ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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実のところ、二つほど過程を吸っ飛ばしてるんですがねぇ……
まぁ、それはそれとして。
今回は前後編です(タイトルは別ですけど)
明日にでも後編を投稿できればいいなぁ……と思いつつ


二人の悲しみの正体。それは、ゆりさんの妖精でした……

それは、いつきがキュアサンシャインになってから数週間が経った頃のこと。

それまでの間に、つぼみたち、現役のプリキュアには様々な試練が降り注いできた。

心の大樹に呼ばれ、彼女、と言っていいのかどうかはわからないが、を守護するための結界を張りなおし、今まで張られていた結界の楔となっていた剣「エターニアハート」を菖に届けたり、えりかが夏休みの宿題が終わらずにつぼみたちに迷惑をかけたり、ポプリが家出をしたりと。

とにかく、砂漠の使徒以外のことでも忙しい毎日だったのだが、最近はそのようなこともなく、比較的平和な日々が続いていた。

そして、二学期が始まったころ。月が地球に急接近するスーパームーンが観測されるというニュースを聞いたえりかは、ちょうど満月ということもあって、植物園でお月見をしよう、と提案してきた。

そんな日に、事件は起きた。

夕方、いつものように植物園に集まってお茶会をしていたつぼみたちだったのだが、シプレの姿がないことに気づき、慌てて周囲を探していると、薫子が体験コーナーとして用意していた花壇の一角で、シプレが猫と格闘している姿が目に入った。

