ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

96 / 99
英雄の日々

 戦後の日々が始まった。

 大量に動員され、近代兵器で戦った臨時軍から新しい仕事に就く者も多くいる。特に無所属の無頼だった冒険者。【ガネーシャ・ファミリア】も事実上軍・警察に変質している。

 それを支える人々が仕事を続ける。人口増で必要とされる膨大な物資を確保するための仕事もできる。その物資を運ぶための交通を支える仕事も。

 これまで通りの、冒険者の日々に戻った人たちもいる。

 

 ベル・クラネルは、静かに病院で、そして本拠地で自分を見つめなおし、学び、歩き始めていた。

 これからの、長すぎる英雄としての日々を。

 英雄というものが、どれほど儚いか……人々の賞賛がどれほど簡単に翻るか、瓜生に何人も聞かされた英雄の伝記を思いながら。

 異端児(ゼノス)の件では石を投げられ唾をはかれることもあった。

 そのときも友がいた。仲間がいた。

 人間の底なしの残酷さ、同時に深い善良さをいやというほど知った。

 そして、どうしても放置しがちになる、新入生や、やっと『学校』を卒業した第二期の新入生とも会い、話し、共に過ごした。

 アイズ・ヴァレンシュタインとも。

 彼女は『改宗(コンバージョン)』を熱望したが、ロキ・ヘスティア両方の断固拒否と、母親のそばにもいたいこともあってそれは断念した。

 それでも一日に一度はベルに会わずにいられないほど。だが彼女はほとんど芝居などを見ていない。恋の模倣すべきモデルがない……だからかなり奇行の連続にもなる。

 ひたすら感謝の言葉を言い続ける。抱きつく。車椅子状態のベルを介護したがる……下の世話も含め。無論ベルは羞恥心が限界突破する。

 その姿を見ていると、リリやヘスティアさえ嫉妬よりいたたまれなさを覚えるほどだ。

 何人かで工夫し、トイレと風呂は腕力だけでどうにかなるようにはしたが。

 

 何よりも、専用のナメルRWSの、地上ではシミュレーターでの特訓。ふだんは足がないベルのための、両手それぞれ多ボタンジョイスティック、完全電子操縦改造車を。

 また勉強も。事務にも手を出すと決めた、簿記、オラリオの法律など学ぶことは多い。

 

 運動も、足があるのはトグの魔法がある時だけなので以前ほど長時間ではないが、続けている。

 以前は、甲子園の強豪校レギュラーのように日に18時間以上運動していたような生活だったが、今は一日に2時間ぐらいしか運動できない。

 だからこそとことんきつく。400メートル走を繰り返すような。

 そして『正剣』発展アビリティを生かすためにも、丁寧に。

 

 今のオラリオではかなり近代トレーニングが普及している。

 電化もされつつあり、大規模工場も増えている。その動力としても、冒険者の近代トレーニングが活用されている。

 鍛冶ファミリア連合と『ギルド』が共同で、レベル別に、発電機直結のエアロバイク・ボート漕ぎ・階段登り・デッドリフトの運動器具を並べている。

 他にもプランク・懸垂・パラレルディップなど様々な運動ができる。

 

 また、ループ状ランニングコースも増えている。

 ランニングコース・ハードルランニングコースもあるが、広い土地が必要だ。ただでさえ膨大な人口が流入しているオラリオに、それはきつい。

 鍛冶師たちの一人が、物理学を学ばせるためジェットコースターの動画を見ているうちに思いついたことだ。

 ジェットコースターのループのように、ループした道をコンクリートで作る。そこを足で走る。瓜生の故郷でもスタントマンが、重りなしでなら一周はできる。

 それを何周も、余裕があれば重りを足首・リュックにつけて。

 桁外れにきついダッシュの繰り返しだ。

 

 意外と盲点である、非常にきつい運動……レベル6以上のみ。

 頑丈でばかでかい団扇(うちわ)とダイビングの足ひれで、空を飛ぶ。楽なようなら重石つき。

 これはきつい……人間が筋力で空を飛ぶことを計算した想像図で、胸の筋肉が戸愚呂どころではないことになるように。そして楽しい。

 

 

 

