ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
とはいえ、あまり出番はないのですが(苦笑
あぁ、それから、あと二話くらいで終わると言ったな……切りがいいからEp10まで作ろうと思います(オイ!!
というわけで、もうちょっとかかります。お付き合いください(土下座
あゆみがプリキュアたちとともに、湊が単身で塔へ向かっている道中は、すでにフュージョンの欠片であふれていた。
欠片たちは、自分たちの敵であるプリキュアと、リセットの対象であるはずの人間がいることで、より攻撃的になってしまい、その姿を見つけただけで襲いかかってきた。
次々に襲ってくるフュージョンからあゆみを守るため、プリキュアたちはフュージョンを迎え撃った。
「あゆみちゃん、大丈夫?!……あゆみちゃん?」
ハッピーがあゆみに問いかけると、あゆみの顔はなぜか沈んでいた。
「フーちゃん、もうわたしのこと、忘れちゃったのかな……」
「そんなことないよ!!」
「まだ離れているから、あなたの姿が見えてないだけだと思います!近くまで行けば、きっとあなただってわかるはずです!!」
不安になっているあゆみをハッピーとビューティーが励ますが、それでもやはり不安はぬぐえないらしい。
「……わたし、行けるかな……」
不安そうにしているあゆみに、今度はピースが話しかけてきた。
「不安になる気持ち、すごくわかるなぁ……わたしも怖くて、よく泣いちゃうし……」
「え?……プリキュア、なのに?」
ピースの言葉に、あゆみがそう問い返すとサニーが、当たり前やんか、と笑いながら返した。
「プリキュアだからって、
「ぷぷっ……サニーが普通の女の子って……」
「失礼やな!それ
「誰がオカンよ!!」
サニーとマーチの漫才を見ているうちに、あゆみの顔には自然と笑顔が浮かんだ。
なお、この間、ピースがフュージョンの欠片に捕まり、メロディやリズムたちに救出され、何度も頭を下げていたのだが、幸いにしてその光景を見ているものは誰もいなかった。
あゆみがようやく笑顔になり、不安が吹き飛んだことに一安心したプリキュアたちだったが、フュージョンの勢いが収まることはなく、むしろ激しさを増していた。
そして、その激しさの中で、ついにフュージョンはあゆみにまでその牙を向け始めた。
あゆみとプリキュアたちの背後に、突然、犬型のフュージョンが出現すると、フュージョンはまっすぐにあゆみの方へと走っていった。
それに気づいたプリキュアたちは、あゆみの元へ向かおうとしたが、他のフュージョンに邪魔されてしまった。
やられる。
そう思い、身をすくませた瞬間だった。
「せやぁっ!!」
突如、鋭い気迫と一緒に、角材が飛んできて、フュージョンに突き刺さった。
角材が飛んできた方をみると、そこには肩で息をしている湊の姿があった。
「湊くん!」
「逃げろ、あゆみ!!」
湊が無事だったことに安心すると、湊が険しい顔でそう叫んだ。
振り返ると、そこにはもう一体、犬の姿をしたフュージョンが飛び掛かろうとしていた。
「伏せろっ!!」
突然、聞こえてきた声に、思わずあゆみは身を伏せた。
すると、誰かがあゆみを飛び越える気配がした。
「獅子戦吼っ!!」
轟っ、とライオンが吼えるような音が響くと同時に、あゆみの髪を風がなでた。
一体、何が起きたのか、恐る恐る顔を上げてみると、そこには湊より少し背の高い、青いシャツを着た青年が立っていた。
「……ふぅ……」
「間に合ったようね」
「よかったよかった~」
青年が深く息を吐くと、背後から大人のような落ち付いた声と、自分と同い年くらいの女の子の声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには四人の人影があった。
