっている。
それに時には春姫の美しい日舞があり、また着ぐるみの歌手がとてつもなく美しい歌声を響かせる……【ヘファイストス・ファミリア】のカーゴに紛れて地上に出た異端児だ。
【ヘスティア・ファミリア】は、何よりも早朝から大量の食事を作っている。
20人ぐらいの人数だが、50人分以上の食事を用意しなければならない。ビーツひとりで少なくとも20人、時には40人分の食事を食べてしまう。
また、集合住宅に同居している【タケミカヅチ・ファミリア】も大抵は共に食べる。
10~30人ぐらいの人数がひとつ屋根に暮らす、ということは大都市にはたくさんある。
神々の派閥(ファミリア)でなくとも、大きい商家や職人の工房などの多くは、多数の奉公人がいる。
だからオラリオでは、多人数用の魔石を用いる調理器具は容易に買える。
また、工場のような設備で大量の食事をまとめて作り、大鍋を荷車に乗せて運ぶ業者も結構ある。大規模なパン窯もいくつかある。
【ヘスティア・ファミリア】が買った調理器具は、70人規模だ。中規模な食堂の水準。
(加入人数がもっと多い予定だったのか……)
と、商会の者は思ったほど。
魔石調理器具だけでなく、別の一角には電気やプロパンガスを用いる調理具や食洗器が大量にある。業務用の巨大な器具が、いくつも。
業務用炊飯器。業務用フライヤー。業務用オーブン。業務用圧力鍋。
いつも大量の米飯、揚げ物、パン、麺類、煮物が作られている。大きな中華鍋でチャーハンやレバニラが炒められている。巨大な寸胴がいくつもスープやカレー、シチューを煮こんでいる。大きいタンス規模のオーブンでパンや肉、野菜が焼かれている。
全自動業務用フライヤーがカラアゲ・トンカツ・メンチカツ・チキンカツ・コロッケを連続的に揚げている。何十キロものフライドポテトが揚げられている。
多数のバケツで大量の豆が水に漬けられている。丸一日、何人かが食事当番として野菜の皮をむき、火加減を見、パン生地を練っている。
ある程度は近くの店に卸せるほどだ。
ダンジョン用に、ビスケットや固い燻製など保存食も多量に作っている。
新入生をヤマト・命が監督して調理をすることが多い。彼女がダンジョンに修行に行くときは瓜生やリリが交代する。基本的には新入生は命の担当で、彼女はとても忙しい。【タケミカヅチ・ファミリア】も協力してくれているが。
調理をよそに、夜明け前から激しい鍛錬をしている者も何人かいる。
団長のベル、ビーツ、武威、ソロはほぼ確実に、中庭で思い思いに体を動かしている。ビーツだけは瓜生に多量のパン・チーズ・シリアルなどを受け取り、食べつくしてからだ。
ベルは刀、脇差、脇差二刀それぞれで、常に歩きながら袈裟と突きを徹底的に。一呼吸ごとに『英雄願望』を短くチャージし、足の親指と体幹で動く、それを意識しなくてもできるよう、何千回も数を数えることなく。
武威は武神タケミカヅチに教わった武術を丁寧に練習している。24式太極拳に似た、『武装闘気』を制御して自分より腕力が強い相手を投げ倒すための武術だ。
ビーツは槍での突き・ほぼ同じフォームでの素手での拳、それだけを練習するようになった。武神タケミカヅチとソロの集中的な指導で。
徹底的に無駄をなくす。
槍は、まっすぐなレールにそって鉛筆を滑らせるように直線に沿うように。大きく踏みこみ、全体重をかけて突き、戻す。拳も同じ形を用い、ただ全身で突くだけ。
『気』を細かくコントロールし、全身の筋肉をコントロールする。全身の筋肉と骨一つ一つに『気』をまとわせ、徹底的に脱力し、呼吸を流す。ゆっくりと、細かい指導を受けながら数回、それから全速で数十回。それを何時間も、何度も何度も倒れながら繰り返す。
ソロも重い盾と片手剣を手に、とても激しい動きをずっと続けている。魔力を高めるための瞑想をしていることもある。
半ば気分転換に、激しいウェイトトレーニングやボート漕ぎ運動もすることもある。常人で言えば全力の400メートル走を20秒インターバルで繰り返すぐらい、心肺と足腰をいじめぬく。
4人がそろうとは限らない。ダンジョンの奥、小さい安全地帯の異端児を守る任務もある。
