ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
けど、実際、そうなんだもんなぁ……
という想いを湊くんに代弁してもらいました
今回はちと長めです(たぶん、あと二回くらいで終わるかなぁ
フーちゃんが大きくなり、おしゃべりができるようになったことに喜んだあゆみは、その日のうちに湊を誘い、フーちゃんと三人で街に出かけることにした。
なお、大きくなったフーちゃんと初対面の湊は、朝方のあゆみ同様、目を丸くしたことは言うまでもない。
だが、姿を自由に変化させることができることを見ていたため、すんなりと受け入れることができ、すぐに打ち解けることができた。
三人は午前中、街を散策して回ったが、午後になると湊は用事を片付けるために一次離脱したため、あゆみとフーちゃんは湊の用事が片付くまで、ゲームで遊ぶことにした。
最近になって販売された、リモコンを使った体感ゲームなのだが、フーちゃんの動きが想像以上に切れが良く、あゆみはあと一歩というところで負けてしまった。
「あ~ぁ、負けちゃった……フーちゃん、上手だね」
「あゆみ、悲しい?」
「え?」
「あゆみ、負けた。悲しい?」
どうやら、あゆみがフーちゃんに負けたことを悲しいと思っているか、気にしているようだ。
が、あゆみはにっこりと笑いながら、悲しくないよ、と返した。
その笑顔にほっとしたのか、フーちゃんも笑顔になったが、何かに気づいたのか、フーちゃんは一瞬で姿を変えて、あゆみの腕に巻きついた。
ふと、リビングの方へ視線を向けると、そこには眉間にしわを寄せている母親の姿があった。
あゆみの母は、まっすぐにテレビの方へむかっていくと、いきなりゲームの主電源を落とした。
「なにするの?!」
「ゲームは一時間まで!そういう約束でしょ?もう二時間以上やってるじゃない」
「だからっていきなりリセットするなんてひどいよ!」
「約束を守らないほうが悪いの」
いきなりゲームの電源を落とされたことに抗議するあゆみだったが、母親はまったく聞く耳を持たなかった。
自分の話をまったく聞いてくれない。そう思ったあゆみは、思わず走りだし、飛びだしてしまった。
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しばらくの間、無我夢中で走っていくと、いつの間にか湾岸の公園に来ていた。
海が見える休憩所まで歩いていき、ため息をついた。
「もう、いきなりリセットするなんてひどすぎるよ!!」
「……あゆみ、お母さん、嫌い?」
「嫌いだよ!だって……わたしの気持ち、ちっともわかってないんだもん……本当は、学校だって変わりたくなかったのに……」
あゆみは悲しそうなまなざしで海の方を見ながら、そう答えた。
フーちゃんは続けざまに、もう一つ、質問をしてきた。
「学校、嫌い?」
「嫌いだよ!知らない人ばっかりのこの街も!!……あ~あ、全部、なくなっちゃえばいいのになぁ……」
「それって、俺やフーちゃんと遊んだ思い出もなかったことにしたいってことか?」
あゆみのつぶやきに、少し残念そうな、悲しそうな声が聞こえてきた。
声がした方へ視線を向けると、そこには若干、息を切らしている湊の姿があった。
「み、未来くん?!ど、どうし……」
「どうしてここに、か?なんか坂上が血相変えて走ってくのが見えたから、心配になって追いかけてきたんだよ」
ふぅ、とため息をついて湊はあゆみに近づいていき、近くにあったベンチに腰かけた。
「心配、してくれたの?」
「ん?そりゃするだろ?友達なんだから……少なくとも、俺はそのつもりだぞ?」
そう言われて、あゆみは湊に声を掛けられてからのことを思い出した。
たしかに、楽しかったし、うれしかった。
知り合いが誰もいないこの街に来て、なかなか勇気を出せなくて。そんな自分を見つけてくれたことが、声をかけてくれたことが。
少なくとも、あゆみにとっても湊は、フーちゃんと同じでこの街に来て初めてできた友達だった。
「だからさ……知らない人ばっかり、なんて言うなよ。寂しいじゃんか」
「……ごめんなさい……」
あゆみが申し訳なさそうに謝罪すると、湊はにっこりと笑いながら、大丈夫、と返した。
許してくれた、そう感じたあゆみはほっと胸をなでおろした。
「……全部、なくなる……リセット……」
だが、フーちゃんだけはあゆみの言葉が離れなかったらしく、ぶつぶつとなにかを呟いていた。
「あれ?……あ、やっぱり!」
「え?」
「ん??」
突然響いてきた声に、あゆみと湊は背後を振り返った。
そこには、いつぞやのツインコロネの女の子がいた。
「また会えたね!ほら、赤レンガ倉庫のところで」
「あぁ、あの時の……」
女の子があゆみにそう話すと、女の子は満面の笑みで近づいてきた。
「あたし、星空みゆき!みゆきって呼んでね!!えっと、あなたは……」
「え?わ、わたしは、坂上あゆみ、だけど……」
「俺は未来湊、よろしく。星空さん」
「うん、よろしく!!二人は、このあたりに住んでるの?」
みゆきの質問に答えようとした瞬間、みゆきの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
そちらへ視線を向けると、どうやら、みゆきの友達らしい四人の少女たちがかけてきていた。
四人と合流すると、みゆきは彼女たちと和気あいあいと会話を始めた。
その様子を見ていたあゆみは、たくさんの友達がいるみゆきが、少し羨ましいと思ってしまった。
それに比べて、自分の友達は、フーちゃんと湊だけ。
「……なんでかな……」
