ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
さて、かなりハイペースですが、ポプリ登場です。
次回あたりにサンシャイン、次々回あたりで、ムーンライトとセイバー復活の前日話になる……予定です!
あくまで、大まかな展望なので(汗
なお、今回のスキット風あとがきのゆりさんの発言は、若干、中の人ネタを含んでいます。
ゆりと菖から強くなるための秘訣を聞いたつぼみとえりかだったが、結局、変身前の基礎体力を上げることが重要という結論にいたり、体力作りから始めることになった。
なったのは、いいのだが……。
「……も……もぅ、無理、ですぅ~~……」
「ほら、つぼみ!ファイトファイト!!」
へばりながらもどうにか走っているつぼみに、少し先を走っていたえりかがエールを送った。
その二人の後ろには、ゆりと菖がいた。
「えりかはともかく、つぼみはちょっと問題だな、これは……」
「そうね。けれど、こればかりは仕方がないのではないかしら」
ゆりが軽く肩を上下させながらそう話すと、菖は苦笑しながら、そりゃね、と返した。
男女の差なのだろうか、それとも単に遺跡探索が趣味だからなのだろうか、菖のほうはまだ体力に余裕がありそうだった。
だが、その顔は何かを思案している様子だった。
「……けど、基礎体力だけじゃいつか限界がくる」
「そうね……まず、基礎体力を向上させて、あの子たちの戦闘力の底上げをしたとしても、その先には必ず、彼女が待っている」
菖の言葉に、ゆりは顔を曇らせて返した。
彼女、というのは、まだ二人がキュアムーンライトとユグドセイバーとして戦っていたころに、何度となく立ちふさがってきた強敵、ダークプリキュアのことだ。
砂漠の使徒の三人の幹部が生み出すデザトリアンとは一線を画す強さと、キュアムーンライトに対する異常なまでの執着心から来ているのであろう、プリキュアに対する強い憎悪と敵対心。
それらを有しているダークプリキュアと互角に戦うには、まだ何かが足りない。
ゆりも菖も、そんな気がしてならなかった。
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その日の放課後。
つぼみとえりかはファッション部の部室で文化祭に向けた衣装の作成に取り掛かっていた。
その活動中、ふと部員の一人がつぼみに問いかけてきた。
「ねぇ、そういえば知ってる?最近、出るらしいよ。お化け」
「お、お化けですかっ?!」
お化け、という単語に、つぼみは顔を青くした。
どうやら、つぼみはそういった類のものが苦手な人間らしい。
だが、話しかけてきた部員はそんな様子を気にすることなく。
「そ。なんでも、泣きながら暴れまわってるらしいよ?」
と続けた。
すると、廊下の方からバタバタと大きな音がこちらに向かってきた。
それまでしていた話の話題が話題だけに、つぼみはもとより、お化けの類をそもそも信じていないえりかまでもが、緊張で顔をこわばらせた。
突然、ガラッ、と大きな音を立てて扉が開くと、部員全員が悲鳴を上げた。
「いま、ここに怪しい影が飛んでいったけれど、みんな大丈夫?!」
だが、扉を開けた人物の声を聞いて、部員たちは安堵した。
勢いよく扉を開けたのは、明堂学園中等部の生徒会長であるいつきだったようだ。
どうやら、校舎内を見まわっていたときに怪しいが飛んでいく様子を目撃し、追跡していたらしい。
異常がなかったことをいつきに伝えると、いつきは、よかった、と安堵の表情を浮かべた。
だが、すぐにその顔を引き締め、部員全員に注意喚起をした。
「不審人物を見かけたら、すぐに逃げるように!学校を守るのは、僕の務めだからね!」
男装の麗人とはいえ、凛々しいその表情に、ファッション部女子一同はときめきを覚えながらも返事を返した。
いつきが部室を出ると、部員は全員、帰宅することにした。
幽霊話が出ただけでなく、不審人物の目撃情報まで出てきたのだから、帰りたいと思うのは必然といえば必然だ。
だが、つぼみとえりかだけは違った。
学園の幽霊騒ぎに、いつきも見かけたという怪しい影。
この二つを同時に行うことができる存在は。
「えりか、もしかして……」
「うんっ!砂漠の使徒の仕業だね!!」
と決めつけていた。
砂漠の使徒、という単語を口にした瞬間、ファッション部の布がぶわりと宙に浮いた。