タケミカヅチが指導に入ったり、【タケミカヅチ・ファミリア】の眷属や命が加わることもある。特に春姫は少しでも成長しようと、熱心に小薙刀を振っている。
時には早く目が覚めた新入生が、人一倍頑張っている団長を見て朝練に加わることもある。
【タケミカヅチ・ファミリア】は、【ヘスティア・ファミリア】とほぼひとつになっている。ヤマト・命やサンジョウノ・春姫は所属はヘスティアだが、生活・修行・ダンジョン攻略の半分以上はタケミカヅチの眷属と共にだ。
タケミカヅチにはベル、ビーツ、武威、トグの武術の師としてその修行をみる仕事もある。眷属たちは【ヘスティア・ファミリア】の新入生を武術・生活ともに指導し、ダンジョンでは経験を生かして護衛している。
そうしている間に朝食の支度ができる。
朝はそれほど重くはない。ビーツを除いて。
粥、オリーブオイルを落としたオートミール、トーストとスクランブルエッグ、焼きソーセージ、ご飯・味噌汁・焼き魚などから選べる。コーヒーやお茶も出る。
窓を厳重に閉ざした食堂では、ウィーネもベルの隣で人間と同じ食物を食べている。
とにかくビーツがとんでもない量を食べる。寸胴鍋で、一抱えある家畜の頭と豆を丸一日煮込んだ極濃シチューを鍋全部食べつくし、さらにパンの山をさらえこむ。武威もその巨体に見合った、5人分ぐらいの食事量はある。
朝食が終わったら、最近は【タケミカヅチ・ファミリア】の眷属も、主神たちも連れて【ヘファイストス・ファミリア】のところに行くことが多い。
あまりにも多くに狙われている。
ウィーネは着ぐるみを着ているので目立たない。着ぐるみは彼女だけでなく、ビーツやリリも、新入生の小人族も着ている。
着いたら新入生たちと【タケミカヅチ・ファミリア】の眷属は、何人か鍛冶師を誘ってダンジョンに行き、そこで主に拳銃の訓練をする。常に襲撃を警戒し浅い階層、過剰なまでの戦力をつけて。
【ヘファイストス・ファミリア】では、鍛冶師の修行を始めている異端児もいる。『恩恵』の鍛冶スキルに似た能力も多くの異端児が持っているし、知能指数がとても高く腕力もある。目や耳もヒューマンや獣人とも異質で、優れている……ピット器官から精密な温度計測が可能な者もいるのだ。
ウィーネは着ぐるみのまま『豊穣の女主人』に行くか、または【ヘファイストス・ファミリア】の店がある『バベル』前の大広間で花を配るなどすることが多い。
必ず着ぐるみの強者がそばにいる。
『豊穣の女主人』の前の道では、いつも何体かの着ぐるみがとんでもない美女と花を配り、また素晴らしい歌が流れている。
中身はウィーネだったり、ビーツだったり、他の異端児が入ることもある。ビーツは着ぐるみのまま、手をある形に掲げて歩き続ける……武神タケミカヅチに指導されたもので、特に『気』持ちがやると100メートル全力走を5秒インターバルで同じ一時間繰り返すよりきつい。ウィーネも敵をだますために同じことをしている。
店のメニューもかなり変化している。極東料理やカレーが本格的に入っている……タケミカヅチとその神友が故郷で保護している孤児の、後輩たちが極東の料理を広めている。危険な冒険者になるのではなく。
瓜生は『豊穣の女主人』にも、危険のわびとして多くのレシピや食材を流している。また酒造などのファミリアにも口をきき、いい酒が優先的に入るようにしてある。『ギルド』に没収され子には禁制となった、伝説的な【ソーマ・ファミリア】の成功作さえ含まれる。
最近のオラリオでは、とんでもなくうまい酒が多量に売れている。
【デメテル・ファミリア】預けとなった酒神ソーマが技術を提供。製造は【ディオニュソス・ファミリア】だ。
デメテルの麦から得られるビール。トウモロコシから作られるウィスキー。
ディオニュソスのワイン。
それに瓜生が出した先進的蒸留器や温度管理装置、ステンレス発酵槽。
ドワーフが愛し、ミア・グランドが得意とする果実酒の材料にもなる超高度数蒸留酒も大幅に安くなっている。
ソーマ自身も自分の畑をまた作り、酒造りを再開している。以前よりも大きい畑、ふんだんに与えられたほかの材料も。
またソーマは技師としてデメテルやディオニュソスの酒造りも監修する。
