ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
若干、本編と違うシーンはありますが、ご容赦を。
菖「で、これが終わったら今度はNSか?」
斗真「う~ん、NSにも手を出すけど、その前にHuGっと!組との顔合わせが書けそうな気がするのよねぇ……」
ゆり「あら?映画は観にいかないの?」
斗真「……田舎町なもんで……」
ひとまず、三人がそろったあたりから、顔合わせスキットを書き始めようかなと思っています。
ブラックホールの力によって蘇った敵を撃退したプリキュアたちとセイバーだったが、ブラックホールからの攻撃でプリキュアとしての力も変身アイテムも失い、対抗手段を失ってしまった。
唯一、もう一度戦うことができる方法は、残されたプリズムフラワーの光の力すべてを使うことだったのだが、それは同時に、妖精たちとの別れを意味していた。
だが、そんな中で菖は、自分だけにしかできない別の選択肢を導き出していた。
それは。
「自分の命を変身のための力に変えるつもりなのよ!」
「じ、自分の命を?!」
「け、けどそんなこと……」
「できるのよ、菖は……だって、変身のために必要な力は、彼の体に宿っているんだもの!」
以前、砂漠の使徒との最終決戦の時、セイバーの変身アイテムである手袋がぼろぼろになり、消滅してしまったことがある。
だが、その時に身につけていた心の大樹の力が込められた羽飾りが残っていたおかげで、再びユグドセイバーに変身することができたのだ。
そして、菖の体にはいまも、その力が残っている。
そのため、一応、手袋がなくてもユグドセイバーに変身することはできるのだ。
だが、プリズムフラワーが弱り切っている以上、菖の中に残っている大樹の力だけで変身することはできない。
ならば、それを補てんするための力をどこからか捻出するしかない。
菖が導き出したその答えは、自分の命を使うというだった。
「そ、そんなっ!!」
「だめだよ、そんなの!絶対!!」
「けれど!どっちも選ばないなら、それなりの覚悟と代償を払わないといけないだろ??!!俺が持ち合わせているもので、そんなことができるのはもう俺自身の命しか残ってないんだ!!」
当然、その場にいる全員が菖の選択に反対した。
自分の命を投げ出してまで世界を救おうとする、それは物語であれば美徳なのだろうが、ここは現実の世界。
その選択肢の先にある結果を、菖も知らないはずがなかった。
それでも、菖は世界を守り、妖精たちとも別れないですむ方法を取ろうとしているのだ。
「……どうして……どうして、自分の命を簡単にかけようなんて思うんですか?!」
つぼみが涙を浮かべながら、菖にそう問いかけた。
まるで、思い止まってほしいと願うかのように。
だが、菖はゆりに抱かれているコロンの頭に手を置きながら、穏やかな顔で返した。
「みんなが悲しむ結末なんて俺はごめんだ。だからって世界をあんな奴の好き勝手にさせることも我慢ならない」
それに、と菖はプリキュアたちに視線を向け、その瞳に強い意思を込めて続けた。
「……未来を決めるのは、
それに、と照れくさそうに笑いながら、菖は続けた。
「ただでさえ時間がないのに、あぁでもないこうでもないってうだうだ考えるくらいなら、俺は半歩でも先に進むことができる選択をする!」
その言葉に、響の脳裏になぎさたちが言っていた言葉が浮かびあがってきた。
『どうやったら、ここから抜け出せるかまでは、わからない……けど!』
『でも、前進あるのみ!!』
『立ち止まってちゃ、何も始まらない!』
『わたしたちは、いつだってそうやってきたんだから!!』
それは、自分が諦めそうになったとき、先輩のプリキュアたちがかけてくれた
「そう……だよね……進まなきゃ……」
ハミィを抱きかかえながら、響は立ち上がった。
「立ち止まってちゃ、何も始まらないんでしょ?!まっすぐ、前進あるのみだって、さっきみんなが言ってたじゃない!!……わたし、奏がいなくて、凄く心細かったけど……」
そう言いながら、響は涙をにじませながら、微笑みを浮かべた。
「みんながわたしの手を取って一緒に前に進んでくれたから、頑張れた!」
その言葉に、今度は奏の脳裏に、先輩プリキュアの言葉が蘇った。
『わたしが大変なとき、いつもブルームはわたしの手を取って、一緒に前に進んでくれた!!』
『わたしたちは自分のパートナーを、みんなを信じてる!!』
『たとえ目の前にいなく手も、お互いを想うことはできる!お互いを想うことができれば、気持ちはつながる!!』
『わたしたちは、離れていてもいつも一緒なの!!』
「……そうだった……気持ちがつながっていれば、離れていてもいつも一緒……みんながさっきそう教えてくれた!」
響と奏の言葉に、なぎさたちは自分たちが言ったことを思い出し、はっとなった。