どうにか、猫を追い出すことはできたが、シプレの体はボロボロだった。

その光景を見てしまったつぼみは、涙目になりながらシプレの名前を呼んでいた。

「つぼみは大げさですぅ。こんなの全然痛くないですぅ!」

つぼみに手当てされながら、シプレはそう言ったが、それでもつぼみは泣きそうな顔のまま、シプレに包帯を巻いていた。

「もう絶対に無茶はしないで!シプレは大切な家族なんですよっ!」

「けど、まさかつぼみの花壇をトイレ代わりにしてた猫と格闘するとはね……」

「シプレ、やるじゃん!」

「コフレも悪事はゆるさないですっ!」

「いちゅきにはポプリがついてるでしゅっ!」

心配しているつぼみとは反対に、えりかといつきはシプレの行動を称賛し、コフレとポプリはいざという時は自分も戦う、と意気込んでいた。

そんな様子を見ていたゆりと菖の顔は、どこか沈んでいた。

ゆりに至っては、つぼみたちに、気を付けて、と警告まで発していた。

「妖精は痛みを隠すから……」

「え?」

「それってどういう……」

「……妖精、プリキュアのパートナーの願いは『プリキュアの力になること』。そのためなら、自分のことは顧みないし、行き過ぎた行動をすることもある……」

ゆりの言葉に、疑問符を浮かべたえりかといつきに答えるように、菖が暗い表情を浮かべながら返した。

ふと、ゆりの手にアクセサリーが握られていることに気づいたつぼみは、ゆりに問いかけた。

「あの、それって、プリキュアの種、ですよね?」

「あ、ほんとだ……欠片、というか残骸というか、だけど……」

ゆりの手にあったものは、三日月のような形になったプリキュアの種だった。

ゆりはつぼみの質問に、そうよ、と返した。

「……何の役にも立たない、ただの欠片……わたしの、後悔のかたまり……」

ゆりが何を意図してそう言ったのか、つぼみたちにはわからなかったが、唯一、菖だけは理解できたらしく、そっと目を伏せていた。

ゆりはその欠片を胸元にしまうと、つぼみたちの方へ視線を向けた。

「ごめんなさい、わたし、夕飯を作らないといけないから……」

「……送っていく」

そう言うと、ゆりは足早にその場から離れていき、同時に、菖もその場を離れてしまった。

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日が暮れて、空に満月が姿を見せた頃。

植物園の屋上で、つぼみたちはお月見に興じていた。

「まん丸のお月さま!きれいだな~」

「お団子がまた最っ高!」

「もぅ、えりかってば……」

「えりかは花より団子なんですっ!」

素直に月の美しさに感嘆するいつきに対し、えりかは用意された月見団子に夢中になっていた。

その様子に、つぼみは呆れたといわんばかりの表情を浮かべ、コフレはやれやれと肩をすくめていた。

当然、その場に、菖とゆりの姿はない。

そのことに、つぼみは表情を曇らせていた。

「菖さんとゆりさんも、お月見に参加できればよかったんですが……」

「……まだ、そんな気分にはなれないのよ。二人とも」

つぼみのつぶやきに、薫子は屋上の手すりに身を寄せて、陰鬱なため息をついた。

「おばあちゃん、それって、どういう……」

「……本当は、本人たちがいないところで話すのはどうかと思うけれど」

つぼみの質問に、薫子は迷いながらも答えてくれた。

それは、ゆりの過去に関わる話だった。

ゆりの父親は、薫子と縁のある植物学者で、心の大樹について薫子と共同研究をしていた。

ある日、考古学者である菖の両者から、心の大樹に関する記述と思われる碑文が発見されたことを聞き、単身、フランスへと向かったきり、行方がわからなくなったのだという。

薫子の推測では、砂漠の使徒の攻撃に巻きこまれたのだろう、ということだ。

そして、父親を失ったすぐ後、ゆりはプリキュアに選ばれ、砂漠の使徒と戦うことになった。

その時のパートナー、コロンに励まされながら、そして、ゆりと少し遅れてユグドセイバーとなった菖に支えられながら、ゆりは悲しみを乗り越えた。

「けれど……ダークプリキュアとの戦いで、ゆりちゃんはプリキュアの種の大半と、コロンを、失ってしまったの……」

「そんな!パートナーもだなんて……」

薫子から告げられた衝撃の事実に、つぼみはシプレを抱きしめる力を強めた。

シプレとコフレの話では、コロンはとても優しく勇敢な先輩で、自分たちにも色々なことを教えてくれたのだという。

「それから、菖くんも心の大樹を守るために、ユグドセイバーに変身するために必要なこころの花の力で結界を造り、その基点として、エターニアハートを大樹のもとに置いてきたの」

そうすることを選んだとき、菖の顔は悲痛に歪んでいた。

あの時、菖が言っていた言葉は、今も薫子の耳に残っている。

『何がもう一人の戦士"大樹の騎士(ユグドセイバー)"だ……何が、みんなの心の花を守るだ……何も、何もできなかったじゃないか!!大切な友達一人守れない、そんな騎士に……存在する価値なんてない!!』

本来、心の大樹と直接契約を交わし、プリキュアと同等の力を得ている菖は、ゆりがいなくとも戦うことができる。

だが、菖はそれをしなかった。

ゆりがいなければ、自分が戦う意味はない、と言っていたのだが、本当はコロンを守ることができなかった自分への戒めとして、剣を捨て、せめて心の大樹との契約を守るため、結界を張ることに注力する選択をしたのだ。

「……ゆりさんだけじゃなくて、菖さんの心もたくさんの悲しみで傷ついているんだね……」

「……まるで、ゆりさんのプリキュアの種の欠片みたいです……」

「……二人の心が、もう一度、満たされればいいな……」

満月を見上げながら、つぼみたちはそんな想いを抱いた。

 

一方、別の場所で、ゆりは胸元からプリキュアの種の欠片を取り出し、見つめていた。

その隣には、菖が黙って立っていた。

二人の脳裏には、コロンを失ったあの日のことが浮かび上がっていた。

「……コロン……」

その瞳から雫をこぼしながら、ゆりは、かつてのパートナーの名をつぶやいた。

それが聞こえていた菖もまた、涙こそ流さなかったものの、悲痛に顔をゆがめながら、左手を強く握りしめていた。

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翌日の放課後。

いつものように、ゆりと菖が植物園に来ると、いきなり、えりかが二人に抱き着いてきた。

「うわっ?!」

「ちょっ?!」

「ゆりさん!菖さん!!あたしの胸で泣いてください!!」

「「はぁっ?」」

何を言っているのかわからず、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった二人だったが、つぼみが事情を説明してくれて、納得した。