【ロキ・ファミリア】の、50層以降のアタックに備えた装備も検討されている。

 黒竜戦や、その直前の人工迷宮攻撃・同時の深層攻略などの戦訓も考えに入れて。

 ただし黒竜戦は、迫撃砲や榴弾砲が有効で航空支援もある地上戦であり、それほどは参考にならない。

 48層までのほとんどの場なら、25ミリ機関砲と12.7ミリガトリングで十分であることはわかっている。ただし40層以降にはまだまだ未探査領域もあり、そこではそれ以上の重武装が必要になる。

 それ以下。特に、59層の『穢れた精霊』をその下の階層から援護した何か。

 そこまで考えると、重装甲が必須となる。

 M113ベースのSIDAM 25、装甲の薄さが宿命の装輪装甲車もどこまで通用するか……

 

 まず、52~58層の『竜の壺』、砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)の階層貫通ブレスは制圧法ができている……打たせてその穴に航空爆弾を第一級冒険者の腕力で投じ、その隙に機関砲ごと空挺降下、制圧して主力を待つ。

 

 それから先。とてつもないものが待つ60階層以降。

 主力戦車には4人必要。だがそこまできついところに、低レベルを連れて行きたくはない。レベル2は論外、できればレベル3すら連れたくない。

 レベル2を含めた戦車隊は膨大な数になるのだが……どうしても時代的思考がある。【フレイヤ・ファミリア】の8人が8万の軍を皆殺しにしたと言われるように、『神時代』には量より質なのだ。

 戦車の装甲に頼る多人数のレベル2が、戦車の装甲を超える攻撃で全滅する……その悪夢を考えると、そのプランは放棄された。

(撃たれる前に撃つ……)

 それが確実にできるのならば、戦車の装甲など必要ない。制空権を持つアメリカなら、仕掛け爆弾以外それにかなり近いが、ダンジョンに空はない。

 実際問題メルカバ、第三世代戦車の重装甲でも耐久そのものとして総合的に考えれば、レベル6冒険者より生存力が高いとは言い難い。特にキャタピラなどが弱い。

 そうなると、一人で操縦できるナメル。火力の弱さ……RWSの30ミリ機関砲は下層までなら十分強いが、59層以下や黒竜軍相手では見劣りした……を、遠隔操作可能な牽引砲でフォローする。【ヘファイストス・ファミリア】が艦砲のCIWSを改造したものを。

 自動装填装置がついた戦車砲を、牽引遠隔操作砲塔に改造する研究も始まっている。

 

 メルカバ、ナメル、Sタンク。

 移動兵站として『ふくろ』。失ってもいい覚悟でトラック。

 

 Sタンクは、戦車と考えなければすこぶる強力だ。重装甲で自走の、自動装填装置で速射の、105ミリ対戦車砲。そんなものはほかにない。普通に大型対戦車砲を装甲車で牽引したら、10人は必要だ。それが1人でいい。

 キャニスター弾なら、大体の方向がわかっていれば機関砲同様に動きが早い敵もとらえられる。複数の散弾で弾幕を張って動きを鈍らせ、主力戦車の旋回できる主砲をぶちこむ、それで多くは倒せるだろう。

 ハッチからは無反動砲、多連装ロケットを選ぶことができる。

『ふくろ』から出せる兵器……黒竜戦では活躍したが、やはり欠点も見つかった巨大砲架も改良された。

 120ミリ自動装填戦車砲3連装の、古い戦艦の砲塔のような装甲地面置き砲塔を単独で扱う。

 また35ミリリボルバーカノンを3連装……秒に約60発でガトリングのタイムラグもない……にし、動力も積み追従性を極端に高くした接近阻止機関砲システムも作った。

 艦砲のCIWSシステムを地上用に改装した57ミリ・76ミリ速射砲システムも。

 

 また冒険者の手持ち火器も研究開発が進んでいる。むしろ大型の対戦車手榴弾が多い。

 タンデム成形炸薬弾頭を参考に、前面に成形炸薬弾頭、後ろに大径の自己鍛造弾で、穴をあけてその穴に高速の金属をぶちこみ、内臓からかき回す。

 また巨大な粘着榴弾のような手榴弾も効果を発揮し、配られている。

 ナメルと同じ弾薬の30ミリ機関砲を、第一級冒険者用に全員分手持ち改造している。

 手持ち改造された76ミリ対戦車砲や57ミリ機関砲も好みで使う物がいる。

 特に力に優れた者は、自動装填装置・弾倉つきの120ミリ戦車砲すら担いでしまう。頑丈なリヤカーを作り、それにトンに達する弾薬を積む……それを引いた第一級冒険者が、主力戦車に匹敵する火力を出す。

