目が覚めると、車の中にいた。席はおそらく三列目。何も思わずに右を見ると着物を着た俺好みの少女。左には少し大きめの段ボール箱。二列目の右側の席にはスーツ姿の男性、運転席は右側にあって初老の運転手が座っていた。おそらく運転しているのだろう。
「君、考え直す気にはなったかね?」
何の話だろう?見当もつかない。
「何のことですか?」
「とぼけてるのかい?君が手に入れたその資料だよ。それを君の隣にいる少女と引き換えにこちらに渡してほしいんだ」
資料…おそらくこの段ボールの中に入っている物だろう。中身を見てみようとして手をかけたら焦った様子で男性に止められた。余程外に出してほしくないらしい。男性はかなりお金を持っているように見えた。おそらく政治家、大企業の社長か大富豪か。犯罪の記録だったりするのだろうか?大きめの段ボールがいっぱいになるくらい調べたのだろうから俺はかなり優秀な人物なのだろう。記憶も何もないからわからないが。
「それって人身売買なんじゃ…」
「まあまあ。少なくともこの子をここに連れてくるまでに犯罪は犯していないよ。それに君がこの話を認めてさえくれれば彼女は君の伴侶となる。浮気など少しでも君が不快に思うような事をした場合は私が後始末をさせていただく。これでは不満か?」
考える。隣の少女は俺好みだ。後は性格があうか。それくらいだ。
「少し話してもよろしいでしょうか?」
「ああ…、私と運転手の彼は一旦席を外させてもらうよ。逃げ出そうなんて考えないでくれ」
いつの間にか駐車場に入っていたみたいだ。外側から鍵が閉められると、車内には俺と少女の二人だけとなった。
とりあえず段ボール箱の中身を開いてみよう。
「…?」
取り出してみるとUSBメモリが二つ。硝子の箱に入っていて鍵がかけられている。さらにディスクが三枚。こんな大きい段ボール箱に入れるようなものでもないだろうに。少なくともここで見られるものではないのでスルー。次に自分の服を見る。ポケットの中には何もなかった。最後に隣の少女を見る。
「えーと、初めまして。俺は××。キミは?」
「…○○です」
○○、当たり障りのない名前だ。こういう時は変にどうして連れ去られたとか聞かない方がいいんだっけ?
「えーと、君は不満じゃないの?連れてこられて、結婚しろなんて言われて」
「いいえ」
「え、いや、知らない男の人と、しかも年の離れてそうなおじさんだよ?嫌じゃないの?」
無言で首を横に振る。うーん。何で俺との結婚を嫌がらないんだろう。もしかして俺の機嫌をとるようにあの男性から言われているとか?
「別に本当の事言っても怒らないよ?」
「だから、別に嫌じゃないって言ってますけど」
おう、途端に良く喋る。まあこれ以上突っ込んでも仕方ないだろうな。
「俺の事どんな人ってさっきの男の人から聞いた?」
「優秀な人、って聞いてます」
そんなに買われているのかー。それにしてもさっきから眠い。何でだろ
「それにしてもなんか眠くなるなぁ」
「よければ、私の膝、使います?」
有無を言わさず俺の頭は少女の膝、まあ膝枕の上に置かれた。それにしても眠くなる。
「おかしな人ですね、夢の中で眠くなる、なんて」
…あ、これ夢か。
「あー、それにしても不思議な夢だったな」
そういえばあの女の子の着物、桜色だったなあと思いつつ河川敷を歩く。そろそろ桜も咲くだろう。
こんな夢たまに見ますよね