ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
フィンたちが戦った、巨大なホールは風船のように膨らんではじけ、蒸発した。莫大な熱。高性能爆薬の力で地熱と同じ核分裂が解放され、それが太陽と同じ核融合を解放したのだ。
瓜生の故郷がたどりついた、科学による破壊のきわみである。
オラリオも、時ならぬ地震があった。その地下では……
超高温高圧ガスが、人工迷宮に浸透した。扉はオリハルコンでも、扉と壁をつなげるレール・蝶番部分を破壊して扉を高速で蹴り飛ばした。どんな小さい隙間、小さい角も破った。熱と圧力が少し弱まれば、アダマンチウムの壁は円筒形に膨れた。迷宮と同じ岩がバターのように溶けた。
モンスターを育てるプラントも、闇派閥たちもことごとく焼き滅ぼされた。
『穢れた精霊』の卵の、あるものは死んだ。だがあるものは、実験のため近くに置かれたモンスターと融合し、アダマンチウムの壁を食い破り地底深く潜った。あるものは、神と狂った建設者の子孫を同時に食らった。あるものは迷宮そのものをなす溶岩が変じた怪物と融合し地下深く眠った。
膨大な金属や岩が、ガスから液体になり流れた。
熱いガスは上に。熱く重い液は下に。アダマンチウムのすさまじい強度と耐熱性に阻まれながら。
地上や迷宮につながるあちこちの人工迷宮の扉は、すさまじい圧力を受け周囲が目に見えて変形した。いくつかからは高温のガスが噴き出し、フィンの目の前で頑丈な石でできた家をバターのように切り裂いた。幸い、周辺から人は避難させていたが。
(誰が生き残れよう……)
桁外れすぎる破壊力は、扉と分厚い地面を隔てていてもはっきりとわかった。
第一級冒険者は五感も常人とは比較にならぬほど優れ、洞察も優れる。分厚い岩盤と金属壁の奥の地獄絵図をかなり察知している。
ちなみに、その優れた五感や知性は、技術の進歩にもかなり貢献している。瓜生が近代技術を公開してから、それを急速に受容している。
特に強い敵との戦いを経験した、アイズやベートと装甲車の操縦手として51層に向かった【ヘファイストス・ファミリア】の高レベル鍛冶師たちは、大きな経験を積んだ。
.50BMGが通用しない、高速で動く敵。
それを踏まえて、戦車のサイドアームをどうするか。
これまで漫然とGAU-19、.50ガトリングに頼り切ってきた。47階層まで、どの怪物も数十発の徹甲弾に瞬時に灰と化した。
だが、それが全く通用しない敵と戦った。
かといって、本来なら単装重機関銃用の構造物である戦車のサイドアームマウントに、それ以上の火器をつけるのは困難だ。
40ミリグレネードマシンガンは、深層の怪物の敏捷では避けられてしまう……とりあえずは、軽量な.50の単純な重機関銃とグレネードマシンガンを連装にした。
威力・連射性能・悪路走破性のバランスが高い、SIDAM 25自走式対空砲が大幅に増やされ、何人も新たに訓練を受けた。
また牽引式の連装23ミリ・35ミリも増えた。
だが、鍛冶師たちは満足しない。30ミリすら通用しない敵がいた。
考えること。
装甲戦闘車両の選択と、チーム構成。
第一級冒険者と火器の組み合わせ。
瓜生の故郷に存在していない自走式対空砲……防空目的ではない、支援戦車を作るか否か。
どのように火力を上げるか。大口径で高連射速度の機関砲を加える、だが自走式対空砲か、それともレベル4ぐらいの腕力で牽引式か、あるいはレベル5以上が手持ち式に改造した機関砲を運用するか。
SIDAM 25を、前回の帰りから試していたメルカバ・ナメル・Sタンクのチームに加えることは合意された。
また、メルカバも増やす。4人必要なメルカバを増やすにはレベル2も使わなければならないのでためらっていた。だがこれまでの戦訓がある。
「本当の強敵相手に頼りになるのは主力戦車だ」
「レベルが低いと、戦車がやられたとき生き延びられないリスクがある」
「今回経験したような敵が相手では、2でも4でもさして変わらない」
「2両以上の主力戦車は、別物と化す」
というような論議もあった。