『クロッゾの魔剣』を用いる、大口径短銃身、極超初速APFSDSで対物ライフルのサイズながら短距離なら戦車砲に匹敵する銃もレベルに合わせて行きわたっている。

 また、とりあえずは瓜生の故郷の106ミリ、軽量な84ミリカールグスタフなど、無反動砲の成形炸薬弾頭も活用する。

 

 まず新階層に、もっとも重装甲の主力戦車で侵入して多連装ロケットと戦車主砲で最大火力を叩きこむ。

 それから主力戦車の主砲、多数の牽引砲を展開して制圧。

 サイズが小さい強敵は高連射の対空機関砲と、手持ち機関砲を持つ第一級冒険者と主力戦車の連携で対処する。

 それが構想され、下層で徹底的に訓練された。

 

 また、黒竜戦で圧倒的な威力を目の当たりにした【フレイヤ・ファミリア】、また【ヘスティア・ファミリア】に負け従わされている【アポロン・ファミリア】、闇派閥戦で協力している【ディオニュソス・ファミリア】など、近代兵器を導入するファミリアも増えつつある。

【ロキ・ファミリア】のように戦車隊には至らない。人数も少ないし、たとえばレベル2ばかりで戦車に任せて52層まで行ってしまったら全滅するだけだ。

 重機関銃・無反動砲・対戦車砲・対戦車手榴弾。トラック。小型装甲車。瓜生の故郷のもの、鍛冶ファミリアが量産をテストしているコピー品、オリジナル設計の品を買っていく。無論高額で。

 また、それ以外のファミリアにも、緊急用に抱え筒に似た小型砲や手榴弾が普及しつつある。ひどいモンスター・パーティや超強敵に、巨大散弾や手榴弾でとりあえず難を逃れ血路を開くためだ。それができれば全滅リスクを大幅に減らせる。

 できればの話だ……頼って無謀なことをすれば結局は死ぬ。

 

 車両を用いる18層まで、また18層以降の重装甲車を用いる高速送迎も高額ではあるが組織化されつつある。行きだけでも物資も体力も消耗せずに行き、探索して帰る、大金を払っても割に合う。

 18層安全地帯、冒険者の町の地上との極端な価格差もかなり軽減されている。

 また19以降にも安全地帯がいくつか拠点化されている。ひとつはロキ・ヘスティア・ヘファイストス・ミアハ共同の『車庫』だ。

 構想としては、32層前後の水・食料が豊富な場に、恒久的な拠点を作り、交代で防衛戦・物資輸送を繰り返すことも考えられている。

 安全地帯である50層にも、異端児(ゼノス)の協力もあり相当規模の物資と火器が集積されている。

 

【ヘスティア・ファミリア】の、低レベル……先輩となった新入生と、第2期の新入生たち。

 彼らの装備も固まり、絶対に死人を出さない、ダンジョンの想像以上の最悪に戦い抜けるように鍛えられ続けている。

 リリが受け継いだ瓜生のスキルもあり、経験値の伸びは早い。アイズの記録には及ばないにしても、一年半も頑張れば確実にランクアップできると思われる。

 伸びに応じて、火器も追加し始めた。

 基本的には、大盾と長槍を複数組む小規模ファランクス。

 全員の追加装備として、M460リボルバーと、【ヘファイストス・ファミリア】製火器。

 M14ライフルに似たフルサイズのライフルに34センチの大型折り畳み銃剣。ライフルの口径は338ラプア、.50BMGほどかさばらないが7.62ミリ×51NATOよりはるかに強力で、ミノタウロスでも一発で倒せる。