その姿を見たメロディとリズムは、彼女たちの名前を呼んだ。
「つぼみちゃん!」
「えりか!」
どうやら、メロディたちの知っている子たちらしい。
彼女たちの様子からそれを察したあゆみと湊だったが、その正体をすぐに知ることとなった。
「変身よ!」
「はいっ!」
「やるっしゅ!!」
長身の女性の合図で、濃い桃色の髪の女の子と青い髪の女の子が何かを取りだして答えた。
すると、ぬいぐるのような白い動物が四体出てきた。
「「「「プリキュアの種!いくですぅ/ですっ/でしゅっ/ぞ!!」」」」
「「「「「プリキュア!オープンマイハート!」」」」」
「大地に咲く、一輪の花!キュアブロッサム!!」
「海風に揺れる、一輪の花!キュアマリン!!」
「陽の光浴びる、一輪の花!キュアサンシャイン!!」
「月光に冴える、一輪の花!キュアムーンライト!!」
「「「「ハートキャッチ!プリキュア!!」」」」
目の前でブロッサムたちの変身を目の当たりにした湊とあゆみは、驚愕で目を丸くしていた。
だが、続けざまに。
「「「「チェインジ!プリキュア!ビートアップ!!」」」」
「ピンクのハートは愛ある印!もぎたてフレッシュ!キュアピーチ!!」
「ブルーのハートは希望の印!摘みたてフレッシュ!キュアベリー!!」
「イエローハートは祈りの印!採れたてフレッシュ!キュアパイン!!」
「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ!キュアパッション!!」
「「「「レッツ!プリキュア!!」」」」
かっこよくポーズを決め、名乗ったのだが。
「……よかった~……間に合った~!!」
ピーチがほっとしたようにため息をついていた。
その様子にベリーが、呆れたといわんばかりのため息をついていた。
「ピーチが道を間違えるから……」
「だってぇ~……」
ベリーの文句に、ピーチが反論しようとすると、マリンがそれをなだめながら近づいてきた。
「間違えるよね、道って」
「「ね~♪」」
「……その話はいいだろ……」
二人同時にそんなことを言っていると、青いシャツの青年が呆れたとため息をついた。
「あれ?菖さん。まだ変身してなかったの??」
「珍しいですね?菖さんが乗り遅れるなんて」
「……誰のせいだと思ってやがる……」
パインとマリンの反応に、菖と呼ばれた青年は、半眼になってマリンを睨みつけた。
だが、いつまでもそうしているわけにもいかないことはわかっていたらしい。
「心力解放!ユグドセイバー、スタートアップ!!」
左手を握りしめ、胸の前にかざした菖は、高らかにそう叫んだ。
すると、菖の左手の甲に紋章のようなものが浮かびあがり、菖を光で包みこんだ。
光が収まると、不思議な文様が描かれた白いマントをまとった菖の姿があった。
湊は菖のその姿が、先日、プリキュアたちと一緒にフュージョンと戦っていた、もう一人の戦士の姿と同じであることに気づいた。
「大樹の騎士!ユグドセイバー!!」
セイバーが高らかに名乗ると、素早く剣を引き抜き、逆手に構えた。
「
その言葉を唱えた瞬間、セイバーは青い光に包まれた。
光が収まると、青い弓を手にしたセイバーが姿を現した。
セイバーが弓を構え、矢を番えることなく弦を引くと、ブロッサムたちも自分の武器を取り出し、ハッピーたちのほうへ視線を向けた。
「ここは、わたしたちに任せてください!」
「あっ!ダメ!!フュージョンに技は通じないよ!」
「うん!わかってる!」
「だからやるのよ」
「え?」
サンシャインとムーンライトの言葉が、何を意図しているのか図りかねたハッピーだったが、その言葉の意味をすぐに理解することになった。
「「「プリキュア!ピンク/ブルー/シルバー/フォルテウェーブ!!」」」
「プリキュア!ゴールドフォルテ・バースト!!」
「貫け!