ほんの少しでも、前に進む力が、自分たちにも残っている。それなら、自分たちがなんとかしなければ。
その意気込みが、先輩プリキュアたちに次々に伝わっていき。
「どこにいたって、わたしたちはみんな……ずっとずっと、ず~~~~~っと!友達です!!」
みんなの顔に笑顔が戻り、絶望の淵から戻ってきた。
同時に、プリキュアたちはブラックホールへと視線を向けていた。
「わたしたちの気持ちは、いつでも一緒!!」
「心がつながっていれば、怖いものなんて、なにもない!!」
「わたしたちは、今で着ることを精いっぱい頑張ります!」
「わたしたちの世界を、闇に呑みこませやしない!!」
「わたしたちは絶対に……」
『諦めない!!』
菖はその様子を見て、薄く笑みを浮かべた。
――ようやく覚悟が決まった、か……まったく、ちょっとばかり遅いぞ?みんな
正直なところ、菖はこれでつぼみたちが立ちあがらなかったら、本当に自分一人で飛びだしていくつもりだった。
だが、ほんの少し。砂粒一つ分くらいは、もしかしたら立ち直ってくれる可能性くらいあるのではないか、とどこか期待していたのだ。
「……どうしたんだい?菖。なんだか、ほっとしたような顔をしてるけど」
「うん?……あぁ、覚悟はできてるんだけど、やぱりみんなが立ちあがってくれたことにほっとしちゃってさ」
「……もしかしなくても、君、こうなることを期待してたのかい?」
「さぁ?どうだろう?」
「まったく……」
いつの間にか近づいてきていたコロンと、そんな問答をしていると、コロンは不意に黙ってしまった。
彼が何を想っているのか、なんとなく察したコロンは呆れたようなため息をついた。
だが、その表情はどこか寂しそうであった。
「なんだよ、その顔は……もう会えないってわけじゃないだろ?」
「けれど!!」
「人間の世界と妖精の世界はつながらないわけじゃない。きっと、
「それは……そうかもしれないけれど!それはあくまで物語や伝承のことであって、現実のことじゃ……」
「火のない所に煙は立たない。できないんじゃない、できた人間がいなかっただけなんじゃないのか?だったら、俺は俺たちの世界とお前たちの世界が、もう一度つながる可能性を信じる!」
そう言う菖の目尻からも、わずかながら光るものがあった。
菖とて、コロンたちとの別れが悲しいわけがない、寂しいわけがない。だが、それでも笑顔を浮かべることができるのは、もう一度、自分たちの世界がつながることを、再会できることを信じているからにほかならなかった。
「……じゃあな、友よ」
「あぁ……またいつか」
菖とコロンは互いの拳をぶつけあい、別れの挨拶を済ませた。
そして、すべてを吹っ切ったかのように、覚悟を秘めた表情になり、ブラックホールへと視線を向けた。
《馬鹿め!もう手遅れだ!!》
だが、ブラックホールは最後の希望であったプリズムフラワーを粉々に砕いてしまった。
その光景に、プリキュアたちは呆然としてしまった。
遅かったのか、誰もが思ったその時だった。
砕けたプリズムフラワーが、流星のように降り注ぎ、妖精たちが手にしていたミラクルライトに光が灯った。
妖精たちは光が灯ったミラクルライトを掲げた。
「プリキュアとセイバーに力を!!」
と一斉に願ったその瞬間、プリキュアたちとセイバーの足元に温かな光があふれだした。
その光につつまれ、プリキュアたちとセイバーは最強フォームへと変身した。
「わたしたちの最後の力!!」
『受けてみなさい!!』
プリキュアたちがブラックホールにむかってそう叫ぶと、ブラックホールは自身の闇の力を再び、地球に向けて解き放とうとした。
だが、それよりも一瞬早く、プリキュアたちが必殺技を放った。
「漲る勇気!」
「溢れる希望!」
「光輝く、絆とともに!!」
「「エキストリーム!」」
「ルミナリオ!!」
「精霊の光よ、生命の輝きよ!!」
「希望へ導け、二つの心!!」
「「プリキュア!スパイラルハート!スプラッシュ!!」」
「「「「「五つの光に勇気を乗せて!プリキュア!レインボーローズ!エクスプロージョン!!」」」」」
「邪悪な力を包みこむ、煌めく薔薇を咲かせましょう!ミルキィローズ!メタルブリザード!!」
「プリキュア!ラブサンシャイン!」
「エスポワールシャワー!」
「ヒーリングブレア!」
「「「フレッシュ!!」」」
「プリキュア!ハピネスハリケーン!!」
「「「「花よ、咲き誇れ!プリキュア!ハートキャッチ・オーケストラ!!」」」」
「俺のすべてで、悪しきを断つ!!ハートライト・レクイエム!!」
「「かけめぐれ!トーンのリング!!プリキュア!ミュージックロンド!!」」
全員の必殺技が、虹色の光となって空へと昇っていき、宇宙にいるブラックホールへと届いた。
だが、ブラックホールは自身の闇の力で、その光を全力で防いだ。