 大盾+着剣小銃+両手でも使える短剣が4人。

 長槍+着剣小銃が4人。

 それに、指揮と荷物運びの着剣小銃のみがふたり。手榴弾も持っており、将来的には重火器も担当する。

 緊急時以外手を出さないレベル2以上がふたり…….50重機関銃など重装備。

 現時点で火力だけなら30層でも通用するが、あえて9層前後を徹底的に攻略し、時々レベル2以上を増やした状態で15層程度の中層で撤退戦を経験させるのを繰り返している。

 さらに新入りの指導もあるし、近代機材を用いた調理・浴場などのスキルも高いため、ダンジョン以外の仕事も多い。ベル・クラネル団長も足を失ってまで戦い、そしてよく面倒を見てくれるようになったので大喜びで頑張っている。

 

 将来レベル2以上が増えれば、ライフルを.50に強化し装甲車を加えて強化するつもりはある。たとえば長槍を単発の14.5ミリライフルにするなど。

 

 

『神会』では、ランクアップした子供たちの二つ名が議論されていた。

 黒竜討伐。

 前の『神会』からあまりにも短い間に、レベル2から5に跳ね上がったベル。

 どこからともなくやってきたレベル7たち。

 瓜生がもたらした近代兵器・近代物資の力。

『異端児(ゼノス)』とそれにまつわる『戦争遊戯』。

 イシュタルの神界送還、ヘルメスの追放、アレスが捕虜として閉じ込められている。この『神会』にも参加させてもらえない。

 退屈しのぎに地上に降りた神々は興奮し、絶頂し、叫びまわっていた。

 

「『黒竜』もえらく頑張ったなー」

「『鏡』特別公開してもらってみんなで見たけどほんとすげーわ」

「むちゃくちゃだったなー」

「人間の目じゃ何も見えねーよ」

「古参のあんたはあの二大ファミリア時代も知ってるだろ?比べてどうだ?」

「比較にならんよ」

「しかしランクアップした子増えたなー」

「あの『戦争遊戯』からめちゃくちゃだなあ」

「前の『神会』から、何人だ?」

「うっわー何だこの数引くわ」

「それにアレスもほとんどこっちに入ったし」

「『ギルド』に登録した『恩恵』持ちの人数が倍近いもんなー」

「カーリーんとこも多いよなー」

「うわあああっ」

「なんだなんだ」

「携帯ゲームでやられたんだ、最近はやりの」

「高いけどなー」

「娯楽もずいぶん増えたもんだ」

「なにせちきゅ」

「はいはーい、そろそろ二つ名決定大会やでー」

「ロキのやつまだやってるよ」

「もう全部バレバレだっての」

「さ、まずは……」

「ビーツちゃんは?」

「オレのこの手が光って燃える!すごい名つけろと轟きさけぶうっ!『竜玉少女(ドラゴンボール)!』

「やばいネタはやめろっつーたろ!」

「大食い伝説もますますすごいことになってるよなー」

「一度誘って賭けにして、これはさすがに無理だろって量を食わせた神(バカ)がいるんだ……見事に爆死してたな」

「おいてめバラすな、なけなしの小遣いを……でもまさか、『メルド』の全メニューぶつけて余裕だなんて思わないだろ、スープだけでも常人には多すぎの麺入り、普通のBランチでもそこらのフードファイターが軒並み敗退したのに」

「ばーかばーか」

「それにあれ、強さ今レベルいく」

「はいはーいうちや!ロキや!そうやなー……」

「ほーらロキさんがごまかしてます」

「まああのファミリアのレベル詐欺にいちいち突っこんでてもつまらないよな」

「運営何やってんだ何だこのガバゲー」

「見てみ、ヘスティアちゃんの目がえらい泳いでるで」

「髪もすごいことになってるな」

「じゃあとりあえず、レベル2に3人ランクアップした【タケミカヅチ・ファミリア】からいくか」

「そうそう、メインディッシュは最後にとっておこう」

「くそう二日徹夜した【ヘスティア・ファミリア】二つ名帳が出るのはまた後か」

 

 