「さ、砂漠の使徒……うわーーーーんっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ??!!で、出ましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「このっ!あたしらファッション部の大切な布に憑りつくなんて!!」
泣きながら暴れ出した布に、つぼみは悲鳴を上げながら慌てふためくが、勇敢にもえりかは布を手に取り、飛び上がっている布をどうにか引き戻そうと引っ張った。
すると、布のしたから、砂漠の使徒ではなく、意外なものが姿をあらわした。
「なっ?!」
「不審人物ってのは……えぇぇぇぇぇぇっ??!!」
布の下にいたもの。
それは、つぼみとえりかのパートナーの妖精と似たような姿をしたものだった。
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結局、布の下から出てきた不審人物の正体を植物園に連れて帰ると、薫子は微笑みを浮かべながら。
「あらあら。まだ赤ちゃんなのね」
と嬉しそうに口にした。
その視線の先には、シプレとコフレよりも一回り小さい妖精が切り株の上に、ちょこん、と腰かけていた。
「ポプリでしゅ~」
たどたどしい言葉で自己紹介すると、つぼみとえりかは微笑みを浮かべた。
それは、シプレとコフレも同じようで。
「こころの種が集まって、こころの大樹が元気になったから、新しい妖精が生まれたですぅ!」
と、まるで自分に新しい家族ができたかのようにうれしそうな笑みを浮かべていた。
そして、新しい妖精という言葉に、つぼみは何かに気づいたようだった。
「あっ!第三の妖精が生まれたということは……」
それはつまり、三人目のプリキュア、つぼみとえりかの仲間がいることを示していた。
だが、ポプリはそのことを喜んでいる様子はなかった。
どうやら、こころの大樹と遊んでいたときに、砂漠の使徒の襲撃を受け、こころの大樹は姿を隠し、ポプリも捕まるまいと必死に逃げてきたらしい。
「こころの大樹を守るためにも、三人目のプリキュアを早く見つけなくちゃ!」
使命感に燃えるえりかだったが、どうやって三人目を見つけるのか、その方法まではわからず、それを指摘されてうなだれてしまった。
それに助け船を出したのは、ゆりだった。
「ポプリのパートナーとなる新しいプリキュア。それは、優しい心と強い心を持つものと出会い、ポプリがその心に応えたときに誕生するのよ」
ゆりからのそのアドバイスに、ポプリは素直に、はいでしゅ、と返した。
「わたしはひとりで、ゆりちゃんは菖くんと一緒に戦っていたけど、支え合うことが出来る仲間は多い方が良いわ。かけがえのない出会いになるわ、きっと!」
新しい仲間がいる。
その事実に、つぼみとえりかはどこか嬉しそうな笑みを浮かべ、三人目のプリキュアを探すことに意欲的になっていた一方で、菖だけはどこか浮かない顔をしていた。
それに気づいたゆりは、菖にそっと問いかけてきた。
「菖、どうしたの?」
「……うん、少し、気になることがあってさ……」
ゆりにそう問われても、菖はその表情を崩すことなく、そう返した。
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その夜。
いつも通り、ゆりを自宅まで送った菖は、一人、植物園にある大樹の前に来ていた。
来ることがわかっていたのか、眼鏡をかけた書生風の青年が鍵を開けて、温室の中へと入れてくれたため、特に苦労することはなかった。
大樹の前に立ち、菖は手のひらを大樹の肌につけると、目を閉じて意識を大樹へ集中させた。
――聞こえるか?こころの大樹
《聞こえますよ、我が契約者……お久しぶりですね》
――あぁ。砂漠の使徒に捕捉される恐れがあったし、お前の傷もひどかったから、こうやって話すのは控えていたけど……元気そうでよかったよ
菖の頭に直接響くように、優しげな女性の声が響いてきた。
それに驚くことなく、菖は頭の中で声をかけてきた存在に語りかけた。
その声は、菖がユグドセイバーとして戦うために契約した、シプレたちプリキュアの妖精の産みの親、こころの大樹だった。
《えぇ。ブロッサムとマリンがいままで頑張ってくれたおかげで、こうして再びあなたとお話できるくらいには回復しました》
――なら、そろそろ俺が守護に回した力は必要なくなるな
《えぇ……ですが、再びあなたが戦うのなら、彼女たちにはやってもらわなければならないことがあります》
――砂漠の使徒の攻撃の激化……それに備えた防御、か