また第一級冒険者を運用するのに、補助する車両をつけるか。つけるなら歩兵戦闘車か、トラックか、小型空挺戦車ヴィーゼルか。
またどのような火砲を使わせるか。単発の手持ち改造対戦車砲か、牽引機関砲か、手持ち改造機関砲か、重機関銃を補助的に使わせるか、成形炸薬弾か。
手持ち式に改造したBK-27機関砲はレベル4以上の腕力が必要だが、発射速度・威力・弾薬重量のバランスが割といい。電源も不要だ。
ナメルとの共同作戦を考えれば、かなり重くなるが同じ30ミリ弾を使う機関砲を手持ちに改造するか、ゼロからボルトアクションを作るかするのもよい。
それ以上の威力が欲しければ、対戦車手榴弾や『クロッゾの魔剣』を推進薬がわりとした【ヘファイストス・ファミリア】製銃の方がよい。
多数の雑魚を掃討するには、【ヘファイストス・ファミリア】製の14.5ミリガスト式がもっともすぐれている。レヴィス級の強者を追随し牽制するのにも使える。連装にすればガトリングに近い連射数になる。
57ミリ対戦車砲を手持ちに改造した鍛冶師もいる……が、装甲貫徹力をパンツァーファウスト3やカール・グスタフ無反動砲と比較すれば、それほど有用ではない。
それら、多様な武器を選択するためには膨大な荷物を運ぶ車両が近くに控えていなければならない。ではその武装と装甲をどうするか……
着剣小銃という考え方は、実戦では中途半端になるからと一時後退させている。すでに作られた着剣12.7ミリ銃は、レベル3のメンバーに配った。
また、第一級冒険者の力なら、35ミリ連装機関砲やボフォース40、対戦車砲などを砲架ごと力技で持ち運ぶことすら可能だ。
別に、レベル4程度を主軸に、数人で重火器を運用する歩兵も考えられる。それにトラックや空挺戦車を組み合わせて偵察用の戦闘単位を……
収容力が高く装甲も頑丈なナメルを中心に、ふたりの第一級冒険者が手持ち改造機関砲や無反動砲を持って乗る、という組み合わせも考えられた。
強力な機関砲を備えた、自走式対空砲。
その種の車両は、瓜生の故郷では退潮気味である。レーダーシステムが恐ろしく高価になる割に、敵機が放つ空対地ミサイルとは射程の桁が違う。大国同士の戦争は制空権を取られれば終わりであり、近距離の防空はほとんど役に立たない。逆に対テロ戦争で空は関係ない。
だが、このオラリオのダンジョンでは、対空レーダーは必要ではない。短時間で多数の強力な弾を注ぐことだけが仕事だ。
そのためにはSIDAM 25が実に扱いやすい。ベースがM113装甲兵員輸送車、車両が小さく信頼性が高くキャタピラなので悪路にも強い。25ミリ4連は破壊力と連射速度、信頼性、弾薬重量のバランスがいい。
76ミリ速射砲を積んだチェンタウロ・ドラコも、主にエルフが用いている。
ちなみに瓜生の故郷でも、ロシアなどは山岳地帯でのゲリラ戦で機関砲を積んだ車両が妙に役立つことを知り、30ミリ機関砲を2挺備えた装甲車をいくつか開発している。
瓜生が考えに乗せ実物も見せた、故郷にある自走式対空砲には40ミリ2連装や57ミリ2連装もある。
また鍛冶師たちは、30ミリガトリングを2連装にして、砲塔を外したメルカバに強引に載せることも言い出した。
だが最終的にフィンは、無意味だとした。
「120ミリ戦車砲を秒に300発、それでやっとあの女調教師(テイマー)相手で安心できるだろう。だがそれを積める戦車はない。
40ミリでも57ミリでも効かない敵が出るかもしれない。
結局はトレードオフ、ちょうどいいバランスを選べばいい。
メルカバ、ナメル30ミリ、Sタンク、SIDAM 25はバランスがいい。それ以上の弾幕は、牽引機関砲や多連装ロケットを使おう。
また、ベートの班が今回うまくメルカバを使ったそうだ。その戦術を全員で共有しよう」
と。
(どんな兵器を使うかよりも、どのように戦うか。こちらから突撃するか、迎撃するか、陣地を作って待ち伏せるか……)
と考えるのが、フィンが指揮官として真に優れているあかしだ。
その分、多数いるレベル2のできるだけ多くがメルカバを使いこなせるように厳しい訓練を始めた。
