新米バス運転手と少女達のShining Road 作:ことね
大変お待たせしました。
(このエピソードの構成・展開を書いたプロットが真っ白になってしまいましたので、初めから作り直してたなんて言えない・・・)
4月17日は渡辺曜ちゃんの誕生日・・・ということで勝手に特別編を上げさせていただきます。
頑張って僕の中の渡辺曜という可愛い女の子を精一杯表現してみました。
それではどうぞ!
渡辺曜 誕生日特別編「全速前進ヨーソロー!」
渡辺曜 誕生日特別編「全速前進ヨーソロー!」
「・・・きろー!!・・・き、起きてよー!!」
とある日曜日の朝方、身体を揺らされる振動で意識が覚醒していく。
「頼むから・・・寝かせてくれ・・・。」
ふと、そんなことをぼやき、再び眠ろうとする・・・
「ふふっ・・・この曜ちゃんの前でそんな事をしていいのかな・・・えいっ!!」
ふと身体に感じる暖かさとちょっとした重さ・・・人が僕の上に乗っかってきているという事に気づくのには時間がかからなかった。
寝起きで閉じたままの瞼をあけると、そこには見覚えのある顔と女の子特有の良い香りが漂っていた。
そして僕は、自分の目の前にいるのが自分の最愛の彼女であるということに気づく。
「・・・曜、おはよう。」
「おっはヨーソロー!!」
朝から僕を起こしにきたその相手は、渡辺曜
かれこれ幼い頃からの顔なじみの一人であり、今は僕の彼女
彼女が高校を卒業した頃から4年間ほどお付き合いをしている。
「それで、こんな早くからどうしたのさ・・・。曜だって知ってると思うけども、昨日僕は夜遅かったんだよ?」
「そうだよね・・・朝からごめんね。」
ちょっと不満げに言ってしまった為か、彼女はシュンとしてしまう。
僕としてはそのような意図は全く無かった為、慌てて弁解に移った。
「いや・・・その・・・決して迷惑とは思ってなくて・・・その・・・。」
どぎまぎしてしまった僕を見るなり、彼女はにやっとした笑みを浮かべた。
「ふふっ・・・。それじゃあ・・・今日お出かけしない??」
「まあ、いいけど?どこか行きたい所でもあるの?」
「んー・・・特には決めてないかな。大樹は?」
「んー明日も休みだからちょっと遠出するか!」
「よっしゃ!どこに行くの?」
「んー。横浜とかどう??」
壁にかけてある時計を見つめる。すると・・・時刻は朝の8時半を示していた。
「そしたら、支度するからちょっと待っててくれる?」
「分かった。僕も支度するね!」
「了解なのでありますっ!」
昔から変わらない敬礼を見せ、曜は僕の部屋を出て行く。
机の上にある卓上カレンダーを見つめると日付は4月16日を示していた。
そっと、机の引き出しを開け、小さなケースを取り出す。
ケースを開け、銀色に輝く二つの指輪を見つめながら、僕はふと付き合った時の事を思い出していた。
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最初の告白は彼女からで、本当にシンプルなものだった。
「私・・・ね。大樹くんの事がずっと好き・・・なの。」
夕日が内浦の海を真っ赤に照らし、雲ひとつない夕焼け空だった冬の日
ずっと気になっていた女の子に告白されてしまった・・・。
その事に僕は衝撃を受けて、立ち尽くしてしまった事を今でも覚えている
「本当に・・・僕なんかでいいの?」
不安そうに曜ちゃんを見つめると、こう言われた。
「大樹くんじゃなきゃ・・・駄目なの///」
「そっか。ちょっとだけ時間を貰ってもいいかな・・・?」
曜ちゃんが勇気を出して、告白してくれたのにも関わらず僕はすぐには答えを出せなかったのである。
「え?どうして??」
驚いた顔をする彼女の顔を横目にこう告げた。
「曜ちゃんが僕を思っている気持ちがすごい伝わってきて、本当に嬉しいんだ・・・でも、僕が本当に曜ちゃんを好きなのか?・・・という事についてちょっと考えたいんだ。」
「・・・そうだよね。突然言われても困るよね・・・。」
告白された時、しゅんとする曜に対して申し訳なさを感じたのだが、同時に自分への不甲斐なさというのも感じていた。
「ごめんね。別にこれからも変わらずにうちに遊びに来てくれて構わないし、曜ちゃんの事が嫌いという訳じゃないんだ・・・でも、結論だけは少し待ってくれないかな?」
「うん。分かった・・・。」
自分の中で、中途半端な気持ちで付き合ってしまっては曜ちゃんの気持ちに申し訳ない・・・。
そのような気持ちがあった為・・・その場で返事は出来なかった。
それから数日が経ったある日、僕は不意に倒れてしまう。
しかも父親が出張、母親が旅行へ行っている為、家には誰もいない・・・。