それだけではない、ソーマの舌で瓜生が出したワイン・長期熟成ウィスキー・純米の日本酒・泡盛・超高度数ラムなどを絶妙に混ぜた、39度という高アルコール度の酒がまた高い評価を得た。
ほかにも瓜生の世界各地の、何万種という酒を絶妙にブレンドしたものも。組み合わせは事実上無限大だが、その中からソーマはやすやすと選び出すのだ。
ソーマがただ本気を出すと中毒性が出かねないが、それはディオニュソスが別のバルクワインや酒精強化種、ブランデーを混ぜると、完璧ではなく中毒にならないバランスが実現できる。
もちろん、両ファミリアにはとてつもない利益が入る。
【ディオニュソス・ファミリア】は対闇派閥(イヴィルス)連合にも加わっており、新しい酒の販売・技術指導などを瓜生から受け取っているのはそのための資金援助でもある。
「酒からの情報収集、期待して(るで:ロキ)(いる:瓜生)……」
と、いうわけだ。
また、崩壊した【イシュタル・ファミリア】からアマゾネスが何人か移籍し、戦力も大幅に高められている。
【デメテル・ファミリア】には別の仕事もある。
捕虜となったラキア軍=【アレス・ファミリア】の3万人を食わせる必要もある。
未開発だったオラリオ近郊で、大規模な開発が始まった。
ラキア軍が野営し薪を得るために切り倒した、水豊富な広い地域が誰もいない一夜のうちに耕されトウモロコシ・アワ・アマランサス・ダイズ・ラッカセイなどが撒かれていた。
無論瓜生が大型トラクターでやったことだ。さらにたっぷりと化学肥料も施肥してある。
さらにオラリオに近い水が乏しい荒野もかなりの範囲が耕され、膨大な水で湿り、エンバク・モロコシ・ソバなどが植えられていた。その水は瓜生が出したものだが、来年以降のため水の豊かな地域からそちらに水路を掘る計画も進んでいる。人手はラキア軍捕虜がある。
それを手入れして収穫する……資金は与えられているし、ラキア捕虜の徴用も許されているのでなんとかなるだろうが。
収穫まで3万を加えた人数を食わせるため、周囲との交易も活発になっている。さらに、瓜生が別の商会を利用し、実は瓜生が出した食糧を交易品として輸入してもいる。
オラリオの食糧事情が最近よい理由としては、最近【ロキ・ファミリア】が超高品質の魔石やドロップアイテムを深層から大量に持ってきたため、交易による肉や穀物の入手が大幅に容易になったことも大きい。
食糧が安くなり、しかも食糧生産者も儲けている。本来は不可能なことだが、ラキア捕虜と瓜生の存在がそれを可能にしていた。
おっとりした善神であり、また巨乳でも知られる美女神デメテルはそれらを聞いてはいたが、あまり気にしているようには見えない。オラリオの人々が満腹していること、春野菜がおいしく実っていることに満足しているようだ。
また、瓜生にもらった品種改良済みの作物や知られていない多くの作物、化学肥料の使い方も眷属たちに学ばせていた。
瓜生は、食と酒の重要性はわかっている。だからこそ早期から両ファミリアに恩を売っている。
リリもそれを理解するだけの学びをし、幹部と顔をつないだ。
【ミアハ・ファミリア】は借金を完済し、大幅な黒字経営になっている。
何人も、『学区』から新しい眷属を入れた。【アポロン・ファミリア】から、強引に勧誘され不満を持っていた、レベル2のカサンドラやダフネ、他にも数人の冒険者が善神の評判を聞いて加入している。
主な仕事は『学校』での教育、近代トレーニングのスポーツ医学、医学・薬学研究。瓜生の故郷の医学・生理学・薬学の書物を翻訳し、薬を分析研究し、より優れたものを作る。
また非戦闘ファミリアとも言いがたい……極秘だが、カサンドラ・ダフネ・ナァーザ、3人のレベル2は瓜生に狙撃銃の訓練を受け、あちこちで活動している。ダンジョン中層で装甲車や重機関銃の訓練も積んだ。
近代的トレーニングをする【ファミリア】が増えるにつれて、それを安全にするための医学監修の需要も増える。ほかの医薬ファミリアとも協力し、知識を分け与えてもいる。
ラキア戦争の最中から瓜生が力を入れてきたのが、瓜生の故郷の莫大な知識を教育・図書ファミリアに渡すこと。
言語の壁は、瓜生の能力の一つに、
(どこの世界でも口での会話に不自由がない……)