ポプリの話では、こころの大樹が砂漠の使徒に捕捉されつつある。
それはつまり、自分がこころの大樹を守護するために、残された力の半分を回して作り上げた結界が弱まっているということだ。
そして、菖のその言葉に、こころの大樹は静かに肯定の意思を返した。
《わたしの中で眠っているこの子の魂を守るためにも……》
――そして、彼女の花をもう一度、咲かせるためにも
大樹の言葉にそう返し、菖はその場から離れていった。
温室の外へ出るその姿を、書生風の青年は静かに見送っていた。
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翌日から、つぼみとえりかはポプリを伴って、花畑を巡り歩くようになっていた。
ポプリ曰く、花ならばゆりの言っていた、強くて優しい心の持ち主のことを知っているはず、とのことだ。
ちなみに、つぼみが興味本位でシプレに自分たちを見つけた方法を問いかけてたが。
「そ……それは実は、その……偶然、ですぅ……」
と冷や汗を伝わせながら返した。
シプレからの回答に、付き合っていたえりかは、他の方法を探さないかと提案してきた。
何しろ、今の季節は夏。
雨が降りやすく、湿り気が強い季節だ。
今も雨が降っており、えりかの気分はどんよりと沈んでいた。
それに対して、花が大好きなつぼみは、ご機嫌らしく、ミュージカルのワンシーンのようにステップを踏みながら歩いていた。
ふと、つぼみは足もとに花びらの多い花を見つけた。
「あっ!こういう、花びらの多い花は、花占いにもってこいなんです!」
「あぁ、幼稚園のころ、やったね~。好き、嫌い、好き、嫌いってやつでしょ?」
えりかの質問に、つぼみは微笑みながら肯定し、海外では『愛している、少し愛している、とても愛している、愛していない』の四つで、正午に太陽に向かって占いのが普通だ、と説明してくれた。
「愛してる確率高すぎ!てゆーか、探すのはつぼみの恋人じゃなくて、ポプリのパートナーでしょ!」
「はっ!そうでした!!」
恋愛話につい夢中になりがちな年頃、というよりも、そういった話が個人的に大好きなつぼみに、えりかは冷静に突っ込みをいれた。
つぼみはその突っ込みで我に帰り、しゃがみこんで花びらを数え始めた。
やがて。
「会えない、会える、会えない……あっ!!」
残り一枚、結果は『会える』。
その結果に、つぼみたちは次の花畑へと急いだ。
ポプリが言うには、今向かっている花畑に咲いているひまわりが、三人目のプリキュアについて教えてくれるらしい。
向日葵畑へと向かっていると、つぼみたちの耳に、奇妙な声が聞こえてきた。
「愛してる~、少し愛してる~、と~っても愛している~」
嫌な予感を覚え、つぼみたちは走った。
そして、彼女たちが目にしたものは。
「愛しすぎてる~、愛におぼれてる~、愛のためならすべてを捨てる~」
モグラのような姿をしたデザトリアンが、向日葵の花を根っこごと引き抜いている姿だった。
つぼみとえりかは捨てられた向日葵を抱きかかえた。
「ひどすぎる!!占いの内容も最低っ!!!」
「ゆるせません!!」
その声が聞こえたのか、デザトリアンの上に乗っていたアラビアン風の衣装を着た女性――サソリーナは、つぼみたちの登場に顔を歪めたが、探していたポプリの姿を見ると。
「あらん!第三の妖精つき!!飛んで火に入ってくれたわん!!デザトリアン、やっちゃって~ん!!」
と、顔を輝かせ、デザトリアンに命令した。
どうやら、ポプリを連れ去って手柄を立てようとしているようだ。
「えりか!」
「いくよ、つぼみ!!」
当然、それを許すつぼみとえりかではない。
二人がココロパフュームを取りだし、シプレとコフレを呼ぶと、着ていた服がそれぞれの心の花の色と同じ光を放っているワンピース姿になった。
「「プリキュアの種!いくですぅ/ですっ!!」」
「「プリキュア!オープンマイハート!!」」
パフュームから吹き出てきた光の粒子に包まれ、ワンピース姿だった二人は、プリキュアのコスチュームへと姿を変えた。
「大地に咲く、一輪の花!キュアブロッサム!!」
「海風に揺れる、一輪の花!キュアマリン!!」
「「ハートキャッチ!プリキュア!!」」
名乗るが早いか、ブロッサムとマリンは地面を蹴り、デザトリアンとの距離を詰めた。
基礎体力を向上させる特訓をしてきたおかげか、最初のうちは、あまり苦戦するような場面はなかった。
だが、相手はモグラ。
地面に潜っては出てきて、出てきては潜ってを繰り返し、二人を翻弄し始めた。
