ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
今回は妖怪ではなく、おそらく、歴代鬼太郎シリーズで高人気となっている『人間側』のヒロインに登場してもらいます
……まぁ、誰のことかはわかるよね、たぶん(^^;
その日、明堂学園に見慣れない制服の少女が一人いた。
彼女の名は犬山まな。
東京の中学校に通う、十五歳の女子中学生だ。
本来、所属している学校はまったく違う彼女が、なぜ明堂学園にいるのか。
それは、明堂学園とまなが通う学校が企画した国内交換留学のためだった。
運がいいのか悪いのか、まなは今回、その留学の対象者に選ばれてしまい、明堂学園に来ることになったのだ。
「あ、犬山さん!」
「犬山さん、やっほ~」
「えっと、花咲さんと来海さん、だっけ?」
基本的に真名は社交的な性格だが、まだ慣れていない、ということもあり、名前を覚えきれていなかった。
それをわかっているからなのか、それとも単に話しかけてきたのが
「はい。お昼、一緒にどうですか?」
「ね、一緒に食べない?紹介したい先輩もいるんだ!」
「そうなの?それじゃ、遠慮なく」
どうやら、二人はまなを昼食に誘いに来たようだ。
せっかくの厚意なので、まなは二人の申し出を受け、屋上へと向かった。
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屋上にやってくると、そこにはいつきたちにはおなじみの菖たち、高校生メンバーがいた。
初対面のメンバーばかりではあるが、初対面で年上というだけで物怖じするようなまなではなかった。
「初めまして!国内交換留学でお世話になってる、犬山まなです!!」
「わたしたちと同じクラスに留学してるんです」
「で、一緒にお昼を誘ったっしゅ!」
突然の自己紹介で目を丸くしていた菖たちに、つぼみとえりかが補足説明を加えると、納得したらしく、高校生たちはまなを歓迎した。
一方、受け入れられたまなはというと、華やかな笑みを浮かべながら高校生組と混ざり、お弁当を食べていた。
「……春川先輩と四月一日先輩のお弁当、手作りなんですか?」
「あぁ。俺の場合、じいじが仕事してる時間に作っちゃうし」
「俺は一人暮らしだからな」
「すごいなぁ……というか、いいなぁ、一人暮らし」
中学生らしく、両親に邪魔されることなく、自分の好きなことをして過ごしていたいようだ。
そのため、一人暮らしというものに無邪気な幻想を抱いているのだ。
「羨ましいって思うかもしれないけど、そんなの幻想だぞ?」
「あぁ。実際はいろんなことを自分一人でやらないといけないしな」
「掃除に洗濯、炊事、買い物、ゴミ出し……てか、あげたらきりないな」
「だな。まぁ、ともかく、親がやってくれてる諸々を自分一人でやんなきゃいけないんだ。想像以上に大変だし、自分の好きなことに使う時間だって少ないぞ?」
と、絶賛、一人暮らしをしている君尋と小狼、事実上一人暮らしとなっている菖と明から言われて、さすがにまなも苦笑を浮かべた。
洗濯は洗濯機がやってくれるし、買い物は生協の注文販売があるからまだいいが、さすがに掃除と料理については自分一人でやらなければならない。
マンションやアパートのような部屋であればまだいいが、一軒家の掃除となると、どれだけ時間がかかるかわかったものではない。
そこまで想像できたために、しばらく一人暮らしはしないでいいかな、と思ったようだ。
(ていうか、お母さん、いっつも一人でそれをやってるんだよなぁ……今度からちゃんとお手伝いしよう……)
ついで、なのかはわからないが、いつも一人で家事をしている母親に申し訳ない気持ちがわいてきたらしく、手伝いもちゃんとやろう、と心に誓ったようだ。
そこまで思って、ふと、まなは一人の友人のことを思い出した。
「……そういえば、鬼太郎って一人暮らしのようなもの、なんだよね?生活、どうしてるのかな??」
「え?誰のこと?」
「あ、あぁ、えぇっと……わたしの友達のこと」
えりかの問いかけに、まなは慌てた様子で返した。
まさか妖怪が友達だ、などと言えるはずもない。
言ったところで信じてもらえるはずもない。
だが、意外にも一人、鬼太郎の名前に反応した先輩がいた。
「へぇ……あの鬼太郎に人間の友達、ねぇ……」
「え?し、知ってるんですか?鬼太郎のこと!!」
「知ってるも何も、花見や月見で神社の境内借りて飲んでるし、あいつら」
「て、てことは猫姐さんや親父さんも?」
「会ったことあるな」
なお、最近になっていつものメンバーに加えて、南国に住まう妖怪で自らを『チン』と名乗っている妖怪がたまにやってきたり、本来は学校にいるはずの「トイレの花子さん」やアニエスとアデルという二人の魔女の姉妹も参加するようになっていた。
「そ、そうなんだ……なんでわたしには言ってくれなかったんだろ」
「たぶん、夜遅いからじゃないかな?」
仁頼が管理を任されている神社に、鬼太郎一行がやってくる時間は深夜帯が主だ。
以前、えりかが誤って鬼太郎たちの宴会に迷い込んだことがあったときは、珍しく遅い時間帯ではなかったのだが、むしろその時間で宴会を行っていることが珍しいようだ。
「え~!だったらなおのこと呼んでほしかったなぁ……」
「おいおい、うら若き乙女が何言ってやがる……変な輩に襲われても知らんぞ」
夜に行動するものは、何も妖怪だけではない。
人の目が少なくなる時間帯には、よからぬことを考える人間が多く活動する時間帯でもある。
その中にはもちろん、うら若き乙女を毒牙にかけようとする不逞の輩もいる。
あまり深くかかわってきたわけではないが、それでも知り合って縁が結ばれたのだ。
心配するな、ということができるほど菖たちは冷たい人間ではない。
「うっ……そ、それはやだなぁ……今度、猫姐さんに相談しよう……」
「そうしろそうしろ」
忠告はしたが、それでも鬼太郎たちの宴会に参加したいという意欲を見せているまなに、これ以上は何を言っても無駄だと感じたのか、菖は苦笑を浮かべながらそう返していた。
なお、ゆりたちもまた、菖と同じく、苦笑を浮かべていたことは言うまでもない。
ちなみに、鬼太郎についての話をしている間、関わりを持っていない明たちは聞こえていないかったため、妖怪が現実に存在しているということを知ることはなかった。