ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
今回は前後編でお送りします。
なお、今後、オールスターズ全員が絡んでくる場合は『オールスターズ編』、各チームとの絡みの場合は『日常編』に投稿していく予定です。
ちなみに、今回のお話の時間軸は夏休み終了二週間前くらいです。
まぁ、だいたいそれくらいには八割がた終わらせてましたし。
ひとまず、本編へどうぞ。
それは、夏休みのある一日。
えりかは自分の部屋の中で頭を抱えながら、悲鳴を上げていた。
「うが~~~~~っ!!」
そして同時刻。
小泉学園、夕凪市、サンクルミエール、四葉町、加音町、七色ヶ丘でも同じように頭を抱えて悲鳴を上げる少女たちがいた。
その理由は一つ。
『宿題が終わらなーーーーーいっ!!』
もともと勉強が苦手な少女たちは、夏休みに部活や手伝いなどにかまけて、ほとんど宿題が手つかずの状態だったのだ。
そして、ふと宿題の存在をおもいだし、面倒くさいが片付けなければと、思い立ったところまではよかったのだが、そこから先へまったく進むことができずにいた。
こんなときに思いつくことはただ一つ。
『そうだ!みんなに協力してもらおう!!』
そして、プリキュアオールスターズに連絡が回り、勉強合宿を行うことになったのは、えりかが悲鳴を上げてから三分後の出来事である。
だが、この時、菖は。
「……くぅ~……」
夏の暑さにやられ、絶賛、昼寝の真っ最中であったため、すぐに気づくことはなかった。
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それから一週間後。
菖は部屋着として愛用している甚兵衛姿で、自室の真ん中に腰を下ろしていた。
彼の周囲には考古学の論文や資料、あるいは古い年代の地図のコピーや伝承の類がまとめられた本が、開かれた状態で散在していた。
どうやら、遺跡探索のための前調査をしているところのようだ。
菖はいつになく真剣な顔で書類とにらめっこしていたため、部屋の静寂を破る音は、菖の小さくつぶやく声と本をめくる音だけだった。
だが、その静寂も、青い珍獣とその飼い主たちの声によって破られることとなった。
「菖さん発見です!」
「「確保ぉっ!!」」
「「「「はいっ!/うんっ!/了解よ!!」」」」
「……っ?!え??!!ちょ、な、なに??!!」
突然、七人分の声が聞こえたかと思うと、菖は抵抗する間もなく、簀巻きにされ、担ぎあげられてしまった。
「「捕ったどぉ~~~~~~~~~~っ!!」」
「ちょっ?!まじでなに??!!……って、なんだゆりたちか。つか、誰だよ、俺を担ぎあげてるのは」
「お久しぶりです、菖さん!!」
「すみません、突然、こんなことして」
「……その声は響とエレンか。うん、久しぶり……て、重くないの?」
簀巻きにされた状態で、顔が天井の方を向いているため、誰に担がれたのかわからない菖は、担ぎあげている人物に問いかけると、加音町にいるはずの響とエレンの声が聞こえてきた。
どうやら、二人が菖を担いでいるようだ。
「はい!菖さん、思ったより軽いです!!」
「わたしたち、結構、鍛えてますから!!」
エレンはともかく、響は鬼に変身する特撮ヒーローのようなセリフを返した。
なお、抵抗は無駄と判断してか、菖は二人にされるがままになっていた。
「……で、なんでこんな暴挙に出たんだ?四十文字以内で理由を答えてくれ、えりか」
「夏休みの宿題が終わらないから、みんなで一緒にやろうかなと思ったから」
悪びれる様子もなく、えりかは菖の質問にそう返した。
その答えを聞いた菖は、ふむ、とうなずき。
「……三十三字か。まぁまぁってところか……三点」
とさりげなく、えりかの答えを採点していた。
その点数の低いさに、えりかは目を丸くし、反抗した。
「ちょ?!さりげなく採点してるし!!つか低っ!!」
「五点満点中だが?」
「あ、さいで」
後から出てきた言葉に、えりかは目を丸くしながらそう返した。
で、と菖はゆりの方へ視線を向けて。
「俺はなんでこんな状況にさせられてんの??」
「あら?先週送られてきたメール、覚えてないの?」
メールとは、えりかから送られてきたもので、夏休みの宿題をちゃっちゃと終わらせて、ついでにみんなで遊ぼう、という提案だった。
なお、宿泊先は水無月家が所有する別荘で、三泊四日の予定だ。
むろん、菖もその面子に含まれていたうえに、拒否権はないとゆりから宣告されていたため、準備だけはしていた。
「あぁ……今日だったか。研究に没頭しててすっかり忘れてた」
「ほんと、相変わらずね。あなたは……」
