ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
なお、コロン復活については以下のように考えていただければ。
・ゆりの種の欠片を媒介にしたオーバーソ○ルのようなもの
・霊力ないし巫○の代用として、こころの花の力を使っている
正直、これを考えるのに少し手間取りました(^^;
まぁ、そのあたりはご都合主義ということで、ご容赦いただきたく……
では、本編をどうぞ。
……あ、今回は「あとがき代わりの後日談」はありません(というか、浮かばなかったです……ていうか、これ、前後編じゃなくて、三部作だよなぁ……)
心の大樹に呼ばれたゆりは、菖が持つエターニアハートの力で、菖とともに心の大樹のもとに来た。
そして、そこで聞いた、かつての自分のパートナーであったコロンの呼び声を聞き、菖と離れ、一人で心の大樹の周囲を走っていた。
「コロン!いるんでしょう?!コロン!!」
《ムーンライト》
再び、コロンの声を聞いたゆりは、背後を振り向いた。
そこには、半透明になっているコロンが浮かんでいた。
《やぁ》
「……コロン……」
ゆりはコロンに両手を伸ばし、抱きしめようとした。
が、その手はすり抜けてしまった。
「……っ!」
《……ムーンライト、僕の肉体は、すでに滅んでしまっているんだ》
それを裏付けるように、コロンの言葉はゆりの頭の中に直接響いてくるものだった。
その事実を突きつけられたゆりは、顔を伏せて、コロンに謝ることしかできなかった。
「……ごめんなさい、コロン……わたしは……」
《もういいんだ、ムーンライト。セイバーもそうだけど、自分を責めるのはもうやめるんだ》
触れることが出来ない体でも、コロンはゆりの頭にそっと手を伸ばした。
《僕は心の大樹の中でずっと、君たちを見守ってきた。だから、君たちがどれだけ苦しんできたか、もうわかっているよ》
だから、もう、いいんだ。
優しい声色で、コロンはゆりに声をかけた。
だが、ゆりはコロンの言葉に、首を左右に振った。
「わたし、愚かだったのよ。一人でなんでもできる、菖と一緒ならなんだって怖くないって、自分の力を過信しすぎていた……」
《それは違う!君は誰よりもプリキュアの使命の重さをわかっていた。だから、他の誰にも背負わせたくないから、ずっと一人で戦ってきた。そんな君だから、セイバーは力を貸してくれたんだよ》
コロンの言う通り、ゆりはつぼみたちとは違い、プリキュアとしては一人で戦ってきた。
自分ひとりでも問題ない、と思っていたから。
そして、菖が心の大樹と契約を交わし、かつてキュアアンジェとともに戦った"大樹の騎士"になり、一緒に戦ってくれるようになってから、自分たちに怖いものは何もない、と思うようになっていった。
そんな傲慢さが、自分の大切なパートナーを死に追いやった。
そのことを、ゆりも菖も、いまなお悔やんでいる。
《僕はね、ムーンライト。君のパートナーだったことを、いまでも誇りに思っている。だから、君も、自分を認めるんだ……そうすれば、君はもう一度、プリキュアになれる。僕がいなくても、ね》
「悪いけど、コロン。君にはまだ、ゆりのパートナーでいてもらうよ」
コロンがそう言った瞬間、白い光に身を包んだ菖が姿を現した。
その手には、エターニアハートが逆手で握られていた。
《やぁ、セイバー……僕を心の大樹にとどめていたのは、君の力なのかい?》
「心の大樹の願いでもあったさ。それより、コロン。君には、まだゆりを見守ってもらわないと困る」
そう言って、菖はエターニアハートを握りしめている手をコロンに突き出した。
ゆりは、困惑しながら、菖に問いかけた。
「ちょ、ちょっと、菖!どういうこと?!だって、コロンはもう……」
「確かに、コロンは死んでしまった……俺の力が足りなかったから、守ることができなかった……」
けれど、と菖は強い瞳を向けて続けた。
「肉体は滅びても、魂は残っている。なら、その魂に依代を与えて、
死を迎えたものが蘇ることはない。
たとえ、どれだけ科学が発達しようと、どれだけ人間が知識を深めたとしても、この星に生きている生命体であるかぎり、こればかりは避けることの出来ない、絶対的な
だが、ルールに抜け穴があることは、よくあることだ。
菖は、遺跡探索をしながら、そのルールに抜け穴を探してきた。
そして、見つけた唯一の方法があった。
それが、魂に仮初の肉体を与え、定着させるという方法だ。
要するに、ホラー小説などの「呪われた人形」のようなものや、ファンタジー小説などの「ゴーレム」あるいは「意思のあるなにか」、もしくは「式神」のようなものをコロンの魂で作ろう、ということだ。
「け、けどそんなことが……」
「できると確信しているから、俺はコロンに話しかけたんだ。時間もあまりないから、これ以上の問答は無用だよ……ゆり、君のプリキュアの種をコロンにかざして」
菖の強い意思のこもった瞳に、ゆりは可能性を託し、言われるままにプリキュアの種を取りだし、コロンにかざした。
その瞬間、ゆりのプリキュアの種は紫色の淡い光を放った。
「こ、これは……」
「かざし続けて!そして、強く願うんだ!!もう一度、コロンと一緒にいたいって!!」
あとは、俺と心の大樹がどうにかする。
そう口にした瞬間、プリキュアの種とエターニアハートから光があふれ、コロンを照らした。
普通なら、半透明の状態になっているコロンが自身を照らしている光を遮ることなどありえない。