ハートキャッチ組とセイバーの必殺技が、それぞれフュージョンに向かっていき、吹き飛ばした。
だが、案の定、フュージョンはより大きな姿になってブロッサムたちに襲い掛かってきた。
「力を飲み込むなら、より強い力の方へ集まる!!」
「フュージョンは俺たちの方へ誘導する!!」
「ここは、わたしたちに任せて!!」
引き寄せられてきたフュージョンと追いかけっこをしながら、ブロッサムがハッピーたちにそう叫ぶと、ピーチたちも自分たちの必殺技を放ち、他のフュージョンたちを引きつけた。
ブロッサムたちとピーチたちのおかげでいくつかのフュージョンが引き寄せられたため、少し楽になったものの、それでもまだ街にはフュージョンがあふれていた。
そしてついに、フュージョンが大きな行動に出た。
なんと、港に停泊していた船を持ち上げ、ジェットコースターのような線路の上に乗せ始めたのだ。
それを見れば、フュージョンが何をしようとしているのか理解することは簡単だった。
スイート組とピース以外のスマイル組は、フュージョンの思惑を阻止しようと、線路の上に乗り、突進してきた船を止めた。
だが、彼女たちは忘れていた。
線路からフュージョンの一部が伸び、船を止めている邪魔者たちをはじき飛ばした。
支えを失った船は、再び線路を走りだし、猛スピードで街に向かっていった。
それを見ていた妖精たちは、ミラクルライトの明かりを灯しながら、必死にライトを振り、他のプリキュアを呼んでいた。
『プリキュアーーーっ!!こっちだよ/や/です/でしゅ/ニャーーーーーっ!!』
その瞬間、ライトがひと際まぶしい光を放った。
すると、まるでライトの光に導かれるように、三人のプリキュアが姿を現した。
「ブラック!ホワイト!ルミナス!!」
三人に気づいたメロディが彼女たちの名前を呼ぶと、三人はものすごい勢いで向かってきた船を受け止めると、再びフュージョンが線路から伸びて、邪魔者を吹き飛ばそうとした。
だが、そのフュージョンは遅れてやってきた二人のプリキュアが作りあげた光の盾にはじかれてしまった。
そして続けざまに、上空から六人のプリキュアたちが下りてきた。
「ブルーム!イーグレット!!」
「ドリームたちも!!」
フュージョンはいきなり現れたプリキュアたちに意識を向け、線路を作っていた体をすべて人型に戻した。
その瞬間を狙い、パッションがアカルンの力を使い、船を再び海上へテレポートさせた。
一方、ハッピーたちは集まってきたプリキュアたちの数に、感嘆の声を上げていた。
「プリキュアって……こんなにいたの?!」
「一、二、三……数えきれないよ!!」
「わたしたちを含めて、総勢二十八名です!」
サニーとマーチが驚愕の声を上げていると、ビューティーがいつの間に数えたのか、冷静な声で返してきた。
なお、その中にセイバーは含まれていないようだ。
「プリキュアのみんなーっ!このあゆみちゃんと、湊くんがあそこまで行きたいって言ってるの!力を貸して!!」
ハッピーが先輩プリキュアたちにそう頼むと、オッケー、と快い返事が返ってきた。
あゆみがその光景に感動している中、湊はただ一人、セイバーと向かいあっていた。
「まさか、喫茶店でメイドさんに匂い嗅がれてたお兄さんが、もう一人の戦士だったなんて……」
「ははは……それは言ってくれるな……」
湊の言葉に、セイバーが乾いた笑みを浮かべて返したが、その表情はすぐに真剣なものに変わった。
「で?君はどうしてあそこを目指す?」
「……あゆみを、友達を守りたい。ただそれだけです」
セイバーの問いかけに、湊はあまり時間をかけずに返した。
その答えにセイバーが納得したのかどうかはわからない。だが、少なくとも、悪い印象は持たなかったようだ。
そういうことなら、とセイバーはどこかから一本の剣のようなものを取り出し、湊に手渡した。
「え??」
「守りたいんだろ?だったら、こいつを持っていきな。素手より、幾分かましだろうから」
「……ありがとう!!」
湊は素直にお礼をいうと、ハッピーたちの元へと戻っていった。
その背中を、セイバーはどこか優しい、しかし強い光を宿したまなざしで見守っていた。
このとき、ここにいるメンバー全員は、まさか自分たちが奇跡の立会人になるとは、予想すらしていなかった。