ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
あとがきはないよ、悪しからず
それでは本編どうぞ
体育祭が無事に終了し、期末試験も終えて、明堂学園は夏休みに突入した。
つぼみたちも夏休みに入っており、昨年の経験から、夏休みの宿題は早々に片付けてしまおうと、植物園で勉強会をしていた。
だが、一人だけ、どこか落ち着かない様子のものがいた。
珍しいことに、その人物は菖だった。
もっとも、菖がそわそわしていることに気づいたのは、幼馴染のゆりと菖に恋心を抱いているつぼみ、そして、親友グループの一人である明とグループの中でも人の変化に聡い、君尋だった。
「どうしたのよ、菖?」
「なんか、すっげぇざわついてないか?」
「……そうかもしれない」
明と君尋の問いかけに、菖はシャーペンを持ったまま答えた。
案外素直に答えたことを二人とも意外に感じたのか、目を丸くした。
「お、おいおい……本当にせんせーか、お前」
「……明、お前覚悟できてんだろうな?」
「前言撤回、まごうことなく菖だ」
菖がとことん嫌っている愛称を呼ぶと、背筋にうっすらと寒気を感じた君尋がそうつぶやいた。
が、その雰囲気もすぐに収まった。
「……で、どうしたんだよ、ほんとに」
「勉強中に菖がそわそわするって、よっぽどのことだろ。何か気になることでもあるのか?」
「気になることといえば、まぁ、そうだな」
明の問いかけに、菖は少しばかりぶっきらぼうになりながら答えた。
応えるその顔が、若干、赤らんでいたことから、趣味である考古学や遺跡のことではないことは、すぐに察しがついた。
おそらくは、女。
そう推測した明は、ニヤニヤと笑みを浮かべながら。
「なんだなんだ?せんせーにもとうとう春が来たってか?」
「今は夏だぞ」
「わかってて言ってるだろ、それ」
冗談で返してきた菖に、明は若干、苛立ちを覚えながらもぐいぐいと迫ってきた。
「で、相手は?月影か?花咲か?それとも……」
「俺からすりゃ、お前と祈里との関係も気になるけどな」
「あぁ、言わなかったか?例の法案が話題になってからアプローチがすごくてな」
例の法案、というのは、俗に「ハーレム法」と呼ばれている、実質的に一夫多妻制を法的に容認するという、少子化対策のために作られた法案のことだ。
容認する、といっても、男女どちらかに一定以上の所得が必要になるうえに、第一夫人以外は仮に浮気をし、離婚したとしても、離婚に関わる慰謝料を請求することはできないなど、一応はいろいろと制約がある法案ではある。
そして、その法案が話題になり、成立もほぼ確定的であることを知った祈里は以前から目をつけていたのか、明に対して更なるアプローチをかけてきていた、という話を
そして、その結果。
「……付き合うことに?」
「しました」
「おぉう……よくももかが許したな」
「ゆりと菖にとって『特別な後輩』だったら別にいいんだと」
要するに、プリキュアでなかったら許さなかった、ということのようだ。
それもそれでどうなんだろう、と苦笑を浮かべながら、菖はももかの懐の深さに、どこか感心していた。
だが、そこで話が終わることはなかった。
「で、お前さんはどうなんだ?」
「……ちっ、はぐらかされんかったか」
話題をそらすことに失敗した菖は、露骨に舌打ちをした。
が、捉えた獲物は逃さない、とばかりに物騒な目をした明は、追い打ちをかけるように問いかけてきた。
「で?実際、どうなんだ?」
「……あぁ……うん……ちょっと、心境に変化あり、かな」
「ほほぅ?」
ようやく菖の口から出てきた言葉に、明は意地の悪い笑みを浮かべた。
それは君尋も同じことで、二人のその反応に、イケメン五人組の良心とも言うべき小狼が苦笑を浮かべていた。
なお、静はその間、黙々と課題を進めていたが、耳は傾けていた。
もっとも、元々が寡黙な男であるため、何も言ってはこなかったのだが。
「で?その変化ってのは?」
「ん~、いい加減、決着つけないとかなぁって」
「決着って、月影さんと花咲ちゃんの?」
「も、あるんだけど、他にも二人ばかり」
「……おいおい、プリキュアってのはどんだけ惚れっぽいだよ……月影はしゃあないとしても」
菖の言葉に、君尋は苦笑を浮かべた。
他の二人、というのは、つぼみたちから見れば先輩プリキュアとなる、シャイニールミナスとキュアイーグレット――九条ひかりと美翔舞のことだ。
いつの間にか、この二人からも好意を寄せられるようになってしまい、水面下で誰が菖の心を射止めるか競争が始まっている。
だが、菖は考古学者を目指しており、考古学者である両親と恩師の影響で、遺跡探検が趣味であり、単身で海外へも赴くことがある。
当然、危険な目に遭うことも多く、菖自身も最悪の事態を覚悟している。
そのため、悲しませたくはないという理由で、寄せられている想いに応えることを避けてきた。
が、それは逃げであることも菖は理解している。
だからこそ、決着をつけなければ、と思っているのだ。
「……おまえ、まさか月影のこと」
「捨てる気はない。というか、ゆりなしでこれから先を生きていける自信がない」
幼馴染で、幼いころから長い時間を一緒に過ごしてきた。
だからこそ、隣にい続けてほしいと思うし、離れたくはないと思う。
いままで、悲しませるような結果になることを怖がって、一歩を踏み出すことをしてこなかったが、ゆりにこの想いを伝えないままでいるせいで、つぼみたちがいつまでも自分に想いを寄せたままでいるのはよくない。
いい加減、一歩を踏み出さなければ。
奇しくも、妹分たちに背中を押されるような形で、その覚悟が固まり始めていたようだ。
それを聞いた明は、不敵な笑みを浮かべた。
「ならさっさと
「まだしばらくは無理」
もっとも、固まり始めただけであり、告白するまでしばらく時間がかかるようだ。
明からの返答で、四人は内心、呆れながらもしばらくは見守ることにするのだった。