「坂上?」
静かにその場から立ち去って行こうとするあゆみの背中を、湊は追いかけた。
だが、あゆみが背中にかばっていたフーちゃんだけは違った。
「あゆみ、悲しませた!!」
フーちゃんがそう叫ぶと、あゆみの背中から飛びだしていった。
「あゆみ、悲しませた!敵!!」
「フーちゃん!!」
「どうしたんだ、フーちゃん?!」
二人の呼びかけに答えることなく、フーちゃんはみゆきたちに攻撃を仕掛けてきた。
突然の襲撃に、みゆきたちは驚いていたが、近くにいたタヌキのような白いぬいぐるみが、フュージョンクル、と叫ぶと、みゆきたちはポケットからパクトを取りだした。
『Ready?』
「「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」」
『Go!Go, Go!!Let's Go!!』
「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!!」
「太陽燦々、熱血パワー!キュアサニー!!」
「ピカピカ、ピカリン!じゃんけん、ぽん!!キュアピース!!」
「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチ!!」
「深々と降り積もる、清き心!キュアビューティー!!」
「「「「「五つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!!」」」」」
突然のプリキュアの登場と、彼女たちがフーちゃんと戦い始めたことに、あゆみも湊も何が何だかわけがわからなくなっていった。
なぜ、突然、フーちゃんが暴れ始めたのか、なぜ、みゆきたちが、プリキュアがフーちゃんと戦うのか。
わからないことが多すぎる。
だが、混乱していても、事態は徐々に悪化していった。
フーちゃんと戦闘に入ったハッピーたちが次々と必殺技を繰り出していったが、その全てをフーちゃんは吸収してしまった。
「わたしたちの攻撃が、全然きかない……」
「逆にどんどん強くなっていく……」
「どうしよう」
自分たちの攻撃が一切通用しない、その事実にどうすればいいのかわからなくなったスマイルプリキュアたちだったが、突如、空から声が聞こえてきた。
「あきらめちゃダメ!!」
声が響くと、ハッピーたちの前に四人の少女たちが舞い降りてきた。
彼女たちのことを、唯一、ハッピーだけが知っていた。
「メロディ……来てくれたんだ!!」
「挨拶はあと!みんなで力を合わせて、フュージョンを倒すよ!!」
フュージョンを、フーちゃんを倒す。
その言葉に、近くまで来ていた湊とあゆみは驚きを隠せなかった。
――どうして?どうしてプリキュアが、フーちゃんを?!
――なんでったってプリキュアがフーちゃんを……いや、そんなことより!
困惑するあゆみと湊だったが、湊の中ではすでに一つの結論が出ていた。
フーちゃんが、友達が攻撃されている。
たとえ、プリキュアが相手であっても、友達を攻撃されて黙っていられるほど、湊はお人好しではない。
あゆみと湊は走りだし、フーちゃんとプリキュアたちの間に割って入った。
「やめろ!」
「もうやめて!これ以上、フーちゃんをいじめないで!!お願い……」
両手を広げ、仁王立ちするあゆみと、人を殺せるのではないかと思えるくらい冷たく鋭い視線を向けてくる湊の姿に、プリキュアたちは動きを止めた。
フュージョン、いや、フーちゃんもまた、突然、割りこんできた友達に驚き、動きを止めた。
「いじめって……そんなつもりじゃ」
紫色の髪をした青い衣裳のプリキュア――キュアビートがあゆみの言葉に反論するが、あゆみは聞く耳を持たなかった。
「わたしの、わたしたちの大切な友達をこれ以上、傷つけないで!!」
「たとえどんな事情があろうと、相手がプリキュアだろうと、俺と
あゆみの叫びが届いたのか、フーちゃんの姿は徐々に縮んでいった。
あゆみが元の姿に戻ったフーちゃんを抱きしめると、フーちゃんはようやく、正気に戻ったらしい。
「あゆみ……湊……」
あゆみに抱きしめられながら、フーちゃんは自分の友達の名前を呼んだ。
だが、プリキュアたちがかけてきた言葉は、冷たいものだった。
「あなたたち、それが何なのか、知っているの?この前、街を襲った怪物……フュージョンの一部なのよ、それは」
「フュージョンをこちらへ渡して!街にも、そしてあなたたちにも危険が及ぶかもしれない!!」
プリキュアたちからすれば、あゆみと湊を思ってのことなのだろう。
たしかに、二人とも先日の事件は知っている。
もしかしたら、プリキュアたちが言っていることは本当なのかもしれない。けれど、それでも。
「フーちゃんはわたしの……わたしと
「待って!!」
フーちゃんを抱きかかえたまま、その場から走り去ろうとするあゆみを、ハッピーが止めようとした。
だが。
「せやぁっ!!」
鋭い気迫とともに、衝撃がハッピーを襲った。
そこには、掌底を突き出している湊の姿があった。
男の子とはいえ、プリキュアを吹き飛ばしたその膂力に驚きを隠せないハッピーだったが、彼の口から出てきた言葉に、プリキュアたちの動きは止まった。
「お前らにとっては敵でも、あゆみにとってはようやくできた友達なんだ。その友達を、危険だからってほいほい渡せるわけないだろ‼︎それとも何か?プリキュアってのは世界を守るためなら、誰かの友達を平気で犠牲にするような連中なのかよ?!」
その言葉に、スマイル組も、スイート組も反論できなかった。
答えが出せない彼女たちに背を向け、湊はあゆみとフーちゃんを追いかけ、走りだした。