第一級冒険者も、自分が強敵を倒すのではなく、敵を戦車砲の射線に誘導して動きを止め、確実に命中させることを目的に戦うよう訓練を始めた。……ティオナやアイズは困難を極めるが。
また、どのチームにも必ず複数の、レベル4以上が対戦車兵器を持っているようにした。理想は、高レベルの冒険者が敵を食い止め、動きを止めて一歩引く、そこに大口径高速弾と、同時に成形炸薬弾頭の弾幕を注ぐ。
主力戦車の主砲を当てる。
第一級冒険者の動体視力と腕力で、弾を当てる。
耐久も敏捷も桁外れの強敵に。
それを目的とする。
今フィンが考えているのは、4種類のチームだ。
ひとつ。レベル6以上の冒険者ひとりまたはふたりを主軸とする。
レベル4から5が手持ち改造の大口径機関砲または牽引砲で援護する。歩兵戦闘車や悪路トラックから離れずに。
そして歩兵戦闘車はRWSの大口径機関砲でさらに援護。
主力戦車を考えない、最悪はヴィーゼルとトラックだけ、少人数で狭いところに突貫する。
ひとつ。複数のレベル6以上の冒険者と、3両以上のメルカバと牽引機関砲・自走式対空砲を主軸とする。
強敵に攻めこむ布陣だ。
第一級冒険者を、メルカバの主砲の複数同時発射を敵に当てるための手段とする。
ひとつ。基本的には低レベルが経験を積むため、主に多数の戦車・多人数が深層に。複数の高レベル冒険者が、最悪の事態の護衛を担当する。
ひとつ。徹底的な防御陣……多数の牽引機関砲・艦砲・主力戦車を並べて敵を待ち伏せる。
フィンとの議論は瓜生も考えさせるものだった。
瓜生自身の、普段の装備をどうするか。特にこのオラリオでも、また以前も、小口径高速弾の弱さで死にかけたことが何度もある。
それはもう、できるかぎり大口径高速の巨大ライフルで、大容量弾倉が欲しい。
14.5ミリ弾で200発ぐらい。
だが、そんなのを隠して街を歩けるはずはないし、第一背負って立つことすら常人には無理だ。今のオラリオなら『恩恵』があるので何とか立てるにせよ。
だから、結局はトレードオフ、バランス、妥協だ。瓜生の故郷の軍が制式装備を選ぶ時同様。
大規模遠征の成果は大きい。
【ヘスティア・ファミリア】からはリリルカ・アーデとサンジョウノ・春姫がレベル2にランクアップした。
椿・コルブランドが5から6にランクアップ。ほかにもランクアップした者は多い。
リリにとっては夢のまた夢をこえるものだった。だが発現したスキルと魔法が、大いに悩まされるものだった。
【異能盗賊(スキルテイカー)】
・相手の同意があれば、『スキル』を奪える。
・魂と直結し奪えないスキルの場合、劣化コピーとなる。
『スキル』をもらうことができる、相手の同意があれば。
まさに反則。
だが、誰が『スキル』を渡すというのか。
手足を失い心が折れて引退する冒険者が、老後資金とひきかえに渡すことはあるだろう。だがそれを交渉すること自体危険が大きい。本人に言う気がなくても人質・拷問・魅了・自白魔法などの前では無意味。
……リリは、あえて直接瓜生に言った。瓜生の事情を理解しており、まちがいなくもらえると確信したからだ。彼はすぐにうなずき、主神を呼んでスキルを全開示した。
「別にいい、【冒険介添】は誰かが持っていればいいし、【豊穣角杯】は奪えないんだ」
(それに、おれはいつかは消える存在だ……)
主神ヘスティアは、瓜生とリリの苦悩がよくわかった。何も言えず、ふたりとも抱きしめることしかできなかった。
瓜生の【豊穣角杯(コルヌコピア)】【冒険介添(サンチョ・パンサ)】。
無限の物資。そして、仲間と認めた者すべて経験値がバカみたいに入る。
【ロキ・ファミリア】も【ヘファイストス・ファミリア】も。【タケミカヅチ・ファミリア】も【ミアハ・ファミリア】も。【アポロン・ファミリア】も【アレス・ファミリア】も。【ムネモシュネ・ファミリア】や【ディオニュソス・ファミリア】さえ。
『戦争遊戯』からの祭りでは【フレイヤ・ファミリア】にも通常の倍以上の経験値が入った。
……リリ自身の冒険者生命が断たれることが代償だ。瓜生自身は、ほとんど『ステイタス』が伸びていないのだ。桁外れの、とんでもない数のモンスターを直接間接に倒しているのに。
