ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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はい、というわけで、最終話です
いやはや……長かった……
湊の設定については、後でまた個別に出します


未来のともだち~Ep10:あゆみの本当の気持ち~

闇の中に現れた光の道を、エコーは一人で歩いていた。

その先にはエコーの大切な友達が、フーちゃんが待っていた。

エコーはゆっくりとフーちゃんに歩み寄り、声をかけた。

「フーちゃん、わかる?あゆみだよ」

「あゆみ……」

「フーちゃん、わたしのためにごめんね……でも、もういいの」

エコーはフーちゃんにそう伝えたが、フーちゃんは納得していないようだった。

「まだ、リセットしてない」

「違うの!悪いのはわたしなの!!……みんなに自分の気持ちをちゃんと伝えないで、学校や町のせいにして……」

「フーちゃん、あゆみの、あゆみと湊の友達。友達の望み、叶える」

謝っているエコーを励ますように、フーちゃんがそう告げると、エコーはフーちゃんに笑顔を向け、もう叶えてくれた、と伝えた。

「フーちゃん、わたしと湊くんと一緒におしゃべりしてくれたよね……一緒に遊んで、ずっと、一緒にいてくれた……わたしね、そんな友達が欲しかったの。それが、わたしの望みなの」

エコーは、フーちゃんに笑顔をむけて、自分の本当の気持ちを、フーちゃんに伝えたいことを口にした。

「フーちゃん、友達になってくれて、ありがとう」

「あゆみ、もう大丈夫か?怖くないか?寂しくないか?」

「大丈夫、だってわたしにはフーちゃんと湊くんがいるから……フーちゃん、大好き!!」

エコーがフーちゃんを抱きしめると、フーちゃんの顔に笑顔が浮かんだ。

その瞬間、フーちゃんの体は光を放ち、周囲にあった黒い霧を退けていった。

街中に広がっていた闇が浄化されると、エコーの変身は解けてしまった。

これですべて終わった。そう思った瞬間。

「リセット……リセット……」

背後から、おどろおどろしい声が響いてきた。

振り返ると、そこには黒いフュージョンがまるで巨大な噴水のように沸きあがっていた。

どうやら、フーちゃんとは別の意思を持ったフュージョンの塊が残っていたようだ。

「リセットはしない。あゆみの望みは、叶っている」

目の前に立ちふさがっているものと同じ存在であるフーちゃんがそう説得するが、黒いフュージョンはまるで聞く耳を持たず、あゆみとフーちゃんに襲いかかろうとしてきた。

だが。

「させるかぁ!!」

雄叫びとともに、あゆみとフーちゃんの目の前にアステアが降り立ち、拳をフュージョンにむかって突き出した。

アステアの拳から放たれた光に阻まれ、フュージョンはそれ以上、前に進むことができなかった。

だが、それはアステアにかなりの負担を強いることでもあった。

その証拠に、ピキリ、と鎧にひびが入り、崩壊が始まっていた。

「アステア!!」

あゆみはフーちゃんを抱きかかえたまま、悲鳴を上げた。

アステアは振り返ることなく、あゆみたちをかばうように立ち続けていた。

その胸には、プリキュアに負けないほど強い『守りたい』という想いがあった。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

兜が半分以上割れて、その素顔が見え始めている状態のなか、アステアが雄叫びを上げると、ハッピーたち(スマイル組)が駆けつけ、浄化の光をフュージョンに向けた。

すると、フーちゃんの体が光の粒に変わり、ハッピーたちとアステアの方へと流れていった。

《アステア、プリキュア……あゆみを守って!!》

フーちゃんの切実な想いが、ハッピーたちとアステアに伝わってきた。

その想いに答えるように、ハッピーたちは光の出力を上げた。

「ハッピーエンドを、邪魔しちゃ、だめーーーーーーーっ!!」

ハッピーが叫ぶと、光はより強くなり、フュージョンを完全に飲みこんだ。

同時に、アステアの鎧もすべて砕け散り、変身が強制解除された。

幸い、湊にけがはなかったらしい。

満面の笑みを浮かべて、あゆみの方へ振り向き、サムズアップを向けていた。

あゆみは湊に何もなかったことに安堵し、微笑みをを浮かべたが、すぐにフーちゃんの姿がないことに気づいた。

「フーちゃん?」

あゆみがフーちゃんに呼びかけると、どこからともなく、フーちゃんの声が聞こえてきた。

《フーちゃんはあゆみと湊が住むこの街にいる……ずっと、二人の傍にいる……》

「……フーちゃん……ありがとう……」

「ありがとう、フーちゃん」

それは、フーちゃんが消えるということでもあるのだが、あゆみと湊は、別れの言葉ではなく、感謝をフーちゃんに送った。

それを、ハッピーはどこか寂しそうな顔で見守っていた。

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それから数日後。

あゆみは徐々にクラスに溶け込んでいき、湊と一緒に過ごす時間が少しだけ減った。

だが、登下校のときは一緒にいるし、休日に時間が合えばいまも一緒に遊びに行くため、二人とも寂しさはなかった。

そして、とある日曜日。

湊はあゆみの部屋のインターホンを押していた。

「はーい……あら、未来くん。いらっしゃい!」

「こんにちは、おばさん。あy……娘さんは」

「あ、おはよう!湊くん!!ごめん、もう少し待ってて!!」

玄関先に出てきたあゆみは、湊の姿を見つけるなり、慌てた様子で髪を整え、ぱたぱたと準備をしていた。

どうやら、この日は一緒に出かけるようだ。

宣言通り、少しだけ待っていると、準備が完了したあゆみは靴を履いて、玄関から出てきた。

「お母さん、行ってきます!!」

「いってらっしゃい、二人とも」

母親に見送られた二人は、マンションを出ると、湾岸公園の方へとむかっていった。

そこには、つい先日、友達になったばかりの女の子たちと、一人の男の子が待っていた。

彼女たちの姿を見つけると、湊とあゆみは同時に駆け出し、彼女たちのもとへとむかっていった。

あゆみのその顔には、もう、寂しそうな影はなく、愛らしい満開の笑顔が浮かんでいた。


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