そんな最悪のタイミングでだった。
曜がたまたま遊びに来た曜がそれを見つけ、看病してくれた。
本当に些細なきっかけだったが、その時、僕はこの子が大好きであり、僕のことを大切にしてくれる子なんだな・・ということに気づいたのだった。
むしろ、この事にすぐ気づけなかったことを後悔した。
そして体調が治った後、すぐに彼女へ自分の気持ちを伝えた。
他人に自分の気持ちを伝えるなんて事は初めての事で、自分がそんなに上手く言葉を紡げるとは思ってもいなかった。
今でもあの時自分がなんと彼女に告げたのか・・・ということは思い出せない。
だが、自分の気持ちの数々を彼女に告げた後、彼女が嬉し泣きをしていたという事実だけは今でも覚えている。
それからの毎日は、新鮮でとっても充実していた。
アウトドア派である彼女は、暇さえあれば僕を遊びに誘う事が多かった。
時には沼津から抜け出し、東伊豆地域、静岡市内や浜松市内・・・時には県内から出て関東地方へ行く等、本当に色々な所へ出かけた。
最初に二人で遠くに出かけたのは横浜・みなとみらい・・・あそこで二人きりで見た夜景は鮮明に記憶に残っている。
僕としても曜のエネルギッシュな性格が僕にとっては刺激を貰うばかりで、彼女といる毎日がとっても楽しかった。
いつからかそんな彼女が愛おしくて仕方なかったのかもしれない。
そんな事を思い出しながら、着替えを済ませ、先の小さなケースの蓋を閉じて、カバンにしまって、一人で呟く。
「あの時の約束は今日果たす・・・」と
「おーい!準備できたよ!!」
曜が扉越しに声をかけてきたので、慌てて部屋を出る。
「いまいくよー!!」
そして僕達は、横浜へと出発した。
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時間は午前10時過ぎ。
沼津から東名高速を上り、1時間近く見覚えのある大観覧車と超高層ビル群が見えてきた。
横浜駅に隣接するデパートの地下駐車場に車を停めて、電車でみなとみらいへと移動する。
その最中、懐かしさに思いを馳せていた時、曜がこう言った。
「そういえば、付き合って初めて出かけたのってみなとみらいだったよね。」
「うん。今でも覚えているよ。あの時の曜、少し緊張していたよね~。」
「えーっ!そ・・・それはだって/// 大樹と付き合って初めて遠くへ出かけるってなったから緊張しないわけないじゃん!!///」
「ふふっ・・・本当に曜はそういう所が可愛いからなぁ・・・。」
「ナチュラルに褒められると・・・なんか、照れちゃうよ///」
傍から見ればバカップル・・・に見られそうなやり取りをしていたら降りる駅へと到着した。
懐かしさを感じて・・・二人してあの頃のことを思い出しながら、色々と巡る。
超高層ビルにある展望台や赤いレンガの倉庫などに行き、公園から水上バスに乗る。
「ん~!!やっぱり海風は気持ちがいいね!!」
「そうだね。やっぱり曜は海が一番似合うなぁ・・・。」
「えへへ・・・/// 大樹にそう言われると・・・なんか嬉しいなぁ///」
「そうだ。夕食なんだけどさ、美味しいハンバーグのお店見つけたからそこに行かない?」
「ハンバーグ・・・!?楽しみなのでありますっ!」
曜の笑顔が見れるだけで、遠出をしに来た甲斐があったと思わされてしまう。
そして夕食を済ませ、再び二人で日が暮れた街を歩く。
そして、大きな観覧車がある遊園地へとやってくる。
「そういえばここも初めて来た時寄ったよね。」
「うん。確か頂上付近で一回止まっちゃったんだよね・・・あはは。」
観覧車に乗る為、列に並んで待ちながらこの話題でずっと話していた。
そして、観覧車へと乗った。
ふたりっきりになってすぐに曜がこちらへと近づいてくる。
「ねえ・・・大樹。」
「ん?どうした??」
僕の隣に腰掛け、肩に頭を乗せてくる。
「少しだけ、こうさせてくれない?///」
「いいよ。今だから出来ることだしね。」
観覧車が半分くらい上昇した時、僕は話を始める。
「実はさ・・・今日ずっとデートしながらね。初めて来た時のことを思ってたんだ。」
「うん。私も実は思ってたよ。」
そう・・・初めて来た時もこの観覧車に乗った。
そして、曜が突然泣き出した・・・という事があった。
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実は初めて二人で来た時、曜が少し緊張していたのもあって、疲労が普段より溜まりやすくなっていた。
しかし、僕は初めの頃はそれに気づけず、曜が無理して歩いているのに気づいた時は自分を責め、酷く悔やんだ。