【ロキ・ファミリア】との、訓練を兼ねた深層遠征を前にしたある日。

 ベルは、アイズに車椅子を押してもらい、街を歩いていた。

 すぐにレフィーヤが飛んできて怒鳴った、

「アイズさんに車椅子を押させるなんて!私が押します!」

「ずるい……とった……私のなのに……」

「い、いえ、わーっ!そんな、そんな、アイズさんがアイズさんがアイズさんが」

「そりゃそうですアイズ・ヴァレンシュタイン様に車椅子を押させるなんて罰当たりです不肖このリリルカ・アーデが」

「だめ」

「その、妾も押したいです」

「だめ」

「僕が押すんだ!」

「だめ、私の」

「あの、この車椅子は電動だから……」

 と、出かける時から騒ぎになる。

 新入生たちは、

(『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン入りのハーレムなんてさすがベルさん……)

 といったものである。

 

 結局は何人もの女の子と、オラリオの町に出る。

 ベルたちが、必死で守り抜いたオラリオに。たくさんの人々が喜び、感謝の声を投げてくる。つい最近、石を投げ唾を吐いてきたその人も、だが。

 それは気にならない。犠牲を払って取り戻した、アイズの本当の笑顔がある。

 リリの笑顔も……すぐに通信機に呼び出され、別の仕事に飛んで行ったが。

 ヘスティアも腕時計のアラームが鳴り、【ヘファイストス・ファミリア】の仕事に行く。

【タケミカヅチ・ファミリア】から経営を引き継いだ和風屋台で、アイズと焼鳥を買い食いする。強引に食べさせようとしてくるのが、うれしいを通り越して何か別の感情だ。

 またレフィーヤが騒ぐ。空から、団扇と足ひれで飛んでトレーニングしていたティオナも降りて加わる。

 椿・コルブランドが走って『バベル』に帰る途中足を止め、

「おお!新しい刀ができたぞ、今度こそあれにも耐えて見せる!それに、ラジアルボール盤の……」

 と誘うつもりが、膨大な技術情報言葉になる。

『ギルド』の門には大画面のテレビがあり、『戦争遊戯』でのオッタルとフィンの戦いが流れている。

 広場の一角では、演劇ファミリアがミュージカル化した『るつぼ』が演じられている。

 広場の近くの低い塔から、6人乗りのケーブルカーが発着している。

 オラリオは変わっている。それでも、世界中の欲望が集まり、希望があることは変わりない。

 今日もまた、新しく夢を抱いて出てきた人がいる。

 いかにも人込みに慣れていない、少女の、途方に暮れた表情はベルにはわかった。ほんの半年かそこら……

「あの……違ったらごめんね?……どの『ファミリア』にも断られたんじゃないかな?」

「は、はい……え、ベル・クラネル……」

「『ギルド』は『学校』を紹介してくれたんじゃないかな?」

「は、はい」

「なら、そこで頑張れば……」

「い、いいんですか、あたしみたいなのが、『学校』に行っても」

「ひどいこともいわれたのかな……大丈夫。諦めなければ、きっとできることはあるよ」

「あ……あああああ……ベル・クラネル……『黒竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』の大英雄……」

「ぼくの二つ名は違うんだけどな、あれは」

「みんな、『黒竜殺し』って言ってるよ」

「そだよ、あの火の鳥すごかった!」

「『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン……『大切断』……」

「あや、フリーズしちゃった」

「ベルくん!」

「エイナさん?この人、ちょっと固まっちゃったようで……」

「そりゃあねえ。無理だと思える冒険者志望の子で、『学校』の話もしたんだけど頭がいっぱいいっぱいみたいで……ちょっと前の君みたく」

「は、はは……」

「今も!明日からの遠征、絶対無茶はしないでね。絶対帰ってきてね、英雄だって死ぬときはあっけないんだから!」

「はい……英雄がどんなにはかないか、ウリューさんにたくさん聞きましたから」

「英雄の話?聞かせて聞かせて」

「ティオナさん、車椅子は」

「第一足も……冒険者を引退したって……」

「……ごめん、ベル……」

「あ!無神経でした。申し訳ありませんヴァレンシュタイン氏、クラネル氏の信念と覚悟も侮辱していました……」

「ありがとうございます、エイナさん」

「それより、英雄の話聞かせて!」

「今朝リヴェリアに言われてなかった?『ラジオ』ばかり聞いて夜更かししてる、って」

「あ……」

 

 

 そんな日々の中、誰が気づくだろう。

 瓜生が、もういないということを。




メンバーの二つ名がどうしても思いつかない…
100話エンド、行けるかな……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。