ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
プリキュア史上、一番クリスマスを穏やかに過ごせてないのって、もしかしなくてもハピネスチャージ組なんじゃないかって疑いたくなりますね……
そんなストーリーに便乗してのお話です
だってこんな展開になってもおかしくないですもの
あ、話の都合上、今回もあとがきはありませんのであしからず
クリスマス。それは、神の子イエスの生誕を祝う日。
多くの家族連れやカップル、友人たちが、形は違えどイエス生誕を祝う前夜祭となるイブの夜を過ごす日でもある。
希望ヶ花市に住まうハートキャッチ組は、今年もポインセチアの販売にいそしんでいた。
この年もかなりの人数の客人が詰め寄せてきていたのだが、昨年とは違い、今回は心強い助っ人がいた。
「いやぁ、今年も売れたねぇ……」
「ほんと。去年もだけど、今年はもっとすごかったね……」
「去年もこんなだったのか?」
「あぁ。そりゃもうすごかった……」
「ポインセチアだからな……それに、クリスマスリースも人気だったし」
「ですが、みなさんがいてくれて助かりました」
「そうね。特に今年はふたばちゃんがいるし」
その助っ人とは言わずもがな、
まぁ、要するに明とももかを除くいつものメンツが勢ぞろいしていたのだ。
ちなみに、明とももかがこの場にいないのは、クリスマス特別取材の撮影があり、その護衛と終わり次第クリスマスデートの予定があるから、だそうな。
もっとも、その選択はあながち間違いではない。
今をときめくカリスマ女子高生モデルの来海ももかだけでなく、希望ヶ花市きってのイケメンである明が一緒に並んでいれば、今回の倍以上の混雑を生み出すことなど簡単に予想できることだ。
そうなることを避けるため、もっといえば、客寄せパンダになるつもりがないため、二人とも手伝いを辞退したようだ。
それはともかくとして。
客足が落ち着くと、店の奥から花咲夫妻と、つぼみの妹であるふたばが顔を出した。
「お疲れ様。お手伝いしてくれて、ほんとうにありがとうね」
「受験もあって大変だろうに、申し訳ない」
「いえ。たまの息抜きですから」
「それに、赤ん坊がいると店に手が回らないでしょう」
本来、手伝いに来てくれている五人と菖、ゆりの七人は受験シーズン真っ盛りだ。
それなのにこうして手伝いに来てくれたのだ。
とはいえ、君尋は進学はせずに大家が経営している古物商に、ももかはモデルとして事務所に就職することが決まっており、菖とゆり、明の三人はすでに大学から推薦入試での合格通知をもらっているし、明に関しては事務所が提携している警備会社でアルバイトをすることになっており、ももかの専属SPとして公私ともに活躍することになっている。
静とひまわり、小狼とさくらは一般入試での受験になるが、現在の学力であれば十分に第一志望に合格することができるため、まだ少しばかり余裕があった。
「こんばんは」
「こんばんは~!」
ふと、入口の方から若干、幼い声が二つ聞こえてきた。
入口に視線を向けると、そこにはどこか虚ろな瞳をしている人形のような少女と、ゆりを小さくして髪を少し短くしたような少女がいた。
「小羽ちゃん、小百合ちゃん。こんばんは」
「こんばんは、君尋くん。静くんとひまわりちゃんも」
「こんばんは、お兄ちゃん、お姉ちゃん!!」
「おう」
「こんばんは、小羽ちゃん、小百合ちゃん」
そこにいたのは、君尋が住んでいるアパートの大家の家に居候している女子小学生、五月七日小羽だった。
どうやら、一人でフラワーショップまで歩いてきたらしい。
「外、寒くなかった?」
「大丈夫、耳当てしてたし、マフラーもしてたし」
「そっか。よかった」
君尋の問いかけに、柔らかい微笑みを浮かべながら小羽はそう返した。
その光景にほっこりしていると、店の奥からつぼみとゆりがカートを押しながら入ってきた。
カートの上には、クリスマス限定で取り寄せていたフラワーケーキとティーポットとティーカップが置かれていた。
どうやら、ささやかながらみんなでクリスマスパーティーをしよう、ということのようだ。
もちろん、小羽と小百合の分もある。
「あら、ついたのね、小百合」
「ゆりお姉ちゃん!」
ゆりの姿を見つけるなり、小百合はぱたぱたと駆けていき、ゆりに飛びついた。
むふ~、と満足そうな笑みを浮かべながら抱きついてくる小百合を抱き上げて頭をなでながら、ゆりは温かな笑みを浮かべた。
その様子を眺め、穏やかな笑みを浮かべながら、ケーキを切り分けていた。
「ゆりさんと小百合ちゃん、すっごくいい笑顔ですね」
「あぁ。君尋と小羽ちゃんもだけど」
