ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
いやはや……長かった……
湊の設定については、後でまた個別に出します
闇の中に現れた光の道を、エコーは一人で歩いていた。
その先にはエコーの大切な友達が、フーちゃんが待っていた。
エコーはゆっくりとフーちゃんに歩み寄り、声をかけた。
「フーちゃん、わかる?あゆみだよ」
「あゆみ……」
「フーちゃん、わたしのためにごめんね……でも、もういいの」
エコーはフーちゃんにそう伝えたが、フーちゃんは納得していないようだった。
「まだ、リセットしてない」
「違うの!悪いのはわたしなの!!……みんなに自分の気持ちをちゃんと伝えないで、学校や町のせいにして……」
「フーちゃん、あゆみの、あゆみと湊の友達。友達の望み、叶える」
謝っているエコーを励ますように、フーちゃんがそう告げると、エコーはフーちゃんに笑顔を向け、もう叶えてくれた、と伝えた。
「フーちゃん、わたしと湊くんと一緒におしゃべりしてくれたよね……一緒に遊んで、ずっと、一緒にいてくれた……わたしね、そんな友達が欲しかったの。それが、わたしの望みなの」
エコーは、フーちゃんに笑顔をむけて、自分の本当の気持ちを、フーちゃんに伝えたいことを口にした。
「フーちゃん、友達になってくれて、ありがとう」
「あゆみ、もう大丈夫か?怖くないか?寂しくないか?」
「大丈夫、だってわたしにはフーちゃんと湊くんがいるから……フーちゃん、大好き!!」
エコーがフーちゃんを抱きしめると、フーちゃんの顔に笑顔が浮かんだ。
その瞬間、フーちゃんの体は光を放ち、周囲にあった黒い霧を退けていった。
街中に広がっていた闇が浄化されると、エコーの変身は解けてしまった。
これですべて終わった。そう思った瞬間。
「リセット……リセット……」
背後から、おどろおどろしい声が響いてきた。
振り返ると、そこには黒いフュージョンがまるで巨大な噴水のように沸きあがっていた。
どうやら、フーちゃんとは別の意思を持ったフュージョンの塊が残っていたようだ。
「リセットはしない。あゆみの望みは、叶っている」
目の前に立ちふさがっているものと同じ存在であるフーちゃんがそう説得するが、黒いフュージョンはまるで聞く耳を持たず、あゆみとフーちゃんに襲いかかろうとしてきた。
だが。
「させるかぁ!!」
雄叫びとともに、あゆみとフーちゃんの目の前にアステアが降り立ち、拳をフュージョンにむかって突き出した。
アステアの拳から放たれた光に阻まれ、フュージョンはそれ以上、前に進むことができなかった。
だが、それはアステアにかなりの負担を強いることでもあった。
その証拠に、ピキリ、と鎧にひびが入り、崩壊が始まっていた。
「アステア!!」
あゆみはフーちゃんを抱きかかえたまま、悲鳴を上げた。
アステアは振り返ることなく、あゆみたちをかばうように立ち続けていた。
その胸には、プリキュアに負けないほど強い『守りたい』という想いがあった。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
兜が半分以上割れて、その素顔が見え始めている状態のなか、アステアが雄叫びを上げると、
すると、フーちゃんの体が光の粒に変わり、ハッピーたちとアステアの方へと流れていった。
《アステア、プリキュア……あゆみを守って!!》
フーちゃんの切実な想いが、ハッピーたちとアステアに伝わってきた。
その想いに答えるように、ハッピーたちは光の出力を上げた。
「ハッピーエンドを、邪魔しちゃ、だめーーーーーーーっ!!」
ハッピーが叫ぶと、光はより強くなり、フュージョンを完全に飲みこんだ。
同時に、アステアの鎧もすべて砕け散り、変身が強制解除された。
幸い、湊にけがはなかったらしい。
満面の笑みを浮かべて、あゆみの方へ振り向き、サムズアップを向けていた。
あゆみは湊に何もなかったことに安堵し、微笑みをを浮かべたが、すぐにフーちゃんの姿がないことに気づいた。
「フーちゃん?」
あゆみがフーちゃんに呼びかけると、どこからともなく、フーちゃんの声が聞こえてきた。
《フーちゃんはあゆみと湊が住むこの街にいる……ずっと、二人の傍にいる……》
「……フーちゃん……ありがとう……」
「ありがとう、フーちゃん」
それは、フーちゃんが消えるということでもあるのだが、あゆみと湊は、別れの言葉ではなく、感謝をフーちゃんに送った。
それを、ハッピーはどこか寂しそうな顔で見守っていた。
----------------------------
それから数日後。
あゆみは徐々にクラスに溶け込んでいき、湊と一緒に過ごす時間が少しだけ減った。
だが、登下校のときは一緒にいるし、休日に時間が合えばいまも一緒に遊びに行くため、二人とも寂しさはなかった。
そして、とある日曜日。
湊はあゆみの部屋のインターホンを押していた。
「はーい……あら、未来くん。いらっしゃい!」
「こんにちは、おばさん。あy……娘さんは」
「あ、おはよう!湊くん!!ごめん、もう少し待ってて!!」
玄関先に出てきたあゆみは、湊の姿を見つけるなり、慌てた様子で髪を整え、ぱたぱたと準備をしていた。
どうやら、この日は一緒に出かけるようだ。
宣言通り、少しだけ待っていると、準備が完了したあゆみは靴を履いて、玄関から出てきた。
「お母さん、行ってきます!!」
「いってらっしゃい、二人とも」
母親に見送られた二人は、マンションを出ると、湾岸公園の方へとむかっていった。
そこには、つい先日、友達になったばかりの女の子たちと、一人の男の子が待っていた。
彼女たちの姿を見つけると、湊とあゆみは同時に駆け出し、彼女たちのもとへとむかっていった。
あゆみのその顔には、もう、寂しそうな影はなく、愛らしい満開の笑顔が浮かんでいた。