《すべての光を呑みこむ、このブラックホールの前では、お前たちなど無力だ!!》
「何があっても、わたしたちの心は暗闇に呑みこまれたりしないっ!!」
「どんな時も、わたしたちの心の光は、明日を目指して輝くのっ!!」
「たくさんの素敵な出会いが、大きな成長と、新しい旅立ちにつながっていく!!」
「わたしたちは決して立ち止まらない!たとえ、大きな困難にぶつかっても!」
「大好きなみんなと歩みたい!光輝く未来は、絶対に手放しません!!」
絶望の淵から立ちあがったプリキュアたちの、本心の言葉がそこにあった。
だが、彼女たちとは対となる存在であるブラックホールはそれを否定した。
《くだらんっ!たとえそれが叶ったとして、お前たちはもうバラバラなのだぞ?!》
「ハミィたち妖精とわたしたちは、お互いを想い合う心でつながっているの!」
「絶対に負けない!何があったってわたしたちは、まっすぐ自分たちの明日へと……進んでいくんだから!!」
メロディとリズムの言葉で、プリキュアたちの放つ光はより一層、強さを増した。
その光の強さに、ブラックホールは驚愕した。
《なにっ?!……そ、そんな……まさかあぁぁぁぁぁぁっ!!》
ブラックホールは悲鳴を上げながら、光の中へと消えていった。
ブラックホールが消滅すると、上空には青空が広がり、プリキュアたちも、セイバーも変身が解除され、元の姿に戻っていた。
周囲を見渡すが、そこに妖精たちの姿はなかった。
それがわかると、誰からとなく涙を流し始めた。
菖もまた、涙こそ流さなかったが、目を細め、どこか寂しいそうな表情で空を見上げていた。
すると、菖の背中と胸に飛びこんでくるものがあった。
「……ゆり、つぼみ……」
「ごめんなさい。菖……でも、いまはせめてこのまま……」
「……すみません、菖さん……でも、少しだけ、このままでいさせてください……」
飛びこんできたのは、ゆりとつぼみだった。
あれだけ啖呵を切ったのはいいが、いざ別れるとなると、やはり耐えられなかったようだ。
その気持ちがわかった菖は、そっとつぼみの頭をなで、回されてきたゆりの手に自分の手を重ねながら、二人の好きなようにさせていた。
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それから数日して、響たちは桜が咲き誇る丘の上で花見に来ていた。
だが、やはりまだハミィたちとの別れをひきずっているらしい響は、心ここにあらず、という状態だった。
「響っ!そっちいったよ~!!」
「へ?……ふばっ?!」
えりかの呼びかけでようやく我に帰った響だったが、飛んできたバレーボールを受け止めることができず、顔面キャッチしてしまい、尻餅をついてしまった。
「大丈夫ですかっ?!」
「どーしたのよ?ボーっとしちゃって」
かけよってきたつぼみとえりかがそう問いかけると、少し寂しそうな顔で響は、ごめん、と謝ってきた。
「ハミィたち、今頃、どうしてるかなって考えちゃって」
「それは言わない約束でしょ!」
「大丈夫!きっと楽しくやってるよ!」
「そうそう!」
「わたしたちみたいに!」
「「「ね~っ!」」」
ある意味、かなりお気楽な返答ではあったが、その表情の奥に悲しみが隠しきれていなかった。
やはり、まだ少しだけ、別れをひきずっているようだ。
ふと、空を見ると、大きな虹がかかっていた。
「雨も降ってないのに……きれい……」
「はい……」
虹の美しさに見とれてながら、ゆりとつぼみが呟くと、菖は穏やかな顔つきで、そういえば、と呟いた。
「……虹は古来、現世と別世界をつなぐ橋って考えられていたんだっけな」
「じゃあ、もしかして……」
「まさか、そんなこと……」
もしかしたら、妖精たちの世界と自分たちの世界がいま、つながったのかもしれない。
だが、そんなことはありえない、そう思った矢先だった。
空から突然、何かがこちらに落ちてきたのだ。
「み、見て!」
「あれって、もしかして!!」
落ちてきたもの、それが妖精たちであることがわかると、響たちの顔に笑顔が浮かんだ。
ハミィにミップル、メップル。ポルンにルルン、チョッピとフラッピ、ココ、ナッツ、シロップにミルク。タルト、シフォン。そして。
「シプレ!」
「つぼみ!会いたかったですぅ!」
つぼみのパートナー、シプレも一緒に戻ってきた。
シプレがつぼみの胸に飛びこんでくると、つぼみはぎゅっとシプレを抱きしめた。
「でも、どうして?」
「心の大樹に虹の種が生まれて、新しいプリズムフラワーが咲いたんですぅ!」
そう言われて、菖は初めて、自分の中に温かな力が流れ込んできていることに気づいた。
どうやら、心の大樹もこの世界に戻ってくることができたようだ。
「それじゃあ!」
「これからは、ずっと一緒ですぅ!!」
妖精たちとまた一緒に過ごすことができる。
それを知ったプリキュアたちの顔には、明るい笑顔が輝いていた。