菖のその言葉に、ゆりがため息をついて返した。
「話はわかったから、そろそろほどいてくれない?着替えないとだし、用意した荷物も持ってかないとだろ?つか、普通に声かけてくれればいいのに」
「普通じゃおもしろくないっしゅ!!」
「……よし、えりかはあとでお仕置きだ」
「ピャッ??!!」
どや顔で返したえりかに、菖は暗い笑みを浮かべながら宣言すると、えりかは顔を青くして悲鳴を上げた。
なお、菖の口から「お仕置き」という単語が飛び出たことに、つぼみとエレンは。
「い……いったい、どんなお仕置きなんでしょう……」
「ま、真っ暗な部屋で怪談とか怖い話とか……?」
と顔を真っ青にしてひそひそとつぶやき合っていた。
それが聞こえたゆりは、眼鏡を持ち上げて、二人の耳もとで口を開いた。
「あら、菖のことだから百叩きとか石抱き、
いずれも中世ヨーロッパや江戸時代の日本で実際に行われた拷問や処罰である。
さすがに、命を取りかねないものはないが、それでもかなりの苦痛を伴うものであることにかわりはない。
だが、本人はそんなことはちっとも思っていないらしく。
「……ゆり。俺は時々、お前の発想が怖くてたまらないときがあるよ」
「あら、それは光栄ね」
「……褒めてないんだけどなぁ……」
ゆりはくすくすと笑いながら、菖に返したが、返された本人はどう反応したものかと微苦笑を浮かべてしまっていた。
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簀巻きから解放され、菖は普段の恰好に着替え、用意していた荷物を持り、再びゆりたちと合流し、希望ヶ花市を出発した。
それから電車で揺られること、十数分。
一行は無事に、サンクルミエール市はナッツハウスに到着した。
ナッツハウスには、すでにほとんどのチームがそろっており、あとは
「そういえば、菖。宿題はもう終わらせたの?」
「あとは美術だけだ。そういうゆりは?」
「似たようなものよ」
みゆきたちの到着を待つ間、各々、和気あいあいした会話を繰り広げており、菖とゆりもまた、日陰でそんな会話をしていた。
なお、
そのももかも、二人の手伝いの甲斐あって、残る宿題は美術だけ、という結果になっていたことはいうまでもない。
「……なぁ、いくらなんでも遅くないか?集合時間、十分は過ぎてるぞ」
「そうね……何かあったのかしら?」
菖がつぶやいた通り、みゆきたちは集合時間から十分すぎても姿を見せていなかった。
さすがに心配になってきたのか、
「……あら?」
ふと、誰かの携帯が着信音を鳴らしていることに気づいたゆりは、耳を澄まして、音源を探した。
すると、ナッツハウスの中から音が聞こえてきていることに気づいて、ゆりはかれんに声をかけた。
「かれん。ナッツハウスの中に誰かいるようだけれど?」
「え?そんなはずは……」
ゆりの問いかけに、かれんは怪訝な顔をしながら、ナッツハウスへ近づき、鍵を開けて中へ入っていった。
数分して、かれんはいつの間に侵入したのか、みゆきたちを引き連れて出てきた。
その光景に驚かない人間はこの場にはおらず、みんな反応はそれぞれではあったものの、驚愕の声を上げ、みゆきたちに詰め寄ってきた。
次から次に飛んでくる質問に、みゆきたちは対応しきれず、とうとう収拾がつかない状態になってしまったが。
「「
『――っ!!??』
菖とゆりの怒声に全員、顔を青くして黙ってしまった。
その後、出発する前に菖とゆりからちょっとお小言を受けた少女たちだった。
あとがき代わりの裏話(スキット風)
~えりかが集合をかける一週間前~
ももか「……終わったぁ……」
ゆり、菖「「お疲れ様」」
ももか「ほんと助かったわぁ、二人とも。ありがと~!大好き~!!」
ゆり、菖「「だからって抱き着かない/で……余計に暑苦しい/わ」」
ももか「ぶ~!いいじゃん、いいじゃん!!頑張ったんだし、ちょっとはご褒美ちょうだいよ!!」
ゆり「……だそうよ?菖」
菖「って、俺に振るのか!」
ゆり「あら?こういうのは男の子がするものでしょ?」
菖「だからってなぁ……はぁ……わかったよ。で?なにがいいんだ?」
ももか「そうねぇ……頭、なでなでしてちょうだい!」
菖「そんなんでいいのか?」
ももか「後でえりかに自慢してやるのよ♪」
ゆり(……どちらかというと、つぼみのほうが羨ましがりそうね……)
菖「それくらいでいいなら」(ぽむ、なでなで)
ももか「……ほにゃ~……///」
ゆり「……ももかの蕩け顔、ある意味で危険ね……」
菖「もういいか?」
ももか「や~!もっと~!!」
ゆり、菖「「……幼児化している……」」