二人は、つぼみたちの気遣いを素直にうれしく思い、微笑みを浮かべた。

「ありがとう、心配してくれて」

「でも、大丈夫よ。わたしたちは、わたしたちなりにもう決着をつけたから」

「けど!!」

つぼみがなおも反論しようとした瞬間、妖精たちが何かを感じたのか、一斉に空を見上げた。

つぼみたちは何事か問いかけると、妖精たちは声をそろえて、意外な答えを返してきた。

「「「心の大樹がゆりさんと菖さんを呼んでるですぅ!/ですっ!/でしゅ!」」」

「「「えっ?!」」」

意外な答え、つぼみたちだけでなく、ゆりと菖も目を丸くした。

そして同時に、妖精たちは闇の気配が近づいていることも察知した。

どうやら、砂漠の使徒の幹部たちが接近してきているようだ。

「……行ってください、ゆりさん、菖さん!」

「けれど……」

「大丈夫っしゅ!」

「ぼくたちを信じてください!!」

心の大樹のもとへ行くように言ってきたつぼみに、ゆりは反論しようとしたが、えりかといつきが矢継ぎ早にそう返した。

その瞳に宿った力強い光に、ゆりも菖も根負けして。

「……それじゃ、お願いするわ」

「気を付けて、三人とも」

二人は心の大樹のもとへむかう決意を固めた。

しかし、ここでえりかが水を差してきた。

「……けど、どうやって行くのよ?」

そう、二人にはパートナーとなる妖精がいないため、以前、つぼみたちが心の大樹のもとへ向かった時のように、空を飛ぶという選択肢が取れないのだ。

だが菖が、それなら大丈夫、と胸を張って返した。

「エターニアハートがあれば、瞬間移動ができるんだ……もっとも、心の大樹のいる場所限定の瞬間移動だけど」

えりかが余計なことを言う前に、菖が発破をかけると、えりかは見事にずっこけた。

その姿に苦笑を浮かべる一同だったが、すぐに気を引き締めた。

菖の手には、すでに不思議な翼のような文様が剣身に刻まれた、赤茶色の剣が握られていた。

「ゆり、俺の肩に手を」

「えぇ」

そっと、菖の肩にゆりが手を振れると、菖は声高にエターニアハートに命じた。

「エターニアハートよ!俺たちを、心の大樹のもとへ!!」

その瞬間、菖とゆりの体は淡い光に包まれた。

そして、一瞬のうちに、その光は消えてしまった。

二人が、無事に心の大樹のもとへ向かったことを信じる三人は、ココロパフュームを手に取り、こちらに向かってきている砂漠の使徒の幹部たちを迎え討ちに行った。

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ゆりと菖は、一瞬で植物園の温室から、心の大樹の根もとにやってきた。

二人が大樹を見上げると、その耳に、優しい青年の声が聞こえてきた。

《ムーンライト、セイバー》

「この声って……」

「……まさか!」

大樹から聞こえてくる声に、ゆりは思わず、大樹の周りを走り始めた。

ずっと、菖と一緒に自分を支えてくれていた。いまはいないパートナーの妖精の名前を呼びながら。

「コロン!コロン、いるんでしょ!!」

走り去っていくゆりの背を見送りながら、菖は大樹へ視線をむけた。

「……俺がやろうとしていること、わかってくれているみたいだな」

《私は心の花とつながっています。特に、契約を交わしたあなたの心は、よくわかるのです》

「ははは……嘘は吐けない、か」

《はい……さぁ、始めましょう。セイバー》

「あぁ」

大樹に促され、菖はエターニアハートを逆手に持ち、目を閉じた。

その瞬間、菖の体は白く淡い光に包まれた。




あとがき代わりのその頃の話(スキット風)

つぼみ「行っちゃいましたね……」
えりか「行ったね……」
いつき「行っちゃったね……」
つぼみ「無事に、帰ってきてくれるでしょうか」
えりか「そればっかりはわからないっしょ」
いつき「ゆりさんと菖さんはぼくたちを信じて、ここを託してくれたんだ。ぼくたちも信じよう」
つぼみ「……そうですね!」
えりか「なら、まずはあいつらの相手をしないとね!コフレ、いくよ!!」
いつき「ポプリ、ぼくたちも!!」
つぼみ「シプレ!」
妖精たち「「「はいですぅ/ですっ/でしゅ!!」」」
(変身)
ブロッサム「ここから先は!」
マリン「一歩も通さないっしゅ!!」
サンシャイン「ゆりさんたちの邪魔は……」
プリキュア「「「させません/ないっしゅ!」」」
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