やがて、モグラ・デザトリアンの爪は二人を捉え、吹き飛ばした。
きつい一撃が入ったのだろう、吹き飛ばされた二人は、なかなか起き上がれずにいた。
体勢が崩れたところを狙って、モグラ・デザトリアンが二人にとどめをさそうとした瞬間、ポプリが泣きながら飛びだしてきた。
「プリキュアをいじめちゃ、だめでしゅーーーーーっ!!」
ポプリがそう叫んだ瞬間、ポプリとデザトリアンの間に、向日葵の形をした光の盾が現れた。
その盾にはじき返されたモグラ・デザトリアンはよろけてしまい、後ろに倒れこんだ。
「はっ!い、今です!!マリン!!」
「オッケー!やるっしゅ!!」
モグラ・デザトリアンに隙が出来た瞬間を逃さなかったブロッサムは、マリンに合図を送り、ブロッサムタクトを取りだした。
マリンもブロッサムにうなずき返し、マリンタクトを取り出し、こころの花の力を込めた。
「なっ!まずい!!」
「「プリキュア!!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」
タクトに込められたこころの花の力を光に変えて、全身にまとい、モグラ・デザトリアンに向かって突進していった。
すでにサソリーナはこの場から退避していたため、巻きこまれることはなかったが、置いていかれたモグラ・デザトリアンは、光の弾丸になった二人に貫かれた。
「「ハートキャッチ!」」
モグラ・デザトリアンの背後に抜けた二人が叫んだ瞬間、モグラ・デザトリアンはピンク色の煙に包まれ、爆発し、姿を消した。
どうやら、浄化に成功したようだ。
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デザトリアンを浄化した二人は、助けてくれたポプリにお礼を言い、さきほどの盾のことについて聞いてみていた。
だが、生まれたばかりのポプリは、まだ自分の能力について把握しきれていないらしく、わからない、としか答えられてなった。
だが、その疑問にはシプレが答えてくれた。
「ポプリには、守りの力があるですぅ!」
「なるほど、守りかぁ……すっごいバリアだったねぇ」
「改めて、ありがとうございました。ポプリ」
感心するえりかと感謝するつぼみだったが、ポプリの顔は暗く沈んでいた。
三人目のプリキュアを見つけることができなかったことが、よほど堪えているようだ。
だが。
「大丈夫です!雨も上がりましたし、あきらめずに頑張りましょう!」
ポプリを励ましながら、つぼみが空を見上げると、そこには先ほどまであった厚い雲はなく、晴れ渡った青空と、虹があった。
青空と虹を見て、少しだけ、元気を取り戻したポプリは、もう一度、プリキュアを探そうと、意気込み始めた。
その時。
「かわいい~っ!」
背後から、ポプリをそっと抱き上げる声が聞こえてきた。
そこには、男装の麗人であり可愛い物好きの生徒会長、明堂院いつきが目を輝かせながら、ポプリを抱き上げていた。
ポプリは、いつきの目を見た瞬間、心の奥がざわついた。
そのざわつきに、ポプリは確信した。
目の前で、自分を抱き上げているこの人こそ、自分のパートナー、三人目のプリキュアであることを。
あとがき代わりの一場面(スキット風)
えりか「それにしても、幽霊の正体がポプリだったとはねぇ……」
つぼみ「まさに、正体見たり枯れ尾花ですね。けど、少しほっとしました」
ゆり「あら?どうして??」
薫子「つぼみは、昔から幽霊とかお化けが苦手で、怪談話を聞いた夜なんかはなかなか寝られなくて、よくわたしの布団に入りこんでいたのよ?」
つぼみ「お、おばあちゃん!!??///」
えりか「ちなみに、ゆりさんと菖さんはどうなんです?」
菖「え?」
えりか「幽霊とかお化けのこと」
ゆり「そうね……あまり、怖いとは思わないかしら?むしろ、本当にいたとして、ぶん殴れないときにどうしようか考えてはいるけれど」
つぼみ「発想が物騒です……菖さんは?」
菖「俺は別に怖いとか思ったことないかなぁ……見えるし」
全員『え?』
ゆり「……菖、わたし、それ初耳なんだけれども」
菖「いや、言う必要もなかったし、いいかなぁと」
えりか「ちなみに、今この場には?」
菖「いるよ?ちょうど、つぼみの……」
つぼみ「~~~~~~~っ??!!」
菖「後ろにある木の根元で遊んでる小さいのが。コッペ様が無視してるから、無害だとは思う……て、つぼみ?」
ゆり「……気を失ってるわね」
菖「あらら……」
えりか「……どんだけ怖がりなのよ、この子は……」(苦笑