リリにとっては胸が張り裂けるようなことだった。
物心ついた時から、自分の伸びないステイタスは絶望であり呪いだった。
そしてベルに救われてから、瓜生の【冒険介添】もあり、やっと『ステイタス』が向上した。多忙の合間を縫っての苦しいウェイトトレーニングと素振りもこなし、多数のゴブリンと戦い、傷を負って血を浴びた。
どれほどの充実感だったか……そしてランクアップがどれほどうれしかったか。
それはもう二度とないだろう。
ただ、ベルを支える。ベルの役に立つ。その前では、自分の多少のステイタス上昇より、この能力を自分が持つ方が……
リリには魔法も発現した。
【縮小布(ファンファンクロス)】
・詠唱文「ぜんぶぜんぶぜんぶ実現できる 魔法の風呂敷実現できる」
・魔法で出る布をかぶせると、何であれサイズが100分の1になり、時間が止まる。質量は10分の1。合言葉で解除できる。
重量はリリのスキル【縁下力持】があるので問題ない。
また、小さくしたのをソロの『ふくろ』に突っこめば、巨大な火砲やミサイルも持って行ける。
それだけではなく、弾薬などは縮小してから普通のリュックに詰めて、さらに縮小して……を繰り返せば事実上無限に収納できる。
瓜生は前から、
「おれだって、いつ何で死ぬかわからない」
と、とてつもない量の火器・弾薬・食糧・衣類・本・工作機械・工具・地金などをコンテナに詰めて埋める作業をしていた。
ソロの『ふくろ』にも詰めこまれている。
それこそ、湾岸戦争を百回は戦えるぐらい。何百万人も、何百年も暮らせるぐらい。
特にビーツ用に食料は多量に用意している。
春姫もランクアップし、新しい魔法を覚えた。強力な防御魔法。
レベルが低いが、第一級冒険者の深層探索に連れて行きたい彼女にとってはありがたいものだ。
また、しばらくぶりに地上に戻った瓜生やリリは、さまざまなファミリアや国々、異端児(ゼノス)の国に技術や知識を与え指導する仕事も多くたまっていた。
『ギルド』と【ガネーシャ・ファミリア】を、実を持つ都市の警察・統治機構にするための一歩も。
ひとつが、楽しみとしては大きいが頻繁にはできない『戦争遊戯』にかわり、小規模の紛争を軽減するための、瓜生の故郷のスポーツの導入だ。
バスケットボールやサッカーを、冒険者の力でさせて小さな紛争を解決する。
それは放送としても楽しめる。
ベルたちは少しだけ休み、そしてずっとヤマト・命に負わせていた新入生の面倒を見る仕事があった。
もちろん、また自分たちの未熟を痛感して鍛えなおすこともあった。
【ロキ・ファミリア】はレベル2全員に戦闘車両・銃・牽引機関砲を扱えるように下層で特訓を始めた。
フィンらは、確かに核爆弾は致命的なダメージを与えているだろうが、それでも敵を全滅させた実感がなく不安を感じていた。
レヴィスが今回は出てこなかったのだ。
だからこそ今は、メルカバの活用をテーマに多くのメンバーを鍛えなおしている。
ある日には、アイズとビーツがたまたま会ったことがある……【フレイヤ・ファミリア】の門前で。
ふたりそろって「たのもー」と言い、オッタルをはじめ全員がかりで何度も挽肉にされた。
なりふりかまわずとにかく強くなりたい、という、
(若気の至り……)
である。
ヘスティアもロキもフレイヤに平謝り、修行のお礼として莫大な金や情報、また大きな代償も払うことになった。
それから、その件もありアイズがひそかに【ヘスティア・ファミリア】【タケミカヅチ・ファミリア】合同の修行場を訪れた。
ベルとビーツが修行していた。
超硬チップを刃のない鉛に替えた刀と、新しい不壊属性で交換式の刃を刃引きにした槍で。
アイズの目は素早く察した、すぐ近くの、普通ではないボート漕ぎ運動器具と鉄棒の下のコンクリート地面が濡れている。近くにバーベルを大量に入れたリュックが放られている。ふたりともとんでもない運動をした直後だ。
(きれい)
アイズの目はそれを見た。
ふたりの動きが、とても美しい。
