ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
喫茶店のネタがわからない人は、渡瀬草一郎さんの作品を読んでみよう!(私が好きな作家さんの一人です)
ツインコロネの少女から逃げるように走り去っていくあゆみを、湊も追いかけたが、人ごみの中に消えてしまい、すぐに見失ってしまった。
さすがに人ごみの中を、手掛かりなしに人を探す効率の悪さを知っている湊は、ため息をついてそれ以上の探索を諦めて、街を散策することにした。
近くまできたので中華街に立ち寄ると、湊はふと一軒の喫茶店が目に入った。
店の名前は、「点心華心」というのだろう、出入り口の真上にその四文字が記されていた。
――ちょっと冒険してみるかな
あゆみはこの街は初めて、というが、実のところ、湊もあまりこの街に明るいわけではない。
実のところ、湊もここ最近になって引っ越してきた側の人間だ。
だが、本人の生来の性格ゆえか、すぐに馴染むことができ、あまり寂しさを感じることはなかったのだが。
湊はひとまず、冒険してみることにして、店に入った。
すると。
「いらっしゃいませ!」
水色のような、翡翠色のような、とにかく変わった髪の毛をしたメイドさんが出迎えてきた。
ここはメイド喫茶じゃなかったはずだけどな、と心の中で突っ込みながら、湊は
「こちら、メニューになります。お決まりになりましたら、お呼びください」
流れるようにメニューを手渡すと、メイドさんはそのまま下がっていった。
どうやら、お決まりのセリフを言わないあたり、ここはメイド喫茶ではなく、本当の意味での喫茶店のようだ。
そこに謎の安堵を覚えた湊は、メニューを開き、何があるのか、確認し始めた。
その瞬間。
「ちょわっ??!!」
隣の席から男性の悲鳴が聞こえてきた。
反射的にそちらを見ると、そこには先ほどのウェイトレスと同じく、メイド服をまとった金髪の女性に抱き着かれている青年の姿があった。
「すんすん……」
「ファ、ファウナさん?!お願いだから、匂い嗅ぐのはやめてくれないかな?!」
「ちょ、ちょっとファウナ!また菖くんに抱き着いて!!」
「だっていい匂いなんだもん♪」
「だからって抱き着かない!!」
悲鳴を聞きつけたのか、案内してくれたメイドさんが飛んできて、ファウナ、という店員に注意をした。
どうやら、彼女たちは姉妹らしい。背格好も似ているところから、おそらく双子なのではないか、と推測できた。
なお、ファウナと呼ばれたウェイトレスに抱き着かれている青年の目の前には、眼鏡をかけているクールビューティーな女性が白い目をしていた。
「……よかったわね、菖。かわいいメイドさんに抱き着かれて匂いも嗅がれて」
「……そういうゆりさんも、今度はあぁたがターゲットにされとるわよ?」
「え?……きゃぁっ??!!」
青年からゆりと呼ばれた女性がきょとんとしていると、ファウナが背後から彼女に抱き着き、つむじあたりでしきりに匂いを嗅いでいた。
「ん~♪この人もいい匂い~……百合の花みたい」
「……だとさ、ゆり」
「……なんだか、すごく気恥ずかしいのだけれど……菖、どうにかできないの?」
「無理」
「ご、ごめんなさい!……こら、ファウナ!行くわよ!!」
「ん~……」
菖だけでなく、ゆりにまで抱き着いて匂いを嗅ぐという、一つ違わなくとも、間違いなく変態と言わざるをえない行為をしていたファウナは、姉に襟首をつかまれ、ずるずると店の奥へとひきずられていった。
「……少年、君もこの店を定期的に利用するなら、あの店員さんに気を付けろ」
「……あ、はい……」
菖から少年と呼ばれた湊は、ただただ呆然としながらそう返すしかなかった。