があるので、それを利用する。小さい辞書を朗読して書き取らせれば、ロゼッタストーンになる。
その上で、弊害も含めて重工業・化学工業を鍛冶ファミリアなどに理解させる。教育や医学、法治で治安水準も高い社会のビジョンをいくつもの指導的なファミリアに伝える。
いくつものファミリアが理解している。瓜生がどれほどの怪物か……
ベルは、瓜生があちこちに変化をもたらしていることを心の外に置いている。
瓜生とリリから、ベルとヘスティアに報告は常に渡されている。
何度も、人を信用するな検証しろ、と言われているが、そこまで考える余裕がない。
今のベルにできることは、
(ウィーネを守るため、戦争遊戯前夜のつもりで強くなること……)
それだけだ。
すさまじい師が何人もいる。
リュー・リオンはランクアップでさらに背中が遠くなり、敏捷重視の自分をはるかにしのぐ高速で猛攻をかける。彼女は今も『豊穣の女主人』で生活しているので時々だが。
ソロはそして宮廷戦士の剣術とサントハイムの徒手武術、さらに別の源流から伝えられた正統派の剣術を実戦で磨き上げた、武神タケミカヅチも認めた無駄のない剣術で惜しみなく鍛え上げてくれる。
そして時には武威が、本当に桁外れの圧倒的な力を一瞬だけ叩きつけてくれる。
肩を並べて励んできたビーツも、瀕死のたびに桁外れに強くなっている。今彼女がどれだけ強いかは、想像を絶するものがある。ウェイトトレーニングの数値はレベル5になったリュー・リオンをしのぎ、【ロキ・ファミリア】幹部と同等の運動器具を購入している。
トグも冒険者として生きていく覚悟を決め、自分と同じく密猟者に追われ迫害されたウィーネにも同情して激しい鍛錬を始めた。
新入生と生活全般ヤマト・命と【タケミカヅチ・ファミリア】の仲間たちに。
情報収集と外交は、瓜生とリリに。
ほぼ任せきって、毎日毎日血反吐を吐く生活を続け、それは新入生たちを背中で圧倒している。
(この【ファミリア】の一員であるというのは、それほどのことか……)
覚悟していたつもりだったが、それ以上の厳しさを、言葉でなしにベルは伝えてくれる。
「だからといって、無理をすることはない。自分にできる最善を尽くし、今の仕事を懸命にすることだ。何よりも生命を大事に……そして今は、絶対に拉致されないように」
そう命たちに教わり、できるかぎり勉強し、運動している。チームを組んで情報を集め、噂をばらまいている。
その噂が、意図的なミスが……視線を察知できるベルがウィーネを路地裏に連れ込み、一時着ぐるみを脱がせたり……釣り針となる。
新入生たちは、まずファミリアの設備、それぞれの生活の場を清潔にし、多量の食事を作ることを学ぶ。かなり高い清潔水準が当然のように求められる。知らない道具も多い。
学問も学び、かなりきつい強豪スポーツ高校なみに体力を鍛え素振りもする。
オラリオを、世界を敵に回すかもしれない、強い覚悟を込めてとにかくできることをする。それは大きい恐怖で、そして強い興奮にもなる。
(こんなすげえファミリア、ほかにあるものか……)
このことだ。
未知の興奮なら、十分すぎるほどある。
おいしい食事がたっぷりある。大きい風呂に入れる。きれいな下着とタオルがある……食事当番も風呂掃除も洗濯も大変ではあるが、やりがいがある。
主神はドジだが優しい。ベル・クラネルも親切であり、噂よりはるかに強い。
ファミリアの戦力は、今でもかなりのレベル詐欺……ベルはレベル7級の最大攻撃力。ビーツの体力は第一級。冒険者の地位は剥奪されているがリュー・リオンがいる。ソロもレベル6から7になったのをまだ申告していない。武威とトグも申告を上回っている。
信じられない娯楽……ファミコンやホームシアターもある。
罠が育っている。
人の性格を読み、動きを読み、操り、はめる罠が。
「殺す」
「あのくそ偽善者、ウリューとベル、どんな拷問でも飽き足らねえ」
「釣り針を飲みこむがいい。腹の底までな」
「偽善者め、この手は想像できねえだろ。てめえが最強と思ってる守りが、てめえに牙をむいた瞬間……てめえの絶望の面を見てやる。てめえらにゃ何も守れねえ、全部ぶっ壊してやる」
「リリルカ、浮きが動いてもあわてるな。糸が引かれるまで……」