「ふふふ……マナさんじゃないですが、キュンキュンしますね!」
後輩チームのリーダーの口癖をまねながら、つぼみはティーポットのお茶をカップに注いでいた。
その微笑みにいとおしさを感じた菖は、つい、空いている手で、つぼみの頭をなでてしまった。
いままで何度かなでられたり褒められたりしたことがあったので慣れてきたため、驚いて気を失う、ということはなくなったが、それでもやはり想いを寄せている人になでられるのは気持ちのいいものらしい。
つぼみは頬を少し赤くしながら、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
------------
ささやかなティーパーティーもお開きとなり、つぼみに見送られながら、ゆりと菖は小百合と手をつないで帰路についていた。
小百合が口ずさむ、クリスマスの定番ソング「ジングル・ベル」に合わせながら、二人が「ジングル・ベル」を歌っていると、小百合は不意に立ち止まり、黙り込んだ。
どうしたのか気になり、菖とゆりが小百合のほうへ視線を向けると、小百合は突然、こんなことを聞いてきた。
「菖お兄ちゃん、ゆりお姉ちゃんとチューしないの?」
「「ぶっ??!!ちょ、ちょっと小百合/ちゃん???!!!」」
あまりにあまりな質問に、菖とゆりは顔を真っ赤にして同時に叫んでいた。
当然といえば当然の反応だが、小百合の疑問も当然だった。
なにしろこの二人、幼馴染で死線を共にした間柄であり、周囲から見ても距離が近いというのに、いまだに親友以上恋人未満の関係で止まっている。
互いに互いのことを想いあっているのだが、なかなか一歩を踏み出す勇気を持てずにいるのだ。
加えて、つぼみやひかり、舞、いおなにも好意を寄せられているため、どうすればいいのか袋小路に迷い込んでしまっているのだ。
もっとも、そんな悩める青年を救うために用意した、と言わんばかりに、つい先日、通称「ハーレム法」が成立した。
一定の所得を納めることができる世帯であれば、五人までの法律婚を国が保証する、一夫多妻または一妻多夫を容認するものだ。
つまり、頑張って条件をクリアできるようにすれば、誰でもハーレムないし逆ハーレムを築くことができるというわけである。
現在、プリキュアたちはブルースカイ王国の名誉貴族としての勲章を得ている。菖もまた、その勲章を得ているし、現在進行形でトランプ王国の考古学特別調査員や歴史教育の特別監査員としての身分もある。
また、そのコネクションを駆使して、四葉財閥が所有している博物館の学芸員や調査員の紹介も行っており、その謝礼としてそれなりの額の報酬をもらっている。
十分に資格を満たしている、と言っても過言ではない。
「……なぁ、ゆり……」
「……え、えぇ……」
「もし、さ。お前だけじゃなくてほかの子もって言ったら、どうする?」
「つぼみと舞、ひかりといおな以外は認めないわ。もしそうだったら、あなたを殺してわたしも死ぬ」
恐ろしい答えが即座に返ってきたことに、菖は苦笑を浮かべたが、ゆりの瞳にハイライトがないことから、その本気度が伝わってきた。
背筋に冷たいものを感じはしたが、菖としても、さきほどゆりが口にしたメンバー以外に告白する気はまったくない。
というより、菖の趣味を理解し、受け入れ、万が一を覚悟できているのはおそらく彼女たちくらいなものだ。
それは菖だけでなく、菖に想いを寄せている少女たち全員の共通認識だ。
おそらく、つぼみや舞に聞いても、同じ答えが返ってきただろう。
そう思うと、覚悟を決めたのか、ゆっくりと深呼吸して、菖は小百合から手を放し、ゆりの前に立った。
「ゆり。ほんとうはつぼみたちがいるときに話そうと思ってたんだけど、今話す」
「え、えぇ……」
「俺は……」
そこから先の言葉を紡ぐ前に、菖はまるでつららを押し当てられたかのような冷たい感覚を覚え、振り向いた。
ゆりも同じものを感じていたらしく、小百合を抱きかかえ、菖の背後へ視線を向けた。
そこには、二階建ての住宅ほどはある赤いサイアークがいた。
同時刻。
小泉学園、夕凪市、サンクルミエール市、四葉町、加音町、七色ヶ丘、大貝町、そしてぴかりヶ丘をはじめとする世界各地で、同時多発的に赤いサイアークが大量に出現した。
そしてその数分後、巨大な赤い惑星が突如として出現、地球にむかって接近しているという緊急速報が流れるのだった。
これが、幻影帝国による世界征服を目論んだ黒幕、地球の神を自称する青年ブルーの兄、惑星レッドの神レッドによる地球攻撃であることを知っているのは、ぴかりヶ丘に住むハピネスチャージプリキュアだけであった。