ベルの袈裟斬り。刃筋の正しさが、さらに一段抜けている。それだけでとんでもない水準の攻防一致となり、回避も防御もできぬものとなっている。
ビーツの突き。ただまっすぐで無駄がない、それだけではない、そのさらに上。別の何かが宿っている。
むしろゆっくりと刀と槍を交え、ときにアイズの目にも追えないほどの速度になる。
ベルは体幹に深い呼吸だけのチャージを賭けて加速している。
ビーツも同じように、部分的に瞬間的に『気』を集中させて加速している。別の世界では界王拳と呼ばれる技術を消化し昇華して、必要な時だけ必要な部分だけに集約している。
(どちらも、錐みたい)
鋭い。無駄がない。
(羽根のよう。鉛のよう。布団のよう)
地に足がついていないような軽さ。どしりとした重さ。まとわりつくような粘りと柔らかさ。兼ね備えられている。
アイズは知らない。
レベル4になったベルに、レア発展アビリティ『正剣』が生じていることを。
いつからか。いつアイズ自身は、ベルとビーツを、保護すべき子としてある意味見下すのをやめたのだろう。
いつからか。ベート・ローガのベルやビーツに対する態度が、アマゾネス姉妹に対するそれに近くなったのは。
少年が槍の突きを、最低限の振りかぶりでわずかにそらしつつ深く踏みこむ。
少女は袈裟をわずかによけ、右片手逆水平に切り替わる、そこに前蹴りが走る。
ただそれだけ、レベル1でも追えるほどゆっくりした動きだが、すさまじい正しさがある。
羽根のように軽く、舞うように美しいフットワーク。呼吸と拍子、体幹の深い深い一致。打つ瞬間だけのすさまじい重さ。
アイズ自身がやられたら危険と感じるほどに。
(この域に達したのは、戦い始めて何年かかった……?)
アイズはそう思わずにはいられなかった。それほどまでにふたりとも成長が早く、才がある。
いつからか入ってきた武神タケミカヅチが、アイズにうなずきかけた。
そして稽古が一段落したベルが、アイズを見つけて驚く。
「少し型を見る」
と言われたビーツから、突きを出して厳しく直されている。ベルも。
ベルのまなうらには、鍬を、斧を、鉈をふるい地を耕し、木を切り、薪を割る祖父の姿が深く焼き付いている。ベルは知らぬが神のそれは、まさに完全。
タケミカヅチがやって見せる手本と、見事に重なる。
ビーツが、神の槍と拳を、どれほど貪欲に、地球人とは桁がいくつも違う才で吸収しつくしているか……海水すべてのように膨大なものを、そのすべてを収めて足りぬほど巨大な器に吸いつくしている。
そして学んでいる。槍はアレン・フローメル、フィン・ディムナ、アーニャ・フローメルからも、ガリバー兄弟からも、戦いや稽古を通じて。
そして多くの深い動きを、オッタルから。
多数の自分より強い敵と戦い続ける、心構えと動きをソロやリュー・リオンから。
アイズはただ強くなるため、それだけで技そのものを極めようという気はなかった。
元から極められた技があった。
なんともいえず、まぶしかった。
アイズは、それからふたりとも激しく稽古し、武神にも動きを指導してもらった。
深い幸福感。それは胸の黒い炎がかなり白い炎になるほどのものだった。
帰ってきて、すぐに倒れるように寝てしまった彼女の表情を見て、リヴェリアやロキがどれほど内心喜んだことか……
ちなみに食事は連絡を入れて【ヘスティア・ファミリア】で食べた。相変わらずのビーツの超大量食に驚きあきれながら。
瓜生は静かに、
(それ……)
を見つめていた。自分が役割を終え、消える時を……だからこそ必死で、すべてを人々に伝えている。
だからこそベルたちを避けたこともあったが、主神ヘスティアはそれを見抜いた。
「ウリューくん、だめだよそれは。別れるんだったら、もっともっとたくさん話して、たくさん遊ばなきゃ。たくさん思い出をくれってみんな言うよ……」
ヘスティアはよく泣いている。泣きながら笑っている。
間違いなく、この異様な【ファミリア】を支えているのは、女神なのだ。たとえ深い深層で戦っていても。
しまった、いくつかの自走式対空砲システムは「どの戦車にも載せられる」…
といっても、既存の自走式対空砲を採用すればいいだけ、しないなら同じこと。