ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
3話くらいを予定していますが、もしかしたらもう少し伸びるかも?
どのみち、ムーンライトたちは出てきませんので悪しからず
ファントムの襲撃から数日。
つぼみたちの傷は完全に回復し、いつもの日常が戻ってきた。
が、変化がなかったわけではない。
つぼみたちはあの日を境に、もっと強くならなければならない、と感じるようになっていた。
特に、菖はつぼみとゆりを傷つけられたことに対し、ファントムに強い怒りを覚えると同時に、自分の不甲斐なさに苛立ちを覚えるようになっていた。
そのためだろうか、いつも以上に泉地流の技を磨くようになり、ゆりや明とも地稽古という名の実戦もどきを明堂院流の道場で行うようになっていた。
そんな、小さな変化が起きてから数日。
希望ヶ花市を、再び薄暗い気配が包み込んだ。
同時に、泉地流の稽古場に自生している、周囲の草花がざわつき始めた。
稽古場で一人、稽古に励んでいた菖はその気配を感じ取り、誰が来たのか、確信した。
――来たか、ファントム!
菖は稽古着のまま、気配がより強い方向へ、植物たちのざわつきが強い方へと駆けだした。
稽古場のすぐ近くにある森を抜けて、希望ヶ花神社の境内に出た。
すると、鳥居から拝殿へと向かう参道の中央に、赤い髪をした白いコートの青年がたたずんでいた。
「……貴様か、もう一人の戦士」
「また会えるとはな……決着をつけよう、ファントム!!」
「望むところ!!」
菖のその挑発に、ファントムは腰に差した剣を引き抜き、飛び掛かってきた。
振り下ろされた剣を回避し、その顔にむかって足をけり上げた。
ファントムは腕につけたプロテクターでその足を受け止め、払い除け、再び剣を振り下ろした。
だが、菖は振り下ろされた剣を持つ手首をつかみ、ファントムを地面に向けて引っ張った。
「くっ!!」
ファントムは体をひねり、足から着地し、どうにか倒れることを防いだ。
菖はファントムが着地すると同時に間合いを取るため、その場から離れ、左手を握りしめ、胸の前にかざした。
その瞬間、左手の甲にユグドセイバーの紋章が浮かびあがり、稽古着が光った。
光がおさまると、そこには不思議な文様が描かれた白いマントをまとった騎士の姿があった。
「変身していないというのにこの技量か……やはりプリキュアよりも強い!」
「あんたも相当だけどな……だが、わからないな」
「何がだ?」
「あんた、人間じゃなくて妖精だよな?なぜ幻影帝国に手を貸す?それとも、あんたが黒幕なのか?」
菖は普通の人間にはないものがある。
それが、見鬼、と呼ばれる特殊な視力とそれに付随する直感だ。
先日、ファントムと最初に出会ったときは頭に血が上っていたためわからなかったが、多少、冷静になった今の状態で彼を見た時、菖は違和感を覚えた。
後輩で妹分の一人でもあり、今を時めくアイドルの一人、剣崎真琴の義理の兄、剣崎一真や、先代セイバーと最初に『砂漠の使徒』と戦ったプリキュア、キュアアンジェにとって因縁の相手であるサラマンダー男爵と似たような気配だ。
ついでに言えば、のぞみたちが通うサンクルミエール学園に籍を置いている非常勤講師である小々田コージと、アクセサリーショップ、ナッツハウスのイケメン店主、夏。のぞみたちの同級生で小々田と夏になにやら縁がある美々野くるみの三人とも似たような気配だ。
そんな気配を漂わせる人間は総じて、妖精か人外が化けている姿であることがほとんどだ。
だからこそ、経験則から妖精か、あるいは幻影帝国を陰から操っている存在であると考えるに至ったのだ。
そして、菖のその直感は正しいことを、ファントム自身が証明してくれた。
感情が一切見えないその顔に、明らかに怒りの表情が浮かんだのだ。
「……貴様……言うに事を欠いて、俺が、黒幕、だと?」
「あぁ」
「この俺が、ミラージュ様に忠誠を誓うこの俺が、黒幕だというのか?!本当の黒幕はミラージュ様の愛を受け入れず、捨て去り、さらには封印した地球の神ブルーではないか!!」
その叫びに、セイバーはひくり、と眉を動かした。
ブルーのことは、いおなとグラサンから聞いているので、多少のことは知っている。
ただ、セイバーの中での印象はただの胡散臭い残念なイケメンというだけにとどまっていた。
それもそのはず。
さきほども話したが、セイバーは普通の人間には見えないものを捉える視力がある。
少なくとも、本物の神に出会ったことはないが、正月の時期や例大祭の時期に神社を見ると何か強い力をもつものがいることを感じ取ってきた。
その才覚ゆえに、ブルーが神を名乗る割に力が小さいことは気にかかっていた。
むろん、力が小さい神も存在しているのだが、仮にそうであっても、菖以外にも見えているということは受肉しているということであり、その時点で「神」としての力の大部分がそがれてしまうため、彼を「神」としてみることができなくなっていた。
そこにきて、今度は「本当の黒幕」とファントムに言わせるほどのことをした、という過去があることが発覚したのだ。
もっと言えば、クイーンミラージュとブルーの間には並々ならぬ因縁があるということでもある。
――こりゃ、あとでいおなにブルーから聞いてみてくれって頼みようだな
そう考えはしたものの、今は目の前にいるこの男を叩きのめすことに意識を切り替えた。
が、同時に気付いた。
ファントムの様子が、どこかおかしいということに。
「……まだ未完成だが、ちょうどいい……貴様で試してやろう……ミラージュ様からいただいた、新たな力を!!」
ファントムがそう叫んだ瞬間、ファントムの足元から赤黒い光の柱が立ち上り、天を貫いた。
その光がおさまると、ファントムの姿はそこにはなかった。
かわりにあったのは、赤いシャツに黄色い文様が描かれた黒いマントを羽織った、
To be continued……