だが、自分を責めた所でどうにもならなかったので、予定を変えて早めに切り上げようとし、二人で観覧車へと向かった。。
乗った途端、曜が突然目に涙を浮かべ泣き始めてしまう。
慌ててしまった僕は咄嗟に彼女に対して、謝罪の言葉を述べてしまう。
「曜ちゃんごめん・・・!俺がもっと早くに気づければこんなことにはならなかったのに・・・!」
謝罪を述べる僕に対し、曜ちゃんはこう言ってきた。
「ううん・・・違うの。私が無理して、我慢せずに大樹くんに言ってればこうならなかったから私のせいだよ・・・。」
渡辺曜という少女は周囲からは多才な人物と思われているのだが、以前に千歌と梨子が親密になっていくの見て疎外感を感じてしまい、悩んでしまう子であった。
それが幸いしたのか、僕にとっても同じようなことをしてしまっていたみたいであった。
「そんなことはないよ。曜ちゃんという僕の彼女の性格をしっかり把握できていなかった僕が悪いんだし・・・さ?」
「でもっ・・・私のせいでせっかくの遠出が台無しになっちゃって・・・ううっ。」
泣きながらそう言う曜ちゃんを僕はぎゅっと優しく抱きしめ、こう告げる。
「曜ちゃん・・・いや、曜。僕はね、君と付き合ってから毎日が楽しくて、刺激的でさ・・・君と居られるだけで本当に幸せなんだ。君の笑顔にずっと力を貰っていたんだ・・・。だから、君には笑っていて欲しいんだ。僕の前では二度と絶対に悲しい涙は見せたりなんか絶対にさせない!次に泣かせるのは嬉し泣きって、今そう決めた!・・・だから、顔を上げて?」
カバンからハンカチを取り出して、曜の涙を拭く。
そしてこう告げる。
「今日から僕は!君の事をちゃん付けで呼ぶのはやめる!!何故なら、対等でありたいから!!」
大声で宣言すると曜は思わず笑い出した。
「あははっ・・・なにそれ~!じゃあ私も呼び捨てで呼んでいいかな?・・・大樹///」
ちょっとした蟠りが解け、二人で笑いあった。
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「あはは・・・そんなこともあったね。」
「うん、それでさ・・・。」
疑問符を浮かべて首をかしげる曜を横目に僕はカバンから小さなケースを取り出してこう言った。
「あの時に決めた約束、果たして良いかな?」
ケースを開くと、銀色に輝く指輪が二つ入っていた。
「え・・・もしかして・・・それって」
震えそうな声で涙を浮かべる彼女を見つめながら、優しい顔で話を続ける。
「次に曜を泣かす時は嬉し泣き・・・ってあの時言ったよね?覚えているかい??」
「うんっ・・・指輪が二つあるってことは・・・そういうことだよね?」
「本当はね、明日言いたかったんだ。大事な日だからさ。」
「明日・・・?もしかし・・・んっ///」
最後まで言い切らないうちに僕は彼女の口を塞ぎ、キスをしてこう告げる。
「一日早いけど、誕生日おめでとう曜!!そしてこれからもずーっと一緒に・・・人生という大海原を航海しませんか?///」
照れながら僕は彼女にそう告げる。
すると彼女は、ケースの蓋を閉じて、ポケットに入れて僕へと抱きついてきた。
「ヨーソロー!!///これからもずっと一緒にいようね!!約束だよ・・・?///」
「もちろんさ!!」
こうして僕らは新たなる関係へと進展したのだった。
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時は流れ、あの告白から3年が経った。
僕は市内を走る路線バスだけでなく、都市間を結ぶ高速バスの運転も行うようになった。
以前より、仕事の量や時間が増えた。
だが、以前より充実した毎日を送っている。
朝起きて、妻の料理を食べて出勤する。
その前に日課となってしまったことを行う。
「よし!行って来るね!!・・・今日も無事故で安全運転に努めるでありますっ!!」
「ヨーソロー!!いってらっしゃい!・・・無事に帰ってきてね!!」
まるで出庫前の乗車点呼のようなやり取りではあるが、結婚してから仕事に行くときと帰ってくる時は必ずこれを行っているのである。
自分自身の安全を確保するだけでなく、利用してくれるお客様の為に・・・。
そして、家で自分の帰りを待っている・・・家族のために。
渡辺曜 誕生日特別編 "完"
曜ちゃんは二番目に好きな子なので、一段と気合を入れてみました。
逆に気合を入れすぎてしまい、よく分からない文面構成になってしまいました。
申し訳ございません。
時間かけすぎて、後書きが思った以上にかけませんでした。
次回改めて、記載させていただきますので何卒、ご了承ください。