だが、ゆりの目には、エターニアハートからあふれ出ている光をコロンの体が遮っているように見えていた。
照らされている本人も驚愕しているらしく。
「こ、これは一体?!」
「ゆりの欠けたプリキュアの種を依代にして、お前に仮初の肉体を与えたんだ……ふぅ……」
いつの間にか、エターニアハートとプリキュアの種から放たれた光はやみ、菖は頬に汗を伝わせながら、その場に座りこんだ。
だが、その視線はただ一点だけを見ていた。
その視線の先には、紫と白の体毛に覆われた、シプレやコフレよりも少しばかり大きい妖精の姿があった。
「……コロン!!」
ゆりはかざしていた種を下ろし、コロンのもとへと走り、その体を抱きしめた。
今度は、すり抜けることなく、しっかりとその腕の中にコロンの存在を感じられた。
「……まさか、こうして君に抱きしめられる日が来るとはね……」
抱きしめられているコロンは、若干照れながら、そうつぶやいたが、その顔はどこか穏やかだった。
成功したことに安堵して、その微笑ましい光景をいつまでも見ていたいと思っていた菖だったが、まだやることが残っていた。
「……ゆり、コロンが復活したとはいえ、プリキュアの種は欠けたままだ。それに、コロンには種を再生する力はない」
コロンに与えられた肉体は、不完全なプリキュアの種を媒体にしている。
こうして、触れることができるのは、菖と心の大樹が集めた心の花の力のおかげなのだが、それでも、コロンに出来ることは、せいぜい、マントに変身してプリキュアに空を飛ぶ力を与えることと、砂漠の使徒の気配を察知することだ。
欠けたゆりのプリキュアの種を復活させるには、まだ足りない。
だが、菖も心の大樹も手を打っていないわけではなかった。
「ゆり、今度は種を心の大樹にかざして」
《そして、もう一度、願うのです。もう一度、プリキュアになりたい、と》
「……菖……」
だが、ゆりは、欠けた種を握りしめ、菖に問いかけた。
「うん?」
「こんなわたしでも、まだあなたは一緒に戦ってくれるというの?」
「コロンを守れなかったことは、俺にも責任がある。だから、そのことを気にして聞いてるなら、それはお門違いだ」
菖は座りこんだまま、そう返した。
今でも、菖は思っていた。
もし、あの時、自分の方が早く前に出ることができていたら、コロンが自分たちをかばうために飛びだしてきた気配を察知できていたら。
だから、失ってしまったものを取り返すため、
それに、と菖は立ちあがり、ゆりの質問に返した。
「もう、答えは決まってるんだろ?」
「えぇ……」
ゆりは菖に微笑みを返し、かつて自分が誓った言葉を口にした。
「「みんなの心のために、戦う」」
ゆりの言葉に合わせるように、菖は同じことを口にした。
別段、驚く様子を見せることなく、ゆりは心の大樹にむかって種の欠片をかざした。
「心の大樹!お願い、わたしをプリキュアに……もう一度、わたしを!!」
ゆりがそう叫んだ瞬間、心の大樹と種の欠片が優しい光を放った。
その光は、ゆりだけではなく、コロンと菖も包みこんでいった。
光が止んだとき、その場に三人の姿はなかった。
《あとは、あなたたちの心次第です……あなたたちの心で、未来を切り開いていきなさい……》
誰もいない空間で、心の大樹の声だけが響いていた。
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そのころ、ブロッサムたちは砂漠の使徒の幹部を相手に苦戦を強いられていた。
三人のなかでも戦闘力が高いサンシャインが、どうにかブロッサムとマリンを援護しながら、体勢を立て直そうとしていたが、いまだに逆転のための活路が見いだせないでいた。
ブロッサムもマリンも、疲労といままで受けたダメージで動けなくなったそのとき。
草や木から、いくつもの小さな光が灯った。
「な、なんじゃき!!これは?!」
「この光は……心の大樹の光?!」
「まさか!」
三幹部たちが驚愕していると、ブロッサムたちと彼らの間に、旋風が巻き起こった。
風の中から、薄紫色の光を放つワンピース姿となったゆりと、エターニアハートを逆手に持った菖、そして、もう一人の妖精が姿を見せた。
突如現れた三人に、幹部たちは驚愕していたが、そんなことはおかまいなしに、ゆりは空を見上げた。
「勇気、愛、友情、優しさ、哀しみ、喜び……みんなの、たくさんの気持ち……わたしは戦う!みんなの心のために!!」
「そして、俺たちに再び光をくれた、仲間たちの絆のために!!」
ゆりと菖がそう叫んだ瞬間、ココロポッドが光を放ち、いままで溜められていた心の種が光の粒子となってゆりのプリキュアの種に集まり、欠けていた部分を補いはじめた。
それと同時に、菖の左手につけられた手袋の紋章も、強い光を放った。
「プリキュア!オープンマイハート!!」
心の種によって補完されたプリキュアの種を、ココロポッドにセットし、ゆりは高らかに叫んだ。
その瞬間、ココロポッドから光の花びらが舞い上がり、ゆりを包みこんでいった。
花びらの中で、ゆりの衣装は変わっていった。
薄紫色に光るワンピースから、白銀のワンピースと黒いリボンを腰に結んだその姿は、ブロッサムたちが夢で見ていたものと寸分変わらない姿だった。
「月光に冴える、一輪の花!キュアムーンライト!!」
高らかに名乗ったその隣には、青いシャツの上に不思議な文様が描かれたマントを羽織った青年が立っていた。
その出で立ちこそ、キュアムーンライトの隣で戦い続けたもう一人の戦士、ユグドセイバーのものだった。